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「乳頭炎」とは?症状・原因・治療法についても解説!【医師監修】

 更新日:2023/07/13
「乳頭炎」とは?症状・原因・治療法についても解説!【医師監修】

乳首はデリケートなために、トラブルが起こりやすい部位です。痛い、かゆい、膿がでるなどの症状が出ても、誰にも相談できずにどうしたらいいのか悩む方も多いのではないでしょうか。女性は生理前や排卵期などに乳首に違和感が起こりやすい傾向にありますが、なかには乳腺炎や乳がんなどの病気が隠れていることもあります。

今回は乳頭炎の症状や原因、受診の目安、セルフケアについて解説します。

前田 裕斗

監修医師
前田 裕斗(医師)

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東京大学医学部医学科卒業。その後、川崎市立川崎病院臨床研修医、神戸市立医療センター中央市民病院産婦人科、国立成育医療研究センター産科フェローを経て、2021年より東京医科歯科大学医学部国際健康推進医学分野進学。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。

乳頭が痛くなる原因とは

乳頭が痛いのは病気でしょうか?

    乳頭である乳首の痛みにはさまざまな原因がありますが、日常生活で皮膚炎になるものもあれば、女性ホルモンの変化、乳首や乳房の病気などで乳頭に炎症が生じることがあります。

    日常生活のなかで乳頭の皮膚炎が起こるのは、乾燥や下着による摩擦や蒸れ、授乳などで傷が生じたところに皮膚の常在菌が感染するなどが原因です。

    乳頭は皮膚が薄くて弱いため、汗や下着の擦れなどのちょっとした刺激であっという間に皮膚炎になってしまいます。また、乳首の皮脂の量が低下すると乾燥しやすく、皮膚のバリア機能が低下した状態となります。かゆみや痛みが気になって触っていると、皮膚炎や感染症を引き起こす可能性も高まります。

    女性は、月経や妊娠などの理由で女性ホルモンのバランスが変化し、乳頭が痛むこともあります。生理前や妊娠中などは女性ホルモンが多くなり、乳腺が発達し胸に痛みが生じることがありますが、乳房にハリが出てくると乳首の中の乳管がひきつって乳頭も痛むのです。ホルモンバランスが乱れやすい更年期にも乳頭の痛みはよく見られます。

    また、乳首にがん組織が浸潤すると、痛みや皮膚炎が起こることもあります。なかでも乳頭パジェット病は、片側の乳頭や乳輪に湿疹に似た皮膚の症状が生じる珍しいタイプのがんです。乳がんは99%の確率で女性に発症しますが、まれに男性にも生じます。男性の場合は薬の副作用や糖尿病などの疾患が原因で、女性ホルモンが増えて乳房が肥大することもあります。

痛み以外にどのような症状がありますか?

    炎症が起こると、赤みや腫れ、かゆみなども起こります。さらに悪化してくると、乳輪まで皮膚がただれて出血することもあります。乳頭や乳輪が荒れてかゆみなどの症状がある人は、アトピー性皮膚炎をもっていて皮膚のバリア機能が低下していることも多くあります。

    もし乳首から母乳や膿などの乳頭分泌物があれば、分泌物の刺激によって皮膚炎が起こっている可能性もあります。乳頭分泌は、良性の乳管内乳頭腫(にゅうかんないにゅうとうしゅ)や高プロラクチン血症、甲状腺機能低下症、乳がんなどが原因です。

    注意したい症状は、血が混じった乳頭分泌物やしこり、湿疹や乳頭分泌物が片側だけにある場合です。さらに40歳以上の方や乳頭分泌がある男性は、乳がんなど何かしらの病気が隠れていると考えられます。

    とくに、治療しても治りにくい片側のただれや湿疹、血が混じった分泌物がある場合には乳がんの可能性が高いとされており、これらの症状があれば早めに病院を受診する必要があります。

乳頭炎を放っておくとどうなりますか?

    ただの皮膚炎であれば乳頭炎を引き起こしている原因を取り除くと治りますが、根本的な原因が続いていると皮膚炎を治療しても繰り返す可能性があります。

    女性ホルモンが影響する生理的な乳頭の痛みは、乳腺炎のひとつです。生理周期などで繰り返すことがありますが、乳頭のケアをしながら様子を見ていれば症状が緩和されていきます。症状がひどいときや悪化しているときには治療が必要です。

    病気の可能性がある症状を放っておくのは危険です。皮膚症状がなかなか改善しないとき、症状の悪化や広がり、くり返しできるときなどは、乳頭パジェット病など病気の可能性があるため、早めの受診を検討しましょう。

乳頭炎で受診するポイント

乳頭炎 検査

受診の目安はありますか?

    生理のサイクルによって胸の張りが起こるのと同時に乳首に痛みやかゆみがでるのであれば、女性ホルモンの影響である可能性が高いといえます。様子を見ながら、気になるようであれば受診しましょう。

    また、症状によって受診する診療科が異なります。乳首の痛みが長引く場合は婦人科、皮膚の炎症が広がっている場合には皮膚科に相談してみましょう。

    皮膚科で治療しても湿疹やただれがなかなか治らない場合や、しこりや分泌物に血が混じっている場合には早めに乳腺外科で専門医に診察・検査してもらうことが重要です。

    いつからどのような痛み(チクチク、ヒリヒリなど)があるのか、ほかにどのような症状(乳頭分泌やしこりなど)があるのかを伝えると、的確な検査を受けやすく、隠れている病気を見つけやすくなります。

検査ではどのようなことをしますか?

    乳腺外科では、医師が乳房や乳首を触ってしこりや乳汁の状態をチェックします。がんなどの病気を見つける代表的な検査としては、マンモグラフィー検査や超音波検査があります。

    乳頭分泌があれば、画像検査に加えて血液検査でプロラクチンの濃度や甲状腺ホルモンの値も調べます。しこりが乳腺でなく腫瘤だったときには、乳がんかどうかの確定診断を行うために細胞診も行われるでしょう。

    マンモグラフィーや超音波検査で異常が認められなかった場合には、乳腺外科の範囲では治療できないため、ほかの科を受診するようにすすめられる可能性があります。

治療について教えてください。

    湿疹やただれなどの皮膚炎の治療には、皮膚科などで用いられる外用薬が基本です。炎症にはステロイド外用薬、感染には抗真菌薬、保護には保湿剤やワセリンなどが用いられます。アトピーなどの治療にも利用されます。

    乳頭パジェット病の場合は、基本的に乳がんと同じ治療方法となります。乳腺外科で手術を行い、放射線治療などが追加で行われることもあります。

    乳腺外科の検査でとくに異常が見られない場合には、ほかの疾患や女性ホルモンのバランス、更年期症状の可能性もあるため、内科や産婦人科で乳頭炎の原因をみつけて治療します。

日常でできる乳頭炎の対策

乳頭炎 ケア

日常生活でできるケアはありますか?

    ブラジャーをしないで衣類を着ると、乳首の摩擦や乾燥を招くことがあります。下着は正しく着用して、刺激から乳首を守りましょう。

    下着が擦れて痛いときには、下着の材質が肌に合わない、ブラジャーのサイズが合っていない可能性があります。

    綿やシルクなど、通気性がよく肌触りの柔らかい天然素材を使った下着を選ぶようにします。また、ブラジャーは専門店で正しいサイズを計測してもらって購入しましょう。

    乳頭や乳輪が乾燥しているときには、敏感肌用や乳首専用の保湿クリームなどでやさしく保湿をします。とくにアトピー性皮膚炎のある方は乳頭や乳輪に湿疹を起こしやすいので、日頃から保湿に加えて乳頭にガーゼを当てる、ベビーオイルを塗るなど保護にも気を配りましょう。

かゆみが強いときの対処法を教えてください。

    皮膚炎であれば病院で処方してもらった薬を使いながら、汗や汚れを洗い流して清潔にしていれば治りますが、再発する可能性があります。こすり洗いや洗浄力の強いボディソープの使用は避け、泡を立てて包み込むようにやさしく洗いましょう。

    かゆみが強くてついつい掻きむしってしまいそうなときには、シャワーで汗などを洗い流したりガーゼで包んだ保冷剤で冷やしてみたりしましょう。

編集部まとめ

乳頭炎の原因はさまざまです。自分でできるケアを行っても改善しないようであれば、症状に合った診療科に相談しましょう。痛み以外の症状もチェックして医師に伝えられると、早期診断と治療につながります。症状がひどいときやなかなか治らないときには病気が隠れている可能性もあるため、無理せず病院を受診してください。

この記事の監修医師