「慢性上咽頭炎」とは?セルフチェック法・症状・原因も解説!【医師監修】
更新日:2023/08/17
慢性上咽頭炎とは、のどのイガイガを始め、肩こり・首こりといったさまざまな症状を引き起こす可能性がある病気です。
さまざまな症状を起こして体調不良をもたらす病気ですが、いざ原因を調べてみるとすぐにわからないケースがあります。
そこで本記事では、慢性上咽頭炎の症状についてご紹介します。受診を検討する目安や予防方法についても解説するので、参考にしてください。
監修医師:
五藤 良将(医師)
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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。現在は「竹内内科小児科医院」の院長。日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医。
目次 -INDEX-
慢性上咽頭炎の特徴
慢性上咽頭炎はどのような病気でしょうか?
- この病気は、鼻とのどの間にある上咽頭が慢性的に炎症を起こす病気です。同様の病気で急性上咽頭炎がありますが、こちらは上咽頭の赤みが強く観察できるため、診断しやすい特徴を持ちます。
- しかし、慢性上咽頭炎は一見すると正常に見えることがあるため、稀に異常がないと診断されるケースがある病気です。そのため、医師だけでなく患者側も正しい知識を身につけておく必要のある病気といえるでしょう。
症状を教えてください。
- 具体的な症状は、次のようなものが挙げられます。
- 頭痛
- 顔の痛み
- 肩こり・首こり
- 全身の痛み
- のどの痛み
- 腹痛・下痢・便秘
- めまい
- 慢性的な疲労感
- この病気は、全身にわたってさまざまな症状を発生させることがわかっています。また、これらの症状が全て現れるわけではなく、その症状の出方や度合いには個人差があるのです。そのため、のどの痛みだけの方もいれば、のどとは関係なさそうな全身の疲労感や頭痛などを強く訴える方もいます。
のど以外にも症状が出るのですね。
- のど以外の症状は非常に多いです。さらに、重い疾患を併発するケースもあります。例えば、次のような異常が発生するケースがあるのです。
- 中耳炎
- 腎臓病
- 関節炎
- 皮膚疾患
- 自律神経の乱れによる症状
- 上咽頭に異常がある場合、まずそこにつながる耳に炎症などが起こる可能性があります。また、上咽頭が病巣になることで炎症を抑えようとサイトカインと呼ばれる物質が作られます。この物質は血流に流れることで腎臓病・関節炎・皮膚疾患などを引き起こす可能性が高いです。
- さらに、上咽頭の炎症は近い場所である自律神経にも影響を及ぼすと考えられており、さまざまな症状を引き起こす可能性があります。例えば、起立性障害・睡眠障害などです。
- 記憶力の低下・集中力の低下なども起こす可能性があるため、注意が必要です。
慢性上咽頭炎を発症する原因を教えてください。
- この病気の直接的な原因ははっきりと判明していません。しかし、急性咽頭炎が繰り返し起こることで、慢性的なこの病気に発展していくのではないかといわれています。咽頭炎になってしまう原因としては次のようなものが挙げられます。
- 細菌やウイルスの感染
- 体の冷え
- 疲労・ストレス
- 乾燥
- 喫煙・飲酒
- 逆流性食道炎
- 炎症がおこる上咽頭は空気が通る場所です。そのため、細菌やウイルスの感染が起こりやすい場所となり、それが原因で炎症が発生します。
- 体が冷えることで、体温が下がり血管が収縮します。すると血行が悪くなり、血液中の免疫細胞がウイルスなどを撃退しにくくなるのです。これにより炎症がより悪化することが考えられます。また、疲労やストレスがたまると、自律神経が悪くなり炎症が悪化しやすくなります。
- さらに、逆流性食道炎をすでに発症している方は、胃酸が逆流するため炎症が悪化しやすいです。これらの環境や異常が確認できる方は、上咽頭炎になりやすいため注意が必要です。
慢性上咽頭炎の診断と治療方法
受診を検討する目安を教えてください。
- 受診を検討する目安としては、症状の慢性化を防ぐために1週間~2週間のどや鼻の奥の痛み・違和感を感じた場合に受診するようにしましょう。
- この期間ののどの痛みなどの症状は、ちょっとした違和感程度しか感じない方もいるかもしれません。しかし、慢性化した際には、めまいや全身の倦怠感など、症状が広がり生活の質を下げる可能性もあります。そのため、違和感を感じた際にはできるだけ早く受診するようにしましょう。
どのような検査を行いますか?
- 診断を受けて、病気の検査をする場合、以下のような検査内容を受けることとなります。
- 問診
- 鼻内視鏡検査
- 擦過診
- 問診では、自覚症状を確認することから始まります。鼻内視鏡検査では、鼻の奥を観察して炎症状態を確認する検査方法です。この病気の場合は、うっ血状態が確認できたり、むくみで静脈が見えづらくなっていたりするので判断できます。擦過診は、患部を擦って出血や痛みがあるかを確認する方法です。
診断基準があれば教えてください。
- 診断基準としては、免疫に関係のあるリンパ球の活性化が見られるかどうかです。
- 上咽頭は、通常の状態でもリンパ球がある程度活性化している部位になります。これは、空気によく触れる所でさまざまなウイルスなども付着する可能性があるためです。
- 免疫機能によって、これらの感染を防ぎます。しかし、上咽頭の慢性的な炎症が起きていると、さらにリンパ球の活性化が見られます。また、同時にサイトカインという炎症物質を生んで血液に流れてしまっているため、それを検出できればこの病気にかかっていると判断できるでしょう。
慢性上咽頭炎の治療方法が知りたいです。
- 主な治療方法は、次のようなものが挙げられます。
- ネブライザー治療
- 鼻洗浄
- 薬物療法
- Bスポット治療
- ネブライザーとは、薬の吸入治療のことです。Bスポット治療とは、消炎剤を直接擦過して塗る方法です。薬を直接擦るので、出血や痛みを発生させる可能性があります。子供からでも行える治療方法で、効果も立証されていることからこのような治療方法を行うことが多いです。
慢性上咽頭炎の予防と日常生活の注意点
慢性上咽頭炎は再発しますか?
- 慢性上咽頭炎は再発の可能性があります。治療を受けて一度落ち着いたとしても、自律神経の乱れやストレスなどによって再発のリスクがあるのです。再発した場合で重症化するケースは稀ですが、再発すると再度治療を受ける必要があります。治療も決して楽ではないので、日常生活で再発を防ぐためにも注意が必要です。
慢性上咽頭炎の予防方法・セルフチェック法があれば教えてください。
- この病気の予防方法としては、次のような方法が挙げられます。
- 水分補給
- 体の冷やさない
- 運動・睡眠
- 鼻洗浄
- 症状悪化だけでなく病気にかからないためには、まず鼻・のどの粘膜を乾燥させないことが大切です。
- 粘膜が乾いた状態が続くと、細菌などが体内に入りやすくなります。このようなことにならないためには、適度な水分補給が必要です。水分にはカフェインを含まないお茶や水を飲みましょう。カフェインが含まれていると、利尿作用があり逆に水分が不足してしまいます。
- また、体を普段から冷やさないことも心がけましょう。体が冷えると自律神経が乱れてしまいます。その結果、免疫低下が起こり炎症を起こしてしまうのです。免疫力を上昇させるためには、適度な運動・十分な睡眠が効果的です。
- 自律神経を整えるだけでなく、免疫力の向上も自分で行っていきましょう。最後に鼻うがいも予防に最適です。鼻うがいは、より乾燥を防ぐ効果があります。これは通常のうがいや水分補給では補えない場所まで広い効果が期待できるのです。
- 予防方法を把握するとともに、セルフチェックもできるようになっておくと、自分の状態をより把握できるでしょう。セルフチェック方法は次の3つです。
- 頻繁に風邪を引く
- のどが痛くなりやすい
- 鼻が詰まることが多い
- 一見するとどれも風邪のような症状ですが、1週間に1回の感覚で風邪を引いたような症状がある場合はこの病気の可能性があります。鼻が詰まる症状としては、奥の方で詰まっているような感覚になることが多い傾向です。このような特徴を踏まえて、セルフチェックができるようになっておきましょう。
治療中や治療後に気をつけることはありますか?
- 治療中の注意点としては、タバコをすったり飲酒をしたりしないようにすることです。飲酒や喫煙はこの病気の原因にもなる関係の大きな要素です。適切な治療を受けている最中に、決して飲酒などをしないようにしましょう。
- 治療後も、禁煙を心がけるようにし、過度な飲酒は避けるようにすることも必要です。また、治療中・治療後問わず、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返すことがあります。その際には、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。自己判断は症状の悪化を招く可能性が高いです。
最後に、読者へメッセージがあればお願いします。
- 慢性上咽頭炎は、つらいのどの痛みだけでなく、全身に症状が出る大変な病気です。風邪と似たような症状であることから、最初は見逃してしまい慢性化させてしまう可能性があります。治療には、正しい対応を行わなければ、全身に現れる症状もさらに悪化してしまうでしょう。また、コロナウイルスで上咽頭炎、慢性化、後遺症となることが度々報告されております。そのようなことにならないためにも、治療方法だけでなく予防方法も身につけて、適切な治療を進めましょう。
編集部まとめ
慢性上咽頭炎は、のどの痛みだけでなく全身の倦怠感・痛み・めまいなどさまざまな症状を発生させます。
免疫力も低下した状態なので、関節炎や皮膚疾患などさらに合併症を引き起こす可能性も高いです。
悪化をさせないためにも、治療中・治療後の予防やセルフチェックなどの正しい情報を身につけて、速やかに治しましょう。万が一異変を感じた場合は、医療機関に相談してみてください。
参考文献
- 慢性上咽頭炎|あくつクリニック
- 長引く不調の原因は慢性上咽頭炎??|辻堂へいへいだい耳鼻咽喉科
- 慢性咽頭炎・慢性喉頭炎|くさの耳鼻咽喉科・小児科
- 慢性上咽頭炎|日本病巣疾患研究会
- 鼻の奥と喉辺りが痛い「上咽頭炎」は自然に治る?早く治すには?市販薬のオススメも|EPARK
- 医師解説【本当に治る?】慢性上咽頭炎の治り方【EAT治療】その7|みらいクリニック
- 上咽頭炎かな?と思ったら、この3ポイントをチェックしてみてください|耳鼻科専門鍼灸師GAKU先生(YouTube)
- 慢性上咽頭炎の原因・症状と治療法(Bスポット療法)|老木病院
- 慢性上咽頭炎(まんせいじょういんとうえん) のどのいがいが-上咽頭擦過療法-|社会医療法人北斗
- 上咽頭炎の診断方法と治療:細胞診による病態の把握|杉田麟也「ランチョンセミナー 上咽頭炎,上咽頭処置を見直す」
- 口腔・咽頭の病気|一般社団法人日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会
- 慢性上咽頭炎の関連が示唆される多彩な病気と上咽頭擦過療法に関する考察|堀田修・永野千代子「教育セミナーⅠ 慢性上咽頭炎と上咽頭処置を考察する」
- 慢性上咽頭炎に対する上咽頭眼擦過療法の治療効果|大野芳裕