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「角膜潰瘍」とは?症状・原因・治療法についても解説!【医師監修】

 更新日:2023/07/13
「角膜潰瘍」とは?症状・原因・治療法についても解説!【医師監修】

角膜潰瘍は、角膜の欠損が深部の実質層にまで及んだ状態です。痛みや大量の涙、白目の充血、異物感などの症状が出ます。細菌や真菌、ウイルスの感染や角膜の傷、アレルギーなどで起こります。

最近ではコンタクトレンズの誤った装用やケアによるアカントアメーバ感染による角膜潰瘍もよくみられます。重症の場合は角膜移植が必要になるため、早期の治療開始が必要です。

今回は角膜潰瘍について、症状や原因、日常における予防対策まで詳しく説明します。

川北 哲也

監修医師
川北 哲也(医師)

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北里大学北里研究所病院院長補佐/眼科部長

角膜潰瘍とは

角膜潰瘍とは?

角膜潰瘍とはどのような病気ですか?

角膜とは、目の一番表面にあり、黒目を覆っている透明でアーチ状の組織です。角膜上皮細胞、基底膜、ボーマン膜、実質層、デメス膜、内皮細胞から成る層状の構造をしています。
目で捉えた情報を脳に送る働きをしている網膜に光の情報を届け、ほこりや細菌が外から目へ侵入するのを防いでいます
角膜潰瘍は、目の表面にある角膜上皮細胞が欠けて、奥にある実質層まで、濁りなどの影響が及んでいる状態です。角膜上皮細胞のみが欠けている角膜びらんよりも深刻な状態で、すぐに治療が必要です。ひどくなると角膜に穴が開いてしまう角膜穿孔になります。

角膜潰瘍の症状

角膜潰瘍ではどのような症状がみられますか?

    角膜潰瘍では次の症状がみられます。症状の進行により、合併症もみられることがあるので注意が必要です。

  • 激しい目の痛み
  • 大量の涙が出る
  • 黒目を囲むようにして白目が充血
  • 目の中に何か入っているような異物感
  • 目がうずく
  • 光をまぶしく感じる
  • 角膜の濁り
  • 角膜上の白色または濁った灰色の点
  • 視力の低下

角膜潰瘍の症状が進行するとどのような合併症がみられますか?

    角膜潰瘍の症状が進行すると、角膜穿孔や前房蓄膿、虹彩脱出などの合併症がみられることがあります。

  • 角膜穿孔
    潰瘍が角膜の奥に深く広がり、穴が開いた状態を角膜穿孔と呼びます。失明のリスクが高くなる状態です。
  • 前房蓄膿
    角膜の裏の部分に膿がたまります。
  • 虹彩脱出
    虹彩の張りが弱い場合に、一時的に傷のある部分から虹彩が眼の外に脱出してしまう状態です。

角膜潰瘍の原因

角膜潰瘍の原因は何でしょうか?

角膜潰瘍の原因は感染性のものと非感染性のものがあります。

感染性の原因

感染性の原因にはどのようなものがありますか?

    感染性の原因には、細菌、真菌、ウイルス、アカントアメーバなどがあります。体力や抵抗力が落ちていると感染しやすく、角膜炎から角膜潰瘍に発展します。

  • 細菌
    ブドウ球菌、肺炎球菌、緑膿菌、アクネ菌、レンサ球菌、モラクセラ、セラチア、淋菌、嫌気性菌などの細菌が原因となります。
    肺炎球菌による角膜炎は、潰瘍がある方向に進行していくため、匐行性(ふくこうせい)角膜潰瘍と呼ばれます。
    草木が目に刺さるなどして傷がついたあとに、細菌感染することもあります。
  • 真菌
    土の中や空気中に存在する真菌が、目に入ったり、コンタクトレンズの誤った装用で目に傷がついたりして感染します。
  • ウイルス
    ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、水痘帯状疱疹ウイルスなどのウイルスでも角膜潰瘍は起こります。ヘルペスウイルスは身体的なストレスがかかったときに再発しやすいですが、とくに原因がなくても再発することがあります。
  • アカントアメーバ
    近年、コンタクトレンズの誤った装用やケア方法などによるアカントアメーバ感染が増加しています。

非感染性の原因

非感染性の原因にはどのようなものがありますか?

    非感染性の原因として、自己免疫疾患、アレルギー反応、角膜の傷、栄養障害性、まぶたを閉じられない目の状態などがあります。

  • 自己免疫疾患
    慢性重症型のアレルギー性結膜で結膜や角膜の炎症が強いタイプでは、角膜潰瘍を生じます。花粉や動物の毛などのアレルゲンなどでも角膜炎を起こし、角膜潰瘍へと進展することがあります。
  • アレルギー反応
    土の中や空気中に存在する真菌が、目に入ったり、コンタクトレンズの誤った装用で目に傷がついたりして感染します。
  • 角膜の傷
    異物が目に入る、酸・アルカリなどの化学薬品による熱傷、コンタクトレンズの長時間装用・連続装用・不適切なケア、重度のドライアイ、糖尿病などで知覚鈍麻があり、角膜の傷が気づかないうちにひどくなる、目をひっかくなどで角膜に傷がついた場合に角膜炎から角膜潰瘍を生じることがあります。
  • 栄養障害性
    ビタミンAやタンパク質の不足が原因で、角膜潰瘍ができます。
  • まぶたを閉じられない目の状態
    まつ毛が内向きに生えている逆さまつ毛、まぶたが内向きに反転している眼瞼内反、まぶたの炎症がある眼瞼炎がある場合に、角膜が乾燥して傷がつき、角膜潰瘍に進展することがあります。

角膜潰瘍の受診科目

角膜潰瘍の受診科目

角膜潰瘍が疑われる症状がみられたら何科を受診すればよいでしょうか?

角膜潰瘍は目の角膜の症状のため、眼科の診療範囲です。
コンタクトレンズを装用した後や、異物、草木などが目に入ったあとに痛みや異物感が1日以上続く、痛みが増す場合には眼科を受診しましょう。
目に異物が入って取れないときも、少しの傷でも重症になる可能性があるため、放置せずに眼科を受診してください。
糖尿病の人など、知覚鈍麻があると気づかないうちに傷が進展してしまいます。目を鏡でみていつもと違う変化がないかを確認する習慣をつけましょう。
ドライアイなどからも角膜潰瘍になることがあります。異物が入った、傷ついたなどのエピソードがなくても、目の痛みや違和感が続くようなら視力低下をきたす場合もあるため、早めに受診しましょう。

角膜潰瘍で行う検査

角膜潰瘍ではどのような検査を行いますか?

角膜潰瘍では細隙灯顕微鏡検査、角膜知覚検査、培養検査などを行います。

細隙灯顕微鏡検査

細隙灯顕微鏡検査とはどのような検査ですか?

細隙灯顕微鏡検査は眼科で行われる一般的な検査です。細隙灯と呼ばれる拡大鏡を使って、目を拡大して詳しくみることができます。
まぶたの表裏や球結膜、角膜を観察し、帯状の光を目に当てて、白目、角膜、結膜、前房水、瞳孔、虹彩、水晶体なども観察します。
特殊なレンズを使って角膜と虹彩が交わる部分などの観察や、染色紙で前眼部に色をつけて、角膜をより詳しく観察できます。

角膜知覚検査

角膜知覚検査とはどのような検査ですか?

感染性角膜炎を診療する際に必要な検査です。
とくに角膜ヘルペスの診断に重要な検査で、角膜の知覚低下の程度を確認できます。
角膜に角膜知覚計のナイロン糸を当てて自覚的に感じたとき、もしくは、まばたきしたときの糸の長さで判断します。

培養・感受性検査

培養・感受性検査はどのような検査ですか?

感染性の角膜潰瘍を起こしている場合に、潰瘍のある部分の表面をこすり、検体を採取して培養・感受性検査を行います。
感染の原因となっている細菌、真菌、ウイルスなどを特定し、原因に応じた薬を選択するのに有用な検査です。

角膜潰瘍の治療方法

角膜潰瘍の治療方法

角膜潰瘍の治療をする場合、どのような治療方法がありますか?

角膜潰瘍の治療は薬物療法を中心に行い、症状が改善しない場合は角膜移植も検討されます。

薬物療法

薬物療法はどのような治療を行いますか?

抗菌薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬の点眼薬や眼軟膏、内服薬を用います。重症例では結膜下注射や点滴も行われます。
アカントアメーバが原因の場合は、角膜表面を何度も削り取る治療を併用することもあります。

角膜移植

角膜移植はどのような治療ですか?

薬物療法を行っても症状が改善せず、濁りが残って視力が低下している場合や角膜潰瘍が進行して角膜穿孔が起こった場合には、亡くなった方の健康な角膜を移植する角膜移植が必要になります。

角膜潰瘍の日常生活における予防対策

角膜潰瘍の日常生活における予防対策

日常生活における予防対策について教えてください。

    角膜は細胞がむき出しになっているため、ダメージを受けやすく、感染や傷を引き起こしやすい組織です。ダメージを最小限に抑えるためには、日常生活において、次のような角膜を保護する対策を行いましょう。

  • コンタクトレンズの正しい使用方法、ケア方法を守る
  • テレビやゲーム機、パソコンなどの液晶画面を長時間見続けない
  • 紫外線対策として、外出時はサングラスなどで目を保護する
  • 逆さまつげなどがある場合は、治療用ソフトレンズなどの適切な治療を受ける
  • ドライアイの場合は目薬などで目の乾きを防ぐ
  • 目に異変を感じたらすぐに眼科を受診する

編集部まとめ

角膜潰瘍は黒目の表面の角膜が欠け、角膜表面にとどまらず深層の実質層まで傷が及ぶ状態です。重症な状態のため、すぐに治療が必要です。

目に入った異物から感染する場合や、コンタクトレンズの誤った使用やケア、ドライアイなどで起こります。症状が進むと角膜に穴が開き、最悪の場合は失明するので、痛みや異物感があればすぐに眼科を受診しましょう。

角膜潰瘍を起こさないためには、日ごろからコンタクトレンズの正しい装用とケアを守り、眼球の乾燥を防ぐなどの角膜を保護する対策も大切です。

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