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「カポジ水痘様発疹症」を医師が解説!家族内感染や再発に要注意!

 更新日:2023/03/27
「カポジ水痘様発疹症」を医師が解説!家族内感染や再発に要注意!

カポジ水痘様発疹症とは皮膚感染症です。アトピー性皮膚炎などの基礎疾患などをきっかけに、ウイルスに感染して発症します。

体の広範囲に水疱ができるだけでなく、ひどい場合には高熱やリンパ節の腫れを伴うこともある病気です。

早期発見と早期治療を行うためにも、あらかじめ病気を詳しく把握しておくことが非常に大切です。

そこで本記事では、カポジ水痘様発疹症について詳しく解説します。原因・症状・治療方法・家族内感染についてもご紹介するので参考にしてください。

竹内 想

監修医師
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)

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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。

カポジ水痘様発疹症の症状・原因

痒そうな虫刺されの痕

カポジ水痘様発疹症はどんな病気ですか?

カポジ水痘様発疹症とは、アトピー性皮膚炎などの基礎疾患によって生じた病変部位が、ウイルス感染を起こすことで発症する病気です。感染するウイルスとしては、主に単純ヘルペスウイルスが挙げられます。通常、これらのウイルスに感染しても、生じる発疹は限局的にみられます。
しかしカポジ水痘様発疹症の場合は、アトピー性皮膚炎などの基礎疾患による湿疹などの上にウイルス感染を起こすため、非常に広範囲に発疹が広がってしまうのです。また、細菌の二次感染を引き起こすこともあります。

カポジ水痘様発疹症の原因はなんですか?

カポジ水痘様発疹症の原因は、基礎となる皮膚疾患とウイルスにあります。皮膚疾患により湿疹などが発症している状況で、発症部位にウイルスが感染することでカポジ水痘様発疹症を発症するメカニズムです。代表的な皮膚疾患としては、次のようなものが挙げられます。

  • アトピー性皮膚炎
  • 脂漏性皮膚炎
  • ダリエ病
  • 尋常性魚鱗癬

アトピー性皮膚炎とは、湿疹が慢性的に改善したり悪化したりを繰り返す病気です。外界からの刺激や乾燥などから保護する役割のあるバリア機能が低下していることや、埃・カビ・細菌・アレルギーなどが重なって発症するといわれています。脂漏性皮膚炎とは、頭や顔などの皮脂分泌が盛んな部位にできる湿疹です。
皮膚に存在するマラセチアと呼ばれるカビが異常に増殖し、皮脂を分解した際に生成する遊離脂肪酸の影響で炎症が発生します。ダリエ病とは、イボのようなブツブツとした発疹が発症する病気で、遺伝子異常が原因で起きる病気です。顔・体・脇の下などに発生することが多く、悪臭を放ちます。尋常性魚鱗癬とは、魚の鱗のように、皮膚が乾燥して硬くなる皮膚の病気です。
原因は、フィラグリンと呼ばれるタンパク質を作る遺伝子の異常で、通常皮膚のバリア機能や保湿機能に関係しています。しかし、この遺伝子が異常を引き起こすことで角質層の剥脱機構が正常に働かず、角質層が異常に堆積するため皮膚表面がうろこ状となるのです。
これらの皮膚疾患により湿疹が生じ、その部位にウイルスが感染することでカポジ水痘様発疹症を発症します。感染するウイルスとしては、先述したようなものが挙げられますが、中でも単純ヘルペスウイルスの一種であるHSV-1が代表的です。

カポジ水痘様発疹症の症状を教えてください。

カポジ水痘様発疹症の主な症状は、次のようなものが代表的です。

  • 発熱
  • リンパ節の腫れ
  • 水疱
  • 皮膚の痛み
  • 膿疱
  • びらん
  • かさぶた

カポジ水痘様発疹症の前駆症状として発熱やリンパ節の腫れが表れます。そして、顔面や頸部を中心に水疱が多数発症します。
初期症状としては、皮膚の痛みが伴うこともあるでしょう。また、水疱は全身にわたって拡大する可能性があり、膿疱・びらん・かさぶたへと変化するでしょう。

カポジ水痘様発疹症の診断・治療方法

問診票

カポジ水痘様発疹症はどのように診断されますか?

カポジ水痘様発疹症は、特徴的な見た目をしていることから、ほとんどが視診によって診断が行われます。病歴や皮膚表面に見られる特徴から判断する方法です。しかし、細菌感染を合併している可能性があります。その場合は、皮膚の病変部位から検体を採取して、顕微鏡で観察します。
また、Tzanckテストにより、ウイルス巨細胞と呼ばれる形態学的変化を確認して診断を行うこともあるでしょう。原因となるヘルペスウイルスのひとつであるHSV-1ウイルスを染色する診断方法もあります。

カポジ水痘様発疹症の診断ではどんな治療を行いますか?

カポジ水痘様発疹症の治療方法は、重症度によって異なります。軽症や中等症の場合では、抗ウイルス薬の内服での治療が有効です。薬は主に、次のようなものが挙げられます。

  • アシクロビル
  • バラシクロビル
  • ファムシクロビル

重症の場合は、アシクロビルの点滴静注が必要です。また、アトピー性皮膚炎などの基礎となる皮膚疾患の改善のため、ステロイドや免疫抑制剤を使用することがあります。
しかし、これらの薬を使用する場合は、ウイルス感染の増悪をきたさないように注意しながら行わなければなりません。さらに、カポジ水痘様発疹症では細菌の二次感染を重複する場合があるため、必要の際には抗菌薬の全身投与を行います。

カポジ水痘様発疹症は治るまでにどれくらいかかりますか?

カポジ水痘様発疹症は、先述したような治療により治療を進めると速やかに改善し、おおよそ5日~8日程度で改善が見られます。
しかし、抗ウイルス剤の全身投与などを続けても改善が見られない場合には、他の病気や細菌感染症の合併の可能性が考えられるでしょう。また、重症化している場合には、さらに長期になる場合もあります。

カポジ水痘様発疹症の感染・再発・予防方法

蕁麻疹

カポジ水痘様発疹症は家族内で感染しますか?

カポジ水痘様発疹症は家族内で感染する可能性があります。これは、単純ヘルペスウイルスなどが、口や手を介した唾液感染などを起こす可能性が考えられるためです。家族内での感染も十分に考えられるため、注意が必要です。

カポジ水痘様発疹症は再発しますか?

カポジ水痘様発疹症は再発の可能性があります。再発する原因は、初感染から症状の改善がみられても、単純ヘルペスウイルスなどが体内から完全になくならないためです。
感染したウイルスは潜伏感染をしており、何らかの理由で再活性化することがあります。再活性化すると、再びカポジ水痘様発疹症を発症してしまいます。しかし、初感染時よりは症状が軽いことの方が多いようです。
ウイルスの再活性化が起きる理由としては、免疫力の低下が挙げられます。風邪を引いたり寝不足になったりすると免疫力の低下を引き起こすため、ウイルスが再活性化してしまうのです。

カポジ水痘様発疹症の予防方法を知りたいです。

カポジ水痘様発疹症の予防方法は、基礎となる皮膚疾患を治療すること免疫力低下を防ぐことウイルス感染を防ぐことです。特にアトピー性皮膚炎などの皮膚疾患の場合、湿疹がひどくなるとそれだけウイルス感染の可能性が高くなります。
皮膚疾患をきちんとコントロールして、ウイルスの感染を防ぐことが大切です。また、免疫力低下を起こさないことも重要です。先述したような風邪・寝不足・過労などにより免疫力が落ちるとウイルスの感染を引き起こします。再発防止のためにも、免疫力維持や向上に努めましょう。さらにウイルス感染を未然に防ぐことも大切です。先述したような単純ヘルペスウイルスの場合、皮膚や唾液から感染するため、マスクの着用やタオルなどを共有しないなどの感染防止に努めましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

カポジ水痘様発疹症は、基礎となる皮膚疾患で生じた湿疹にウイルスが感染することで発症する病気です。そのため、しっかりと原因や症状を把握したうえで、発症防止に努めましょう。
また、稀に肺炎などを引き起こすことがあります。その場合は、命にかかわる可能性もあるため、万が一異変を感じた場合には専門の医療機関を受診しましょう。

編集部まとめ

子どものアトピー・乾燥肌・皮膚炎イメージ
カポジ水痘様発疹症は、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患で生じた湿疹に、単純ヘルペスウイルスなどが感染して起きる病気です。

しかし、基礎疾患の悪化を招かないことや、ウイルスに対しての免疫力を高めておくことで予防は可能です。

しっかりと症状や予防方法を把握しておき、発症しないようにしましょう。また、万が一カポジ水痘様発疹症の疑いがある場合には、早期に医療機関を受診して治療を行いましょう。

この記事の監修医師