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「アセトン血性嘔吐症」を発症しやすい「年代」や「前兆となる症状」はご存知ですか?

 更新日:2023/03/27
「アセトン血性嘔吐症」を発症しやすい「年代」や「前兆となる症状」はご存知ですか?

主にお子様が嘔吐症状を周期的に繰り返す病気があります。古くは「自家中毒」とも呼ばれていましたが、近年では「アセトン血性嘔吐症」という病名がつきました。

ほとんどの患者さんがお子様ですが、まれに大人であっても発症することがあります。では、なぜ発症してしまうのでしょうか?

ここでは、あまりよく知られていないアセトン血性嘔吐症の症状や原因について解説します。治療方法や予防方法についてもご紹介します。

竹内 想

監修医師
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)

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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。

アセトン血性嘔吐症とは

吐き気を訴える女性

アセトン血性嘔吐症はどんな病気ですか?

アセトン血性嘔吐症とは、激しい嘔吐症状を周期的に繰り返す慢性消化器疾患の1つです。慢性消化器疾患には様々なものがありますが、アセトン血性嘔吐症は他の疾患とは独立した疾患として分類されています。
「周期性嘔吐症」もしくは「自家中毒」とも呼ばれています。大きな特徴は数日間嘔吐症状を繰り返したのち数日空け、また数日間の嘔吐症状という周期性があることです。
通常の嘔吐とは明らかに違う、噴水のような激しい嘔吐が大きな特徴です。嘔吐症状を引き起こしていない時期は間欠期と呼ばれています。間欠期の期間中は嘔吐や吐き気などは特になく、平常時と同じように過ごせるのが特徴です。
嘔吐期のピークは1時間に6回と頻度が非常に高く、症状が出ていると食事がしづらくなります。また、合併症として二次性食道炎や脱出胃症(胃が胸の中に出てしまう病気)の危険性があります。

原因は何ですか?

確定的な原因はわかっていません。発症のきっかけはケトン体の蓄積が主なものとされていますが、感染症・ストレス・食事・月経など様々な要因があるといわれています。
お子様の場合、不安や緊張をともなう出来事の前に突然アセトン血性嘔吐症を発症する場合もあります。ストレスで嘔吐しやすくなる、吐き気がするといった症状が周期的に発症するようになった場合、周期性嘔吐症と診断されることが多いです。
病気のメカニズムとしては、脳と消化管の連絡体系に何らかの異常が生じていることから発症します。元々消化管の働きは自律神経系や内分泌系で調節しており、嘔吐症状も必要に応じた脳からの指令で引き起こされる働きのひとつです。
しかし、体内に蓄えた糖を使い果たすと、アセトンという物質が放出されます。これが増え過ぎると脳から消化管への連絡体系に異常が生じ、脳が指令していない働きを消化管がしてしまう(=嘔吐症状)と考えられています。そのため、糖不足や胃腸炎でも発症することが多いです。

アセトン血性嘔吐症にかかる可能性が高い年代を教えてください。

お子様の場合は最低でも生後6日から発症したケースがあります。平均して2~10歳の時期に多く、思春期まで成長すると自然と治るケースが多いです。まれに思春期になっても継続して発症してしまう場合があります。
全体的にお子様が発症する場合が多いですが、成人でも発症する可能性もあります。35歳ほどを中央値とし、最高齢の発症年齢は73歳です。

大人でもかかる可能性があるのですね…

アセトン血性嘔吐症の原因には様々なものがあります。糖不足・胃腸炎・過度のストレスなどの原因でも発症するため、大人でも罹患する可能性があります
また、遺伝的な要因によって大人になってから発症するケースがあるため、家族で似た症状の方がいる場合は注意が必要です。感染症でも発症する可能性があります。大人でも周期的な嘔吐症状がみられる場合は、アセトン血性嘔吐症を疑ったほうが良いでしょう。
ただし、似たように嘔吐症状を繰り返す病気としては胃腸炎やなんらかの精神障害も疑われます。大人の場合は複合的な判断が必要です。

前兆となる症状はありますか?

数日間続く嘔吐が特徴的な症状です。また、嘔吐の度合いもただ嘔吐するだけでなく、噴水のように吐瀉物を吹き出すことが多いです。
吐ききったと思っても吐き気がおさまらず、段々とぐったりしていきます。嘔吐を繰り返すことによる胃のムカムカ感・食欲不振・腹痛といった症状もあらわれます。
症状が一旦治まってもまた嘔吐をぶり返すため、特に強い発熱もなく周期的に嘔吐するのであればアセトン血性嘔吐症を疑いましょう。

アセトン血性嘔吐症の検査と治療方法は?

体調不良でぐったりしている子供

アセトン血性嘔吐症の検査方法を教えてください。

基本的には問診となります。主に嘔吐以外の症状・吐瀉物の状態・家族のアセトン血性嘔吐症とみられる病気の病歴について尋ねられるので、吐瀉物の状態や吐き方については確認しておくようにしましょう。
嘔吐の周期についても尋ねます。診察前半年間の間、嘔吐症状が何日続いたか、症状が何回みられたかというデータが必要です。
また、他の病気の可能性を調べる鑑別診断のため、尿検査や血液検査でケトン体の測定を行うこともあります。ただし、周期的な嘔吐症状は他の病気でもみられます。問診と各種検査をあわせて総合的に判断されることが多いです。

どのような治療を行うのですか?

根本的な治療方法はありません。嘔吐症状への対症療法が主要な治療法です。吐き気止めや痛み止めを処方します。吐き気止めは嘔吐症状の前兆である吐き気・頭痛・腹痛を感じた際の服用が一般的です。

もし症状が重く、薬や水分も吐き出してしまい脱水症状を起こした場合は点滴で水分と糖分を補給します。嘔吐症状が落ち着いてからは水分をこまめに摂り、スポーツドリンクなどで糖分を補給すると数日で間欠期へ移行します。
症状は発作的に起こるため、日頃からこまめに糖分を補給するといった対策でも軽症化を図ることが可能です。お子様の場合は年齢とともに自然と症状がみられなくなることが多いです。

再発する可能性はあるのでしょうか?

    お子様の場合は思春期を越えると症状がみられなくなります。ただし、4歳~6歳といった早い段階で発症すると、10歳までに再発する可能性はあります。
    もし発症原因がわかっているのであれば、それを避けた生活によって再発を避けることが可能です。チョコレートなど一部の食品の摂取が原因で発症するのであれば、該当する食品を避けることでも対処できます。
    お子様・成人に関わらず、まれに片頭痛に移行するケースがあるため、長期にわたる経過観察が必要になります。

アセトン血性嘔吐症の予防方法

小さいおにぎりを食べる赤ちゃん

普段の生活で気をつけなければいけないことを教えてください。

とにかく糖分不足状態に陥らないように気をつけましょう。3食を規則正しく食べていれば過度の糖分不足に陥ることはありません。しかし、朝食を抜いて午前中を過ごすと血糖値が下降します。
特にお子様の場合は学校での活動にも支障が出るため、朝起きた後に何も口にしないで昼食まで過ごすことを避けるようにしてください。どれかを削らないといけない場合は、特に夕食を抜かないようにしましょう。
夕食を抜いてしまうと就寝時には低血糖状態となります。朝に嘔吐症状が出ることが多いため、夕食は必ず食べるようにしてください。食事は高炭水化物、高タンパクを心がけると糖分不足に陥りづらくなります。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

アセトン血性嘔吐症は様々な原因で発症する病気です。しかし、糖不足に陥らないようにするなどの対策が可能な病気でもあります。日頃からバランスの良い食事と3食規則正しく食事をする習慣を作るようにして、なるべく糖不足に陥らないようにしましょう。

また、ストレスのかかりやすい出来事(大事な試験や試合)に対するケアも大切です。もしアセトン血性嘔吐症となってしまった場合は、こまめに少しずつ水分と糖分を補給させるなどの気を配ってあげてください。

編集部まとめ

ミルクを飲む子供
アセトン血性嘔吐症は周期的に嘔吐症状を繰り返してしまう病気です。激しい嘔吐を繰り返すため、年齢にかかわらず症状が出るとぐったりとしてしまいます。

もし診断された場合は、日頃から糖不足にならないようこまめに水分と糖分を摂取することで軽症化が可能です。

そのため、症状が出た時のためにスポーツドリンクなどを用意しておくようにしましょう。吐き気止めを処方された場合は、前兆症状(頭痛や腹痛)が出た時に服用してください。

この記事の監修医師

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