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「ウィリアムズ症候群(指定難病179)」とは?症状・原因・特徴も解説!

 更新日:2023/03/27
「ウィリアムズ症候群(指定難病179)」とは?症状・原因・特徴も解説!

成長と発達の遅れ、視空間認知障害の症状が現れる「ウィリアムズ症候群(指定難病179)」をご存じでしょうか。人種差や性差はなく、発生頻度は2万人に1人です。

今回は、ウィリアムズ症候群の概要や症状と原因、診断や治療法、そして経過とケアについて紹介します。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

ウィリアムズ症候群とは

ウィリアムズ症候群とは、どのような病気ですか?

ウィリアムズ症候群は遺伝性疾患の1つで、国の指定難病(179)です。遺伝性疾患ですが、ほとんどの場合は親から受け継いだものではありません。
精子・卵子の生成時や、受精卵の突然変異と考えられており、誰の子にも起こりうる疾患です。生活習慣や環境なども関係ありません。日本では1万人〜2万人に1人の頻度で発生するといわれています。また、まだ診断を受けていない人も一定数いると考えられています。
さまざまな症状がありますが、治る疾患ではありません。生涯、医療や社会的なサポートが必要になります。
ニュージーランドの医師であるJ.C.P.ウィリアムズによって1961年に最初に報告された先天性の遺伝子疾患の1つです。

ウィリアムズ症候群の症状・特徴

ウィリアムズ症候群とは?

ウィリアムズ症候群では、どのような症状が現れますか?

ウィリアムズ症候群では多様な症状が現れます。特徴的なのが、子宮内での発育遅延を含む運動・精神発達の遅れです。低身長・低体重で出生することが多く、歩行開始は2歳くらいが平均です。数カ月から数年遅れて成長していきます。
また、視覚性認知障害などがあるため、視空間の認識が難しいです。IQは平均56ほどで発語が遅く、書くことや計算が苦手です。注意欠陥・多動性障害や不安症などが見られる場合も多いため、その場合はカウンセリングが重要になります。
他にも、乳幼児期には便秘や嘔吐、中耳炎が多く見られます。聴覚過敏で雷などの大きな音に敏感な場合や、おねしょや頻尿も多いです。

他にウィリアムズ症候群の特徴はありますか?

「妖精様顔貌」と呼ばれる外見の特徴があります。眉毛の内側が太い、目と目の間が狭い、まぶたが腫れぼったい、鼻筋が落ちて低い、鼻孔が上を向く、口が開いているなどが特徴です。
また、性格は社交的でおしゃべりなことが多いです。

他にウィリアムズ症候群で気をつけることはありますか?

ウィリアムズ症候群では、大動脈弁上狭窄、末梢性肺動脈狭窄などの先天性心疾患や、高カルシウム血症、腎動脈狭窄や冠動脈狭窄、泌尿器疾患などを合併する場合があります。
また、成人後に高血圧や精神面の問題、消化器疾患や耳鼻科疾患、尿路感染症、関節可動制限などが問題となります。社会的自立は困難です。突然死や麻酔関連死も報告されています。

ウィリアムズ症候群の原因

ウィリアムズ症候群の原因

ウィリアムズ症候群の原因を教えてください。

ウィリアムズ症候群は染色体「7q11.23」の微細欠失が病因です。どんな人種や性別にも起こる可能性があります。
また、ウィリアムズ症候群の子の兄弟が、ウィリアムズ症候群を持って産まれることは稀です。一方で、ウィリアムズ症候群の人の子どもがウィリアムズ症候群になる確率は50%です。

ウィリアムズ症候群の診断

ウィリアムズ症候群とは?

ウィリアムズ症候群は、どのように診断されますか?

大動脈弁上狭窄、末梢性肺動脈狭窄などの先天性心疾患を発見するタイミングで、乳幼児期に診断される場合が多いです。
先ほど解説した特徴的な症状や特徴を持っているとウィリアムズ症候群が疑われ、FISH法で染色体を見て「7q11.23」の微細欠失が確認されれば、確定診断されます。

ウィリアムズ症候群の治療方法

ウィリアムズ症候群の治療法を教えてください。

残念ながら、ウィリアムズ症候群の治療法はありません。定期的に診察を行い、合併症に早期対応することが重要です。また、身体や精神の発達の遅れに対応するため、理学療法や作業療法、カウンセリングや言語指導などの支援が重要になります。
乳幼児期には、約50%に鼠径ヘルニアがあるため、手術が必要です。
成人後はおよそ60%に高血圧が認められます。肥満や慢性便秘などの消化器症状が見られ、尿路感染症を繰り返すため、治療が必要です。また、脳血管障害発作にも注意しなければなりません。
大動脈弁上狭窄は進行する可能性があり、場合によっては手術が必要です。さらに、心筋梗塞で突然死することもあるので、狭窄には注意しましょう。麻酔時に心筋梗塞が起きて、突然死することもあります。

ウィリアムズ症候群の経過

ウィリアムズ症候群の子は、どのような経過をたどりますか?

低身長・低体重で出生することが多く、その後も軽度の低身長の場合が多いです。運動面の発達が遅く、歩行開始は平均2歳くらいです。離乳食への移行が遅く、偏食が強いなどの摂食障害も見られます。
また、夜になかなか眠らないなどの過敏性も見られます。
学校に通うようになると、注意欠陥・多動性障害や不安症が目立つようになるため、カウンセリングなどの対応が必要です。また、書くことや計算が苦手な場合が多いです。ほかにも、完成が豊かで音楽が好きな特徴があります。
成人後、社会的な自立は困難なため、社会的な支援が必要です。

身体合併症は、どのような経過をたどりますか?

末梢性肺動脈狭窄は年を重ねるとともに、軽快する傾向がある一方で、大動脈弁上狭窄は進行する可能性もあります。
また成長するにつれて心臓弁異常、高血圧や糖尿病、側弯や膝蓋腱やアキレス腱の拘縮などにも、注意しなければなりません。
定期的な診察を続けて、早期に対応する必要があります。

ウィリアムズ症候群のケア

ウィリアムズ症候群とは?

ウィリアムズ症候群の子は、日常生活でどのような注意が必要ですか?

もっとも重要なことは定期診察を続けて、合併症への注意を怠らないことです。特に大動脈弁上狭窄などの心血管系合併症への注意が重要になります。
また、慢性便秘になることが多いですが、直腸が肛門外に出る直腸脱を起こすこともあるので、便秘にならないように注意が必要です。
視覚性認知障害があるため、靴の左右を紐やテープで色分けするなどの工夫をしましょう。できないことや不安があることは無理をさせず、楽しくできるレベルに落として成功体験を得られるようにしましょう。
音楽が好きなので音楽の活動を増やして長所を伸ばし、自信を育むことも有効です。
生涯、医療と社会による支援が必要です。

編集部まとめ

ウィリアムズ症候群は遺伝性疾患の1つで、国の指定難病(179)です。人種・性別に関係なく、誰の子にも起こりうる疾患で、生活習慣や環境なども関係ありません。日本では1万人〜2万人に1人の頻度で発生します。

ウィリアムズ症候群の症状は多様であり、特徴的なのが子宮内での発育遅延を含む運動・精神発達の遅れです。歩行開始は2歳くらいが平均で、IQは平均56ほどで発語が遅く、書くことや計算が苦手です。

また「妖精様顔貌」と呼ばれる外見の特徴を持ち、大動脈弁上狭窄、末梢性肺動脈狭窄などの先天性心疾患があります。

残念ながらウィリアムズ症候群を治療する方法はありません。定期的な診察を続けて、合併症に早期対応することが重要です。また、身体や精神の発達の遅れに対応するため、理学療法や作業療法、カウンセリングや言語指導などの支援が重要です。

音楽は好きなので、音楽の活動を増やして長所を伸ばしてあげるなどの工夫をしましょう。

社会的な自立は困難であり、生涯にわたって医療と社会の支援が必要です。

この記事の監修医師