「麻疹(はしか)」とは?症状・原因についても詳しく解説?
はしかは幼少期に誰でもかかる病気というイメージがありますが、1,000人に1人の割合で亡くなるといわれている注意すべき病気でもあります。
大人でも感染する可能性があり、子どもだけが感染する病気ではありません。
また、感染力が非常に強い感染症であることも、はしかの注意点です。
合併症のリスクが決して少なくはないはしかを正しく恐れるには、まずはどんな病気なのか知ることが大切です。
はしかの特徴や症状、感染した場合の対処法などについて詳しく解説いたします。
監修医師:
武井 智昭(医師)
日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属
目次 -INDEX-
はしかとは?
はしかはどんな病気ですか?
- はしかは、麻疹ウイルスによって起きる感染症です。そのため、麻疹ともいいます。高熱・全身の発疹がおもな症状です。
- 麻疹の初期症状は、せき・鼻水・目の充血であり、普通の風邪と判断が難しいです。発熱が3日程度してから、発疹が出現します。麻疹は感染力が強いことが特徴です。麻疹ウイルスの免疫を持っていない人が感染すると効果確率で発症します。
- 麻疹は、これまでは小児に多い感染症でしたが、MRワクチンの2回接種により小児例は日本では減少しました。しかし、症状の程度は軽いものの免疫力低下による成人発症例がみられております。
はしかはどのように感染するのですか?
- はしかの原因となる麻疹ウイルスは、人から人へ感染します。感染経路は、飛沫感染・接触感染・空気感染の3つです。
- 麻疹ウイルスは、軽く長時間空気中に浮遊するため、感染者と離れていても空調を共有していれば感染する恐れがあります。空気感染するウイルスであるため、手洗いやマスクの着用を徹底しても感染する可能性があるのです。
- また、感染力を表す指標である基本再生産数では、インフルエンザの1.3~1.8人に対し、はしかは12~18人です。基本再生産数からみても、はしかの感染力の高さがわかります。
免疫がないと確実に感染すると聞いたのですが…
- 免疫がない場合でも、麻疹ウイルスの感染者と接触する機会がなければ、感染することはありません。しかし、免疫を持たない人が麻疹ウイルスに感染した場合、ほぼ100%発症するといわれています。
- はしかは、感染力が強く空気感染する病気です。そのため、現実的に考えると免疫を持たない人が一生感染しない可能性はゼロに近いでしょう。
- 日本では免疫獲得のために、2回の予防接種が推奨されています。
はしかにはどんな症状がみられますか?
- 感染すると、7~10日前後の潜伏期間を経て、発熱や咳などの症状が表れます。発熱や咳などの風邪のような症状が表れてから2〜3日後には、38℃以上の高熱・発疹・目の充血などがみられます。発疹がみえ始めてから3〜4日後には解熱することがほとんどです。全身にみられる発疹は次第に黒ずんだ色素沈着として残り、完全に治るまでは時間を要します。
- 修飾麻疹の場合は、潜伏期が10日以上と長い・熱が出ない・発疹が全身に広がらない・発疹が手足のみなど、通常の症状とは異なります。修飾麻疹は、免疫がありつつも不十分な人が麻疹ウイルスに感染した場合に発症するはしかの軽症のことです。症状は軽いですが、感染力はあるため修飾麻疹も注意する必要があります。
合併症を発症する可能性は?
- 重症化すると、肺炎・中耳炎・心筋炎・脳炎などの合併症を引き起こすこともあります。合併症の発症率は、麻疹患者全体の約30%で、決して低い数値ではありません。
- おもな合併症は肺炎で、合併症全体の約半数を占めています。また、1,000人に1人の割合で脳炎、10万人に1人の割合で亜急性硬化性全脳炎(SSPE)が発症するともいわれています。学力低下や記憶力低下などがみられる亜急性硬化性全脳炎(SSPE)は非常に稀な合併症ですが、発症してから10年程度で学習能力低下から始まり、ゆっくりと進行する中枢神経の合併症であり治療法が確立されず、予後は不良とされております。
- 潜伏期間は5~10年と長く、治療法が確立されていない病気でもあります。はしかは、先進国でも1,000人に1人の割合で死亡する病気です。必ずしも合併症を発症するわけではありませんが、感染した場合は体調の変化に注意する必要があります。
はしかに感染した場合は?
はしかに感染したと分かる明確なサインはありますか?
- はしかは、発熱・せき・鼻水などの風邪のような症状に加えて全身に発疹がみられる特徴があります。発熱して数日後に全身の発疹・目の充血がみられ、麻疹ウイルス感染の可能性が高いです。
- コプリック斑も感染の明確なサインです。コプリック斑は発熱して3日後程度にみられます。また、乳幼児は口内の粘膜にコプリック斑という1㎜程度の白色の斑点がみられます。コプリック斑も感染の明確なサインです。
- コプリック斑は発症の初期に出現し、全身の発疹は耳の後ろ・首の後ろから広がる傾向があります。コプリック斑が表れた翌日に、耳の後ろから首にかけて赤く小さな発疹がみられる場合も感染の明確なサインといえるでしょう。
病院を受診するタイミングは?
- はしかの疑いがある場合は、なるべく早めに病院に受診しましょう。ただし、はしかは感染力が大変強い病気です。連絡せずに医療機関に足を運ぶのは避けるべきです。
- 病院を受診する前に、必ずかかりつけ医・医療機関に電話連絡し、はしかの疑いがあることを伝えたうえでかかりつけ医・医療機関の指示に従って受診しましょう。
- また、受診に向かう場合は、マスクを着用し極力公共交通機関の利用を避けましょう。
はしかに感染した場合どのくらいの期間療養が必要ですか?
- 感染者が周囲に感染させる期間は、発疹出現後4〜5日目といわれています。
- また、合併症がない場合は、7〜10日で回復します。そのため、最低でも1週間は療養期間が必要だといえるでしょう。
- はしかは学校保健安全法に基づく第二種学校感染症に指定されています。解熱後3日を経過するまでは出席停止と定められています。
感染者のケア・サポートをする際の注意点はありますか?
- まずは、ケア・サポートされる方が免疫を持っているか確認しましょう。はしかに感染したことがある方は、免疫を持っているといえます。免疫を持っていない可能性がある場合は、二次感染の可能性があるため感染者のケア・サポートは避けるべきです。
- また、感染者をケア・サポートする場合は次のことに注意しましょう。
- こまめに水分を摂らせる
- 食事の際は、消化が良く食べやすいものを与える
- 熱が続く場合は、適度に頭を冷やす
- 免疫のない家族と接しないように部屋を分ける
- マスク着用・手洗いを徹底する
- 免疫があるとはいえ、第三者への感染を防ぐためケア・サポートをする場合はマスク着用・手洗いの徹底が大切です。
はしかの治療方法とは
はしかはどのような治療をするのですか?
- 麻疹ウイルスに対する抗ウイルス薬はありません。そのため、はしかの治療は、症状を軽くするための対症療法になります。
- 肺炎や中耳炎などの合併症がみられる場合は、抗菌薬を投与します。
- はしかの治療は、安静にして休息をとることがまずは重要です。食事が可能であれば、消化に良い栄養のあるものを食べて体力回復に努めましょう。また、脱水症状に注意する必要があります。こまめな水分補給を忘れないようにしましょう。
入院が必要な場合はありますか?
- 合併症が疑われる場合は入院を必要とすることもあります。高熱が下がらない・呼吸がしづらいなど重い症状がみられる場合は、必ず医療機関に相談しましょう。
- また、合併症のなかには、脳炎のように生死に関わる危険な合併症もあります。感染中に体調の変化など不安なことがあれば、すぐにかかりつけ医や医療機関に相談することが大切です。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
- はしかは非常に感染力が強く、重症化する恐れもあるため、決して甘くみてはいけない病気です。はしかは子どもに多い病気のイメージがありますが、大人でも感染します。また、子どもよりも大人のほうが重症化しやすいともいわれています。
- はしかの治療薬はなく、根本的な治療法が確立しているわけではありません。だからこそ、はしかにかからないことが大切です。感染力が高いはしかを確実に予防するためには、ワクチン接種が有効です。
- 免疫を持っているか不安な方は、はしかの罹患歴があるか・2回のワクチン接種歴があるか確認しておきましょう。
編集部まとめ
はしかは、ワクチン接種率の上昇で感染者が少なくなっている病気です。しかし、日本に限らず世界中で感染する危険性があります。
日本ははしかの排除状態に認定されています。
それでもワクチンを摂取していない・1回のワクチン接種のみで充分な免疫が獲得できていない場合、感染する可能性はゼロではありません。
はしかの最も有効な予防方法はワクチンです。
免疫が不十分な方・海外渡航を控えている方・今後妊娠の可能性がある方は、麻疹ワクチン接種を積極的に検討しましょう。
参考文献
FORTH|お役立ち情報|感染症についての情報|麻しん(はしか)
強い感染力を持つ「はしか(麻疹)」の症状と感染経路、予防接種について解説 | NHK健康チャンネル