「性器ヘルペス」とは?男女別の症状・治療法についても解説!【医師監修】
性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルスが性器に感染することで発症します。女性が男性より、約2倍多い疾患です。疑われる場合、男性は泌尿器科、女性は婦人科を受診しましょう。
今回は性器ヘルペスの症状や原因、治療方法、感染・再発予防法などについて解説します。
監修医師:
平澤 陽介(東京医科大学病院)
2010年3月 横浜労災病院 初期研修修了
2011年4月 慶應大学病院 泌尿器科 助教
2014年4月 東京医科大学病院 泌尿器科 助教
2018年4月 東京医科大学病院 泌尿器科 助教・医長 医学博士取得
2019年5月 Cedars Sinai (アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス)にResearch fellowとして留学
2021年4月 東京医科大学病院 泌尿器科 講師
目次 -INDEX-
性器ヘルペスとは?
性器ヘルペスとは、どのような疾患ですか?
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性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルスが性器に感染することで発症する疾患です。男女ともに発症する可能性があります。性器やお尻、その周りに水ぶくれ、痛みやかゆみなどが現れます。
単純ヘルペスウイルスは一度感染すると、ずっと体内に居続ける(潜伏感染する)ウイルスです。疲労やストレスなどで免疫力が低下した時に、再活性化・増殖し、宿主に病態を引き起こすことがあります。
単純ヘルペス1型と2型の2種類のタイプがあり、1型は約60%、2型は約10%の人が保有していると考えられています。
単純ヘルペスウイルスは性器と口に感染し、性器に感染すると性器ヘルペス、口に感染すると口唇ヘルペスです。性器ヘルペスは、2型が再発しやすいのが特徴です。
しかし、感染すれば発症するのではなく、感染しても約80%の人は発症しないと考えられています。
性器ヘルペスの症状
性器ヘルペスの症状を教えてください。
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男性よりも女性の方が、痛みや不快感が強くなる傾向があります。特に初めて発症するときは、かなり強い痛みが現れます。
発熱したり、鼠径部のリンパ節が腫れたりなどの症状が現れたり、膀胱炎が起こることもあります。これらの症状は3週間ほど続いてなくなる場合が一般的です。
単純ヘルペスウイルスは、ストレスや疲労、風邪や発熱などで免疫力が低下しているときに再発します。毎月のように再発する人や年に1回という人まで頻度はさまざまです。
初めて発症するときと比べて、再発時の症状は軽い場合が多く、約60%の人は無症状といわれています。また、すでに1型に感染している人が2型に感染してもあまり症状がないなど、別のヘルペスウイルスを持っているかどうかでも症状の強さが変わることがあります。
男性の症状
男性の症状について教えてください。
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男性は女性よりも症状が軽い場合が多いものの、女性より再発しやすいといわれていて、3ヵ月以内に50%以上の人が再発するといわれています。性交渉やオーラルセックスなどで感染してから、発症するまでの潜伏期間は2〜10日です。
陰茎に小さな水疱が多数発生して、3〜5日後に水疱が破れて潰瘍化します。また、初めて感染したときは症状が強いです。全身の倦怠感や、鼠径部のリンパ節が腫れる、尿道が痛む、などの症状が現れます。
また、症状があるうちに性交渉をすると、移してしまう可能性が高いので注意しましょう。
女性の症状
女性の症状について教えてください。
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男性より症状が強いのが特徴です。性交渉やオーラルセックスなどで感染してから発症するまでの潜伏期間は、男性と同様に2〜10日です。
まず、外陰部の不快感や、皮膚をこすったりかきたくなったりする掻痒感(そうようかん)を感じはじめます。その後、両側の大陰唇と小陰唇に水ぶくれができます。水ぶくれが破れると潰瘍化して、排尿時や歩くときに強く痛むようになるのです。
また、発熱や頭痛、鼠径部のリンパ節が腫れる、全身倦怠感など、さまざまな症状が現れる場合があります。ウイルスが膀胱に入ると、頻尿や排尿痛などの膀胱炎のような症状が現れる場合もあります。
そして、男性よりも少ないものの、ストレスや疲労、月経などで再発することがあります。ひどい場合は月経ごとに再発する人もいることが女性の特徴です。多くの場合、再発時の症状は軽くすみます。
もっとも注意しなければならないのは、出産時です。出産時に性器ヘルペスの症状が出ている場合、産道を通るときに子どもが感染するリスクがあります。新生児がヘルペスウイルスに感染すると重症化するリスクがあるので、必ず担当医に伝えてください。
再発時の症状
再発時の症状について教えてください。
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再発時は、多くの人が前兆を感じます。性器がヒリヒリチクチクしたり、鼠径部にびりびりと神経痛が生じたりなどです。その後に、水ぶくれができます。
ストレス、疲労、寝不足、月経などで免疫力が低下すると再発しやすいので、注意しましょう。しかし、再発しても、リンパ節の腫れや発熱はほとんど発生せず、多くの場合は初めてのときよりも軽症です。
性器ヘルペスの原因
性器ヘルペスの原因を教えてください。
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単純ヘルペスウイルスの感染症で、主な感染経路は性行為やオーラルセックスです。稀に、ウイルスがついた便座やタオルから感染することがあります。
ウイルスに感染すると生涯、身体の中の神経節に潜伏し、ストレスや疲労などで免疫力が低下したときに再発します。
また、ウイルスを持っているからといって感染させやすいわけではありません。水ぶくれなどの症状が出ているときに、感染させるリスクが高まります。もちろん症状がなくても、ウイルスが皮膚まで出てきていることがあるので、感染させるリスクはあります。
感染した人の約20%が発症するといわれ、数年あとに発症することもあります。そのために浮気を疑われることがあるのですが、数年前に感染している可能性もあるため、いつ感染したのかわからないことが多いのです。
性器ヘルペスの受診科目
性器ヘルペスの症状が疑われる場合、何科を受診すればいいでしょうか?
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男性は泌尿器科、女性は婦人科を受診しましょう。
性器ヘルペスの検査
性器ヘルペスが疑われる場合、どのような検査が行われますか?
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問診や視診を行い、血清抗体検査を行うことが一般的です。しかし、どの検査方法を行っても、ヘルペスウイルスを確定することはできません。
性器ヘルペスの性差・年齢差
性器ヘルペスに、性差・年齢差はありますか?
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男性より女性の方が約2倍多く、20歳代から患者数が増加します。
性器ヘルペスの治療法
性器ヘルペスの治療法を教えてください。
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性器ヘルペスの治療は、抗ヘルペスウイルス薬の服用が一般的です。しかし、ウイルスが増えるのを抑える働きがあるものの、ウイルスを完全になくすことはできません。
飲み薬の抗ヘルペスウイルス薬は、神経にいるヘルペスウイルスの増殖を抑えます。身体の中で増殖を始めて皮膚まで出てくるので、身体の中でヘルペスウイルスの増殖を抑えることが有効なのです。
塗り薬の抗ヘルペスウイルス薬もあります。皮膚や粘膜のヘルペスウイルスの増殖を抑えます。アシクロビルやビダラビンなどがあります。アシクロビルはヘルペスウイルスのDNAの複製を阻害し、ビダラビンは、ヘルペスウイルスのDNAポリメラーゼという合成酵素を強力に阻害します。しかし、塗り薬は皮膚に出ているウイルスにしか効果はありません。軽症の場合や、治りかけの症状に使用されます。
また、症状が重症な場合は、抗ヘルペスウイルス薬を点滴する場合もあります。
ほかにも水ぶくれが出ている時の治療や、再発に備えたり、再発をしにくくしたりする治療があります。
水ぶくれの治療
水ぶくれの治療法を教えてください。
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水ぶくれが出ているときも、飲み薬が処方されます。しかし、飲み始めても2日ほどは症状が悪化する場合があります。また、水ぶくれが治っても神経ではヘルペスウイルスが増殖しているので、処方された分は必ず飲み切ってください。
再発に備える治療
再発に備える治療について教えてください。
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性器がヒリヒリチリチするなどの前兆を感じた段階で受診しましょう。早めに飲み薬を飲むことで、再発を防ぐ可能性が高まる上に、薬の服用も少なくすみます。
再発をしにくくする治療
再発をしにくくする治療について教えてください。
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薬を飲み続けることで再発をしにくくする再発抑制療法があります。発症を防ぐことで、再発防止だけでなく感染防止にもなるので、再発しやすい人は医師に相談してみてください。
性器ヘルペスの感染・再発防止
性器ヘルペスの感染や再発防止法を教えてください。
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性器ヘルペスの症状がでているときは、ボディソープやせっけんなどをしっかり泡立てて、優しく洗ってください。患部に触れた手や指もしっかり洗いましょう。また、バスタオルの共用も控えましょう。
バスタオルや衣類についたヘルペスウイルスは、洗濯と乾燥で除去できます。
そして、症状が出ているときは性行為やオーラルセックスを控えてください。症状が出ていないときも、コンドームを使用すると感染リスクが下げられます。
ほかにも、十分な睡眠や栄養バランスのいい食事、適度な運動でストレスを溜めないようにしましょう。
編集部まとめ
性器ヘルペスは単純ヘルペスウイルスが性器に感染することで発症します。男性よりも女性の方が、痛みや不快感が強いのが特徴です。男性は陰茎、女性は両側の大陰唇と小陰唇に水ぶくれができます。水ぶくれが破れると潰瘍化して、強く痛みます。
治療は抗ヘルペスウイルス薬の飲み薬と塗り薬を併用します。ヘルペスウイルスを体内からなくすことはできませんが、増殖を防ぐことができます。処方された分は最後まで飲みきりましょう。
性器ヘルペスが疑われる場合、男性は泌尿器科、女性は婦人科を受診してください。