「強皮症」とは?症状・原因・治療方法も解説!【医師監修】
強皮症とはさまざまな要因によって皮膚や内臓が硬くなる、指定難病です。強皮症には全身性強皮症と限局性強皮症があり、多くの場合は全身性強皮症を強皮症と呼びます。
今回は強皮症の症状や原因、検査、予後などについて解説します。
監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)
強皮症とは?
強皮症とは、どのような病気ですか?
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強皮症は皮膚や内臓が硬くなる、指定難病です。皮膚や内臓が硬くなることを硬化、あるいは線維化と呼びます。内臓や皮膚が硬くなる原因は、はっきりとわかっていません。線維化、血管障害、自己免疫など、さまざまな要因が複雑に関係しあって発症すると考えられています。
強皮症は全身性強皮症と限局性強皮症に分かれますが、多くの場合では全身性強皮症を強皮症と呼びます。
全身性強皮症は、膠原病に属する病気です。膠原病とは身体の2ヶ所以上に、同様の病変が起こる病気のことをいいます。全身性強皮症は皮膚や内臓など、2ヶ所以上に硬くなる病変が起こるため、膠原病に属します。
また全身性強皮症は、びまん皮膚硬化型全身性強皮症と、限局皮膚硬化型全身性強皮症に分かれます。
全身性強皮症と、限局性強皮症の違いを教えてください。
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全身性強皮症は内臓や皮膚が硬くなるのに対し、限局性強皮症は皮膚のみが硬くなります。限局性強皮症では、内臓は硬くなりません。
まれに限局性強皮症の患者さんが、医師から「強皮症」とだけいわれて、全身性強皮症と勘違いしてしまうことがあるので、注意が必要です。
びまん皮膚硬化型と、限局皮膚硬化型についても教えてください。
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全身性強皮症は患者さんによって、病気の進行や内臓が硬くなる範囲が大きく違います。びまん皮膚硬化型全身性強皮症は、強皮症の典型的な症状を発症して、病状が急速に進行します。
一方で限局皮膚硬化型全身性強皮症は、びまん皮膚硬化型全身性強皮症と比べて大半が軽症です。病状の進行はゆっくりで、ほとんど進行しない場合もあります。
これら2つの分類によって、発症後の病状の進行具合や内臓の病変について、ある程度推測できます。
強皮症の症状
強皮症の症状を教えてください。
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強皮症は多くの場合、手指が突然白くなるレイノー現象から始まります。特に寒い場所や冷たいものを触るなどの寒冷刺激で発症することが多く、手指が白や紫や赤に変色します。
続いて起こるのが皮膚の硬化です。先に皮膚が腫れ、その後に手背、前腕、上腕、胴体と身体の中心の方に病変が進行していきます。しかし、皮膚硬化の進行具合は人それぞれです。胴体まで皮膚硬化が進行する人もいれば、そうでない人もいます。
さらに肺や心臓、腎臓や消化器などの内臓も硬化します。どの内臓が硬化するかも人それぞれです。肺が硬化した場合は、肺線維症、間質性肺炎、肺高血圧症を発症する可能性があります。
ほかにも、毛細血管拡張、色素沈着、逆流性食道炎など、さまざまな病気を合併する可能性があります。
限局皮膚硬化型
限局皮膚硬化型の症状を教えてください。
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限局皮膚硬化型全身性強皮症は、病気の進行がとても遅いことが特徴です。レイノー現象が数年から数十年続いてから、手指の皮膚硬化が始まります。また、皮膚硬化が起こる範囲も限定的です。手指や手背、前腕や足、顔は硬化しますが、上腕や胴体は硬化しません。
また、手や顔に毛細血管拡張や皮膚カルシウム沈着を伴う場合があります。極めてまれに、十数年から数十年後に肺高血圧症を発症する場合があります。
びまん皮膚硬化型
びまん皮膚硬化型の症状を教えてください。
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びまん皮膚硬化型全身性強皮症では、レイノー現象が現れるとともに、皮膚硬化が急速に進行します。限局皮膚硬化型と違い、胸や腹などの胴体まで皮膚硬化する場合があります。
また内臓の硬化や線維化によって肺線維症になったり、心臓や腎臓、消化器などに病変を起こしたりと、限局皮膚硬化型より内臓病変を合併するリスクが高いのも特徴です。
強皮症の原因
強皮症の原因を教えてください。
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強皮症になる正確な原因は、現在もわかっていません。線維化、血管障害、自己免疫など、さまざまな要因が複雑に関係しあって発症すると考えられています。
また、遺伝病ではないため遺伝しませんが、強皮症になりやすいかどうかに影響する
遺伝子は複数あると考えられています。ほかにも、生まれてから現在までの環境も関係すると考えられており、まだまだ原因を特定できていないのが現状です。
繊維化
繊維化による強皮症について教えてください。
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コラーゲンの合成と分解のバランスを保つことで、皮膚は健康を維持しています。しかし、合成と分解のバランスが崩れるとコラーゲンが蓄積されていき、線維化してしまうのです。皮膚が線維化することで、皮膚硬化が起こります。
血管障害
強皮症の血管障害について教えてください。
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強皮症の初期症状に多いレイノー現象は、血管障害によるものです。レイノー現象が進行すると、手指や足に潰瘍ができる場合や、壊疽(えそ)にまで進行する場合があります。
自己免疫
自己免疫による強皮症について教えてください。
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免疫とは、体内に侵入してきたウイルスや細菌などの敵を攻撃して、自分の身体を守る働きです。しかし、自分の身体を敵と判断して攻撃してしまうことがあり、これを自己免疫といいます。
強皮症は、この自己免疫が関係している可能性があります。
強皮症の受診科目
強皮症が疑われる場合、何科を受診すればいいでしょうか?
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強皮症は、皮膚科や膠原病内科などに在籍している強皮症の専門医に診てもらった方がいいのですが、患者自身で強皮症と判断はできません。レイノー現象や手指の皮膚硬化などの症状が現れたら、できるだけ早く皮膚科や内科などを受診してください。
診察や検査を行った上で必要な場合、専門医に紹介されるのが一般的な流れです。
また、受診の前にレイノー現象をスマートフォンなどで撮影しておきましょう。多くの場合、レイノー現象は突然起こり、受診時には消えています。写真を撮っておくことで、医師に確認してもらうことができます。
強皮症の検査
強皮症が疑われる場合、どのような検査が行われますか?
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強皮症が疑われる場合、スキンスコアと呼ばれる皮膚硬化をチェックする検査や、血液検査、キャピラロスコピーと呼ばれる毛細血管顕微鏡での観察、胸部X線、CT、心臓超音波検査などを行います。
診断基準や分類基準、重症度分類などがあり、専門医の診断が必要です。検査を行って診断が出たら、専門医の説明をしっかり聞きましょう。
強皮症の性差・年齢差
強皮症に性差・年齢差はありますか?
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男女比は1:12で、女性に多い病気です。発症しやすい年齢は30〜50代です。また、日本の患者数は約3万人と推定されています。
強皮症の治療方法
強皮症の治療方法を教えてください。
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現在まで、強皮症を治癒させる薬や治療法はありません。しかし、進行を阻止するために、多少の効果が期待できる薬が開発されてきました。
症状が軽い限局皮膚硬化型全身性強皮症では、症状を抑える対症療法が行われます。びまん皮膚硬化型全身性強皮症では、皮膚硬化にステロイド少量内服、間質性肺炎にシクロホスファミドなどの薬が使われ、進行をできるだけ阻止します。
強皮症の予後
強皮症治療の予後について教えてください。
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強皮症の予後は、内臓に病変があるかどうかで大きく違います。びまん皮膚硬化型全身性強皮症でも、内臓病変の少ない型では、10年生存率が約70%といわれています。一方で内臓に病変があると、予後は悪化します。
強皮症による重篤な内臓病変は、間質性肺炎、肺高血圧症、腎不全、心不全、四肢切断、低栄養などがあります。こういった内臓病変を起こさないためには、できるだけ病気の進行を遅らせなければなりません。医師の指示をしっかり聞いて、治療を行ってください。
編集部まとめ
強皮症は皮膚や内臓が硬くなる、指定難病です。多くの場合、手指が突然白くなるレイノー現象が初期症状として現れます。その後に皮膚硬化が始まりますが、進行速度と進行範囲は型によります。
しかし、現在まで強皮症を治癒させる薬や治療法はありません。薬によって病変の進行を遅らせる、症状を抑えるなどの対症療法が行われます。
予後は、内臓病変が少ない型では良好ですが、内臓病変がある場合は重篤な合併症を引き起こす可能性があります。
専門医による診断と治療が必要です。レイノー現象や手指に皮膚硬化が起こった場合は、すぐに皮膚科や内科を受診してください。強皮症が疑われる場合は、専門医を紹介されるのが一般的です。