「神経調節性失神(反射性失神)」の症状・原因・予防法はご存知ですか?
神経調節性失神は、脳の酸素不足が原因で失神を引き起こす病気です。日常生活でよくみられる状況や行動が誘因となって発症します。
本記事では、神経調節性失神について症状・原因・基礎知識に加え、予防法や治療法などを紹介しています。
この記事を読むことで、神経調節性失神に関する様々な知識を身につけることが可能です。
神経調節性失神の疑いがある方や、失神に悩まされている方はぜひ本記事をチェックしてください。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
目次 -INDEX-
神経調節性失神の症状と原因
神経調節性失神とはどのような病気ですか?
血管迷走神経性失神・反射性失神・状況失神・情動失神の総称で、発症する失神の多くが神経調節性失神であるとされています。
発症すると一時的に意識を失いますが、一過性のものであるため、短時間で意識を取り戻すことが特徴です。意識消失の際には起立などの姿勢から転倒することになるので、外傷を負うリスクがあります。
神経調節性失神の症状はどのようなものがありますか?
その症状は自律神経に起因するもので、顔から血の気が引いたり、冷や汗が出たりします。悪心・不快感が生じることもあるでしょう。これらの症状が出た後、意識を失います。
しかし、意識の消失に自覚的な患者さんばかりではありません。「気分の悪さはあったが、知らない間に気を失っていた」という方が多いでしょう。
意識は1分以内、少なくとも数分以内には回復します。それ以上経っても回復しない場合は、意識障害を疑いましょう。また、意識消失の前に頭痛・胸痛が発症した場合は、くも膜下出血や心臓病の可能性があります。
神経調節性失神の原因を教えてください。
意識消失の誘因となるのは、精神的・身体的ストレスです。
神経調節性失神の1つである情動失神は、恐怖・驚愕などの多大な精神的ストレスがかかることで発生します。状況失神は排泄行為・嚥下・咳といった決まった状況下で発生するものです。
血管迷走神経性失神は、同じ姿勢を長時間維持したことが誘因となって発症します。その多くが、起立の姿勢を長く保っていた際にみられるでしょう。具体的にいえば、朝礼や満員電車などで発症する患者さんが多いです。
頸動脈洞症候群をはじめとする反射性失神は、着替えなどの頚部の回旋・圧迫が生じる行動をした際に起きる失神です。この失神では、前兆となる症状がみられることはほとんどありません。このように、生活上の様々な状況・行動によるストレスが誘因となり発症するのが神経調節性失神になります。
神経調節性失神の予防の基礎知識
神経調節性失神は予防できますか?
また、繰り返し失神が起きるようであれば日々の生活にも支障が出るでしょう。すぐに意識が戻るからと放置せず、予防に取り組むようにしましょう。
神経調節性失神の日頃からできる予防法について教えてください。
例えば、排泄時や嚥下時に発症する状況失神の場合、決まった行動の改善を図れば失神は防げます。長時間立つ・座る姿勢でいることで血管迷走神経性失神が起きている場合は、体勢を定期的に変えるように意識しましょう。
また、いずれの失神においても、脱水・睡眠不足・運動不足などが失神の誘因となります。生活習慣を整えることで、失神の予防につながるでしょう。アルコールによって引き起こされる失神もあるため、飲酒のし過ぎも控えてください。
失神が起きてしまった場合は、前兆となる症状が起きた際に対策をしましょう。気分が悪い・血の気が引くといった感覚があったら、その場にしゃがんでください。しゃがむことで血圧が上昇し、意識の消失が予防できる可能性があります。また、転倒による外傷を防止する意味でも屈みこむことは有効です。
神経調節性失神はどのような人がなりやすいですか?
中でも失神が起きる可能性が高くなるのは、生活習慣が乱れている人です。睡眠不足や運動不足が誘因となり、失神してしまう可能性があります。アルコールが誘因となって発症する場合もあるため、飲酒をよく行う方も注意が必要です。
また、体重が軽すぎる人もこの病気にかかりやすいでしょう。失神に悩まされている方は、自分の生活習慣を一度見直してみてください。
神経調節性失神に似た病気はありますか?
不整脈などが原因となって起きる心原性失神や、起立性低気圧によって起きる失神がみられるでしょう。加えて、肺や消化器の疾患が原因で発症する失神もあります。
これらは脳の酸素不足によって引き起こされる失神ですが、そうでない病気もあります。代表的なものは、てんかん・脳震盪・くも膜下出血・心因性などです。病気によって治療法が異なるため、失神が起きたら病院を受診して適切な治療を受けましょう。
神経調節性失神の治療方法
神経調節性失神の治療法を教えてください。
ただし、咳が誘因となって失神が起きている場合は、咳止めを処方することがあります。指導を行っても改善がみられず、発症時に心停止などが起きているのであれば、ペースメーカー治療が行われるケースもあります。
神経調節性失神は何科に行けばいいですか?
検査によって神経調節性失神の可能性が高いと診断された場合、循環器科でさらにくわしく検査を行います。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
失神によって日常生活に大きな支障が生じる可能性がありますし、転倒によって酷い外傷を負うリスクもあります。何より、失神には重篤な病気が隠れている可能性もあります。
失神が起きたら、早めに病院を受診するようにしてください。早いうちに受診するほど、失神の原因が特定しやすくなります。病気が発覚した場合にも、早期に治療に取り組むことが大切です。
すぐに意識が戻ったからと放置せず、失神の原因はしっかりと把握するようにしましょう。そして、担当医の指導に従って治療を行い、再発の防止に努めましょう。
編集部まとめ
神経調節性失神は、日常生活における状況や行動によるストレスが誘因となって失神する病気です。
失神は、酸素を含んだ血流が脳に十分に届かないことが原因で生じます。一時的に意識を消失しますが、数分以内に回復することが特徴です。
意識消失の前兆として、冷や汗や気分不良などの症状が現れます。こうした前兆があった際には、その場でしゃがむ体勢をとりましょう。失神・転倒の防止の効果が期待できます。
一過性意識消失が失神かどうかの判別は実際は難しい場合が多く、神経失調性失神と思っても、重症な器質的心疾患・冠動脈不整脈性失神と区別が難しい場合もあり、注意を要します。
また、失神自体を防止するには生活を見直すことが大切です。失神の誘因となる状況や行動を知り、予防を意識して生活しましょう。
睡眠不足や運動不足も失神の原因となるため、生活習慣に気を配ることも重要です。
神経調節性失神は再発が防止できる病気です。病院から指導を受けることで再発を防げることがあるので、早めの受診を心がけましょう。