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「肝臓病」を発症する原因・予防法はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/03/27
「肝臓病」を発症する原因・予防法はご存知ですか?医師が監修!

肝臓は人間の体の中で一番大きな臓器であり、また一番大きな働きを担う臓器でもあります。

その上肝臓は沈黙の臓器といわれるほど、我慢強い臓器です。自覚症状がないままに病気が進行してしまった、ということも多いです。

そこで今回は肝臓病にはどのような種類の病気があるのか、またその症状や原因について解説します。

早期受診が必要な初期症状・治療方法・食事療法などについても紹介しています。ぜひ早期治療の参考にしてください。

竹内 想

監修医師
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)

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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。

肝臓病の種類と症状

問診票と聴診器

肝臓はどのような働きをしているのでしょうか?

肝臓は体の中で一番大きな臓器ですが、その役割も重要です。肝臓の主な働きを挙げましょう。

  • 代謝
  • 解毒
  • 胆汁の産生
  • 血清蛋白質の産生

肝臓の大きな働きは胃や腸で吸収された栄養素を利用しやすい物質に変えることです。そして蓄えた物質は必要に応じて分解され、エネルギーとして全身の臓器などに送り出されます。
また肝臓には摂取した物質や代謝で生じた有害物質を毒性の低い物質に変えて尿などで排泄する解毒作用もあります。
胆汁を生成して脂肪を腸から吸収しやすくし、またコレステロールを体外に排出するのを助けることも大きな働きの1つです。他にも血清蛋白質を生成するなど、肝臓は「体の化学工場」と例えられるほど人間の体にとって重要な働きを担う臓器です。

肝臓病の種類を教えてください。

肝臓病には大きく分けて次の3つの種類があります。

  • 肝炎
  • 肝硬変
  • 肝がん

肝炎は文字通り肝臓に炎症が起こる病気で、炎症によって肝機能が低下します。
肝炎の内最も多いのはウイルス肝炎で、主にA型・B型・C型・E型の4種類のウイルスにより感染しますが、特に慢性化しやすいのはA型・B型肝炎です。肝炎が慢性化することで肝細胞の破壊と再生が繰り返され、徐々に肝臓そのものの細胞が壊されていきます。
この状態が肝硬変です。肝硬変は「代償性肝硬変」と「非代償性肝硬変」に分類され、代償性肝硬変は何とか肝機能が保てる軽度な肝硬変で、非代償性肝硬変は中度重度の肝硬変です。肝がんには慢性的な肝疾患が主な原発となる「原発性肝がん」と、他臓器からの転移が原因の「転移性肝がん」があります。

男女別にどのような症状がみられますか?

肝臓病の場合、発症や進行状況には男女で明らかな差が見られます。これは男性の方がアルコールの摂取量が多く、肝炎から肝硬変・がんへと進行する人が多いのが原因の1つです。加えて、女性の場合肝炎の進行が遅くなる傾向があることも男女差の原因です。
肝炎は肝臓に鉄分が多く蓄積していると進行が早いといわれています。女性の場合生理があるため血液とともに鉄分も排出され、このことから女性の肝炎は進行が遅いと考えられます。ただし肝臓病によって起こる症状については男女での差はありません。

肝臓病になる原因を教えてください。

肝臓病の原因には主に次のようなことが挙げられます。

  • ウイルス感染
  • 過度なアルコール摂取
  • 脂肪肝
  • 薬物による症状
  • 自己免疫の異常

肝炎の多くはウイルス感染によるものです。A型肝炎の場合はほとんどが急性肝炎で、慢性化しにくいのが特徴です。感染ウイルスにより症状も慢性化リスクも違うため、早期に受診して治療を行う必要があります。
アルコールを過度に摂取すると肝臓は無害な物質に変えるために働き、その途中に「アセトアルデヒド」という毒素を作り出してしまいます。アセトアルデヒドが肝細胞を傷つけることで起こるのが肝疾患です。アルコールの過剰摂取による肝疾患には他にアルコール性脂肪肝があり、さらにアルコール性肝炎やアルコール性線維症に移行します。ほとんど自覚症状が無いため進行してしまう可能性が高く、注意が必要です。
幹細胞に中性脂肪が蓄積された状態が肝脂肪です。肝脂肪は肝機能を低下させる原因となります。肥満・食べすぎ・飲みすぎ・糖尿病などが肝脂肪を引き起こし、処方された薬によって肝障害を起こすこともあります。
服用後に食欲不振・倦怠感・吐き気などの症状が起きた場合には服用を止め、医師に相談してください。何らかの要因で自己免疫の異常が起きて肝障害を起こす場合もあります。特に中高年の女性に多いのが特徴です。この場合も自覚症状が無いため、健康診断などで発見されることが多いです。

肝臓病の検査と治療

血液検査の結果表&薬

受診するべき初期症状を教えてください。

肝臓は沈黙の臓器といわれる程、肝障害が起こっていても自覚症状が無い場合が多く、初期段階での受診が難しい病気です。少しでも倦怠感や食欲不振などがあれば受診してください。
特にアルコールをよく飲む・糖尿病がある・肥満傾向・中性脂肪が多いなどの場合には定期的に健康診断を行い、早期の発見を目指す必要があるでしょう。

どのような検査をするのでしょうか?

肝臓の状態を確認するための検査では肝機能検査があります。肝機能検査は血液検査で次の3項目を調べます。

  • AST
  • ALT
  • γ(ガンマ)-GTP

3項目の内1つでも数値の異常が認められれば2次検査が必要となります。2次検査を必要とする人は数値が基準値よりも高い人です。
また家族に肝疾患の人がいる・尿の色が濃くなった・お酒が好き・体重が毎年増え続けている、という人も2次検査を受けておくと安心です。

治療方法を教えてください。

慢性肝炎・肝硬変の治療方法には次のような方法があります。

  • 抗ウイルス薬
  • 肝庇護療法
  • 瀉血療法

抗ウイルス薬は肝炎ウイルスを撃退するために利用します。抗ウイルス薬が効かない場合には、病気の進行を遅らせるために肝細胞を壊さないための薬を処方します。これが肝庇護療法です。また体内の鉄分の量を減らす瀉血療法も、肝細胞が壊されるのを阻止するためには有効な治療方法です。
肝がんに進行してしまった場合には、転移の有無やがんの個数により治療が選択されます。切除手術・穿刺(せんし)局所療法・肝動脈塞栓(そくせん)療法・薬物療法・放射線治療・緩和ケアなどが治療方法です。

手術することもあるのでしょうか?

肝がんの数が3つ以下で転移が無い場合には切除手術が行われます。また状況により肝移植手術が行われる場合もあります。
手術とは区別されますが、穿刺(せんし)局所療法(ラジオ波焼灼療法)や肝動脈塞栓(そくせん)療法が、状況に応じて行われる外科的療法といえるでしょう。

肝臓病の予後と予防

指差しする男性医療従事者

肝臓病は完治しますか?

肝臓病は症状が現れにくく、初期段階で治療を行うことが難しいため、肝硬変や肝がんへ移行してしまう場合も多いです。ただし、初期に適切な治療を行えば完治する病気です。
ウイルス性の肝炎は肝硬変への移行を抑制するためにも早期の治療が大切なので、少しでも気にかかる症状があれば受診してください。
肝がん・肝臓がんも初期の内なら切除手術を行うことで完治が期待できます。完治が難しかった肝硬変も、今では完治が期待できるようになりました。初期段階で病気を発見し適切な治療を行うことで、完治する可能性がより高くなります。

肝臓病を予防する方法を教えてください。

肝臓病を予防するには、まず生活習慣を見直すことが大切です。特に次のようなことには充分な注意が必要です。

  • 禁酒禁煙
  • バランスのよい食事
  • 肝脂肪にならないよう肥満に気を付ける
  • 薬や食品添加物の摂取に気を付ける
  • ストレスを避け充分な睡眠と休息をとる

どの病気にも重要な注意点ですが、特に肝臓病の予防のためには大切な事柄です。肝臓は薬や添加物などを分解するために働き続けなければいけないことから、処方された薬にも注意が必要です。
禁酒や禁煙を厳守して、今一度生活習慣を見直す努力をしてください。

食事はどのようなことに注意すれば良いでしょうか?

食事は添加物を避けて、自然の材料で手作りしたものが良いでしょう。栄養素のバランスも考えて、できれば1日30品目以上の食品を摂るようにしてください。
肝臓の修復に必要なタンパク質は特に大切であるため、高タンパク質の食品を意識して摂りましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

肝臓は沈黙の臓器と呼ばれるほど、病気のシグナルを出さない臓器です。そのために気付いたときには病気が進んでいるということも多いのです。お酒をよく飲む人・中性脂肪が気になる人・肥満気味の人などは、定期的に検査を受けるようにしましょう。

編集部まとめ

差し指を指す女性
肝臓病には、ウイルス感染によることの多い肝炎・肝硬変・肝がんなどがあります。

初期には自覚症状がほとんど無いため見つけにくい病気ですが、できるだけ早く治療を開始することで完治が期待できる病気です。

臓器の中でも大切な役割を担う肝臓は、さまざまな働きで私達の体を支えています。

少しでも気になることがあれば、まず血液検査で肝機能に異常がないか確かめるなど、早期の病院受診をおすすめします。

この記事の監修医師