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低用量ピルで吐き気がでる?副作用・注意が必要な人についても解説します

 公開日:2024/07/09
低 用量 ピル 吐き気

避妊目的での処方以外にも、月経困難症や子宮内膜症の治療において保険適応でも処方されることのある低用量ピルですが、どのようなイメージがあるでしょうか?

低用量ピルを飲むと吐き気の副作用が出ることが知られています。この吐き気は徐々に慣れてくるともいわれますが、本当なのでしょうか?

この記事では、低用量ピルの副作用について吐き気を中心に解説します。

記事の後半では、低用量ピルの服用に注意が必要な人についても解説しているので、参考にしてみてください。

佐孝 尚

監修薬剤師
佐孝 尚(薬剤師)

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経歴
北海道医療大学薬学部 卒業 現在はセンター薬局グループに薬剤師として勤務しながら株式会社イヤクルを創業。不動在庫医薬品取引プラットフォームアプリ【イヤクル】を運営。

保有免許・資格
薬剤師免許

低用量ピルで吐き気がでる?

部屋のソファーに座って鼻をつまむ若い女性
低用量ピルは、卵胞ホルモンであるエストロゲンと黄体ホルモンであるプロゲステロンの2種類の成分を配合した薬です。
薬に含まれるホルモンの量が低用量化されたことにより副作用が軽減されています。
低用量ピルの服用により起こる吐き気・嘔吐の副作用は、調査によって幅がありますが、1.2〜29.2%の患者さんで報告されています。
吐き気・嘔吐はエストロゲン依存性の副作用です。体内のホルモン量が変化することによって起こる副作用で、服用開始すぐから3ヵ月以内に出ることが多いです。3ヵ月程度で慣れてくることが多いので、症状が軽い場合にはそのまま様子を見ます。
我慢できない場合には、吐き気止めを併用しながら服用を続け、次の周期から違う低用量ピルに処方を変更することが可能です。
低用量ピルを服用から2時間以内に嘔吐してしまった場合、もう一度服用することが推奨されます。しかし、胃腸炎などで激しい嘔吐・下痢が続く場合には脱水により血栓症のリスクが上がる可能性があるので、一度低用量ピルの服用を中止し次の周期に再開することが望ましいです。

吐き気以外の低用量ピルの副作用は?

頭を抱える若い女性
低用量ピルの服用で起こる可能性のある副作用には、吐き気以外に以下のものがあります。

  • 乳房の張り
  • 下腹部痛
  • うつ症状
  • 不正出血
  • 頭痛
  • 下痢

ここでは、これらの副作用について1つずつ解説します。低用量ピルの副作用について気になっている人は参考にしてみてください。

乳房の張り

低用量ピルの服用で乳房の張りや痛みなどの症状が副作用として出る場合があります。
乳房の張りである乳房緊満感は0.1〜20%、乳房痛は1.0〜12.3%の患者さんで報告されています。
乳房の症状はプロゲステロン依存性の副作用です。低用量ピルの服用を開始することにより体内のホルモンバランスが変化することで生じる副作用で、飲み始めに出ることが多いです。
飲んでいるうちに気にならなくなることがほとんどで、乳房の張りは3〜6ヵ月続くこともあります。

下腹部痛

低用量ピルの副作用で下腹部痛を含む腹痛の副作用が出ることがあります。下腹部痛は0.1〜6.9%、腹痛は0.1〜1.5%の患者さんで報告されている副作用です。
低用量ピルの副作用は、服用を始めた時のホルモンバランスの変化により一時的に起こることが多くあります。この症状は、服用を続けているうちに症状が治まることがほとんどです。
1シートを服用しても症状が治まらない・症状が徐々にひどくなるという時には医師に相談しましょう。

うつ症状

低用量ピルの服用を開始することで、気分の落ち込み・不安感・情緒不安定などのうつ症状が副作用として出ることがあります。
抑うつは0.1〜0.6%、イライラ感は0.2〜1.8%の患者さんで報告されている副作用です。服用開始によりホルモン量が安定しないうちに起こりやすい副作用なので、服用するうちに慣れてきて治まる場合が多いです。
数か月続けて服用していても症状が治まらない・ひどくなっていく場合には医師に相談して、薬の変更も検討しましょう。

不正出血

低用量ピル服用による不正出血は、ホルモンバランスが一時的に崩れて、子宮内膜が剥がれ落ちることが原因で起こる副作用です。
ほとんどが少量で茶褐色の出血であり、大量の鮮血が出ることはあまりありません。
ピルの飲み始めは特に不正出血が起こりやすいですが、1~3カ月で落ち着くことがほとんどです。
出血が治まらない・ひどくなる場合には、子宮の病気など低用量ピル以外の原因による不正出血の可能性もあるので、医療機関を受診して相談しましょう。
長期服用による不正出血は飲み忘れや内因性のホルモンバランスの乱れでも起こることがあるので、飲み忘れには注意が必要です。

頭痛

頭痛の副作用は、低用量ピル服用の初期に起こりやすい副作用で、ホルモンバランスが一時的に変化するために起こると考えられています。
薬の服用を続けることで1〜3ヵ月で慣れてくるものですが、我慢できない場合は医師に相談しましょう。
頭痛は3.4~15.7%、頭重感は0.2%の患者さんで報告されている副作用です。
低用量ピルに含まれるエストロゲンは、頭痛の原因になることがあるといわれています。月経周期のホルモンバランスの変化により頭痛が起こることもあるので、予防的に鎮痛剤を服用する人もいるのです。
もともと片頭痛を持っている人は、低用量ピルを服用することで片頭痛の引き金となることがあります。また片頭痛がある人の低用量ピルの服用は脳梗塞のリスクが上がるため服用には注意が必要です。

下痢

低用量ピルの服用を始めると、下痢の副作用が起こることがあります。
この副作用もホルモンバランスが一時的に変化するために起こるもので、薬の服用を続けることで慣れていくものです。下痢の副作用は0.6〜4.0%の患者さんで報告されています。
下痢が続く場合には、医療機関を受診して相談しましょう。

低用量ピルの服用に注意が必要な人とは?

高齢者と問診票 シニアの病気
低用量ピルにはエストロゲンが含まれ、この作用により血液が固まりやすいため血栓が作られやすいです。
このため、特に以下の項目に当てはまる人は低用量ピルの服用に注意が必要です。低用量ピルを服用するかどうかは医師と相談して、リスクとベネフィットを理解してから決めるようにしましょう。

  • 40歳以上の女性
  • 乳がんの家族歴または乳房に結節を有する女性
  • 喫煙者
  • 肥満の女性

ここでは、これらの項目について1つずつ解説していきます。この項目に該当している人や低用量ピルの服用を検討している人は参考にしてみてください。

40歳以上の女性

40歳以上の女性は、低用量ピルの服用は慎重に行います。
40歳以上は一般的に心筋梗塞などの心血管系疾患が発症しやすくなり始める年齢です。低用量ピルを服用することでこれを助長してしまうため注意しながら服用する必要があります。

乳癌の家族歴または乳房に結節を有する女性

乳癌の家族歴又は乳房に結節のある場合、低用量ピルの服用には注意が必要です。
エストロゲンの投与と乳がんの発症に関連があるという報告もあるため、服用する場合には定期的に乳房検査を行いながら慎重に行う必要があります。
乳がん・子宮がん・子宮筋腫などエストロゲン依存性腫瘍がある場合には、腫瘍が悪化することがあるので低用量ピルの服用は禁忌です。

喫煙者

35歳以上で1日15本以上の喫煙者は、低用量ピルの服用が禁忌となります。これは心筋梗塞等の心血管系疾患が起こりやすくなるためです。
1日の喫煙本数が増えるにつれて心血管系疾患の発症リスクが上がることも知られています。年齢や1日の喫煙本数にかかわらず、慎重投与となるため、服用には注意が必要です。

肥満の女性

BMI30以上の肥満の場合、低用量ピルの服用には注意が必要です。BMIが上がるにつれて、血栓症などの心血管系疾患のリスクが上がってしまいます。
40歳未満ではBMIが30以上でも慎重投与ですが、40歳以上では低用量ピルの服用は禁忌で服用ができません。

編集部まとめ

ポイントを指差す若い看護師
低用量ピルの服用を開始すると、ホルモンバランスの変化により一時的に吐き気・頭痛・乳房の症状などの副作用が起こることがあります。

これらの副作用は1〜3ヵ月程度で慣れてきて治まることがほとんどなので、気にならないようならそのまま服用を続けましょう。

我慢できない場合には、他の低用量ピルへの変更や症状に対する対策をしながら続けることも考えられるので医師に相談してください。

低用量ピルの服用を検討している人・副作用が気になっている人は、この記事を参考にしていただけると幸いです。

この記事の監修薬剤師