「低アルブミン血症」の原因・症状・兆候はご存知ですか?医師が監修!
低アルブミン血症とは、血液中に存在しているタンパク質のアルブミンが正常値よりも低くなる症状です。
低アルブミン血症は普段聞きなれないかもしれませんが、さまざまな原因によって引き起こされます。
日頃むくみや急な体重の増加などありませんか?気になるむくみや急な体重の増加は、低アルブミン血症を引き起こしているサインかもしれません。
今回は、低アルブミン血症の症状から受診のタイミング・検査・治療・食事の注意点などについてご紹介します。
聞き慣れない病名ではありますが、この機会にぜひ知っておくとよいでしょう。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
低アルブミン血症の特徴と症状
低アルブミン血症はどのような特徴がありますか?
- 低アルブミン血症とは、血液中に存在するタンパク質であるアルブミンが正常よりも低い状態になる症状です。アルブミンは血液中の血清部分に含まれ、人の体内において主要なタンパク質となります。
- 低アルブミン血症が起こっている場合、以下のような特徴がみられます。
- 全身のむくみ
- 腹水や胸水
- 尿量の減少
- 血圧低下
- 低アルブミン血症は、肝臓の異常によるアルブミン産生の低下や、腎臓の異常によるアルブミン喪失などが原因となり引き起こされます。血管の中の水分が外に漏れ皮下や臓器の外に貯まるので、上記のような症状が起こるのです。
- また、アルブミンは1日に10〜15g合成され、血流を介して体内に分布しています。
- 一方、血清アルブミンは常に分散されており、体内で合成と分散のバランスを保つことで正常に作用します。
症状を教えてください。
- 低アルブミン血症が起こると血管内の水分が血管外へ移動し、前述したように全身のむくみ・腹水・胸水・血圧低下の症状が起こります。アルブミンは、血管内に存在することで水分を血管内に留める重要な役割を担っているのです。
- また、低アルブミン血症は原因となる疾患に関連した症状がみられます。
- 例えば肝硬変では出血傾向や黄疸が認められ、肝硬変における合併症のひとつとして挙げられるのです。
- 食道静脈瘤により吐血するなどの症状もみられる場合があります。原因となる疾患の症状についても把握しておきましょう。
発症する原因が知りたいです。
- 主な原因は、アルブミンの産生低下や体内からの喪失です。産生低下では肝硬変が引き起こされます。
- 肝硬変とは慢性肝炎を発症し、長い年月をかけて肝臓の機能が低下した状態です。肝硬変を引き起こすと肝臓でタンパク質の産生・分散・有機物の分解が十分に行われなくなり、アルブミンの産生にも影響されてしまい低アルブミン血症となるのです。
- 肝硬変の原因として約半数を占めるC型肝炎ウイルスのほかに、B型肝炎ウイルスやアルコールの多量摂取が挙げられます。
- アルブミンの喪失は、ネフローゼ症候群などの腎疾患によって引き起こされます。腎組織で炎症が起きるとアルブミンが大量に尿中に漏れてしまい、低アルブミン血症を生じて起きる疾患です。
- ネフローゼ症候群は原因疾患がない一次性のタイプと、糖尿病や膠原病などの原因疾患によって引き起こされる二次性のタイプがあります。
- アルブミンの喪失が主体となる低アルブミン血症が発症する背景として、ネフローゼ症候群のほかに以下の病態があります。
- 低栄養
- 炎症性腸疾患
- 急性膵炎
- 重度のやけど
- 敗血症
- 妊娠高血圧症候群
- もし思い当たる症状があるのなら、低アルブミン血症を疑うことも視野に入れましょう。
兆候はありますか?
- 低アルブミン血症が生じているとさまざまな兆候がみられます。
- むくみ
- 体重増加
- 尿の泡立ち
- 腹部や胸部に息苦しさを感じる
- 上記のような兆候がみられる場合は早急に医療機関を受診し、検査を受けることをおすすめします。
- 一過性の症状と考えずに放っておくことは控え、ご自身の未来の健康のためにも兆候を見逃さないようにし日々気をつけましょう。早期受診が今後への対策の鍵となります。
低アルブミン血症を発症しやすい人の特徴を教えてください。
- 比較的高齢者の方が発症しやすい傾向にあります。なぜかというと、血清アルブミンが加齢に伴い低下することで低アルブミン血症の割合も増加するためです。アルブミンを増やすためには、良質なタンパク質が必要です。
- 高齢者の方は若い頃に比べタンパク質の摂取量が低下していることも、低アルブミン血症を発症させやすい原因となります。
- タンパク質は成人男性で1日60g、成人女性で1日50gの摂取が必要とされています。タンパク質制限を必要としない慢性疾患のある高齢者は、さらに2〜3倍増やしたタンパク質が必要となるので覚えておきましょう。
低アルブミン血症の検査と治療
受診のタイミングを教えてください。
- 先ほどお伝えした兆候がみられる場合は早急に医療機関にて検査を受けましょう。健康診断での血液検査でアルブミン値の異常が見つかった場合、医療機関で精密検査を受ける必要があります。
- いずれも早期受診することで早期対応ができますので、気になる症状がある場合は早めに受診されることをおすすめします。
低アルブミン血症の診断基準を教えてください。
- 診断基準となる目安は、血液検査で分かる血清アルブミン値です。血清アルブミン値が3.6g/dL以下になると低アルブミン血症である可能性が高いと判断されます。
- 正常値は3.9g/dL、3.7〜3.8g/dLは要注意値となります。数値を知っておくと血液検査の結果が出た際ご自身でもどの段階なのか把握できるので、覚えておくとよいでしょう。
- また、数値が高値になる場合も、異常値となりますので注意が必要です。
どのような検査をするのでしょうか?
- 原因疾患を特定するため血液検査のほかに、尿検査も行われます。血液検査では、ALT・AST・コリンエステラーゼ・ビリルビン・凝固機能・クレアチニンなどが確認されます。
- また、腹水や胸水の有無を確認するために、レントゲンや超音波検査などの画像検査が行われる場合もあるのです。
- きちんと検査を受け、低アルブミン血症であるのかどうか確認しましょう。
低アルブミン血症の治療方法を教えてください。
- 低アルブミン血症の治療方法は、原因疾患に対する治療を行うことが重要です。肝硬変の場合はウイルス性肝炎であれば抗ウイルス剤を使用し、アルコールの多量摂取ならば断酒を検討します。
- ネフローゼ症候群の場合、副腎皮質ステロイド薬の内服・点滴・免疫抑制剤などを使用し治療を進めるのです。
- むくみの場合、利尿剤を使用し強制的に排尿を促しむくみの改善を図ります。
- それでも改善が難しい場合は、利尿剤の作用を強くするためアルブミン製剤を使用し治療を行なっていくのです。
- 腹水がある場合、腹部に注射針を刺して貯まっている水分を排出させます。4リットル以上排液を行う場合、循環血液量の減少による腎障害や低ナトリウム血症を防ぐため、高度アルブミン製剤を投与し治療を行います。
低アルブミン血症の予後と注意点
低アルブミン血症は完治しますか?
- 肝硬変・ネフローゼ症候群・低栄養などの原因疾患に対する適切な治療を行うことで、低アルブミン血症の改善はみられます。
- ただし、肝硬変は進行してしまうと治療を行っていても十分な効果を得ることができません。
- 低アルブミン血症を引き起こさないためにもバランスの良い食事や適度な運動など、日頃の生活習慣の改善を意識していくことが重要です。
食事で注意することを教えてください
- 低栄養にならないように毎日の食事に気をつけ、アルブミンを増やすために良質なタンパク質を摂ることが最善です。タンパク質は20種類以上のアミノ酸で構成されています。
- 人の体内で合成できない必須アミノ酸と呼ばれている9種類の栄養素は、食事から摂る必要があります。また、良質なタンパク質は必須アミノ酸とアミノ酸スコアが高いです。
- 以下の食材はとくにアミノ酸スコアが高いとされていますので、積極的に摂取しましょう。
- 肉類や魚類
- 乳製品
- 卵類
- 大豆製品
- とくに高齢者になると、食事量が低下する傾向にあるのでタンパク質摂取量も低くなりやすく、低栄養から低アルブミン血症を引き起こす可能性が高いです。意識して毎日の食事に良質なタンパク質を取り入れましょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
- 人の体内において主要なタンパク質であるアルブミンが低下してしまうことは、危険な状態です。全身のむくみや血圧低下などの症状を一過性と考えず、少しでも違和感を感じるようなら早急に医療機関を受診し精密検査を行いましょう。
- 低アルブミン血症を引き起こすには、さまざまな原因疾患があります。原因疾患の治療を行わないと、低アルブミン血症の改善は難しいでしょう。
- また、低栄養にならないためにも毎日の食事も意識して摂りましょう。アルブミン値を正常値から落とさないためにも、良質なタンパク質の摂取は重要です。
- 最低でも年に1回は血液検査を行い、アルブミン値を知っておくとよいでしょう。
編集部まとめ
低アルブミン血症は、原因疾患の治療を行っていくことが改善に繋がります。
肝硬変など、原因疾患によっては治療が遅れたことにより効果が得られない場合もあるので、早期受診が重要となるでしょう。
また、タンパク質摂取量の低下が原因で低栄養となり、低アルブミン血症を引き起こす場合もあります。
タンパク質を含んだ栄養バランスのよい食事を心がけるなど、生活習慣の改善も低アルブミン血症を引き起こさないために重要となります。
今一度生活習慣を見直し、そもそも低アルブミン血症の原因疾患を引き起こさないように気をつけていきましょう。
参考文献
- 低アルブミン血症(主 と して蛋白喪失性胃腸症)|大阪大学医学部第2内科 岩崎雅行,水野義晴,西川光夫
- 科学的根拠に基づいたアルブミン製剤の使用ガイドライン|日本輸血・細胞治療学会
- 早期発見と早期対応のポイント
- 4.高齢者の栄養状態と予後|第52回日本老年医学会学術集会記録
- 低アルブミン血症|Medical Note
- ネフローゼ症候群|社会福祉法人 恩師財団済生会
- 血液検査のアルブミンとは? 異常値を示したとき考えられる原因とは|SALUS CLINIC
- 低栄養になってませんか? アルブミンは栄養状態の指標|東京キャンサークリニック
- アルブミン(albumin、ALB)の読み方|栄養状態を読む検査|看護roo!