「肥厚性鼻炎」を疑う鼻の症状・原因はご存知ですか?医師が監修!
公開日:2023/03/28
鼻は五感のうちの「嗅覚」を担うほか、呼吸の役割も果たしている重要な器官です。
ウイルスやアレルギー物質などを含んだ外界からの空気が通るため、鼻はトラブルが起こるリスクが高い器官だといえるでしょう。
くしゃみ・鼻水・鼻づまりなどの症状はほとんどの方がこれまでに経験しているのではないでしょうか。
今回は鼻のさまざまな病気の中から、肥厚性鼻炎(ひこうせいびえん)について詳しく解説いたします。
長期間鼻づまりに悩まされている方はもちろん、肥厚性鼻炎がなかなか治らないという方も是非本記事をご参考になさってください。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。
目次 -INDEX-
肥厚性鼻炎の症状と原因
肥厚性鼻炎とはどのような病気でしょうか?
肥厚性鼻炎は鼻の内部が何らかの原因で慢性的に炎症を起こし、粘膜が硬く厚くなることで慢性的に鼻がつまる病気です。鼻の内部(鼻腔)には、上鼻甲介・中鼻甲介・下鼻甲介という3つのひだがあり、肥厚性鼻炎では下鼻甲介が腫れることで鼻づまりが起こります。
通常の鼻炎による鼻づまりは薬物療法で快方に向かうことがほとんどです。しかし、肥厚性鼻炎では薬物療法による効果が得られにくかったり、場合によっては鼻腔の手術を検討したりすることもあります。手術で対処しても症状を繰り返すなど治りにくいケースがあることも特徴です。
通常の鼻炎による鼻づまりは薬物療法で快方に向かうことがほとんどです。しかし、肥厚性鼻炎では薬物療法による効果が得られにくかったり、場合によっては鼻腔の手術を検討したりすることもあります。手術で対処しても症状を繰り返すなど治りにくいケースがあることも特徴です。
症状を教えてください。
肥厚性鼻炎の主な症状は慢性的な鼻づまりです。前述したとおり肥厚性鼻炎は鼻腔内で慢性的に炎症が起きている状態ですが、鼻がつまる症状のみで鼻水など他の症状があらわれないことが特徴です。
処方された薬を使い鼻水などの症状は改善されたものの、鼻づまりの症状だけがなかなか改善されないという場合には肥厚性鼻炎の疑いがあるといえるでしょう。また鼻づまりは人によって感じ方が大きく変わり、気になる方にとっては非常に厄介な症状です。慢性的な鼻づまりが大きなストレスの原因となり、生活の質が大きく落ちてしまうケースもあるのです。
また、鼻腔が狭くなることでいびきの原因となる場合もあり、睡眠時無呼吸症候群との関連性も考えられています。
処方された薬を使い鼻水などの症状は改善されたものの、鼻づまりの症状だけがなかなか改善されないという場合には肥厚性鼻炎の疑いがあるといえるでしょう。また鼻づまりは人によって感じ方が大きく変わり、気になる方にとっては非常に厄介な症状です。慢性的な鼻づまりが大きなストレスの原因となり、生活の質が大きく落ちてしまうケースもあるのです。
また、鼻腔が狭くなることでいびきの原因となる場合もあり、睡眠時無呼吸症候群との関連性も考えられています。
発症する原因を教えてください。
肥厚性鼻炎は慢性的な鼻炎が原因で発症する病気ですが、その慢性的な鼻炎を発症する原因はさまざまです。慢性的な鼻炎の主な原因としては、ウイルス感染による急性鼻炎・急性鼻炎の延長である単純性鼻炎・アレルギー性鼻炎・副鼻腔炎・扁桃肥大(アデノイド)の影響などが挙げられます。
これらの病気は誰にでも発症する可能性があるため、肥厚性鼻炎も私たちにとって比較的身近な病気であるといえるでしょう。また、点鼻薬を常用することで発症する薬剤性鼻炎も肥厚性鼻炎を引き起こす原因の1つだといわれています。
これらの病気は誰にでも発症する可能性があるため、肥厚性鼻炎も私たちにとって比較的身近な病気であるといえるでしょう。また、点鼻薬を常用することで発症する薬剤性鼻炎も肥厚性鼻炎を引き起こす原因の1つだといわれています。
点鼻薬の副作用の可能性もあるのですね…。
前述したとおり、点鼻薬を常用することでかえって鼻づまりを悪化させてしまう薬剤性鼻炎を発症する可能性があります。しかし、薬剤性鼻炎の発症は血管収縮剤が使われた点鼻薬を常用した場合に限られ、ステロイドの点鼻薬であればその心配はほぼありません。
ステロイドと聞くと怖いものだとイメージされる方もいらっしゃるかと思いますが、ステロイド点鼻薬では副作用の心配がほとんどないといわれています。もしステロイドや点鼻薬の使用に少しでも不安を感じるようであれば、診察の際に医師から詳しく説明を受けると良いでしょう。
薬は患者様自身がきちんと納得したうえで使用することが何より大切です。
ステロイドと聞くと怖いものだとイメージされる方もいらっしゃるかと思いますが、ステロイド点鼻薬では副作用の心配がほとんどないといわれています。もしステロイドや点鼻薬の使用に少しでも不安を感じるようであれば、診察の際に医師から詳しく説明を受けると良いでしょう。
薬は患者様自身がきちんと納得したうえで使用することが何より大切です。
肥厚性鼻炎の受診と治療
受診するタイミングを教えてください。
鼻水やくしゃみなどの症状はなく鼻づまりだけが2~3週間以上続くようであれば、肥厚性鼻炎などを疑い病院で受診するようにしましょう。
鼻かぜを含む風邪の諸症状は通常1週間もすれば良くなるものです。しかし、特定の症状だけが3週間以上も続くようであれば、風邪が長引いているのではなく別の病気の可能性があると考えられます。
風邪が長引いているだけだと考えそのままにせず、気になる症状がある場合は病院で医師に相談するようにしましょう。
鼻かぜを含む風邪の諸症状は通常1週間もすれば良くなるものです。しかし、特定の症状だけが3週間以上も続くようであれば、風邪が長引いているのではなく別の病気の可能性があると考えられます。
風邪が長引いているだけだと考えそのままにせず、気になる症状がある場合は病院で医師に相談するようにしましょう。
どのような検査で診断されますか?
下鼻甲介は鼻を覗くと見える位置にあるため、鼻腔を目視することで下鼻甲介の状態を直接確認することで診断が可能です。
また細菌感染の有無・アレルギー物質の特定・内視鏡検査などの詳しい検査も行われます。検査の結果、下鼻甲介の腫れから鼻腔が閉塞していることが確認できたら肥厚性鼻炎の可能性があるとみなし治療を開始します。
肥厚性鼻炎のきっかけとなる鼻炎の原因はさまざまであり、原因に合わせた薬の服用や点鼻薬の使用で経過を観察するといった流れです。そのほか鼻中隔湾曲症という鼻中隔の骨が歪む病気を伴う可能性がある場合にはCT検査やMRI検査を行う場合があります。
また細菌感染の有無・アレルギー物質の特定・内視鏡検査などの詳しい検査も行われます。検査の結果、下鼻甲介の腫れから鼻腔が閉塞していることが確認できたら肥厚性鼻炎の可能性があるとみなし治療を開始します。
肥厚性鼻炎のきっかけとなる鼻炎の原因はさまざまであり、原因に合わせた薬の服用や点鼻薬の使用で経過を観察するといった流れです。そのほか鼻中隔湾曲症という鼻中隔の骨が歪む病気を伴う可能性がある場合にはCT検査やMRI検査を行う場合があります。
治療方法を教えてください。
肥厚性鼻炎にはまず薬物療法で対処することが一般的です。ステロイド点鼻薬の他に、アレルギー性鼻炎が原因の場合にはアレルギー治療薬を、副鼻腔炎が原因の場合は抗炎症薬を服用します。
また点鼻薬と内服薬の使用と同時に、ネブライザーという治療機器で鼻腔に霧状の薬剤を直接送り込む処置も行われます。これらの治療を併用しながら数週間様子をみることで、多くの場合は鼻づまりの症状がかなり抑えられるでしょう。
しかし、それでも効果が薄い場合には厚くなった粘膜を直接減量するための焼灼手術(レーザー治療)などを行い、鼻腔閉塞の改善を図ります。
また点鼻薬と内服薬の使用と同時に、ネブライザーという治療機器で鼻腔に霧状の薬剤を直接送り込む処置も行われます。これらの治療を併用しながら数週間様子をみることで、多くの場合は鼻づまりの症状がかなり抑えられるでしょう。
しかし、それでも効果が薄い場合には厚くなった粘膜を直接減量するための焼灼手術(レーザー治療)などを行い、鼻腔閉塞の改善を図ります。
肥厚性鼻炎のレーザー治療について教えてください。
肥厚性鼻炎のレーザー治療で行われる手術は下甲介粘膜焼灼術といい、その名のとおり下鼻甲介の粘膜を焼く手術のことです。下鼻甲介を減量させたり、粘膜下の組織を瘢痕化したりすることで、下鼻甲介の腫れを改善し鼻のとおりを良くします。
レーザーによる手術は15分程度と短時間で済み、鼻の局所麻酔で行われるため入院の必要がありません。手術後2~3日ほどは鼻水が多く出るなどの症状があり、数週間は粘膜のかさぶたなどの影響で鼻づまりがひどくなったと感じる方もいらっしゃいます。しかし、4週間ほどで新しい粘膜に入れ替わった後は、およそ8割の方で鼻づまりの症状が半分以上無くなったと効果を実感できています。
レーザー治療は特に花粉症やハウスダストなど、アレルギー性鼻炎に用いられることが多いです。焼かれた粘膜が再生するにあたって、アレルギー反応が起こりにくい新しい細胞に入れ替えることが目的となります。
肥厚性鼻炎でレーザー治療を行うことは、すなわち腫れて鼻腔を塞いでいる粘膜を減らすとともに、発症原因の1つであるアレルギー性鼻炎を予防することにも繋がるのです。また、レーザー治療を一度行えば肥厚性鼻炎が必ず良くなるとは限りません。
何度かレーザー治療を行っても症状が改善されない場合は、医師との相談のうえラジオ波凝固手術なども検討すると良いでしょう。
レーザーによる手術は15分程度と短時間で済み、鼻の局所麻酔で行われるため入院の必要がありません。手術後2~3日ほどは鼻水が多く出るなどの症状があり、数週間は粘膜のかさぶたなどの影響で鼻づまりがひどくなったと感じる方もいらっしゃいます。しかし、4週間ほどで新しい粘膜に入れ替わった後は、およそ8割の方で鼻づまりの症状が半分以上無くなったと効果を実感できています。
レーザー治療は特に花粉症やハウスダストなど、アレルギー性鼻炎に用いられることが多いです。焼かれた粘膜が再生するにあたって、アレルギー反応が起こりにくい新しい細胞に入れ替えることが目的となります。
肥厚性鼻炎でレーザー治療を行うことは、すなわち腫れて鼻腔を塞いでいる粘膜を減らすとともに、発症原因の1つであるアレルギー性鼻炎を予防することにも繋がるのです。また、レーザー治療を一度行えば肥厚性鼻炎が必ず良くなるとは限りません。
何度かレーザー治療を行っても症状が改善されない場合は、医師との相談のうえラジオ波凝固手術なども検討すると良いでしょう。
肥厚性鼻炎の予防
再発することもあるのでしょうか?
肥厚性鼻炎では発症の原因が鼻炎の延長によるものであることから、鼻かぜや副鼻腔炎などから鼻炎が長引いてしまうと再発する恐れがあります。
またレーザー治療でアレルギー性鼻炎の対処を行ったとしてもその効果は約1~4年ほどであり、アレルギーはその方の体質によるものですから、再び粘膜がアレルギー反応を起こしやすい細胞にかわってしまうことも十分に考えられるのです。
再発した場合は点鼻薬や薬の服用で様子をみて、改善が見られないようなら再度レーザー治療を検討します。アレルギー反応が起こりやすい体質自体を治療することは難しいため、再発したらその都度対処していくという方法を取るのです。
またレーザー治療でアレルギー性鼻炎の対処を行ったとしてもその効果は約1~4年ほどであり、アレルギーはその方の体質によるものですから、再び粘膜がアレルギー反応を起こしやすい細胞にかわってしまうことも十分に考えられるのです。
再発した場合は点鼻薬や薬の服用で様子をみて、改善が見られないようなら再度レーザー治療を検討します。アレルギー反応が起こりやすい体質自体を治療することは難しいため、再発したらその都度対処していくという方法を取るのです。
肥厚性鼻炎を予防する方法を教えてください。
肥厚性鼻炎は慢性的な鼻炎により引き起こされる病気であることから、慢性的な鼻炎を起こさないことが一番の予防法です。ウイルスなどによる急性鼻炎(鼻かぜ)を発症した場合には、すぐに病院で受診するなど早めに対処することで症状の慢性化を防ぎましょう。
またアレルギーが原因で発症するアレルギー性鼻炎の場合は、アレルギー物質を吸い込まないことが大切です。しかし、アレルギー性鼻炎はスギ花粉などの花粉症やハウスダストにより引き起こされることが多いため、完全に避けることは不可能に近いといえます。
そのため、アレルギー性鼻炎の症状が見られたら薬の服用などで早めに対処しましょう。いずれにしても、早期治療で症状を重くしないことが何よりの予防策なのです。
またアレルギーが原因で発症するアレルギー性鼻炎の場合は、アレルギー物質を吸い込まないことが大切です。しかし、アレルギー性鼻炎はスギ花粉などの花粉症やハウスダストにより引き起こされることが多いため、完全に避けることは不可能に近いといえます。
そのため、アレルギー性鼻炎の症状が見られたら薬の服用などで早めに対処しましょう。いずれにしても、早期治療で症状を重くしないことが何よりの予防策なのです。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
肥厚性鼻炎は花粉症や副鼻腔炎などさまざまな鼻炎が長引くことで発症する病気です。鼻炎を長引かせることで発症のリスクが高くなるため、くしゃみ・鼻水・鼻づまりなど鼻の症状があらわれたら早めに対処することで発症を防げます。また、鼻づまりなどの症状改善を意識するあまり点鼻薬を使いすぎることはおすすめできせん。
鼻の症状で気になることがあれば、かかりつけの耳鼻科で受診し医師に相談しましょう。鼻炎は誰にでも起こり得る非常に身近な病気であり、その延長である肥厚性鼻炎もまた身近であるといえるでしょう。不快な鼻づまりを長引かせないためにも、日頃から鼻の健康を気にかけ予防に務めることが大切です。
鼻の症状で気になることがあれば、かかりつけの耳鼻科で受診し医師に相談しましょう。鼻炎は誰にでも起こり得る非常に身近な病気であり、その延長である肥厚性鼻炎もまた身近であるといえるでしょう。不快な鼻づまりを長引かせないためにも、日頃から鼻の健康を気にかけ予防に務めることが大切です。
編集部まとめ
今回は肥厚性鼻炎について詳しく解説いたしました。鼻づまりは人によっては生活の質を大きく落とす要因にもなるため、肥厚性鼻炎の発症は避けたいものですね。
また、鼻がつまることで耳・のど・肺などの病気にかかりやすくなるだけでなく、いびきの原因になり睡眠の質が落ちたり学業や仕事の効率も落ちたりする場合があるそうです。
ただの鼻づまりだからそのうち治るだろうと油断せず、気になる症状がある場合は早めにかかりつけの耳鼻科などを受診するようにしましょう。