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「外陰炎」とは?症状・原因・治療法についても解説【医師が監修】

 更新日:2023/04/03
「外陰炎」とは?症状・原因・治療法についても解説【医師が監修】

外陰炎は女性の腟周囲の外陰部と呼ばれる組織に起こる炎症です。真菌や細菌の感染、性感染症、下着やナプキンの摩擦、使っている洗剤や石けん、女性ホルモンの低下などでも起こります。治療は原因に対応した塗り薬や腟剤などを用いるとともに、日常生活で外陰部に刺激を与える要因を避け、清潔に保つようにします。
今回は外陰炎の症状や原因、治療法などについて詳しく説明しています。

前田 裕斗

監修医師
前田 裕斗(医師)

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東京大学医学部医学科卒業。その後、川崎市立川崎病院臨床研修医、神戸市立医療センター中央市民病院産婦人科、国立成育医療研究センター産科フェローを経て、2021年より東京医科歯科大学医学部国際健康推進医学分野進学。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。

外陰炎とは

外陰炎とはどのような病気ですか?

外陰炎は、女性の外陰部に赤み、腫れ、痛み、熱感などの炎症が起こった状態です。外陰部は、腟の開口部周囲の組織で、恥丘、大陰唇、小陰唇などで構成されています。

腟内の炎症が外陰部にも広がり、腟内と外陰部の両方に炎症が起こっている場合は、外陰腟炎と言います。

外陰炎の症状

外陰炎ではどのような症状がみられますか?

外陰炎では次の症状がみられます。
  • 外陰部の赤み、痛み、熱感、ただれ、かゆみ、ヒリヒリす
  • 下着やナプキンが外陰部と擦れると炎症が広がる
  • かゆみで引っ掻いて傷ができると、排尿時に痛みが強くなる
  • 異物感、しこり、潰瘍、出血がみられる場合もある
慢性的な外陰部の炎症では、かゆみが続くほか、外陰部の皮膚がうろこ状になる、肥厚化、茶褐色や白っぽくなるなどの変化が起こります。また、腟に炎症が起こっている場合は、おりものの量の増加、色・形状・においの変化がみられることもあります。

外陰炎の原因

外陰炎の原因は何でしょうか?

外陰炎の原因は、細菌や真菌、原虫、ウイルスなどに感染して起こる感染性のものと、接触による刺激やホルモンなどの影響の非感染性のものとに分けられます。

感染性の原因

感染性の原因にはどのようなものがありますか?

感染性の原因として、外陰腟カンジダ症、性感染症、非特異性外陰皮膚炎があります。

・外陰腟カンジダ症
真菌のカンジダ属によって起こる性器の感染症で、腟炎と外陰炎が合併して起こります。妊娠時や風邪などの体調不良時、糖尿病の人、抗菌薬を使った後など、免疫が低下していると起こりやすくなります

・性感染症
性器ヘルペス、トリコモナス、クラミジア、尖型コンジローマ、淋病などの性感染症でも外陰炎が起こります。

・非特異性外陰皮膚炎
ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌、大腸菌などのさまざまな細菌によって起こる毛嚢炎などでも起こります。

ぎょう虫や毛じらみなどでも外陰炎を生じることがあります。

非感染性の原因

非感染性の原因にはどのようなものがありますか?

非感染性の原因として、萎縮性外陰炎、接触性皮膚炎、市販薬、病気による外陰炎があります。

・萎縮性外陰炎
閉経後や高齢になり、女性ホルモンが低下すると起こります。

・接触性皮膚炎
汗、腟分泌物、合成繊維の下着、尿、石鹸、ナプキン・パッド、入浴剤、香水、脱毛クリーム、タンポンのひも、きつい衣服、トイレットペーパー、洗剤、過度な洗浄、毛剃り、長時間の座位、月経時の血液、尿や便の付着などの刺激によって外陰炎が起こります。

・市販薬
市販の軟膏やクリームなどの薬を自己判断で使うと、かゆみなどの症状が悪化することがあります。

・悪性腫瘍
外陰部の腫れや痛みなどの症状が外陰がんなどの悪性腫瘍から起こっている場合もあります。

外陰炎の受診科目

外陰炎の受診科目

外陰炎が疑われる症状が見られたら何科を受診すればよいでしょうか?

女性器の症状がみられる外陰炎は婦人科・産婦人科で診療しています。

外陰部の炎症症状を鎮める市販薬もありますが、市販薬を自己判断で使用すると、症状が悪化して長引くこともあります。

腟部の炎症が広がって外陰部の炎症が起こっている場合や、外陰がんなどの悪性腫瘍が原因のこともあるので、婦人科・産婦人科を受診して適切な診断・治療を受けましょう。

女児の場合は小児科を受診しましょう。

外陰炎の検査

外陰炎の検査

外陰炎ではどのような検査を行いますか?

問診にて、外陰炎が起こっている原因として考えられるエピソードや衛生状態について質問してから、医師が外陰部を診察し、皮膚の状態や分泌物の有無を確認します。

どのような細菌やウイルスがいるかを調べるために実施するのが細菌検査やウイルス同定検査です。綿棒のようなもので外陰部の炎症が起こっている部分を擦って検体を採取します。

内診や、腟内の分泌物を採取して顕微鏡で調べる場合もあります。腟内に出血が見られる場合は、子宮頸部を専用の器具を擦って細胞を採取し、子宮がん検査を行うこともあります。

外陰炎の治療

外陰炎の治療をする場合、どのような治療方法がありますか?

外陰炎の治療は薬物療法や医療機関における処置を行います。日常生活において、外陰炎にならないための予防対策を継続することも大切です。

薬物療法・処置

薬物療法・処置はどのようなことを行いますか?

接触性の外陰炎に対して、保湿剤や非ステロイド抗炎症薬の塗り薬を用います。改善しない場合や皮膚炎の程度が中等度の場合は、ステロイド薬の塗り薬を使用します。

萎縮性外陰炎に対して、女性ホルモンの腟内投与や経口投与、女性ホルモン剤の軟膏、クリームなどの塗り薬を塗布します。

外陰腟カンジダ症に対して、腟洗浄の処置、イミダゾール系・抗真菌剤の腟坐剤や腟錠、軟膏やクリームなどの塗り薬を用います。

毛嚢炎に対しては抗生剤、性器ヘルペスに対しては抗ウイルス剤の内服や塗り薬を塗布します。尖圭コンジローマに対しては、軟膏の塗布や電気メスで削り取ります。

日常生活上の注意

日常生活上の注意

日常生活上の注意について教えてください。

日常生活上で外陰炎にならないための予防対策として、外陰部を刺激する要因を避ける、外陰部を清潔に保つ、症状を繰り返す場合は早めに医療機関を受診することを心がけましょう。

・外陰部を刺激する要因を避ける
下着やナプキンなどの外陰部に触れるものを刺激の少ないものに変更する、洗剤やせっけんなどは使い慣れた刺激の少ないものにする、石けんやボディソープは直接塗りつけずにしっかり泡立てて手で丁寧に洗う、弱酸性で低刺激のデリケートゾーン専用の洗剤を使用する、
外陰部との摩擦が起こりやすいきつめの衣服を避けるなどが挙げられます。

・外陰部を清潔な状態に保つ
ナプキンやパッド、おむつをこまめに取り換える、外陰部の汚れは洗って清潔にし、よく乾かす、蒸れた状態が続かないように密着した衣服を避け、通気性の良い下着を着用するなどが挙げられます。

・婦人科・産婦人科を受診する
外陰部に慢性的な炎症があると、外陰がんなどの悪性腫瘍のリスクにつながることもあり、注意が必要です。外陰部の症状が持続する場合や頻繁に繰り返す場合は、婦人科・産婦人科で相談しましょう。

外陰炎の性差、年齢差など

外陰炎に性別差や年齢差などはあるのでしょうか?

女性の外陰部の炎症がみられる状態のため、女性にみられる症状です。
女児から高齢者まで幅広い年齢層で生じます。

萎縮性外陰炎においては、女性ホルモンの低下が要因となり、閉経後の女性や高齢者でみられます。

編集部まとめ

外陰炎は女性の外陰部に起こる炎症です。赤みや腫れ、痛み、ただれ、熱感などの症状がみられます。原因は真菌、細菌、ウイルスの感染や性感染症などの感染によるものと、外陰部への接触性の刺激や女性ホルモンの影響などの非感染性のものがあります。

外陰部の炎症を鎮めるとうたっている市販薬もありますが、自己治療で悪化することもあります。腟内部の炎症や外陰がんなどの病気から外陰炎が起こっているケースもあるため、症状が持続する場合や症状を繰り返す場合は婦人科・産婦人科を受診しましょう。

この記事の監修医師