「骨髄炎」の原因の一つとなる口の病気はご存知ですか?症状も併せて解説!
骨髄炎というとあまり聞き慣れない病名かもしれませんが、放置すると命にも関わる恐れのある危険な病気です。
とはいえ早期に発見し適切な治療を受ければ重症化を防ぐことのできる病気でもあります。
この記事では、骨髄炎とはどのような病気なのか・原因・症状・発生しやすい部位・治療法を解説しています。
早期発見、早期治療のためにも、骨髄炎のことを知っておきましょう。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
骨髄炎の特徴
骨髄炎とはどのような病気ですか?
しかし手術後の感染や開放骨折などの外傷が原因で発症することもあるので、どの年齢層においても発症のリスクは存在します。健康な人にも発症のリスクはありますが、HIV感染者・がん患者・免疫系の働きを抑制する薬による治療を受けている人などの免疫系が弱っている人はよりリスクが高くなります。
骨髄炎の症状は?
- 発熱
- 全身の倦怠感
- 体重の減少
感染した骨の辺りには皮膚の赤み・腫れ・熱感を感じ、動かすと痛みが出ることもあります(痛みは数日後に出てくることもあります)。
発症した場所によっては、腫れや痛みのために歩行が困難となってしまうこともあります。
また、感染した組織の周囲に膿が溜まった状態(膿瘍)になることも珍しくありません。発見及び治療が遅れて症状が進むと、骨の部分的な壊死が起こりはじめます。
骨髄炎の発生する原因は?
発症の原因となる病原菌は黄色ブドウ球菌が最も多く、抵抗力の弱い子どもに多くみられる病気です。2つめが開放骨折や手術などで骨が空気にさらされ、空気中の病原菌が直接骨に感染することにより発症する外傷性骨髄炎です。
手術中に病原菌が入り込み感染する場合と術後に感染する場合があります。3つめの原因は、骨周辺の軟部組織に起こった感染が骨にまで広がり発症することです。
骨周辺の軟部組織に病原菌が感染すると、数日から数週間かけて骨へと感染が広がります。高齢者に多く見られることが特徴です。また、虫歯から直接下顎骨へと病原菌が入り込み骨髄炎を発症するケースもあります。
骨髄炎にはどんな種類がありますか。
急性骨髄炎の中でも、脊椎(椎骨)で感染が起こり発症した場合は化膿性脊椎炎と呼ばれます。化膿性脊椎炎は、以下の条件で発症のリスクが高まります。
- 高齢者
- 鎌状赤血球症の患者
- 腎臓透析を受けている人
- 滅菌していない注射針での注射
慢性骨髄炎は、急性骨髄炎の治療が完全に成功していなかったことが発症のきっかけです。慢性骨髄炎へ移行してしまうと極めて治りにくい持続性感染症の状態となってしまいます。
この治療には長い時間が必要となってしまうことが特徴です。また小児(特に10歳未満の女児)に多いとされている慢性再発性多発性骨髄炎(指定難病270)という種類の骨髄炎も存在します。この病気は自己免疫の異常により発症するとされていますが、詳しい原因は解明されていないため難病指定を受けています。
骨髄炎はどのような部位に起こりやすいですか。
- 小児では、脚や腕の骨端部
- 成人(特に高齢者)では脊椎(椎骨)
一方、外傷が原因で発症する外傷性骨髄炎の場合は骨折や手術時の傷口周辺で起こりやすくなっています。またがんや糖尿病などの病気やその治療によって皮膚に傷ができ、皮下組織が露出している部分がある人は発症のリスクが高いです。副鼻腔・歯・歯茎でも感染は起こりやすく、頭蓋骨へと感染が広がっていくケースもみられます。
骨髄炎の診断と治療
骨髄炎の診断はどのように行いますか。
- 血液検査
- 画像検査(レントゲン・CT・MRI・骨シンチグラフィーなど)
通常の診察で骨髄炎が疑われると、血液検査で炎症が起こっているかどうかを調べます。炎症が認められた場合に、画像検査によって発症している場所の特定や膿瘍の有無を確認するのです。
また、原因菌を特定するために血液・膿・関節液・骨自体などのサンプルを採取して検査をすることもあります。病原菌が特定できた場合には、治療に使用する薬剤を決めるための薬剤感受性検査も行われます。
どのような治療が必要ですか?
抗菌薬は点滴で投与することになるので、入院での治療を要することが多いでしょう。痛みを緩和するために安静が必要となる場合や、鎮痛剤を使用して痛みを取り除く必要の出てくる場合もあります。抗菌薬の静脈への投与期間が終わっても、経過によっては抗菌薬の経口投与がさらに長期間必要になるケースもあります。
手術が必要な場合がありますか?
- 抗菌薬の投与で十分な効果が得られないとき
- 膿瘍・骨破壊・腐骨(壊死を起こした骨)などの存在が認められたとき
慢性骨髄炎では膿瘍や腐骨の存在があることが多く、手術が適用になることがほとんどです。手術では膿瘍・腐骨・感染した組織などを可能な限り取り除き、必要に応じてそこに健康な皮膚や他の組織を充填します。その後は抗菌薬の点滴投与が3週間以上継続して行われます。
骨髄炎で気を付けること
骨髄炎を放置しておくとどうなりますか?
また骨髄炎が発症した部位によっても、発症から時間が経つと死に至るケースがあるので注意が必要です。具体的には顎骨や頭蓋底骨などで発症する骨髄炎が該当します。虫歯を治療せずに放置することで発症のリスクが高まりますので注意が必要です。
骨髄炎は早期に発見して適切な治療を行うことが大切です。骨髄炎を疑うような症状が出たら、早急に受診しましょう。顎に症状が見られた場合は口腔外科へ、脚や腕などに症状が出ているときは整形外科を受診してください。
骨髄炎は完治しますか?再発の可能性はありませんか?
しかし残念ながら再発の可能性が高いことも事実です。完治したと思っても数年後に再発し、慢性骨髄炎へと移行してしまうケースも珍しいことではありません。
慢性骨髄炎になってしまうと完全に治癒することが難しく、長期間の治療が必要となってしまいます。更に慢性骨髄炎が何年にも渡り長期化すると、扁平上皮癌という皮膚のがんへと移行してしまう恐れもあるので注意が必要です。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
慢性化してしまうと治療が困難になってしまうことも、骨髄炎に注意しなくてはいけない理由の1つといえます。虫歯を放置したり、傷口を消毒もせずそのまま放置したりしていても発症のリスクが高まりますので注意しましょう。
発熱や倦怠感に骨の痛みを伴うような症状があれば、すぐに整形外科(顎部が痛む場合は口腔外科)を受診するようにしてください。
編集部まとめ
骨髄炎は、自分でも知らないうちに感染し発症しているケースがみられます。また病原菌が骨に感染する経路としては肺炎・骨折・虫歯・外耳道炎・汚染された創部などさまざまです。
この病気は、早期に発見して適切な治療を受けることが非常に重要です。
もし骨のあたりに痛みを感じ、発熱・発赤・倦怠感などを伴う症状が見られた場合には速やかに受診するようにしてください。
骨髄炎を予防するためにも虫歯にならないようにしっかりと歯磨きをしたり、傷口を汚れたまま放置しないようにしたりといったことを心がけましょう。