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「神経性やせ症」の症状・原因・診断基準はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/03/27
「神経性やせ症」の症状・原因・診断基準はご存知ですか?医師が監修!

神経性やせ症は摂食障害の一種で、一般的には拒食症という呼称でも知られています。

食欲不振で食べられないのではなく、やせていることへの執拗なこだわりから過度の食事制限などの行動に及び、心身の疾患に発展する病気です。

自分の体に対するイメージの歪みや肥満への恐怖心、著しい低体重などの心理的、身体的な症状がみられ、悪化すると社会生活を営めなくなることもあります。

ここでは神経性やせ症の症状や原因・診断基準・治療方法について解説しています。

自分の意思で治すことが困難な病気なので、周囲の人が早期に異変に気づき適切なサポートができるよう、本記事をお役立てください。

伊藤 直

監修医師
伊藤 直(医師)

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所属:平成かぐらクリニック院長 メンタルアシストプログラム総責任者、一般社団法人 健康職場推進機構理事長、医療法人社団 平成医会 理事

著書:精神科医が教える3秒で部下に好かれる方法

神経性やせ症の症状と原因

サラダを食べる女性

神経性やせ症とはどのような病気ですか?

神経性やせ症は通常は若い年代の女性に発症する病気で、摂食障害の一種です。やせていることに対する過度の執着から食べ物にとらわれつつも食べることへの抵抗心があり、やせ続けているのに食事制限を続けてしまいます。
更には自分が食行動に関して問題を抱えていることを否定する傾向があり、正面から治療に向き合うのが難しいといった特徴も見られます。低体重が大幅に、または急激に進行した場合は生命を脅かす恐れもあるので、十分な注意が必要です。

神経性やせ症にはどのような症状がありますか?

神経性やせ症の症状には軽度且つ一過性で収まるケースと、重度な症状で病気の状態が長引くケースがあります。初期段階では食事内容や体重を微妙に気にする程度ですが、やせていくに連れて体重への囚われや不安が強くなります。
症状が進行しても自分は問題を抱えていないという心理状態から、周囲の助言や治療を拒否して減量をつづけてしまい、少しでも体重が増えると自分を責めるなど、身体面だけではなく心理的な症状が現れることも特徴です。
過度にやせ衰えるまでは食欲もあり活動的で、約30〜50%の患者が過食をしたり、嘔吐や下剤などで意図的な排出行為をしたりする他、体重への囚われから過度な運動をすることもあります。やせ衰えて重度の栄養不良状態になるとすべての器官が影響を受けることになり、急激に、または大幅に体重が減少すれば生命にも危険を及ぼしかねません。

神経性やせ症の原因は何でしょうか?

神経性やせ症の明確な原因はわかっておらず、女性であること以外に危険因子はないといえますが、文化社会的要因・心理的要因・生物学的要因から発症しやすい人の傾向や発症の背景がみてとれるでしょう。文化社会的要因としては飽食の時代におけるやせ願望や肥満に対する蔑視、女性の社会進出といった背景が想定され、社会的に中流に属している人が発症しやすいといった傾向もあります。
また、心理的要因としては完璧主義・自己中心的といった性格や、自律性・自尊心が低い、自分の身体に対するイメージの歪み、家族間の問題等が考えられ、生物的要因としては、遺伝や脳機能の変化などが挙げられます。

神経性やせ症の診断方法

男性医師と女性患者

神経性やせ症の診断基準について教えてください。

前提として患者自身は何も問題がないと思っているため診療を拒むという傾向があり、家族が同伴で連れてくるか、別の病気の診察の際に診断するケースが多いのが特徴です。
診察は医師による評価と検査からなり、BMI測定では数値が17未満であれば発症している可能性が高くなります。また、統合失調症やうつ病といった精神疾患や、栄養吸収の妨げや体重減につながる病気がないかを確認する他、体重や体調に関してどのように感じているかを問診します。
問診の結果、過度の食事制限や肥満への恐れ、病気の否定などが確認できた場合は神経性やせ症である可能性が高いといえるでしょう。また、身体の状態によっては血液検査や尿検査・骨密度検査・心電図検査などを行う場合もあります。

神経性やせ症はどのような人に多いですか?

神経性やせ症を発症するのは主に若い女性で、40代以降に発症するケースは稀です。性格的には完璧主義・強迫的・自分に厳しく高い基準設定・内向的・自己中心的といった人に多く発症する傾向がみられ、知的なため病気であることを隠すことができるといった特徴もあります。

神経性やせ症は遺伝が関係していますか?

神経性やせ症の発症には遺伝的要因も大きく関与していて、染色体のある領域と神経性やせ症との間に少ないながらも連鎖がみられるといった報告もあります。更に、気分に影響するホルモンであるセロトニンなどの遺伝子との関連も指摘されており、遺伝となんらかの関係があるといえるでしょう。

神経性やせ症の治療方法

医療従事者の女性

神経性やせ症にはどのような治療法がありますか?

前提として本人が治すことに前向きに取り組むことが最も重要ですが、神経性やせ症はその症状の一つとして治療意識が乏しいという側面があるので、初期段階での治療の動機づけと医師との信頼関係構築も重要な要素といえます。
医師の管理のもとで少しずつ継続的に適切な食事を摂り、個人個人の心理的要因に応じて内科医・心療内科医・精神科医・臨床心理士などが連携して患者自身の心の問題を解決する治療がおこなわれます。また、この病気の治療には家族の理解と協力も必要で、治療法の一つとして両親に体重回復の責任を負ってもらい、家で食べさせてもらう家族療法も、若い年齢の患者には有効とされています。
病気の背景に存在する心理的な問題に常に配慮して、心身両面からアプローチすることが神経性やせ症の治療の特徴といえるでしょう。

治療に入院は必要ですか?

神経性やせ症はほとんどの場合外来による治療を行いますが、ひどくやせ衰えて合併症が重篤な場合などは入院による治療を行うことになります。入院中は十分なカロリーと栄養素を摂取し、精神医学的なカウンセリングや栄養カウンセリングも実施します。入院することで、普段の環境から切り離されるので、病気の原因となっている食習慣も断ちやすくなるでしょう。

気を付けるべき食事のポイントはありますか?

神経性やせ症の人にとって、栄養バランスの良い食事を規則正しく摂ることは、心理的な抵抗があり簡単なことではありません。そのため食事による栄養療法を行う際は、実現することで大きなメリットを得られる治療内容を提示して動機づけを行うことが重要です。その上で、偏った食へのこだわりを取り入れつつも必要なエネルギーを確保できるように促します。
過食の症状がない場合は、栄養バランスよりもエネルギー確保を優先して食べやすいものから摂り始め、カロリーが気になる場合は許容できるカロリーを明確に提示できる食品を摂るという方法もあります。飢餓状態から引き起こされる過食と排出行為を繰り返す症状がある場合は、飢餓による刺激を軽減するために食事の時間を決めて咀嚼を増やすようにします。
いずれの場合も自覚症状や検査結果に改善が見られた場合は適切なフィードバックを行い、食事内容をステップアップすることでさらなる改善につながるでしょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

神経性やせ症は心理的な要因が強く、自分自身で治すのが難しい病気ですが、適切な処置をしないと重篤な症状へと進行することがお分かりいただけたと思います。食事や体重のちょっとした悩みから発展する可能性があるので、栄養やダイエットなどに関する情報の見極めに注意し、バランスの良い健康的な食生活を心がけ、気になることがあれば早めに受診するようにしましょう。

編集部まとめ

ハート
神経性やせ症はやせていることへの執着に起因する現代ならではの病気です。

ルックスへのこだわりや健康的な食生活の基準は人それぞれですが、自分の中に偏った価値観が芽生えたら、一歩引いて考えてみることが必要かもしれません。

このような病気の存在を知ることも予防につながりますが、異変を感じたら早めに医師に相談するようにしましょう。

また、心理的なバイアスにより自力で治すことが難しく、周囲のサポートが非常に重要だということも、この病気の治療においては大切なポイントです。

この記事の監修医師