「汗疱」とは?治療・原因についても解説!【医師監修】
夏など蒸し暑い時期は汗が原因で、肌にトラブルが起きる方も少なくありません。
手のひらや足の裏に、小さなブツブツがでてきたり皮がむけてきたりする汗疱(異汗性湿疹)も、夏に起きやすい肌トラブルの1つです。
今回は、汗疱(異汗性湿疹)について症状・原因・治療・予防法をまとめました。汗疱(異汗性湿疹)は場合によっては悪化することもあるため、正しい知識をつけて適切に対処をしましょう。
汗疱(異汗性湿疹)の症状がある方は、ぜひ参考にしてみて下さい。
監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)
目次 -INDEX-
汗疱の特徴
汗疱はどのような病気ですか?
- 汗疱は、手のひらや足の裏に水ぶくれができたり皮むけが起きたりする病気のことをいいます。水ぶくれの大きさは2〜5mmと小さいです。痒みや痛みを生じるケースもあります。夏の初めに症状がでる方が多く、小児や思春期など若い世代に起こりやすい病気です。多くの場合、数週間で自然に治りますが、症状が強い場合や悪化した場合は、治療が必要になります。
汗疱の原因を教えてください。
- 汗をかきやすい方に症状が現れるケースが多いため、汗が影響を及ぼして症状を起こしている可能性が高いです。皮膚の外に排出されるはずの汗が、何らかの理由で外に出られなくなり肌が酸性になることで炎症を起こしているとも考えられています。また、金属によるアレルギーが原因ともいわれていますが、汗疱がなぜ起こるかは解明されていません。
どのような症状がみられますか?
- 汗疱は手のひらや足の裏に、2〜5mmの小さな水ぶくれができます。水ぶくれ同士がくっついて大きい塊になったり、水ぶくれの周辺が白く濁ったり赤みがでたりといった湿疹のような症状が出る場合も少なくありません。水ぶくれが落ち着くと、皮がむけてからだんだん治まっていきます。水ぶくれは指の間や側面にできることが多いです。痒みや軽い痛みを感じることもあります。
汗疱になりやすい人の特徴を教えてください。
- 汗疱の症状は、汗が原因で起こるとされており、汗をかきやすい方は注意をして下さい。小さいお子さん・中学生・高校生は汗をかきやすい環境にいるため、症状がでやすいです。最近ではコロナの影響で、仕事などでゴム手袋を使う方も増えています。ゴム手袋を着けたままの状態は、蒸れて手に汗をかきやすい状態です。そのため、ゴム手袋が原因で汗疱に悩まされる方も増えています。春から夏にかけて症状が現れる方が多いです。
汗疱の診断と治療
汗疱を疑ったらどのような検査を行いますか?
- 汗疱は水ぶくれなど特徴的な皮膚の症状を観察したうえで、必要に応じて症状が似た他の疾患との区別をつけるための検査を行います。たとえば汗疱と似たような症状のある、水虫の可能性についての検査です。患部の皮膚を採取して、水虫の原因菌である白癬菌が存在していないか、顕微鏡で確認をします。金属などのアレルギーが疑われる場合は、パッチテストを行い、アレルギー反応の有無を確認するのです。
鑑別が必要な皮膚の病気を教えてください。
- 汗疱に似た症状で最も間違えやすい疾患は水虫ですが、他には手足口病などのウイルス性の疾患・掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)があります。疾患の症状や必要に応じた検査を行うことで、汗疱とその他の疾患の鑑別をすることが多いです。
汗疱の治療方法が知りたいです。
- 汗疱は軽症であれば数週間で自然に治ります。ただ、強い痒みや痛みを伴う場合や水ぶくれが大きくなってしまうなど、症状が重い場合や悪化してしまった場合は自然治癒が難しい可能性が高いです。更に悪化する前に皮膚科を受診しましょう。
- 治療は症状に合わせた薬物療法が検討されることが多いです。痒みがある方には抗ヒスタミン薬やアレルギー薬を、炎症を起こしている場合はステロイド外用薬が処方されます。汗疱で皮膚がかたくなってしまった方には、皮膚を軟らかくする軟膏が処方されることも多いです。
- また、金属アレルギーがある場合は、歯科金属や食物(ニッケル・コバルトなどの金属が多く含まれている豆類やチョコレート)に含まれる金属を取り除く必要があります。
汗疱の予防と注意点
汗疱はどれくらいで治りますか?
- 汗疱は症状が軽度なら、とくに治療しなくても2〜3週間ほどで自然治癒が期待できます。汗疱の場合、細菌やウイルスによる疾患ではないため、感染して広がっていくことはありません。軽症なら、こまめに汗を拭きとるなどの正しい対処を行えば、長引くことも少ない疾患です。しかし、場合によっては悪化したり長引いたりするケースもあります。症状がなかなか改善しない・悪化するといった場合は、早めに皮膚科を受診するようにして下さい。
治療中に気をつけることがあれば教えてください。
- 水ぶくれが小さくて軽度の場合、まずは水仕事を控えるようにしましょう。手洗いや入浴の後は水分が残らないようにしっかり拭き取って乾燥させます。高温多湿な場所を避けて、汗がこもらない工夫をすることが大切です。室内の換気・除湿をして湿気がこもらないように気をつけて下さい。ハンカチやタオルを常備して、汗をかいたら拭き取りましょう。患部を清潔に保つことも重要です。水ぶくれを無理にめくったり、痒くてかきむしったりしないで下さい。
- また、汗疱は水虫とよく似ていることから、水虫と勘違いをして市販の水虫薬を使って、悪化してしまうケースも多いため注意をして下さい。
- セルフケアでも改善されることが多い汗疱ですが、場合によっては薬物など治療が必要になります。痒みが強いなど症状が重い場合は、早めに皮膚科を受診して正しい治療をしてもらいましょう。
再発することはありますか?予防方法も知りたいです。
- 汗疱は、一度治っても再発を繰り返すケースも多い疾患でもあります。汗疱は再発をしないよう、予防をすることが大切です。
- 汗疱は汗が原因で起こる疾患のため、汗をかきすぎないことを心がけましょう。
- 暑い日の外出などは、こまめに涼しい場所に入るなど熱が身体に籠ったままにしないことです。服装も熱のこもらないものを選ぶと、蒸れることも少なくなります。
- 室内なら、エアコンを上手に使って下さい。エアコンの冷えが気になる方は、ドライ機能を使うのもおすすめです。
- 水仕事をする際は、素手は避けてゴム手袋を使って下さい。お湯は手荒れしやすくなるため、温水もできるだけ避けたほうがよいです。
- アルコール・刺激物・油分・糖分を摂りすぎないように意識をしましょう。
- シャンプーや洗剤は、シリコンタイプや天然由来など刺激の少ない成分が使われているタイプを選んで下さい。
- 自律神経の乱れが原因になっている可能性もあるため、睡眠不足を避けるなど生活習慣の改善も汗疱の予防に繋がります。
最後に、読者へメッセージがあればお願いします。
- お子さんや年齢の若い方は、新陳代謝が活発で汗をかきやすく汗疱に悩まされるケースも少なくありません。季節の変わり目に症状が現れる方も多いです。痒みなどがない方も多く、症状が軽いうちにきちんとセルフケアを行えば悪化をすることなく、数週間で改善されます。
- ただ、汗っかきの方はとくに再発を繰り返すケースがあるため、汗をかきすぎない・汗をかいたらすぐに拭き取るように意識をして下さい。エアコンをうまく使い、服装も風通しのよいものを選んで、身体に熱がこもったままにならない工夫も大切です。
- また、汗疱は水虫などの他の皮膚トラブルに似ており、目視で見分けることが難しい疾患になります。自己判断で市販薬を使用すると、悪化してしまうこともあるため注意が必要です。汗疱か他の疾患か判断ができない場合は、皮膚科で検査をしてもらうことをおすすめします。
編集部まとめ
汗をかきやすい春から夏にかけて多くなる汗疱。暑い時期になると毎年、症状に悩まされるという方も少なくありません。
汗疱の症状がでやすい方は汗をかいたらすぐに拭き取り、肌を清潔に保って予防をすることが大切です。湿気の多い梅雨どきなどはとくに注意をしましょう。
エアコンの除湿機能をうまく使うのもよいです。汗疱になりにくい状態を作って、できるだけ予防を心がけて過ごして下さい。
ストレスなども汗疱の原因とされています。睡眠不足を避けて飲酒・喫煙・食生活の改善もしていくとよいです。
汗疱の症状がある間は、水仕事を避けて肌への刺激をできるだけ減らすことが悪化をさせないポイントになります。
セルフケアでも改善されやすい汗疱ですが、長引く・悪化する・何度も繰り返す場合は皮膚科に相談をして、適切な治療を行ってもらいましょう。
参考文献