「FAGA(女性の薄毛)の 原因」はご存知ですか?症状や治療薬についても解説!
脱毛や薄毛と聞くと、男性だけに起こるイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。しかし、女性も薄毛を発症することがあります。
女性の薄毛はFAGAと呼ばれており、40~50代で悩み始める方が多くなっています。
分け目が目立つようになってきた・髪が細くなった・全体的にボリュームがなくなってきたという方は注意が必要です。
こちらで、FAGAの原因・症状・男性の薄毛AGAとの違い・治療薬についてご紹介していきますのでぜひ参考にしてください。
監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)
目次 -INDEX-
FAGAの原因
FAGA(女性男性型脱毛症)とはFemale androgenetic alopeciaの略で、女性の薄毛のことを指します。
薄毛というと男性に起こるものだというイメージを持っている方も多いかもしれませんが、女性にも起こることがあるのです。分け目が薄くなってきた気がするという方や、髪が細くなってボリュームがなくなってきたという方は、もしかしたらFAGAかもしれません。
FAGAの原因は一つではなく、いくつもの要因が複雑に絡み合っていると考えられています。女性の薄毛が起こる原因には以下のようなものが挙げられます。
- ホルモンバランスの乱れ
- 無理なダイエット
- 全身疾患
- ストレス
- 睡眠不足
- 遺伝
それぞれについて、詳しくみていきましょう。
ホルモンバランスの乱れ
FAGAの主な原因はホルモンバランスの乱れだと考えられていますが、まだ医学的には解明されていません。
年齢を重ねることで卵巣の機能が衰え、更年期と呼ばれる閉経前後の時期になると、女性ホルモンの一つであるエストロゲンが減少して女性ホルモンバランスが乱れます。
エストロゲンには髪の成長促進や成長期を維持する働きがあるため、加齢によるホルモンバランスの乱れは薄毛につながると考えられているのです。さらに、出産に伴う女性ホルモンバランスの乱れによっても薄毛がみられることがあります。
女性の薄毛は、女性ホルモンが低下することで相対的に男性ホルモンの割合が多くなることで、男性の薄毛と同じ原理で起こると考えられていました。
しかし男性ホルモンのはたらきでは十分に説明できない点があるため、近年では必ずしも男性ホルモンが原因ではないと考えられるようになったのです。
女性の薄毛全般を指す概念が必要だということから、近年では女性の薄毛はFPHL(female pattern hair loss・女性型脱毛症)と呼ばれることが多くなりつつあります。
無理なダイエット
食事から摂った栄養は健康な髪を維持するうえで欠かせません。無理なダイエットを行うと、髪の健康を維持するうえで必要な栄養が不足して薄毛を発症することがあるため注意が必要です。
無理なダイエットによる薄毛は、若い女性でも発症する可能性があります。1日3食、髪の成長に欠かせないたんぱく質・ビタミン類・ミネラル類をしっかり摂りましょう。
全身疾患
薄毛は疾患の合併症としてみられることもあります。甲状腺機能低下・鉄欠乏性貧血・膠原病などの疾患でも薄毛がみられることがあるため、大量の抜け毛があるような場合には注意が必要です。
抜け毛や薄毛の症状があって体調に異変がある場合には、医療機関を受診しましょう。
ストレス
ストレスによって自律神経が乱れると、頭皮が血行不良を起こします。それによって髪の成長に必要な栄養が不足し、毛根に十分な栄養が行き渡らなくなって薄毛が起こることがあると考えられています。
全体的に髪が薄くなったり抜け毛が増えたりしたような場合には、ストレスをためないように注意しましょう。
睡眠不足
睡眠中に分泌される成長ホルモンは、毛母細胞の細胞分裂を活発にし、髪の成長を促す効果があります。質の良い眠りは、髪の健康を守るうえで欠かせないのです。
特に就寝後3時間のノンレム睡眠の時間帯に成長ホルモンが分泌しやすいため、その時間に質の良い眠りを確保するのが大事です。
また、成長ホルモンは髪が作られる際に必要なたんぱく質を合成するはたらきをします。薄毛を予防するためにも、しっかりと質の良い睡眠をとりましょう。
遺伝
今のところまだはっきりとしたことはわかっていませんが、遺伝的要因によって薄毛が発症する可能性も考えられます。両親のどちらかが薄毛の場合には薄毛が遺伝する可能性があるでしょう。
AGAとFAGAの違い
女性の薄毛をFAGAと呼ぶのに対し、男性の薄毛はAGAと呼ばれます。
男性の薄毛も女性の薄毛もメカニズムは同じなのではないかと思っている方も多いかもしれませんが、研究が進むにつれて違いがあることが分かってきたのです。日本人男性の場合、AGAは20代後半ごろから起こり始めるとされています。
一方でFAGAは一般的に更年期ごろ(40~50代)から多発するとされており、発症年齢に違いがみられます。
症状の出方にも違いがあり、AGAは髪の生え際や頭頂部などから局所的に薄くなっていくのに対し、FAGAは全体的に薄くなっていくのが特徴です。
また、AGAとFAGAは使用される薬にも違いがあるため、女性がAGA用の薬を使用するのは危険です。医師の診察を受けたうえ、医師から処方された薬を使用したほうが安心でしょう。
FAGAの症状
FAGAによる女性の薄毛の症状は、全体的に髪が薄くなったり、髪が細くなったりするという特徴があります。主に以下のような進行パターンがあります。
- ルードウィッグ型
- クリスマスツリー型
- ハミルトン型
ルードウィッグ型は頭頂部から後頭部にかけて薄くなっていくのが特徴です。生え際の後退はみられません。
クリスマスツリー型は生え際から頭頂部の真ん中あたりまで薄毛が広がった状態で、クリスマスツリーのように見えます。比較的目立つため、ルードウィッグ型よりも気付きやすいといえるでしょう。
また、ハミルトン型は生え際の部分がM字型になっているタイプの薄毛をいいます。こちらでさらに詳しく、FAGAの特徴的な症状であるびまん性脱毛症や、女性の薄毛の原因となるそのほかの脱毛症についてみていきましょう。
びまん性脱毛症
びまん性脱毛症はFAGAの特徴的な症状で、局所的ではなく全体的に薄毛がみられます。
抜け毛が増えて髪が細くなっていくことでボリュームがなくなり、全体的に薄い印象になるのが一般的です。地肌が見えてしまうようなケースもあります。
AGAのように局所的に薄くなるわけではないため自分では気づきにくく、発見が遅れることもあり注意が必要です。
抜け毛が多い・髪の分け目が目立つようになった・以前より髪が細くなってボリュームがなくなったという場合には、びまん性脱毛症の可能性があります。
円形脱毛症
髪の毛が円形に脱毛するのが特徴です。円形脱毛症は自己免疫疾患で、何らかの理由で自分自身の身体を攻撃してしまうことが原因だと考えられています。
円形脱毛症には1つだけ発生する単純性通常型・多発する多発性通常型・生え際が帯状に脱毛してしまう蛇行型・全体的に抜けてしまう全体型があります。原因として考えられているのは、遺伝・甲状腺の病気・膠原病などです。
円形脱毛症といえばストレスが原因だというイメージがありますが、実は必ずしもストレスが原因とはいい切れないとされています。ストレスが原因とみられるケースもあるものの、あまりストレスがないと考えられる乳幼児にも発症することがあります。
脂漏性脱毛症
脂漏性湿疹(脂漏性皮膚炎)が原因で脱毛が起こります。皮脂の過剰分泌が原因とされており、頭皮にべたつきがみられるのが特徴です。
脂漏性湿疹を治療しなかった場合、毛穴が炎症を起こしてフケがたまり、髪の成長がうまくいかなくなって髪が抜けてしまいます。
産後脱毛症
子供を出産したあとに脱毛が増える状態を指します。髪全体がボリュームダウンし、なかには地肌が見えるケースもあるため驚く方も多いようです。
産後2~3か月くらいから目立ってくるケースが多く、産後4~6か月くらいにピークを迎えるのが一般的だとされています。
その後新たな髪が生え始め、産後1年くらい経ったころには目立たなくなってくることが多いでしょう。
牽引性脱毛症
ポニーテールのような頭皮が引っ張られるような髪型を頻繁にしている場合、まれに若い世代でも薄毛が起こることがあるため注意が必要です。これは牽引性脱毛症と呼ばれる症状です。
髪を分ける・しばる・エクステを付けるなどの行為によって、頭皮を引っ張る力が働きます。頻繁に行うことで毛根や頭皮がダメージを受け、薄毛の原因となることがあります。
FAGAの治療薬
FAGAの治療は経口薬と外用薬で行います。AGAとFAGAでは使用される薬が一部異なり、AGAの治療で使用されるフィナステリドやデュタステリドは女性は使用できないため注意が必要です。
これらの薬は胎児に影響を及ぼす可能性があることから、特に妊娠中の方・妊娠の可能性のある方・授乳中の方の服用は禁忌とされています。
男性が使用するAGAの薬は多く存在するものの、FAGAの薬はまだあまり種類が多くありません。FAGAの治療でよく使用される薬には以下のようなものがあります。
- ミノキシジル(経口薬・外用薬)
- スピロノラクトン
- パントガール
それぞれの薬について詳しくご紹介していきます。
ミノキシジル
ミノキシジルはAGAの治療にも使用される薬で、経口薬と外用薬があります。
外用薬に関しては日本皮膚科学会のガイドラインに使用を強く進めるという記載があり、FAGAの治療に対する有効性が認められています。
男性用と女性用では濃度が違い、女性用は1%のものが使用されるのが一般的です。ミノキシジル外用薬の効果を実感できるまでは6か月程度かかるとされています。
使用開始時には一時的に薄毛が目立ちやすくなる初期脱毛が起こることがありますが、これは髪が新しく生え変わるための脱毛であり、徐々に落ち着いていきます。
経口薬は国内未承認ですが、クリニックなどで個人輸入したものを処方してもらうことが可能です。服用によって初期脱毛や多毛症のほか、低血圧・動悸・めまいなどの副作用が起こる可能性があります。
ミノキシジルは妊娠中の方・妊娠の可能性がある方・授乳中の方・未成年の方は使用できません。また、持病がある方も医師に相談してから使用するようにしましょう。
スピロノラクトン
スピロノラクトンは利尿薬で、心不全や高血圧などの治療に使われている経口薬です。
FAGAに対しては、抜け毛を防ぐ目的で使用されることが多いでしょう。スピロノラクトンを使用すると不正出血や倦怠感といった副作用がみられることがあります。
まれに重大な副作用として電解質異常・急性腎不全・中毒性表皮壊死融解症・皮膚粘膜眼症候群などがみられることがあるため、異常を感じたら服用をやめて医師に相談しましょう。
また、妊娠中の方・妊娠の可能性がある方・授乳中の方・ほかの薬を服用している方・薬でアレルギーを起こしたことがある方は、事前に医師に相談する必要があります。
パントガール
女性の薄毛治療のために服用が認められている経口薬です。
髪の生成に効果的だとされるパントテン酸カルシウム・シスチン・ケラチンなどが含まれており、育毛環境を改善して抜け毛減少や発毛促進などの効果が期待できます。
効果が時間できるまでには最低でも3か月程度は必要なため、すぐに効果が現れなくても継続して使用することが大事です。パントガールには、特に重篤な副作用は報告されておりません。
ただし、妊娠中の方・妊娠の可能性がある方・授乳中の方は、事前に医師に相談しましょう。
薄毛が気になる女性はFAGA専門クリニックに相談を
女性に薄毛が起こることはあまり知られていないため、薄毛に気づいてショックを受ける方も多いでしょう。クリニックを受診するのはなんとなく恥ずかしいと思ってしまう方もいるのではないでしょうか。
しかし、一度FAGAを発症してしまうと基本的には自然に治ることがないため注意が必要です。症状が進行してしまう前に、FAGA専門クリニックの受診を検討してみてください。
編集部まとめ
薄毛で髪のボリュームがなくなり、ひそかに悩んでいるという女性もいるのではないでしょうか。
女性の薄毛は、AGA専門クリニックで治療が可能です。悩んでいるなら、ぜひ一度相談してみてください。
クリニックを受診することを恥ずかしいと感じて男性用の市販薬を使用してしまうと、思わぬトラブルが起こることも考えられます。
自己判断で薬を使用せず、クリニックで医師に薬を処方してもらいましょう。