「狭心症」とは?症状・治療法・原因についても解説!
狭心症は、心臓に栄養を送る血管が何らかの原因で狭くなり、心臓が酸素不足になる病気です。
狭心症をはじめとする「虚血性心疾患」の発症数は、年齢が上がるにつれて増加傾向にあります。虚血性心疾患は、がんや脳卒中と並ぶ日本人で多い死因の一つですが、生活習慣の見直しで予防できる場合もあります。
今回は狭心症の症状や原因、受診科目などを紹介します。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
狭心症とは
狭心症とは、どのような疾患なのでしょうか?
- 狭心症は、動脈硬化などのさまざまな要因によって、心臓に栄養を送る血管(冠動脈)が狭くなり、血液の流れが悪くなった状態です。心臓が酸素不足に陥ることから、胸を圧迫されるような痛みの発作が繰り返し起こります。
- 狭心症は虚血性心疾患の一種です。原因や症状の違いによって、「不安定狭心症」「労作性狭心症」「冠攣縮性(かんれんしゅくせい)狭心症」の3つに分類されます。
不安定狭心症
「不安定狭心症」とは、どのような状態のことをいうのでしょうか?
- 不安定狭心症は、狭心症の中でも心筋梗塞に移行する恐れのある状態のことをいいます。心筋梗塞の前兆ともいえる、危険な状態です。
労作性狭心症
「労作性狭心症」とは、どのような状態のことをいうのでしょうか?
- 「労作」とは体を動かすことで、労作時には心臓により多くの血液が必要になります。労作性狭心症では、安静時には症状がありません。しかし、労作時には心臓に十分な血液が届かず、発作が出現します。
- 労作性狭心症の段階で診断や治療ができれば、その後も大きな後遺症なく日常生活を送れることが多いとされています。しかし、治療せずに放置してしまうと、不安定狭心症や心筋梗塞を引き起こす危険性もあります。
冠攣縮性狭心症
「冠攣縮性狭心症」とは、どのような状態のことをいうのでしょうか?
- 冠攣縮性狭心症は、「異形狭心症」と呼ばれることもあります。
- 冠攣縮性狭心症では、血管の筋肉に発作的な痙攣が起こり、一時的な狭窄を生じ、心臓が酸素不足に陥ります。
- ほとんどは一時的な発作で、時間の経過とともに改善します。しかし、狭窄が持続すると心筋梗塞を引き起こすこともあるので、注意が必要です。
狭心症の症状
狭心症では、どのような症状が出るのでしょうか?
-
代表的な症状は、以下の通りです。
● 胸の痛み・圧迫感
● 胸が締めつけられる感覚
● 胃痛・胸やけ
● 腕・肩・顎・歯の痛み
● 冷感
- 一定以上の運動負荷や力仕事、寒冷、入浴など、体を動かした状態で症状が現れます。症状は数分から15分程度の持続となります。
- 精神的なストレス、睡眠不足、飲酒により発作が誘発されることもあります。
不安定狭心症の症状には、どのような特徴があるのでしょうか?
- 不安定狭心症では、症状が比較的軽く、数分から10分ほどで治まります。症状は、労作時・安静時に関係なく出現し、繰り返すことが多いとされています。
- 症状に以下の特徴がある場合は、心筋梗塞に移行する危険性が高い状態ですので、注意が必要です。
● 安静時に出現する
● 持続時間が長くなってきた
● 出現頻度が多くなってきた
労作性狭心症の症状には、どのような特徴があるのでしょうか?
- 痛む場所を特定できないような、漠然とした痛みが典型的な症状です。上腹部や左肩、首や顎に痛みが広がることがあり、「放散痛」と呼ばれています。
- 運動、力仕事や家事、入浴などの労作時に症状が現れるのが特徴です。多くの場合で、安静や服薬によって、数分から10分以内で症状が改善します。
冠攣縮性狭心症の症状には、どのような特徴があるのでしょうか?
- 労作性狭心症とは逆で、労作時よりも安静時(特に夜間から早朝)に発作が起こることが多いのが特徴です。過呼吸や飲酒により発作が誘発されることもあります。
- ほとんどは一過性の発作で時間とともに改善しますが、発作が持続して心筋梗塞へと発展していく場合もあります。
狭心症の原因
狭心症の原因としては、どのようなことが関係しているのでしょうか?
- 喫煙や高血圧、LDLコレステロールの高値、メタボリックシンドロームなどが原因で、冠動脈の動脈硬化が進行すると、狭心症を起こしやすくなります。
- また、以下のような生活習慣がリスクを高めるとされています。
● 動物性油脂に多く含まれる「飽和脂肪酸」の過剰摂取
● 過度な飲酒
● 塩分の過剰摂取
● 運動不足
● ストレス
- 健康診断で肥満、高血圧、検査でLDLコレステロールの高値、糖尿病の指摘があった場合は、狭心症のリスクが高まります。
- 高血圧・肥満・LDLコレステロールの高値、糖尿病などは、狭心症の危険因子です。健康診断で数値の異常があり受診を指示された場合には、心筋梗塞・脳卒中となる前段階でも予防が重要でありますので、症状がなくても受診するのが安心です。
狭心症を予防するには、どうしたら良いのでしょうか?
- 狭心症の予防・治療には、先ほど挙げた狭心症のリスクとなる生活習慣の見直しが必要不可欠です。
- また、魚や野菜、大豆製品には、狭心症をはじめとする虚血性心疾患を予防する働きがあるとされています。これらの食材を積極的に摂取しましょう。
狭心症になりやすい人
狭心症は高齢者の病気というイメージがありますが、発症しやすい年代はありますか?
- 心疾患の発症数は、動脈硬化が起こり始める40 歳代ごろから、年齢と共に増加します。日本全体で見ても、年齢が上がるとともに患者数が増加傾向にあるため、高齢者で発症しやすい病気といえるでしょう。
- しかし、40~50代の働き盛りに発症することも稀ではありません。
発症に性差はありますか?
- 女性ホルモンには、冠動脈に対する保護作用があります。そのため、狭心症をはじめとする虚血性心疾患の発症率は、女性よりも男性の方が高いという性差があります。
- しかし、女性の場合は女性ホルモンが低下する閉経後に発症率が急増し、70歳で男性と同じくらいに、80歳以上では男性を上回る発症率となります。
閉経前の若い女性では、それほど気にしなくても良いということでしょうか?
- 女性の狭心症では、顎・のどの痛み、吐き気、腹痛、背中の痛みなど、狭心症とは無関係にも見える非典型的症状のみが現れることがあります。また、心電図に異常がない症例も多く、診断・治療が男性と比較して遅れてしまう傾向にあります。
- 若い女性だからといって油断せず、非典型的症状を見逃さないようにすることが大切です。
狭心症の受診科目
受診すると、どのような検査が行われるのでしょうか?
- 問診、心電図、血液検査、超音波検査を行いますが、これらの検査では異常が見つからないことも多くあります。24時間心電図や運動負荷試験、心臓カテーテル検査、冠動脈のCT検査が実施される場合もあります。
狭心症の治療方法
狭心症には、どのなような治療方法がありますか?
- 冠動脈に明らかな狭窄のない労作性狭心症や冠攣縮性狭心症では、発作予防の目的で血管拡張薬の服薬治療が行われます。発作時には、ニトロペンなどの血管拡張薬を頓服で服用します。
- 不安定狭心症では、経皮的冠動脈形成術(PCI)や冠動脈バイパス手術が行われます。また、血管が再び閉塞するのを予防するため、血液を固まりにくくする薬を継続的に服用します。
- 血液を固まりにくくする薬や血管拡張薬には、飲み合わせに注意が必要な場合もあります。市販薬などを併用する場合は、事前に医師や薬剤師に相談しましょう。
狭心症の治療期間はどのくらいでしょうか?
- 日常生活に復帰できるまでの期間や、その後の日常生活への影響は、治療法や病状によってさまざまです。
編集部まとめ
狭心症は、動脈硬化などのさまざまな要因によって、心臓に栄養を送る血管が狭くなり、血液の流れが悪くなる状態です。心臓が酸素不足に陥ることから、胸を圧迫されるような痛みの発作が繰り返し起こります。
時間の経過とともに改善する一次的な発作もありますが、病状によっては心筋梗塞などの重篤な病気を引き起こす場合もあります。気になる症状があるときは、早めに循環器内科を受診しましょう。
また、高血圧やLDLコレステロールの高値、メタボリックシンドロームなどは、狭心症の危険因子です。健康診断で数値の異常があった場合は、特に症状がなくても受診するのが安心です。
参考文献