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「クレチン症」とは?症状・原因・治療法についても解説!【医師監修】

 更新日:2023/07/13
「クレチン症」とは?症状・原因・治療法についても解説!【医師監修】

クレチン症(先天性甲状腺機能異常症)は、新生児マススクリーニングの対象疾患にもなっている病気です。「先天性甲状腺機能低下症」の通称で、「生まれつき甲状腺がないか小さい・甲状腺はあるが甲状腺ホルモンが上手くつくれない」というのが定義です。

成長するのに欠かせない甲状腺ホルモンが不足すると、身体だけでなく脳の発育にも関わるため早期発見が重要です。

今回はクレチン症(先天性甲状腺機能異常症)の症状や原因、治療などを詳しく解説します。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

クレチン症とは

クレチン症とは?

クレチン症とはどのような疾患でしょうか?

クレチン症とは「先天性甲状腺機能低下症」の通称です。この病気は、生まれつき甲状腺の働きが弱く甲状腺ホルモンが欠損することによりおこります
発生頻度は8000人に1人程度といわれています。甲状腺ホルモンが不足したまま成長すると発育や知能発達に障害がおこることから、早期発見と早期治療が重要な疾患です。
程度はさまざまあり、軽度のものから重度のものまで人によって症状が違います。新生児マススクリーニング検査で見つかれば、そのまま治療を開始します。クレチン症は、妊娠中に母体の影響を受けるためにおこる一過性のものと、生涯にわたり治療が必要なものがあります。

クレチン症の症状

クレチン症の症状とは?

クレチン症の症状にはどのような特徴がありますか?

出生してすぐは正常なので、検査は出生してすぐにはしません。クレチン症はほとんどがマススクリーニング検査でみつけられますが、クレチン症に気が付かないまま新生児が成長すると、だんだんと発達に遅れがでることが特徴です。
クレチン症にかかっている新生児期には黄疸が長く続きます。便秘や臍ヘルニアもみられます。かすれたような泣き声や手足の冷感、皮膚の乾燥、あまり汗をかかないなどの特徴があります。見た目は腹部が大きくふくれ、手足の指が短いなどの特徴もみられます。顔つきにも特徴があり、それをクレチン顔貌といいます。
新生児期ははっきりした症状を示しにくいため気付かない場合もあり、多くは乳児期にみられます。原因が母胎の場合などでは、一過性のものもある病気です。

クレチン顔貌

クレチン顔貌とはどんなものでしょうか?

クレチン顔貌とは、クレチン症にかかっている小児にみられる特徴をもった容姿のことです。その特徴として、まぶたがはれぼったい、鼻が低い、常に口があいている、舌が大きいなどが挙げられます

乳児期以降にみとめられやすいクレチン症の特徴

新生児期よりも乳児期のほうがみとめられやすい特徴はありますか?

乳児期以降になると、少し成長の遅れを感じはじめることもあるようです。そして、周囲に興味を示さない、あまり泣かない、よく眠るといった特徴がみられます。体動が不活発、おとなしいなど性格的なものと見分けがつきにくい特徴もあるので、気になる場合は医療機関に相談してみましょう。

クレチン症の原因

クレチン症の原因はどんなものが挙げられますか?

クレチン症は甲状腺ホルモンが不足する疾患のため、原因は先天的に甲状腺がない「無形成」もしくは甲状腺が小さい「低形成」が挙げられます
また、 甲状腺が首の前面ではなく、舌の根もとなど別の場所に存在する「異所性甲状腺」であっても、甲状腺ホルモンを十分につくれません。甲状腺になんらかの異常をきたすと、 甲状腺ホルモンの合成に問題がでるため結果的に甲状腺ホルモンが不足することになるのです。
さらに、 甲状腺に対して指令を出す脳の下垂体や視床下部に障害がある場合も、クレチン症を引き起こす原因として挙げられます。指令を出す脳の影響によって甲状腺ホルモンが不足することにつながるのです。

クレチン症の中には一過性のものもあるようですが、原因はどのようなものでしょうか?

一過性のものは、母親の甲状腺疾患や抗甲状腺剤の内服が原因です。母親が甲状腺機能亢進症で抗甲状腺薬を妊娠中に飲んでいた場合、生まれてきた新生児の体内に抗甲状腺薬が残っているため、一過性で甲状腺機能低下症になるのです。
また、妊娠中に甲状腺機能亢進症になっていることに気が付かないまま未治療でいると、母体の甲状腺ホルモンが胎児に影響します。胎児の下垂体からのTSH分泌を抑制してしまうため、新生児一過性中枢性甲状腺機能低下症になりうるのです。
妊娠中や分娩後授乳時のヨード過剰が新生児の甲状腺のはたらきに影響を及ぼすこともあるので、生まれる前から注意する必要があります。

クレチン症の受診科目

クレチン症は何科を受診したらいいでしょうか?

新生児期に産婦人科で検査をするので、治療が必要であればそのまま病院を紹介されるでしょう。甲状腺クリニックといった専門的な病院もあります。

クレチン症の検査

クレチン症ではどのような検査を行いますか?

新生児マススクリーニング検査を行い、異常がないか調べます。新生児マススクリーニングは、生後4〜6日目のすべての新生児を対象にした検査で、生まれつきの病気を早期に発見するために行われます。

新生児マススクリーニングとは

新生児マススクリーニングとはどういった検査ですか?

新生児マススクリーニングでは、新生児のかかとからランセットという特別な器具を使って血液を採取します。この器具は、痛みがほとんどないように刃が薄くなっており、負担が少なくなるような工夫がされています。自然に出てきた血液を、ろ紙に吸収させて検査をしていきます。検査結果でTSHが高値であれば再採血や精密検査の対象になります。

クレチン症(先天性甲状腺機能異常症)の精密検査とは

クレチン症の精密検査ではどのようなことを行いますか?

精密検査になると、さらに血液検査をする場合があります甲状腺エコー検査、ひざ(大腿骨遠位端骨核)のX線検査も行います。そのときに、ヨード過剰摂取など母親側に原因がなかったのかの問診をし、検査結果を総合的に判断したうえで甲状腺ホルモンの不足が疑われるなら治療を行います。

クレチン症の治療

クレチン症の治療

クレチン症の治療には、どのようなものがありますか?

甲状腺ホルモンの不足を補うため、甲状腺ホルモン製剤を投与します。この治療は早ければ早いほど効果が高いとされ、生後3か月以内に治療が開始できれば正常の発達を期待できます。しかし、発見が遅れ治療開始が生後12か月以後になってしまうと、知能障害を残してしまう場合もあるために、早期の治療が大事です。
一過性のものでは一時的な治療をすることで、その後は自身で甲状腺ホルモンを分泌できますが、生涯に渡って治療をする場合もあります。

クレチン症の性差・年齢差

クレチン症の発症に性差や年齢差はありますか?

約8000人に1人の割合でみつかるといわれています。男女比は1:2で女児が多い病気です。

編集部まとめ

甲状腺ホルモンが不足することでおこるクレチン症は、多くは新生児マススクリーニングでみつかります早期の発見・治療によって成長の遅れや脳の発達の遅れを改善できるため、すべての新生児に検査が行われています。

一過性のものは一時的に治療をするだけですが、原因によっては永続的に続くものもあるため長く病気と付き合うこともあるでしょう。

新生児期に見つからず、成長の遅れなどで気付く場合があります。少しでも違和感を覚えたら早めに医療機関の受診をおすすめします。

この記事の監修医師