「脂肪腫」を発症しやすい人の特徴・良性と悪性の見分け方はご存知ですか?
脂肪腫は体のどの部分にもできる脂肪組織からなる良性腫瘍です。柔らかな腫瘍でほとんど痛みが無いのが特徴です。
あらゆる部位で発症するため、突然できた腫瘍が気になっているという人も多いでしょう。
そこで今回は脂肪腫の原因や特徴、悪性との見分け方などについて解説します。
何科に受診すべきか、また手術についてや放置することのリスクも紹介しています。参考にしてください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
脂肪腫とは?
脂肪腫はどのような病気でしょうか?
その1種である脂肪腫は脂肪細胞のある体のどの部分にもでき比較的多い病気です。1,000人に1人ほどの割合で発症し、年齢では50代前後の人が発症しやすいといわれています。
脂肪腫の大きさは稀に10cmを超えるものもありますが、3cm前後のものが多く柔らかく痛みをともなわないのが特徴です。また通常は単発の発症ですが、稀に複数できることもあります。
発症する原因を教えてください。
高血圧・肥満・糖尿病の人などが発症しやすいことから、生活習慣が関係している可能性もあるといえるでしょう。
また多発性の場合は特に遺伝や、飲酒との関連性が高いのではと考えられています。
脂肪腫ができやすい人の特徴はありますか?
先に述べたように高血圧や糖尿病の人にできやすいことや、過度な飲酒をする人に多発性の脂肪腫が通常より多いことが認められています。
また遺伝子との関係も考えられることから体質によりできやすい人もいるようです。
他のできものとの違いを教えてください。
脂肪腫と似ている疾患には次のようなものがあります。
- ガングリオン
- 粉瘤
- 滑液包炎
- 神経鞘腫
ガングリオンは関節に発症することが多く、脂肪腫より少し硬めで中身は脂肪ではなく液体がゼリー状になったものです。
粉瘤は皮膚の表面にできやすく脂肪腫よりも弾力性のあるしこりのような感触で、中身は皮脂や老廃物です。
滑液包炎(かつえきほうえん)は肘や膝などの関節と骨の間の滑液包が炎症をおこし発症します。中身は液体で比較的さらっとしており、脂肪腫はほとんど痛みが無いのに対して滑液包炎の場合は押すと痛みを感じます。
神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)は末梢神経から発症し浅い部分にできた場合、脂肪腫と似たこぶのようなできものです。深い部分にできた場合はしびれや痛みが出ることから発見されることがあります。
これらの疾患は脂肪腫と同様に良性腫瘍ですが、他に脂肪腫に似た腫瘍で悪性の脂肪肉腫があります。
脂肪腫の良性と悪性の見分け方はありますか?
悪性を疑う場合には生検や腫瘍の摘出によって詳しく検査していきます。
- 超音波
- CT検査
- MRI検査
良性と悪性の見分け方としては次のようなことを受診の目安にされるとよいでしょう。
- 皮膚に腫瘍ができている
- 急激に大きくなった
- 腫瘍に触ると痛む
- 腫れた皮膚が周りの部分と違う(血管が浮いている)
などが気になったら、受診して検査を受けるようにしてください。軟部腫瘍で悪性のものは稀なのですが、適切に検査を受けることが早期発見につながります。
気になる場合には早めに受診しましょう。
脂肪腫の受診と治療
脂肪腫は何科を受診すれば良いでしょうか?
脂肪腫は良性の腫瘍で急に大きくなったり生活に支障をきたしたりしない場合は、急いで受診する必要はないように思う人も多いでしょう。
しかし似た腫瘍に悪性のものも含まれるので、検査をして良性・悪性を見極めることは重要なのです。
どのような検査を行いますか?
さらに病理検査は特に区別が付きにくい場合に手術で取り出した脂肪腫の内容を詳しく調べるために行うのです。
脂肪腫の治療方法を教えてください。
特に次のような場合には手術で脂肪腫を取り除く治療が行われます。
- 大きく見た目が悪い
- 生活に支障をきたす
- 目立つ場所にある
その他さらに詳しい検査を行うために、手術を行い検体標本を採取することがあります。
脂肪腫でなく悪性のものだった場合は必要な治療が行われます。
手術の費用や入院期間について教えてください。
次のような場合には全身麻酔を使うことが多いです。
- 首の後ろあたりに癒着
- サイズが10cm以上ある
- 神経や血管が多い場所
皮膚の下にできている場合や小さい腫瘍の場合には、外来手術や局所麻酔が適しているでしょう。脂肪腫と診断されても必ず手術が必要な訳ではありません。
脂肪腫は放置しても命にかかわるということはほとんど無いでしょう。ただ、大きくなってから手術で取り除くよりも小さい内に取り除く方がリスクは少ないのです。
医師と相談して最善な方法を選んでください。手術費用は脂肪腫の場合保険適用です。腫瘍の大きさやできている部位によって、また入院か全身麻酔か局所麻酔かなどで違ってくるので各医院で確認してください。
一部の形成外科や美容クリニックでは脂肪腫の手術を自由診療で行うところもあるので、保険適用かどうかの確認も必要です。
脂肪腫の再発とリスク
脂肪腫は再発しますか?
遺伝がかかわっているときも同様に脂肪腫を再度発症することもありますが、再発は稀であると考えてよいでしょう。
自然治癒することもあるのでしょうか?
脂肪腫は自然に治ることは無いので治療としては手術で取り除く以外はありません。
脂肪腫を放置するリスクを教えてください。
ただ放置することで脂肪腫が少しずつ大きくなり、大きくなると小さな腫瘍を取り除くよりも手術に時間がかかる可能性が高くなります。局所麻酔で済むところが全身麻酔が必要になったり、入院が必要になったりということが考えられます。
また脂肪腫と診断されていないのに放置してしまい、検査で悪性の腫瘍が発見されても早期発見には至らなかったという場合もあるのです。
気になるしこりがあるときには放置せず、早めに受診して診断を仰いでください。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
脂肪腫と診断された場合には、そのまま様子を見ることもあります。ただ脂肪腫は自然に治癒することもなく、薬などで治療することもできず手術で取り除く治療となります。その場合にも小さい脂肪腫の方が取り除きやすいことが多いのです。
しこりを見つけたら自己判断せずに専門医に相談してください。
編集部まとめ
脂肪腫について解説しました。脂肪細胞のある場所ならどこにでも発症する脂肪腫は良性の腫瘍です。
小さなうちはさほど気にならないため放置してしまいがちですが、急激に大きくなった・触ると痛いなどの症状があるときは別の病気の可能性もあります。
稀ではあっても悪性の腫瘍だったということもあるのです。また脂肪腫に似た症状の病気もあります。
脂肪腫そのものは怖い病気ではありませんが、気がかりな点があるなら早めに形成外科や皮膚科への受診をおすすめします。
参考文献