「胸郭出口症候群」のストレッチ・チェック法はご存知ですか?
更新日:2023/03/27
胸郭出口症候群は首と胸の境界にある胸郭出口という部位が、腕を酷使することによって圧迫されてしまう病気です。
発症原因を理解して日常的に予防を行うことがおすすめです。
そこでこの記事では胸郭出口症候群の原因や症状を踏まえながら、専門的な治療方法と意識するだけで効果がある予防方法をご紹介します。
監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)
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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。
胸郭出口症候群の症状と原因
胸郭出口症候群はどんな病気ですか?
- 胸郭出口症候群は20代前後の女性に多く見られる病気で、首と胸をつなぐ「胸郭出口」という部位で血管や神経が圧迫されることで発症します。症状は多岐にわたりますが、一般的には肩と首を中心に痛みを伴います。
- この病気は動脈閉塞を引き起こすことが多く、血行を改善することが治療の目的です。日々の生活習慣で慢性的に負荷がかかった状態が続くと発症しやすくなります。
胸郭出口症候群の症状を教えてください。
- 血管と神経が過度に圧迫されてしまうため、腕や肩がしびれたり、激しい痛みを伴ったりすることが一般的です。意図せずとも肩関節の可動域が狭くなり、筋力が低下することにより運動機能にも支障をきたすこともしばしばあります。その他には以下の指標となる症状があります。
- 手指の屈伸が継続できず、左右の握力に差異が生じる
- 不眠や倦怠感に襲われる
- 耳鳴りが頻繁に起こる
- といった、日常生活に影響が出るものばかりです。力のかかり具合に違和感を覚えたり、今までできていた細かい作業ができなくなったりしたら胸郭出口症候群を疑ってください。
発症した場合はどのような痛みがありますか?
- 首・肩・腕に鈍い痛みを感じたり、指先がビリビリと痺れるような症状が現れます。
- 腕が腫れてしまったり、指の脱臼などの症状が見られた場合はかなり重症です。影響が出た部位によってはしこりができることがありますが、少しでも力が加わるとズキズキと響くような痛みに襲われます。
- またこれらの痛みに限らず、腕から手にかけて冷えを感じることがあります。これは血流が妨げられている証拠であり、早急に解消しなければ血栓を生じ新たな障害を併発するリスクを高めるので危険な状態です。
胸郭出口症候群は何が原因で発症しますか?
- 根本的な発症原因は腕や肩に強い負荷をかけていることです。具体的には以下のようなケースが考えられます。
- 運動で肩を大きく回す動作や無理な筋トレで負荷をかけ過ぎている
- 重い荷物を運搬したり、持ち上げたりすることが多い
- 悪い姿勢でデスクワークを行い、肩や首の血流が鈍っている
- これらの動作のときに痛みを感じるにも関わらず、長期間放置したままでいると次第に握力が低下していきます。
重症化するとどうなりますか?
- どれほど安静な姿勢で過ごしていても常に痛みを感じるようになります。寝ていても患部の痛みが収まらず、ときに息苦しくなったら重症です。
- そのまま進行した場合、圧迫された神経が修復不能となり、肋間神経損傷などの合併症を引き起こす可能性があります。また血液の流れが滞り血栓ができてしまうと、静脈うっ滞や静脈血栓症などのリスクも非常に高まります。
胸郭出口症候群の診断と治療
初期症状や受診する目安を教えてください。
- 初期症状である弱い痛みを感じる段階では、個人の判断で見極めることは困難です。しかし痺れるような感覚が増してきたら神経に障害をきたしている可能性があるので、受診することをおすすめします。また手先が冷えたり肩や腕が腫れた場合には、症状がやや進行していることが考えられます。
- 一時的な痛みはさまざまな原因で発症することはありますが、微々たる違和感でも長期間続くようであれば医師に相談をしてみましょう。その際、どこの部位にどのような痛みを感じたかを覚えておくようにしてください。
胸郭出口症候群の診断はどのように行うのでしょうか?
- 最初に原因を探るために、医師が指定した動作を問題なく行えるかを試す誘発試験を実施します。その後X線や超音波を用いて、骨の異常や血管の損傷がないかを確認したのち、CTスキャンで断面画像を取得するまでが基本的な流れです。
- また筋肉の運動能力に低下がみられる場合は、「筋電図(EMG)」を用いて筋肉からの電気信号が正常かを確認する方法も実践されることがあります。
詳しい検査内容が知りたいです。
- まずは腕や肩のどのあたりにしびれを感じるかを特定します。神経に影響を与えるような腫瘤が発生していないか、触れられた箇所の感覚に違和感がないかなどを調べることで、神経の圧迫度合いを判断する指標としていきます。
- そしてこれらの結果や診断内容を踏まえ、圧迫の原因を物理的に除去したほうがいい場合には手術を、薬の投与やリハビリで解消できるレベルであれば整体での施術に分かれることが一般的です。
胸郭出口症候群はどのような治療をしますか?
- 手術を行うときは、胸郭出口の圧迫に最も関与している第1肋骨を切除することが最も効果的です。
- 薬での治療は腫れや炎症を抑える抗炎症剤を基本に、筋肉の痙攣や痛みを鎮める筋弛緩薬、血栓が発生しているときに投与する血栓溶解薬などが処方されます。
- 症状が軽い段階ではテーピングで筋肉の働きを維持し、セルフケアのマッサージ方法を共有するだけで済むこともあります。
胸郭出口症候群の予後
胸郭出口症候群は完治しますか?
- 症状が重症化し、合併症を引き起こさない限りは完治するといっていいでしょう。しかしリハビリやマッサージだけでは完治までに時間を有するほか、生活習慣を改善していかないとずるずる長引くことが考えられます。
- 自分の癖を取り除かなければすぐに再発してしまうので、長期間整体に通い徹底的に改善を目指さないと難しいのは事実です。毎日コツコツとセルフケアを行い、素早い回復を図りましょう。
胸郭出口症候群の治療中に注意することがあれば教えてください。
- まずは発症の根本原因となった、肩に負担がかかる動作を減らしていくことが大切です。血管のつまりを解消するサポーターが支給されることがあるので、適切に取り入れながら徐々に回復を目指しましょう。
- また、食生活にも意識を向けると効果的です。ビタミン類が多く含まれる野菜や果実を積極的に摂取しながら、カフェインを避けるようにしてみてください。
胸郭出口症候群の予防方法・ストレッチ法・チェック法が知りたいです。
- 胸郭出口症候群の予防は肩や首を酷使しすぎず、正しい姿勢で生活することに限ります。
- 適度な運動や寝る前のマッサージが習慣化している人は発症のリスクがほぼありません。ストレッチ方法は担当医師との相談によってプランを組み立てていきますが、首や肩を伸ばしながら良い血流を促すことが基本です。過度な負荷をかけることは必ず避けましょう。
- 回復度合いはCTA検査や右腕・左腕の血圧測定から判断します。セルフチェックの場合は痛みやしびれの体感を意識し、無理なく肩や首が動かせるかなどを確認してみてください。
最後に、読者へのメッセージがあればお願いします。
- 胸郭出口症候群は日常生活の中で予防ができる病気です。正しい姿勢を意識し、身体を労わりながら過ごしていれば恐れることはありません。
- それでも万が一しびれや痛みを感じたときは、自己判断で解消していくのではなく専門医にかかることをおすすめします。専門的な知識を取り入れ、段階を踏みながら治療してください。ただしスポーツ選手の場合は練習ができずもどかしい思いをしてしまうかもしれませんが、これから長くプレーするためには安静が一番です。
- 早期に治療を施し、じっくりリハビリをしていけば解消していくので、急がずに向き合っていきましょう。
編集部まとめ
病名や症状を聞くと恐怖心を抱くかもしれませんが、日常に潜む根本の原因を冷静に解消していけば防げるものです。デスクワークや運動も過度にやりすぎることが禁物だと理解できたのではないでしょうか。
この記事を読まれた方は1日3分でも肩や首のマッサージを行い、正しい姿勢を意識する習慣を身に着けてみてはいかがでしょうか。痛みや冷えに悩まされない毎日を過ごしていきましょう。
参考文献