「卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)」とは?症状・検査法・治療法についても解説!
卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)をご存じでしょうか。卵巣にできる腫瘍の一種で、ほとんどが良性ですが、まれに悪性もあります。20〜30歳代に多い疾患です。
今回は、卵巣囊腫の概要や症状、受診科目と検査、そして治療方法を紹介します。
監修医師:
浅野 仁覚(医師)
卵巣嚢腫とは
卵巣囊腫とはどのような疾患でしょうか。
卵巣はホルモンを分泌したり、排卵を行ったりするため、細胞分裂が盛んです。また、卵巣にはいろいろなものに分化する可能性のある細胞があるため、腫瘍も生まれやすいと考えられています。
なお、卵巣嚢腫にこれといった原因や予防法はありません。健康診断等を定期的に受けて、早期発見することが重要です。
卵巣囊腫の種類と、それぞれの特徴を教えてください。
粘液が溜まる「粘液性囊腫(ねんえきせいのうしゅ)」は、全卵巣腫瘍の5~30%を占めます。多くは片側に発生し、円形か楕円形で30cmを超える場合もあります。
もっとも特徴的なのが、脂肪や毛髪や歯などが含まれる「成熟嚢胞性奇形腫(せいじゅくのうほうせいきけいしゅ)・皮様嚢腫(ひようのうしゅ)」です。卵巣にはいろいろなものに分化する可能性のある細胞があるため、皮脂や毛髪、歯などが作られる場合があります。
成熟嚢胞性奇形腫・皮様嚢腫は全卵巣腫瘍の15~25%を占めています。両側に発生することが多く、20〜40代に多く発生します。年齢を重ねると、まれに悪性転化してがんになってしまう可能性があるため、注意が必要です。
卵巣嚢腫の症状
卵巣囊腫はどのような症状が現れますか?
大きくなると下腹部痛や腹部の膨満感(お腹の張り)、頻尿などが現れる場合があります。
また、皮様囊腫の場合は、茎捻転(けいねんてん)を起こすことがあります。茎捻転とは囊腫がねじれること。急に激しい腹痛が起こることで、救急受診となる場合があります。
卵巣嚢腫の受診科目
卵巣囊腫が疑われる場合、何科を受診すればいいのでしょうか?
卵巣嚢腫の検査
卵巣囊腫はどのような検査が行われ、診断されますか?
卵巣腫瘍に多い卵巣嚢腫の多くは良性ですが、悪性腫瘍の可能性もあるので、良性か悪性かを予測します。そして卵巣嚢腫だった場合、種類を決定しなければなりません。
それぞれの検査法では、何を調べますか?
CT検査やMRI検査では内部の構造を調べられるため、良性・悪性の予測や卵巣嚢腫の種類の決定に用いられます。
また、腫瘍の良性・悪性を予測するために行うのが、血清腫瘍マーカーです。しかし血清腫瘍マーカーで異常値を示しても悪性とは限らないため、あくまで予測にすぎません。
これらの方法での良性・悪性の診断には限界があります。そのため、確定させるには手術で腫瘍を取り除き、病理検査を行わなければなりません。
卵巣嚢腫の治療方法
卵巣囊腫はどのように治療を行いますか。
まれに、急に大きくなるなど後になって悪性とわかる場合があるので、経過観察が必要です。
ある程度大きくなっていたり、下腹部痛や腹部膨満感などの症状があったりする場合は、基本的に手術を行います。
卵巣嚢腫の手術
具体的には、どのような手術を行いますか?
腹腔鏡手術の方が入院期間や開腹期間が短くなります。傷や痛みも少なく済みます。
卵巣嚢腫摘出術は、どのような手術ですか?
腹腔鏡手術は、もう少し複雑です。まずお腹に小さな穴を数カ所開けて、その穴から炭酸ガスを入れてお腹を膨らまします。そして、1つの穴から腹腔鏡を入れてモニターでチェックしながら、さらに別の穴から器具を入れて、腫瘍のみを摘出します。
付属器摘出術は、どのような手術ですか?
妊娠中に卵巣嚢腫が見つかった場合の治療
妊娠中に卵巣嚢腫が発生することはありますか?
妊娠中の卵巣嚢腫は、どのように治療しますか?
手術は、胎児への影響を考えて妊娠12〜16週頃を目安に手術を行います。12週より早いと、麻酔薬の胎児への影響や、流産の危険性がより強く懸念されます。一方で胎児が成長して子宮が大きくなったあとでは、見える範囲が狭くなって手術が難しくなってしまうのです。
手術後は原則、通常の分娩管理と経膣分娩を行います。
編集部まとめ
卵巣嚢腫とは、卵巣が風船のように膨らむ腫瘍で、ほとんどが良性です。卵巣腫瘍のうち80〜90%が卵巣嚢腫であり、20〜30代に多い疾患です。
水のようなさらさらとした液体が溜まる漿液性囊腫や、粘液が溜まる粘液性囊腫、脂肪や毛髪や歯などが含まれる成熟嚢胞性奇形腫・皮様嚢腫などがあります。
症状は無症状の場合が多く、大きくなると下腹部痛や腹部膨満感、頻尿などの症状が現れる場合があります。
疑われる症状がある場合は、産婦人科を受診してください。しかし、多くの場合は無症状なので、妊娠や健康診断をきっかけに発見されることも多い疾患です。
卵巣嚢腫は、超音波検査・CT検査・MRI検査・血清腫瘍マーカーなどで診断されます。大きさを確認し、良性か悪性かの予測を立てて、卵巣嚢腫だった場合はその種類を決定します。
小さくて無症状かつ良性と予測される場合は、治療をせずに経過観察をすることも。大きくて症状がある場合は、卵巣嚢腫摘出術や付属器摘出術などの手術を行います。
卵巣嚢腫にこれといった原因や予防法はありません。健康診断等を定期的に受けて、早期発見をすることが重要です。
参考文献