「先天性鼻涙管閉塞」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!
公開日:2023/04/22
泣いたりあくびをしたりすると涙が出るでしょう。涙とは泣いたりあくびをしたりするときだけに出るのではなく、普段から少しずつ流れているものです。
涙は涙腺から流れて眼球を潤すという役目を果たし、目頭にある涙点と呼ばれる穴に吸い込まれていきます。
先天性鼻涙管閉塞とは涙点に吸い込まれるはずの涙が、鼻涙管という細い管が先天的に閉じた状態になり目に溜まってしまうという症状です。
お子さんがいつも涙目になっている場合、先天性鼻涙管閉塞の可能性があるかもしれません。この記事によって先天性鼻涙管閉塞に対する解決法を参考にしてみてください。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。
目次 -INDEX-
先天性鼻涙管閉塞の症状と原因
先天性鼻涙管閉塞の症状を教えてください。
先天性鼻涙管閉塞での症状としては、涙が涙点に吸収されないことによってあふれ出てしまうことが挙げられます。したがって常に目が涙っぽい感じになっている、または泣いてもいないのに涙があふれ出してきているといった状態になっているでしょう。
さらには涙の流れが停滞してしまうため、目やにが増えることにもなります。こうした状態が続くことによって涙嚢内に感染が生じることもあります。これは涙嚢炎(赤ちゃんの場合は新生児涙嚢炎)といい、目頭の部分が赤く腫れてしまうこともあります。
さらには涙の流れが停滞してしまうため、目やにが増えることにもなります。こうした状態が続くことによって涙嚢内に感染が生じることもあります。これは涙嚢炎(赤ちゃんの場合は新生児涙嚢炎)といい、目頭の部分が赤く腫れてしまうこともあります。
赤ちゃんがなりやすい病気なのですね…。
「先天性鼻涙管閉塞」と、病名の頭にあるように先天性鼻涙管閉塞という病気は先天的なものであるため、赤ちゃんのときに症状に気づくケースが多いです。
なお先天的ではない涙道閉塞症という病気があり、こちらの場合では加齢に伴って涙道内に老廃物が蓄積することにより詰まってしまい、先天性鼻涙管閉塞と同様の症状が現れることもあります。先天性鼻涙管閉塞と涙道閉塞症では症状の現れる部位やその原因に違いがあります。
しかし、年齢を重ねてからでも同様の症状は現れることがある点には注目しておきたいものです。
なお先天的ではない涙道閉塞症という病気があり、こちらの場合では加齢に伴って涙道内に老廃物が蓄積することにより詰まってしまい、先天性鼻涙管閉塞と同様の症状が現れることもあります。先天性鼻涙管閉塞と涙道閉塞症では症状の現れる部位やその原因に違いがあります。
しかし、年齢を重ねてからでも同様の症状は現れることがある点には注目しておきたいものです。
発症する原因を教えてください。
先天性鼻涙管閉塞という症状では、鼻涙管が行き止まりになったまま生まれてしまうことが原因です。行き止まりになった部分というのは鼻涙管の途中、主に鼻腔への出口の部分が該当します。
この部分で膜のようなものが残ったまま生まれてくることによって、涙が行き止まりになるという症状が出てくるのです。
この部分で膜のようなものが残ったまま生まれてくることによって、涙が行き止まりになるという症状が出てくるのです。
大人が発症することもあるのでしょうか?
先天性鼻涙管閉塞では目に見える形で症状が現れるので、お母さんや周りの人が気付いてあげられるでしょう。ですから先天性鼻涙管閉塞が大人になるまで症状に気がつかない、または症状が出ないという可能性はほぼありません。
こうした理由から先天性鼻涙管閉塞は大人が発症することはないといえるでしょう。なお先に述べた涙道閉塞症といった病気では、歳を重ねていくことによって涙道が塞がってしまううなど、先天性鼻涙管閉塞と同じような症状が現れることになるでしょう。
同じような原因と症状ではありますが、やはり先天性鼻涙管閉塞と涙道閉塞症は根本的な原因が違うことから区別される病気といえます。
こうした理由から先天性鼻涙管閉塞は大人が発症することはないといえるでしょう。なお先に述べた涙道閉塞症といった病気では、歳を重ねていくことによって涙道が塞がってしまううなど、先天性鼻涙管閉塞と同じような症状が現れることになるでしょう。
同じような原因と症状ではありますが、やはり先天性鼻涙管閉塞と涙道閉塞症は根本的な原因が違うことから区別される病気といえます。
先天性鼻涙管閉塞の治療と手術
どのような検査で診断されますか?
天性鼻涙管閉塞では涙があふれる・目やにが多いといった症状が出ているので、まずは目視によって確認することから検査していきます。目やにが多い場合には結膜炎や涙嚢炎などの病気の併発をしていないかも検査します。
鼻の付け根あたりを押してみて涙が逆流してあふれてくるかを確認し、これによって確認できない場合や別の病気の鑑別が必要な場合は涙道通水試験を行うこともあります。
これは涙点から生理食塩水を注入するという検査です。この試験によって鼻涙管が塞がっているかを確認します。また場合によっては涙道内視鏡という器具を使用して検査を行うこともあります。
鼻の付け根あたりを押してみて涙が逆流してあふれてくるかを確認し、これによって確認できない場合や別の病気の鑑別が必要な場合は涙道通水試験を行うこともあります。
これは涙点から生理食塩水を注入するという検査です。この試験によって鼻涙管が塞がっているかを確認します。また場合によっては涙道内視鏡という器具を使用して検査を行うこともあります。
治療方法を教えてください。
治療で行う第1の方法としては、専用のマッサージを行うことです。このマッサージによって鼻涙管を開通させ、涙が鼻腔に流れていくようにします。大抵の場合はマッサージを行うことによって開通できますが、マッサージによる治療で開通しない場合もあります。
こうした場合には鼻涙管開放術という方法を行うことになるでしょう。鼻涙管開放術ではブジーと呼ばれる針金を使用して、鼻涙管内で涙の通り道を塞いでいる膜を突き破るという治療になります。
1歳未満の赤ちゃんに行われる場合を早期ブジーと呼び、早期に行うべきという意見や1歳まではやるべきではない意見もあり、医師によって判断が分かれるという課題があります。
こうした場合には鼻涙管開放術という方法を行うことになるでしょう。鼻涙管開放術ではブジーと呼ばれる針金を使用して、鼻涙管内で涙の通り道を塞いでいる膜を突き破るという治療になります。
1歳未満の赤ちゃんに行われる場合を早期ブジーと呼び、早期に行うべきという意見や1歳まではやるべきではない意見もあり、医師によって判断が分かれるという課題があります。
手術することもあるのでしょうか?
先に述べた治療法の専用のマッサージや鼻涙管開放術によっても症状が改善されないケースもあります。そういう場合に手術を行うという選択があるでしょう。なお鼻涙管開放術をおこなっても改善しないことはごく稀なケースとなります。
鼻涙管開放術をもう1度行うこともありますが、手術を行う場合は涙管チューブを挿入するもの、涙道内視鏡を用いたプロービングなどの選択肢があるでしょう。なお手術の場合は1歳未満であれば局所麻酔を、1歳以上であれば全身麻酔をすることが一般的です。
鼻涙管開放術をもう1度行うこともありますが、手術を行う場合は涙管チューブを挿入するもの、涙道内視鏡を用いたプロービングなどの選択肢があるでしょう。なお手術の場合は1歳未満であれば局所麻酔を、1歳以上であれば全身麻酔をすることが一般的です。
合併症について教えてください。
先天性鼻涙管閉塞の合併症は、マッサージを行いながらの経過観察で確認されたのが急性涙嚢炎・眼瞼炎です。これはマッサージと直接関係あるものではなく、先天性鼻涙管閉塞の症状によるものだと推測されます。
またプロービングの手術において局所的なものとして、涙点から逆流して出血するという合併症が報告された例もあります。さらに稀な例としてですが、待機期間中に蜂窩織炎を発症したという報告がありました。
いずれにしても先天性鼻涙管閉塞という病気は自然治癒する確率が高いものであることから、治療に対しても合併症の発生を低く抑えることが求められています。
またプロービングの手術において局所的なものとして、涙点から逆流して出血するという合併症が報告された例もあります。さらに稀な例としてですが、待機期間中に蜂窩織炎を発症したという報告がありました。
いずれにしても先天性鼻涙管閉塞という病気は自然治癒する確率が高いものであることから、治療に対しても合併症の発生を低く抑えることが求められています。
先天性鼻涙管閉塞のマッサージ方法
先天性鼻涙管閉塞は自然に治ると聞きましたが…。
手術などで治療を行う場合もあるのですべてとはいえませんが、先天性鼻涙管閉塞は高い確率で自然治癒する病気といえるものでしょう。
ただし涙があふれることによって合併症が引き起こされる場合もあるので、そちらの方も注意しておきたいところです。涙があふれ出ること自体も注意すべきものですが、目やにや涙嚢炎、眼瞼炎などの症状があるようなら眼科での検査や治療に連れて行ってあげてください。
ただし涙があふれることによって合併症が引き起こされる場合もあるので、そちらの方も注意しておきたいところです。涙があふれ出ること自体も注意すべきものですが、目やにや涙嚢炎、眼瞼炎などの症状があるようなら眼科での検査や治療に連れて行ってあげてください。
効果的なマッサージ方法を教えてください。
先天性鼻涙管閉塞への効果が期待できるマッサージは涙嚢マッサージといいます。まず、涙嚢マッサージを行う前にやるべきことがあります。マッサージを行う人は指の爪を切り、手を洗って清潔にしておくことです。
準備が整ったらマッサージを行いましょう。目頭の涙嚢の部分を指で足の方向に向けて10回程度押し下げるようにして、涙が排水される管の一番下の部分(涙が詰まる部分)に圧が加わるようにします。これを5〜10回で1セットとして、1日に2〜4セット無理のない範囲で行います。
準備が整ったらマッサージを行いましょう。目頭の涙嚢の部分を指で足の方向に向けて10回程度押し下げるようにして、涙が排水される管の一番下の部分(涙が詰まる部分)に圧が加わるようにします。これを5〜10回で1セットとして、1日に2〜4セット無理のない範囲で行います。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
先天性鼻涙管閉塞という病気は自然に治癒する確率も高く、手術にいたる治療を行うのはそれほど多くありません。涙嚢マッサージを行うことによっても治癒することもあるため、危険のある病気とはいえないでしょう。
しかし涙を気にする赤ちゃんが汚れている手で目を触ったりすることはあるかもしれません。それによって別の病気を引き起こす恐れはあるでしょう。また涙があふれることによる合併症も発症しないとは限りません。
まだ自分で症状を訴えられない赤ちゃんならなおさら注意して見守ってあげたいところです。もし赤ちゃんの涙が止まらないような様子に気付いたときには、眼科での診察に連れて行ってあげてください。
しかし涙を気にする赤ちゃんが汚れている手で目を触ったりすることはあるかもしれません。それによって別の病気を引き起こす恐れはあるでしょう。また涙があふれることによる合併症も発症しないとは限りません。
まだ自分で症状を訴えられない赤ちゃんならなおさら注意して見守ってあげたいところです。もし赤ちゃんの涙が止まらないような様子に気付いたときには、眼科での診察に連れて行ってあげてください。
編集部まとめ
常に涙目になっている我が子の様子を見ると、どうしたのかと不安になってしまうお母さんもいらっしゃることでしょう。そういった原因の1つが先天性鼻涙管閉塞です。
この病気は目に関するものなので、マッサージをするときや目やにを取ってあげる際などは手を清潔にしておくことが重要です。自然治癒でよくなる可能性は高いとはいえ、清潔にすることを心がけましょう。
なお目やにを取るときには柔らかなティッシュなどをぬるま湯で濡らし、目やにを柔らかくしてから優しく拭き取ってあげてください。
参考文献