「ジスキネジア」とは?症状・原因・治し方についても解説!
ジスキネジアは、本人の意思とは関係なく身体の一部がおかしな動きをしてしまう症状のことをいいます。症状が軽いうちは日常生活に影響はありません。
しかし、放っておくと症状が強くなるため、できるだけ早めに対処をすることが大切です。
今回は、ジスキネジアについてご紹介します。症状や治療方法に加えて、ジスキネジアを発症した際の注意点も記述しているため、ぜひご参考にして下さい。
監修医師:
伊藤 直(医師)
著書:精神科医が教える3秒で部下に好かれる方法
目次 -INDEX-
ジスキネジアの特徴
ジスキネジアとはどのような病気ですか?
- ジスキネジアは身体の一部が自分の意思とは関係なく異様な動きをする現象です。
- 唇や舌、手足など特定の筋肉に症状が現れます。動きを自分でとめようとしても難しく、止められてもすぐに症状がでてしまうことが特徴です。
- 初期のころは症状も軽く、日常生活で困ることはほとんどありません。しかし、症状が進行して強くなってしまうと仕事など普段の生活に支障がでる可能性があるため、注意が必要です。
どのような症状があるのか教えてください。
- ジスキネジアの症状として多くみられるのは下記の通りです。
- 繰り返し口をすぼめる
- 舌を左右に動かす
- 口をもぐもぐさせる
- 口を突き出す
- 歯を食いしばる
- 顔をしかめる
- 手が不規則に動く
- 立ったり座ったり同じ動きを繰り返す
- 身体をくねくね動かす
- 目を閉じたまま開かない
- 口腔内や口まわり、顔の表情筋に関わる動きがみられることが多く、手足や身体に症状が現れることもあります。通常は不随意運動があっても痛みはありません。しかし、動きが激しくなると疲れてしまいますし、無理に押さえようとすると逆に悪化してしまう可能性も高いです。
- 口の周りに症状が現れると食事もしにくくなります。十分な栄養が摂れず体重の減少や人目を気にして、引きこもってしまう方もいます。
ジスキネジアの原因
どのようなことが原因になりますか?
- ジスキネジアの原因は脳神経の病気や薬による副作用です。原因となる薬にはドパミンに関わる抗精神病薬やパーキンソン病の治療薬があります。
- 抗精神病薬は服用してすぐに発症するわけではありません。長く服用を続けることで、ジスキネジアが発症する可能性があり、遅発性ジスキネジアといわれています。
ジスキネジアはなぜ起こるのですか?
- 大脳の基底核には自分の意思で身体を動かす随意運動や学習を司る役割があります。自分の意思で身体を動かす随意運動を円滑に行うために必要な物質がドパミンという物質です。
- 大脳基底核の障害によって、運動機能を調整するドパミンの働きがうまくいかないために起こるとされています。
- ドパミンが大脳に作用することを防ぐタイプの抗精神病薬や、ドパミンを補充するパーキンソン病の治療でジスキネジアが起こりやすいです。
原因になりやすい病気について教えてください。
- ジスキネジアは、ドパミンが随意運動を司る神経にうまく作用しなかったことが原因で起こる可能性があります。そのため、ドパミンに作用する薬を使う疾患を治療している方は、発症する可能性が高いです。
- また、パーキンソン病はドパミンが不足することが原因で起こる病気のため、治療にはドパミンを増やす薬が使われます。ドパミンが過剰に増えて、随意運動に支障がでる可能性が高いです。
- 癲癇や双極性障害の方も治療薬による副作用が起きることがあります。高齢者・糖尿病・脳梗塞など脳に異常がある方は、発症のリスクが高いため注意をして下さい。
ジスキネジアの治療法
何科を受診すれば良いですか?
- ジスキネジアの症状に詳しいのは脳神経内科か精神神経科です。ジスキネジアと疑われる症状が出始めた方は、脳神経内科を受診して下さい。
- 抗精神病薬やパーキンソン病の治療で薬を服用している方は、まずは主治医に相談をしましょう。その後、必要であれば専門の医療機関を受診して下さい。
どのような検査をしますか?
- ジスキネジアの疑いで受診した際は、まずは問診や症状の観察から診断をします。ジスキネジアと似たような症状の疾患もあるため、運動障害がどのタイミングで現れるかを判断することが大切です。
- 必要に応じて血液検査を行い、血液の中のドパミンの濃度を測定します。血液検査の結果と症状の現れ方を比較して、原因を特定することが重要です。
- たとえば、パーキンソン病の患者さんであればジスキネジアの症状が現れるタイミングが、血液の中の薬の量が多いときか、効き目が切れるときなのかを見極めます。
治療方法について教えてください。
- ジスキネジアが薬の服用が原因である場合の対応は、薬の減量・中断・変更のいずれかです。患者さんの病状や薬の副作用を総合的に判断したうえで、適切な対応をします。
- 他に、ドパミンを枯渇する薬やドパミンの受容体を休ませる薬やビタミン剤などの薬物療法での治療も可能です。ジスキネジアの症状が重度で、薬だけでは対応できない場合は、脳に電気を流して刺激を与える脳深部刺激療法という脳の手術を行うことがあります。症状の1つである、歯の食いしばりへの対処は、歯科医院でマウスピースを作ってもらうことも可能です。
予防方法はありますか?
- ジスキネジアは薬の中断や減薬などで対応することが可能です。しかし、薬の副作用によるジスキネジアは発症すると治りにくいため、予防が1番の治療ともいわれています。
- 若いころにパーキンソン病を発症した方には、長期的な服薬でジスキネジアを併発する方が多いです。そのため、原因になり得る薬の使用を避けたり少なくしたりする治療も検討します。定型抗精神病薬を少なくして、必要であれば非定型の薬と併用し、それも最小限にするのが予防の基本です。
発症した際に注意すべきことについて教えてください。
- ジスキネジアは早期発見・早期治療が重要な疾患です。しかし、ジスキネジアの初期のうちは生活に大きく影響を及ぼすことはありません。また、ジスキネジア以外にも似たような症状の疾患もあります。だからこそ判断がしにくいうえ、症状も軽いうちは見過ごされやすいです。
- ジスキネジアを起こしやすい疾患がある方や、副作用がでやすい薬を長期間服用している方は、本人はもちろん家族の方も注意が必要です。上記で紹介したジスキネジアの症状がでていないか、気にとめておきましょう。
- また、症状が薬の副作用だとわかった場合、自己判断で薬を減らす・中断するなどはしてはいけません。勝手に対処をしてしまうと、治療をしていた病気が悪化してしまう可能性があります。薬の服用に関しては必ず主治医に相談をして、適切に対処してもらうようにしましょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
- ジスキネジアは、発症したからといって急に重症化するものではないため、慌てる必要はありません。しかし、時間が経つと症状が激しくなることがあります。
- 不随意運動が激しくなると、患者さんも疲れてしまいますし辛いものです。家族が見ていて「おかしいな?」と感じたら、早めに主治医に相談をするようにして下さい。
- もし、症状だけでは判断が難しい場合は、症状がでている様子を動画に撮って記録をしておくとよいです。受診をする際は下記の内容を、できるだけ詳しく主治医に伝えて下さい。
- どんな症状があるか(動画をみせてもよい)
- いつ頃起こったのか
- どんなタイミングで起こるか
- 患者さんの症状や様子など総合的に判断をして、対処法を検討していくことになります。治療の際は主治医の指示に従って、気になることは必ず相談をするようにしましょう。
編集部まとめ
ジスキネジアは随意運動がうまくいかなくなって起こる不随意運動のことです。自分の意思とは関係なく、身体の一部が動いてしまいます。
初期の段階では日常生活への影響は少ないです。そのため気にならないという方もいますが、症状が強くなると仕事など生活に支障がでる可能性があります。
ジスキネジアの症状が起こるとき、患者さん本人は無意識です。本人はなかなか気が付かない場合が多いため、日ごろから家族の方で様子をこまめに観察して下さい。
少しでも違和感があったら、必ず主治医に相談をして指示を仰ぐようにしましょう。
参考文献