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「プリオン病」とは?症状・原因・治療法も併せて解説!【医師監修】

 更新日:2023/08/21
「プリオン病」とは?症状・原因・治療法も併せて解説!【医師監修】

「プリオン病」という病気をご存知でしょうか。聞き慣れない病名かもしれません。この病気は脳のとあるタンパク質が原因で起こると言われています。

しかし、未だにどのようなメカニズムで発病するのかがわかっていない特殊な病気です。現代においても解明できていない難病のひとつといえます。

周囲の人がプリオン病にかかったらどうしたら良いのでしょうか。今回は、プリオン病の症状や患者さんの周囲の人がサポートできることなどを紹介します。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

プリオン病とは?

車椅子の高齢者女性

プリオン病とはどんな病気ですか?

  • プリオン病とは、脳の「プリオン」と呼ばれるタンパク質により神経細胞が壊れてしまう病気です。
  • プリオンには正常なプリオンと異常なプリオンがあり、この内異常なプリオンが原因となります。脳の神経細胞が壊れてしまうことにより、認知症に似た症状や行動異常、ミオクローヌス(不随意運動)が起きます。
  • 進行すると半年以内に自発運動がほとんどできなくなってしまい、寝たきりになってしまう患者さんがほとんどです。

難病とのことですが発症する原因を教えてください。

  • プリオン病には2つの原因があるとされています。遺伝性のプリオン病と移植などによって発病するプリオン病です。
  • しかし原因がわかっているのは発症者全体の3割ほどで、残りの7割は原因不明のプリオン病(=孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD))です。遺伝性のプリオン病(=家族性プリオン病)は、遺伝によってプリオンが異常プリオンに変異しやすくなり発症します。
  • 元々プリオンは正常なタンパク質ですが、遺伝子の中には異常なプリオンを作り出す遺伝子があるということがわかっています。
  • その遺伝子が発現すると異常なプリオンを作るようになってしまい、家族性プリオン病の発病につながってしまうのです。移植によって発症するプリオン病(=獲得性プリオン病)は、以下の原因で感染することがわかっています。
  • 狂牛病(BSE)に感染した牛肉を食べたとき
  • 異常プリオンが存在する臓器・組織・血液を移植されたとき
  • 異常プリオンがついた器具で脳外科手術を受けたとき
  • 異常プリオンは、100度の熱湯で数時間消毒しても死にません。そのため、BSEでの感染が一時期話題となりました。
  • 感染性があるとされていますが、プリオン病にかかった人との外的接触だけで感染する病気ではありません。あくまで組織移植や輸血などをした際にだけ感染します。

プリオン病を発症した際にみられる症状が知りたいです。

  • プリオン病を発症した初期に出る症状は倦怠感やめまい・視覚異常などです。進行すると認知症に似た症状(言葉が出にくい・意思疎通がしにくい・物忘れなど)が出ます。
  • 症状が進行してミオクローヌス(不随意運動)が発現するようになると、自力での歩行が困難です。発症から半年ほどで寝たきりとなります。
  • 終末期にはミオクローヌスがなくなり、動けず喋ることができなくなります。進行が速いと1年ほどで死に至る病気です。

プリオン病を発症した方に共通点などはありますか?

  • プリオン病の原因によります。たとえば、獲得性プリオン病の場合は脳組織の移植を受けた、もしくはBSEにかかった牛肉を食べたなどの共通点があります。
  • 家族性プリオン病の場合は、ご家族の中にプリオン病発病因子となる異常タンパク質を生み出す遺伝子が共通点です。
  • 孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病の場合、原因はわかりませんが発病した方は50歳から70歳が多いです。

プリオン病の受診・検査

診察をする男性医師

プリオン病を疑う症状が出た場合は何科を受診したら良いですか?

  • 基本的には神経内科が適しています。ただし、プリオン病の診断は困難とされています。
  • なぜかというと、孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病であった場合は多くが高齢者となるので、認知症が疑われるケースが多いからです。
  • 認知症ではミオクローヌスや視覚異常が起こることがあまりないため、ミオクローヌスが疑われた場合は病型から診断します。

プリオン病の診断ではどのような検査をしますか?

  • プリオン病が疑われた場合、脳波検査・MRIや髄液・血液検査を行います。
  • 髄液検査では神経細胞の破壊によって髄液に流出した特定のタンパク質の量を測定します。ただし、特定タンパク質の増加は他の神経疾患でもみられるのでプリオン病が確定診断されるわけではありません。
  • もう一つの血液検査では、白血球を検査します。白血球でプリオン蛋白遺伝子検査を行い、遺伝性プリオン病であるかどうかを診断するのです。
  • ただし、孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病をはじめとしたプリオン病は、生前での確定診断が困難とされています。なぜかというと、原因となる異常プリオンが脳にあるからです。
  • 死後解剖を行い、脳組織を病理学的見地から診断することで初めて確定診断されます。

プリオン病の進行スピードは早いのでしょうか?

  • ほとんどの場合は進行スピードが早いです。発症数ヶ月から半年ほどで寝たきりとなります。
  • 寝たきりとなった後は身体機能の低下で呼吸麻痺となり、その後肺炎などが原因で死に至ります。

プリオン病の治療方法・経過

手を握る人

プリオン病に有効な治療方法はあるのですか

  • プリオン病はどの類型でも治療法や治療薬がありません。根治ができない病気です。
  • しかし、プリオンの増殖を抑えて進行を遅らせたり、症状を軽減する対症療法が行われることがあります。進行初期には運動療法などで身体の動きづらさを軽減させます。
  • また、症状が進行すると経口摂取が困難です。その場合には経鼻胃管などで経管栄養を行います。

プリオン病を発症した場合の過ごし方を教えてください。

  • 症状が進行し寝たきりになるまでは日常生活で注意は必要ありません。ただし、思ったように動けないなどの症状が多いので日常的なサポートが必要です。
  • また、患者さんだけではなく周囲の方へのサポートも必要になります。ご家族でプリオン病が発病した場合、ほとんどは死に至ります。そのため、どうしても苦しみや心理的苦痛と向き合うことが必要です。
  • もしご家族や大切な方がプリオン病と診断された場合は、カウンセリングを受けることも検討してください。

身近な人がプリオン病になった場合にどのようなサポートができますか?

  • プリオン病は「特定疾患治療研究事業」の対象です。具体的には医療費助成、医療費自己負担分の助成がされます。また、40歳から介護保険に申請できる病気にも含まれています。
  • 患者さんご本人の手続きが困難な場合、そのお手伝いが必要です。行政上の支援が利用できるよう、ソーシャル・ワーカーなどの手を借りるようにしてください。
  • また、症状が進行すると症状によって日常生活がしだいに困難となります。そのため、介護などのサポートが必要です。

最後に、読者へメッセージがあればお願いします。

  • プリオン病は、感染性を有する異常型プリオンが脳に沈着して、脳神経システムの細胞機能が進行性に障害される病気です。人口100万人あたり年間約1人の確率で発症すると言われており、本邦においては毎年100~200人の発病が報告されています。
  • ヒトにも動物にもみられ、動物のプリオン病としては牛海綿状脳症 (いわゆる狂牛病)が一時期話題になりました。
  • ヒトのプリオン病は、孤発性、遺伝性 (家族性)、獲得性の3種類があり、孤発性には孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病 、遺伝性には遺伝性クロイツフェルト・ヤコブ病、獲得性には医原性プリオン病、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病 、クールー病などが代表的に知られています。

編集部まとめ

看護師と患者

プリオン病は難病に指定されています。治療法や治療薬がなく、現代においても原因を特定することも難しい病気のひとつです。ただし、メカニズムは判明しています。

異常プリオンが脳の神経細胞を壊すことで、さまざまな身体異常や認知機能の低下を引き起こす病気です。

発病のうち7割は、異常プリオンの発生原因がわからない孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病と診断されます。残りの3割は遺伝性プリオン病か獲得性プリオン病です。

遺伝性プリオン病は、異常プリオンを作り出す遺伝子を遺伝したことで起こります。獲得性プリオン病の原因は異常プリオンに汚染された組織を摂取・移植することです。

症状としては認知症に似た症状と同時に、ミオクローヌスや視覚異常が起こります。症状が進行すると半年ほどで寝たきりとなり、1年から2年ほどで全身衰弱により死に至ります。

ほとんどが発症から1年ほどで死亡してしまうため、診断された場合の患者さん・ご家族ともに心理的ショックが大きい病気です。

カウンセリングなどで心理的不安に向き合う治療も行う必要があります。患者さんへのサポートと同時に、ご家族や周囲の方へのサポートも必要な病気です。

もし身近な方がプリオン病に罹患してしまった場合、必ず一人で悩まず、カウンセラーや心療内科などを受診しましょう。

この記事の監修医師