「リンパ節炎」とは?症状・原因・何科を受診するべきかについても解説!
リンパ節炎は、リンパ節の腫れや圧痛がみられる病気です。細菌やウイルスの感染が原因でなることが多く、通常は1〜2週間でよくなります。悪性疾患との鑑別や、原因に応じた治療が必要なため、診断を受けて適切な治療を行うことが大切です。
今回はリンパ節炎の症状や原因、受診すべき科などについて詳しく解説します。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
リンパ節炎とは
リンパ節炎とはどのような病気ですか?
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体のリンパ節のひとつ、もしくは複数に炎症が起こる病気です。リンパ節に腫れと圧痛の症状がみられます。
細菌、ウイルス、真菌、原虫などの感染症に伴って起こる場合が多く、齲歯(通称:むし歯)や扁桃腺炎に随伴する炎症所見、あるいは結核などの感染症が契機となってリンパ節が生理的に腫大して発症します。
急性リンパ節炎と慢性リンパ節炎に分けられます。
急性リンパ節炎
急性リンパ節炎とはどのような特徴がありますか?
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イルスや細菌が原因となって起こるリンパ節炎の中でも高い頻度でみられます。
急性咽頭炎、急性扁桃炎、急性副鼻腔炎、虫歯などから首のリンパ節が炎症を起こすこともあります。痛みを伴って急激に腫れるのが特徴です。抗菌薬、消炎鎮痛薬の使用と、原因の病気に対する治療を行います。ほとんどのケースは1~2週間程度でよくなります。
慢性リンパ節炎
慢性リンパ節炎とはどのような特徴がありますか?
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長期にわたってリンパ節炎が続く状態です。
急性リンパ節炎が治らずに長引いて慢性リンパ節炎になる場合と、亜急性壊死性リンパ節炎、結核性リンパ節炎などの特有のものがあります。
リンパ節炎の症状
リンパ節炎の原因
リンパ節炎の原因は何ですか?
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細菌、ウイルス、原虫などの感染や、亜急性壊死性リンパ節炎が原因となります。
感染
感染源にはどのようなものがありますか?
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細菌やウイルス、原虫などが感染して起こります。
- 細菌
- ウイルス
- 原虫
レンサ球菌、 溶連菌、結核菌、 梅毒、淋菌などの菌が原因となります。
体に負った傷や水虫などから細菌に感染したり、あるいは扁桃炎や咽頭炎、齲歯を引き起こす原因菌がリンパ節に侵入して発症します。
梅毒や淋菌などによる性感染症も原因となります。
結核菌が感染して起こる結核性リンパ節炎は、肺結核がみられなくても発症する可能性があり、口腔内や咽頭粘膜、肺病巣から結核菌がリンパ節へ侵入することで罹患します。
初期は、痛みがあっても軽く、リンパ節の腫れは数個までと限定的ですが、時間が経過すると炎症を起こしてリンパ節同士が癒合して周囲組織と癒着を認めることもあります。化膿して、皮膚の下に膿がたまることもあります。
伝染性単核球症、サイトメガロウイルスなどが原因となります。
伝染性単核球症は、EBウイルスに感染することで発症します。伝染性単核球症によるリンパ節炎では、扁桃炎の症状とともに首の両側に複数のリンパ節の腫れが生じます。全身のリンパ節の腫れもみられます。
トキソプラズマなどの原虫が、傷から侵入してリンパ節炎を起こします。
亜急性壊死性リンパ節炎
亜急性壊死性リンパ節炎について詳しく教えてください。
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リンパ節の腫れ、発熱、発疹が主な症状です。風邪のような症状がみられたあとにリンパ節の腫れがみられることが多く、1週間以上にわたって、38度以上の発熱が続きます。場合によっては、熱は1カ月程度下がらないケースもあります。
リンパ節の腫れは首に多く、わきの下もよくみられる箇所です。体の片側のみのときもあれば、両側に生じるときもあります。痛みを伴う場合もあります。原因は不明です。
リンパ節炎の受診科目
リンパ節炎が疑われたら、何科を受診すればよいでしょうか?
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リンパ節炎では、首のリンパ節の症状がよくみられます。首の症状は、耳鼻咽喉科の診療領域です。
リンパ節の腫れの原因が、むし歯などの歯の病気であるとはっきりしている場合は歯科になります。足の怪我が原因で鼠径部のリンパ節の腫れが生じている場合は外科、陰部の感染の場合は泌尿器科の診療領域です。
とくにはっきりとした原因がない場合や風邪などの全身疾患の場合は内科を受診しましょう。
リンパ節炎の検査
リンパ節炎ではどのような検査を行いますか?
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通常は症状や経過から診断が可能です。症状および原因だと思われる事柄について問診し、リンパ節の状態を触診で確認します。原因が特定できない場合は、血液検査、超音波検査などの画像検査、生検、培養検査などを実施します。
問診・触診
問診・触診では何を調べますか?
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リンパ節炎と同じようにリンパ節の腫れが生じるがんや悪性リンパ腫などの病気との鑑別を行います。
感染症が原因だと痛みがあり、数日間で腫れが大きくなりますが、悪性疾患は数週間から数カ月かけてゆっくりと腫れ、痛みがない場合が多いです。ただし、悪性リンパ腫や急性白血病も感染症と同じような経過をたどることがあるので注意が必要です。
結核性はゆっくりと腫れ、痛みはありません。
リンパ節炎の表面は平らでやわらかく、動きがあり、圧痛や痛みを認めます。がんの表面は凸凹で硬く、組織とくっついて動きがありません。悪性リンパ腫は表面は平らですが、硬くて動きがあり、圧痛はない場合が多いです。これらを触診で確認します。
血液検査・画像検査
血液検査・画像検査では何を調べますか?
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血液検査、画像検査で白血球数、肝臓、腎臓などの機能を調べます。腫瘍との鑑別も行います。
超音波検査、レントゲン検査、CT検査などの画像検査で、腫れているリンパ節の位置、形、数、大きさなどを調べます。
生検・培養検査
生検・培養検査では何を調べますか?
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血液検査、画像検査でも原因が特定できない場合は、リンパ節の組織を採取し、顕微鏡で調べる生検や、原因の菌などを特定する培養検査を行います。
リンパ節炎の治療
リンパ節炎ではどのような治療を行いますか?
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リンパ節の腫れ、痛みなどの炎症症状を抑えるために、消炎鎮痛薬を使用するとともに原因を特定し、原因に対する治療を行います。細菌感染の場合は抗菌薬を用います。
亜急性壊死性リンパ節炎は抗菌薬は効かないので、ステロイド薬や消炎鎮痛薬による対症療法を行います。1~3か月でほとんどの症例は治りますが、一時的に免疫不全状態になることが多く、細菌感染の予防、治療が大切です。
リンパ節炎の性差・年齢差
リンパ節炎に性差や年齢差はありますか?
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亜急性壊死性リンパ節炎の男女比は、1対3で女性に多い特徴があります。幅広い年齢層にみられますが、比較的若年層に多い傾向がみられます
編集部まとめ
リンパ節炎は、ひとつ、もしくは複数のリンパ節の腫れ、痛み、圧痛がみられる病気です。原因は細菌やウイルスなどの感染が多く、むし歯や亜急性壊死性リンパ節炎といった特定の病気からも起こります。
感染が原因であれば、抗菌薬を使用して1~2週間程度で治りますが、悪性リンパ腫や腫瘍などとの鑑別が必要なため、首のリンパ節の症状なら耳鼻咽喉科、原因が傷とわかっている場合は外科、全身にも症状が出ている場合は内科を受診しましょう。