「卵巣捻転(卵巣・卵管がねじれる病気)」の症状・原因・治療法について解説!
更新日:2023/04/03
卵巣と子宮が繋がっている部分にねじれを起こしてしまう疾患を、卵巣捻転(らんそうねんてん)といいます。腹痛によって気が付くことが多いですが、出血を伴うことはほとんどありません。卵巣捻転になっていることを見逃してしまうこともあるでしょう。心配なのは、卵巣捻転を放っておくと、リスクを生じるおそれがあることです。
今回は、卵巣捻転の症状や原因、検査や治療方法などを紹介します。
監修医師:
前田 裕斗(医師)
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東京大学医学部医学科卒業。その後、川崎市立川崎病院臨床研修医、神戸市立医療センター中央市民病院産婦人科、国立成育医療研究センター産科フェローを経て、2021年より東京医科歯科大学医学部国際健康推進医学分野進学。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。
卵巣捻転とは
卵巣捻転とはどのような病気でしょうか?
卵巣腫瘍が大きくなることが原因で、卵巣の根元や卵管がねじれ、それらの臓器への血流が途絶えてしまうことを「卵巣捻転」といいます。放っておくと臓器が徐々に壊死を起こし、完全に壊死してしまえば回復は望めません。急に強い痛みが起こり、救急車での搬送や緊急手術を必要とする場合もあります。
卵巣捻転の症状
卵巣捻転はどのような症状が現れますか?
主な症状はお腹(下腹部)の痛みです。ねじれかけて元に戻ると痛みがいったん治まることがある一方で、救急車を呼ぶほどの急な激痛が起こる場合もあります。
一緒に出現する症状として冷汗や嘔気・嘔吐があります。一方婦人科疾患で特徴的な症状の一つである性器出血を伴うことはほとんどないといわれています。完全に組織が壊死してしまうと、痛みを感じなくなることがあるため注意しましょう。
一緒に出現する症状として冷汗や嘔気・嘔吐があります。一方婦人科疾患で特徴的な症状の一つである性器出血を伴うことはほとんどないといわれています。完全に組織が壊死してしまうと、痛みを感じなくなることがあるため注意しましょう。
注意した方がいい症状
注意しなくてはいけない症状はありますか?
下腹部の強い痛みが続くときは、卵巣捻転の可能性も考えましょう。さらに吐き気や嘔吐、下痢などを伴う症状がある場合は、緊急性が考えられます。すでに卵巣嚢腫がある人は、卵巣捻転の可能性が高いので必ず受診しましょう。
組織が壊死する
組織が壊死するとはどういう症状ですか?
卵巣の根元や卵管が、捻れることによって臓器への血流が途絶えてしまうことで卵巣やその周りの組織が死んでしまい機能しなくなる状態です。捻れてから数時間から1日程度で組織が壊死すると痛みを感じにくくなります。完全に壊死してしまうともう元に戻すことはできず、卵巣・卵管の切断を余儀なくさせられます。
卵巣捻転の原因
卵巣捻転の原因はどのようなことが考えられるでしょうか
卵巣嚢腫を有する場合や、妊娠・排卵誘発剤の使用によるものが考えられます。卵巣は、骨盤内で固定されているのではなく、体が動くと同時にぶらぶらと動いている状態です。
正常なら軽いのでねじれることは無いのですが、腫れているとそれだけ重くなり、ねじれて元に戻らなくなることがあります。
正常なら軽いのでねじれることは無いのですが、腫れているとそれだけ重くなり、ねじれて元に戻らなくなることがあります。
卵巣嚢腫が原因
卵巣嚢腫が原因とは、どのようなことがあげられますか?
卵巣腫瘍の大きさがポイントです。一般的に腫瘍の大きさが5〜6cm近くになるとねじれても戻りにくくなり、卵巣捻転が起こりやすくなるといわれています。
卵巣嚢腫の種類の中でも「成熟嚢胞性奇形種」による卵巣捻転が多く発生しています。
卵巣嚢腫の種類の中でも「成熟嚢胞性奇形種」による卵巣捻転が多く発生しています。
妊娠が原因
妊娠が原因とは、どのようなことがあげられますか?
妊娠初期は排卵後やホルモンの影響で卵巣が腫れて大きくなるため、捻転する可能性があると言われています。
排卵誘発剤の使用が原因
排卵誘発剤の使用が原因とは、どのようなことがあげられますか?
不妊治療などで排卵誘発剤を使用している場合は、卵巣が腫大することがあり、捻転を引き起こす恐れがあります。治療中は激しいスポーツや腰をひねる運動に注意しましょう。
卵巣捻転の受診科目
卵巣捻転が疑われる場合には、何科を受診すればいいのでしょうか?
卵巣捻転は、婦人科の受診が必要です。以前から、卵巣腫瘍などを指摘されている場合は卵巣捻転が疑われるため婦人科を受診します。
しかし、卵巣の異常に気が付かない場合は、最初に内科を受診することが少なくありません。その場合は、体の状態を把握しながら原因を探り診察していくことになるでしょう。
しかし、卵巣の異常に気が付かない場合は、最初に内科を受診することが少なくありません。その場合は、体の状態を把握しながら原因を探り診察していくことになるでしょう。
卵巣捻転で行う検査
卵巣捻転では、どのような検査を行いますか?
内診や経腟超音波検査、必要であればCT検査・MRI検査を行います。
内診
内診とはどんな検査ですか?
内診とは、婦人科で行われる診察のうちのひとつです。医師の目で見る視診と手による触診がありますが、主に卵巣捻転の診察では触診、つまり指や手の感触で、卵巣の腫れ、圧痛などを確認します。
経腟超音波検査
経腟超音波検査とはどんな検査ですか?
子宮や卵巣の病気を調べる検査のことです。
内診台にあがって、腟にプロープという専用の超音波検査器具を挿入して行います。専用ジェルを使用するため、痛みを感じることはほとんどありません。
内診台にあがって、腟にプロープという専用の超音波検査器具を挿入して行います。専用ジェルを使用するため、痛みを感じることはほとんどありません。
CT検査・MRI検査
CT検査・MRI検査とはどんな検査ですか?
CT検査とは、X線検査の一種でレントゲンに高度なコンピューターを組み合わせて詳しく検査をする方法です。人体を輪切りにするような断面画像や立体的な画像を撮ります。
MRI検査:検査着を着たまま触れられることもなく寝ているだけで検査ができる方法です。
婦人科の場合は、詳細な骨盤内臓器の断層画像を撮影します。卵巣腫瘍のほかに子宮内膜症・子宮筋腫などの診断にも有効な検査です。
MRI検査:検査着を着たまま触れられることもなく寝ているだけで検査ができる方法です。
婦人科の場合は、詳細な骨盤内臓器の断層画像を撮影します。卵巣腫瘍のほかに子宮内膜症・子宮筋腫などの診断にも有効な検査です。
卵巣捻転の性差・年齢差など
卵巣捻転では、性差・年齢差がありますか?
女性の生殖器である卵巣の疾患です。出産できる年齢のうち、比較的若い女性がなりやすいといわれています。卵巣捻転は、良性腫瘍でも起こる病気です。卵巣があれば年齢に関係なく腫瘍が発生するため、子どもが卵巣捻転になることもあります。
子どもは、卵巣のサイズに比べると卵管が比較的長いために、卵巣捻転を起こしやすく、お腹の痛みを訴える場合には注意が必要です。
子どもは、卵巣のサイズに比べると卵管が比較的長いために、卵巣捻転を起こしやすく、お腹の痛みを訴える場合には注意が必要です。
卵巣捻転の治療方法
卵巣捻転にはどのような治療方法がありますか?
治療方法はいくつかあります。卵巣と卵管を切除する方法、ねじれを元に戻す方法、壊死している部分を取り除き、正常卵巣を残す方法です。いずれも全て手術による方法です。手術以外で卵巣捻転を治療する方法はありません。
卵巣と卵管を切除する
卵巣と卵管を切除するとは、どのような治療ですか?
卵巣の壊死が進んでしまった場合は卵巣と卵管を切除し摘出します。ほとんどの場合捻転は片側のみでもう一方の卵巣卵管は温存されるため、その後の妊娠出産も可能です。
茎捻転を元に戻す
卵巣捻転のねじれを元に戻すとは、どのような治療ですか?
卵巣の壊死が進んでいない場合は、切らずに捻転している部分を元に戻す方法を取ることがあります。血流が再開することで卵巣機能が正常に復活する見込みがある場合こちらの方法を取ります。
正常卵巣を温存する
正常卵巣を温存するとは、どのような治療ですか?
こちらは一部卵巣が壊死している場合や、卵巣腫瘍がある場合に、捻転を戻した上で壊死している部分や腫瘍を取り除く方法です。多少時間が経っていた場合でもまずはこの方法を試し、残せる卵巣がないかを確認します。
上記全ての治療は状況に応じて腹腔鏡と開腹手術どちらかで行われますが、最近は負担の小さい腹腔鏡手術を利用することが多くなっています。
上記全ての治療は状況に応じて腹腔鏡と開腹手術どちらかで行われますが、最近は負担の小さい腹腔鏡手術を利用することが多くなっています。
編集部まとめ
卵巣捻転について紹介しました。突然起こることも多く、なかなか気づくことが難しい疾患です。発生から治療まで、短時間であればあるほど卵巣の保存ができますが、すべてそうとは限りません。
卵巣嚢腫が、いつ捻転を起こすのかという予測はほとんど不可能です。普段から定期的な婦人科健診を受けて、卵巣の状態を観察していくことが大切です。痛みのある場合はもちろん、気になる症状があれば、まずは、婦人科のある医療機関を受診してください。
参考文献