「子宮後屈」ってどんな症状?原因についても詳しく解説!
更新日:2023/03/27
子宮は女性にとってとても身近で、かつデリケートな臓器です。そんな大切な臓器である子宮が後ろに傾いてしまう、「子宮後屈」という症状があることをご存じでしょうか。
もしも子宮後屈と診断された場合、妊娠や出産への影響はあるのか・治療法はどうなるのかなど、大きな不安を感じても無理はありません。
しかし、子宮後屈がどのような状態であるのかや治療法については、あまり知られていないのも事実です。
そこで今回は、子宮後屈の症状・原因・治療法などについて、詳しく解説します。
監修医師:
浅野 仁覚(医師)
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福島県立医科大学大学院卒業。所属:ロイヤルベルクリニック。主な研究内容・論文:切迫早産、先天性サイトメガロウイルス感染症、子宮筋腫に対する子宮動脈塞栓術など。
子宮後屈(しきゅうこうくつ)とは
子宮後屈とはどのような状態なのですか?
- 子宮後屈は、子宮後転とも呼ばれます。通常であれば子宮はお腹側に傾いているのに対し、子宮後屈では背中側に傾いている状態です。
- 子宮が逆向きに傾いているだけでは問題がないことも多く、特に症状を伴わないケースも少なくありません。その場合には病気とはみなさず、経過観察となります。
- しかし、子宮後屈が原因で重度の月経痛・背中の痛み・性交時の痛みなどの症状がみられる場合は、癒着を起こしている可能性があります。
- 癒着がみられるケースでは治療が必要となることもあり、問題となる症状を伴っていないか注意が必要です。
子宮後屈の人は少ないと聞いてとても不安です…。
- 子宮後屈の方の割合は少なく、該当するのは女性の約20%といわれています。子宮後屈は、子宮の位置異常の1つです。
- 位置異常とはいっても、子宮は可動性のある臓器のため、さまざまな原因で後ろに傾いてしまう可能性が考えられます。生まれつきのケースも多く、原因が特定できないことも少なくありません。
- 生まれつきの場合や、偶然後ろに傾いてしまったケースも多いです。症状がなければ大きな心配はせず、医師の指示に従いましょう。
妊娠・出産への影響はありませんか?
- 妊娠・出産への影響は、子宮後屈だと診断された多くの方が心配するポイントです。子宮が小さい場合や子宮内膜症が原因の子宮後屈の場合は、不妊や流産などの影響が起こりやすい傾向があります。
- 子宮が小さい場合は、ホルモン異常による流産が起こりやすく、ホルモン治療が有効な場合もあります。
- 子宮内膜症による癒着がみられる子宮後屈の場合には、特に卵管周囲の癒着による不妊に注意が必要です。そのため、剥離手術による治療を行う場合があります。しかし、生まれつきの子宮後屈では、不妊になりやすいという説が言われていましたが、現在では医学的な根拠はありません。
- また、出産への影響も報告されていません。妊娠・出産によって子宮の位置が正常に戻るケースも多くみられます。
妊娠中に正常な前屈になることもあるのですね。
- 子宮は可動性のある臓器のため、癒着によって可動性が失われている場合を除けば、自然と正常な位置に戻る可能性があります。
- 妊娠・出産は子宮の状態にも大きな変化が起こるものです。そのため、出産までの過程のなかで、子宮の位置も後屈から前屈に変わるケースもみられます。
子宮後屈の原因と治療法
子宮後屈の原因はなんですか?
- 子宮後屈の原因は、生まれつきの場合と後天的な理由による場合があります。
- 可動性が保たれている場合は、子宮が移動する臓器であるために、何らかの理由で背中側に傾いてしまったことが考えられます。
- 原因が特定されないことも多く、痛みなどの自覚症状が全くないケースも珍しくありません。
- 他に、子宮内膜症や骨盤内の炎症が原因で直腸・骨盤腹膜などへの癒着を起こしているケースもあるため、注意が必要です。
- 癒着が起こっていると痛みが出る可能性も高く、剥離種手術を行うなどの治療が必要になることがあります。
他の臓器と癒着している場合は治療が必要なのでしょうか?
- 子宮は本来であれば、周りの臓器や骨盤の動きに合わせて柔軟に移動します。しかし、癒着を起こした子宮後屈の場合には、背中側に引っ張られている状態で固定されてしまっています。
- そのため、腰痛・月経困難症・重度の月経痛などを引き起こす可能性も高いです。剥離手術を行うことで痛みを伴う症状を改善することができます。
子宮後屈修復手術治療期間はどのくらいかかりますか?
- 子宮後屈修復手術(癒着剥離術)は外科手術のため、治療にはある程度の期間を必要とします。
- 近年では、開腹手術よりも負担の少ない腹腔鏡手術がポピュラーです。腹腔鏡手術の入院期間は、5〜7日程度の場合が多いです。
子宮後屈はどのような検査を行いますか?
- 子宮後屈の検査は、婦人科の検査では一般的な内診・超音波検査を行うことが多いです。内診は膣内に指を入れて触診を行うことで、子宮の状態を確認します。
- 超音波検査は経膣エコーと呼ばれる方法がポピュラーで、超音波プローブを膣内に挿入することで子宮の状態を確認できます。
- 他に、卵管造影検査やMRI検査などの画像検査でも、子宮の傾きを確認することが可能です。
婦人科で子宮後屈と診断されたらどうする?
子宮後屈に自覚症状はありますか?
- 子宮後屈の自覚症状があるかどうかは、原因によって個人差があります。全く症状がなく、気づかない場合も少なくありません。その一方で、下記のような症状を引き起こすケースもみられます。
- 背中の痛み
- 腰痛
- 重度の月経痛
- 性交時の痛み
- このような症状がみられた場合は、婦人科で診察を受けることが大切です。また、癒着を起こしているかどうかも症状の有無に大きく影響します。
- 子宮の可動性が保たれている場合は、自覚症状もなく経過観察ですむことが多いです。しかし、子宮内膜症や骨盤内の炎症が原因の癒着が起こっている場合には、上記のような痛みを伴う症状が起こりやすくなります。
婦人科を受診するタイミングを教えてください。
- 少しでも気になる症状を感じたら、なるべく早めに婦人科を受診することが大切です。
- 重度の月経痛・性交時の痛み・腰痛・背中の痛みなどだけでなく、生理周期に伴う精神的な症状や頻尿などにも子宮の病気が関係しているケースもあります。
- 子宮後屈の原因にもなる子宮内膜症や骨盤内の炎症などの病気も、放っておくと悪化する可能性も否めません。1人で悩まず、婦人科を受診しましょう。
- また、月経時を避けるべきかどうかは、診察の内容によっても異なります。迷ったら、まずは受診をする婦人科にお問い合わせください。
子宮後屈と診断されたらどうすればよいのでしょうか?
- 子宮後屈であることがわかってからどのように対応していくのかは、症状の有無・癒着の有無によって判断していきます。
- 生まれつきの子宮後屈や、何らかの理由で子宮が移動し背中側に傾いてしまっただけの場合、自覚症状がないことも少なくありません。その場合は、特に病気とはみなされないため、治療は必要ありません。
- 患者様自身も何かを行う必要はなく、リラックスして過ごしていただければ結構です。
- 一方で、子宮内膜症などの病気が原因となっていたり自覚症状を伴ったりするケースでは、積極的に医療が介入して治療を行う必要があります。
- 原因となっている病気の治療と同時に、癒着がみられる場合には剥離手術も行う場合があります。医師とよく相談し、治療を進めていきましょう。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
- 子宮は女性にとって特に重要な臓器です。そんな子宮が通常とは逆方向を向いているといわれれば、とても驚いて大きな不安を感じてしまうのも無理はありません。とはいえ、子宮後屈であるだけでは病気ではありません。
- 特に痛みなどの自覚症状がなく医師からも問題を指摘されていないのであれば、気にしすぎることなくリラックスして過ごしてください。
- 重度の月経痛や性交時の痛みなど気になる症状がある方は、その旨を医師に伝え、原因となっている病気や癒着などの問題が起きていないかをきちんと調べましょう。
- 子宮は妊娠・出産にかかわる大切な臓器です。気になる症状や不安を感じる方は、1人で悩まず婦人科を受診してください。
編集部まとめ
子宮は、女性の人生に寄り添う大切な臓器です。
そんな子宮の位置に異常が出てしまう「子宮後屈」は、症状の有無や癒着の有無によって病気と診断するかどうかが変わるとのことでした。
自覚症状はあるかどうか・医師から問題点の指摘を受けていないかどうかを思い返してみましょう。気になることがあった方は、婦人科を受診することをおすすめします。
重要でデリケートな臓器だからこそ、自分で健康を気にかける必要があります。何か少しでも気になる点があれば放置せず、なるべく早く婦人科を訪れることが大切です。
参考文献