「急性前立腺炎」とは?症状・原因・検査・治療法についても解説【医師が監修】
更新日:2023/04/03
細菌が尿道から侵入し、前立腺で繁殖することによって起こる、男性特有の尿路感染症のことを「急性前立腺炎」といいます。
細菌性の前立腺炎には急性と慢性がありますが、症状や治療方法が全く違うので注意しましょう。心配なのは、放っておくと他の病気に進展してしまう恐れがあることです。
今回は、急性前立腺炎の症状や原因、検査や治療方法などを紹介します。
監修医師:
竹内 尚史(新松戸中央総合病院)
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東京医科大学卒業。その後、複数の病院を経て、2021年より新松戸中央総合病院にて泌尿器科医として勤務。ダヴィンチ手術を多く手がけている。著書は「前立腺がんは「ロボット手術」で完治を目指す!青月社(共著、改訂版)」。日本泌尿器科学会泌尿器科専門医・指導医、日本性機能学会性機能専門医、日本内分泌学会内分泌代謝科(泌尿器科)専門医、日本泌尿器内視鏡学会 泌尿器ロボット支援手術プロクター認定医(手術指導医)、日本ロボット外科学会Robo Doc認定医・ロボット(da Vinci)手術認定医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医 、日本メンズヘルス医学 テストステロン治療認定医、日本医師会認定産業医。
急性前立腺炎とは
急性前立腺炎とはどのような病気でしょうか?
急性前立腺炎とは、男性特有の尿路感染症です。男性の尿道の奥にある前立腺という組織が感染して起こります。主に尿が出る場所である外尿道から細菌が侵入し、膀胱に達する途中の経路にある前立腺で細菌が繁殖する病気です。
前立腺は、膀胱のすぐ下に位置し、膀胱に溜まった尿を排出する尿道のまわりを取り巻いています。前立腺に炎症が起こることで急な症状が発生するのが急性前立腺炎です。
前立腺は、膀胱のすぐ下に位置し、膀胱に溜まった尿を排出する尿道のまわりを取り巻いています。前立腺に炎症が起こることで急な症状が発生するのが急性前立腺炎です。
急性前立腺炎の症状
急性前立腺炎はどのような症状が現れますか?
注意した方がいい症状
注意しなくてはいけない症状はありますか?
症状が重くなると排尿困難・血尿が見られます。そのまま放っておくと、さらに前立腺に膿がたまり膿瘍を生じて、精巣上体炎になるなど症状が進んでいくので注意しましょう。
こじらせると敗血症になる
こじらせると敗血症になるとはどんな症状ですか?
急性前立腺炎は血液が豊富な場所での炎症となるため、こじらせると全身の血液に細菌がまわり、敗血症となります。怖いのは、血圧が下がってショック状態になることもある「敗血症性ショック」という病気です。
悪寒戦慄(おかんせんりつ)という止めようにも止まらない非常に強い震えが起こります。気分が悪くなり意識が無くなることもあるため、高齢者の場合は命にかかわることも考えなくてはなりません。
悪寒戦慄(おかんせんりつ)という止めようにも止まらない非常に強い震えが起こります。気分が悪くなり意識が無くなることもあるため、高齢者の場合は命にかかわることも考えなくてはなりません。
急性前立腺炎の原因
急性前立腺炎の原因はどのようなことが考えられるでしょうか?
急性の場合は細菌性がほとんどです。その場合は、大腸菌などの腸内細菌や性感染によるものが多く見られます。細菌が尿道から入った場合は、膀胱に行くまでの途中で前立腺炎になることが多いです。
大腸菌などの腸内細菌が原因
大腸菌などの腸内細菌が原因とは、どのようなことがあげられますか?
原因の多くは大腸菌で尿道から侵入します。大腸菌とは、消化器官や肛門に寄生している菌です。
また、泌尿器科的な処置の際に侵入することもあります。例えば、膀胱内視鏡検査・前立腺がん検査の前立腺生検などを受けたときです。
また、泌尿器科的な処置の際に侵入することもあります。例えば、膀胱内視鏡検査・前立腺がん検査の前立腺生検などを受けたときです。
性感染によるものが原因
性感染によるものが原因とは、どのようなことがあげられますか?
性行為によりクラミジアや淋菌に感染し、菌が侵入することがあります。
急性前立腺炎の受診科目
急性前立腺炎が疑われる場合には、何科を受診すればいいのでしょうか
泌尿器科の受診が必要です。適切な管理のために、泌尿器科医の診察やケアを受ける必要があります。熱がある場合は、内科に行くことも考えられますが、排尿時の異常や痛みを伴う場合は、症状を必ず伝えましょう。
急性前立腺炎で行う検査
急性前立腺炎では、どのような検査を行いますか?
尿検査や尿培養のほか、直腸診や腹部超音波(エコー)を行います。
尿検査、尿培養
尿検査、尿培養とはどんな検査ですか?
尿検査では膿尿(尿に白血球が混じっている)や細菌尿(尿に細菌が混じっている)であるか調べる検査です。性感染症が疑われる場合は、検尿で採取した尿を使って「淋菌PCR検査」によって調べる場合もあります。
さらに尿培養では、どのような細菌に感染しているのか、どの抗菌薬が効果的なのかを判断します。
さらに尿培養では、どのような細菌に感染しているのか、どの抗菌薬が効果的なのかを判断します。
直腸診
直腸診とはどんな検査ですか?
医師が肛門から指を入れる検査をし、前立腺を押した際に痛みを感じるか、熱感があるかを調べる検査です。泌尿器科専門医が直腸診をすれば簡単に診断ができます。
触れることで熱感を確認しますが、急性前立腺炎にかかっている場合は、前立腺を押すと痛みや激痛を生じることが多いです。症状によっては、採血検査をプラスして重症度を判定することもあります。
触れることで熱感を確認しますが、急性前立腺炎にかかっている場合は、前立腺を押すと痛みや激痛を生じることが多いです。症状によっては、採血検査をプラスして重症度を判定することもあります。
腹部超音波(エコー)
腹部超音波(エコー)とはどんな検査ですか?
腹部超音波(エコー)によって、前立腺が大きく腫れているのか、残尿の有無がわかるなど、詳しい症状の把握ができる検査です。
腹部皮膚表面に超音波を発信する装置をあてて行います。きれいな画像を撮るために、装置を当てる部分にはゼリーを塗って行うため、痛みなどはありません。内臓からの反射波を装置が受け取りモニターに写します。
腹部皮膚表面に超音波を発信する装置をあてて行います。きれいな画像を撮るために、装置を当てる部分にはゼリーを塗って行うため、痛みなどはありません。内臓からの反射波を装置が受け取りモニターに写します。
急性前立腺炎の性差・年齢差など
急性前立腺炎では、性差・年齢差がありますか?
前立腺は、前立腺が男性にしかない臓器であるため男性に限られる病気です。前立腺炎自体は、全年齢が対象ですが、前立腺がんや前立腺肥大症と比べて思春期以降の30代〜40代の年代に多い病気です。
前立腺肥大症や、尿道カテーテルを常時置いている高齢者にも急性前立腺炎の症状が認められるときがあります。
前立腺肥大症や、尿道カテーテルを常時置いている高齢者にも急性前立腺炎の症状が認められるときがあります。
急性前立腺炎の治療方法
急性前立腺炎にはどのような治療方法がありますか?
前立腺組織に浸透する抗菌薬などの抗生物質を投与する方法があります。症状によっては、症状を和らげる薬の投与や、重症の場合は総合病院での入院が必要です。
抗生物質を投与
抗生物質を投与するとは、どのような治療ですか?
ほとんどの治療が抗菌薬の点滴治療です。全身の状態や採血検査の結果などで軽症の場合は内服薬の場合もあります。
症状を和らげる薬の投与
症状を和らげる薬の投与とは、どのような治療ですか?
腫れた前立腺が、膀胱を刺激し痛みや排尿困難な症状がある場合は、痛みを軽減させる鎮痛剤や尿を出しやすくする薬を用いることがあります。
重症では入院が必要
重症では入院が必要とは、どのような治療ですか?
前立腺が非常に重い症状の場合は、全身の血液に細菌が回り、命の危険にさらされる敗血症にならないように治療していくことが必要です。そのために、入院して静脈から抗菌薬を投与するなどの必要性に迫られる場合もあります。
数週間、前立腺の組織に浸透する抗菌薬などの治療を行い、前立腺膿瘍がある場合は、膿を排除する外科的な処置が必要です。
数週間、前立腺の組織に浸透する抗菌薬などの治療を行い、前立腺膿瘍がある場合は、膿を排除する外科的な処置が必要です。
編集部まとめ
急性前立腺炎は感染症です。男性の尿道は、肛門から離れているため、大腸菌などの菌が尿道から侵入する頻度は女性に比べて比較的少ないといわれています。しかし、細菌に対する抵抗力が落ちていると感染を起こしやすいため、持病のある方は普段からかかりつけ医で管理してもらうといいでしょう。
また、抵抗力の低下を防ぐために日頃からストレスや疲労を溜めないということも必要です。予防として体操やウォーキング程度の適度な運動を行うことをおすすめします。急性前立腺炎を抗菌薬で治癒したはずなのに、まだ違和感や痛みが続くという場合には、慢性前立腺炎になっている可能性があります。早めに受診しましょう。
参考文献