「低用量ピルを服用中に生理をずらせる?」前にずらす・後にずらす場合も解説!
低用量ピルとは、決まった期間に毎日服用することで女性ホルモンのバランスを整える薬です。ホルモンのバランスが一定になることで生理周期が規則正しくなります。
また、低用量ピルの服用により生理をコントロールできるようになるため、ピルの服用方法を変えることで生理をずらすことが可能です。
日本ではまだ服用している方の割合が少ないですが、生理をずらせること以外にも低用量ピルを服用するメリットはたくさんあります。
この記事では、低用量ピルを服用中でも生理をずらせるのか・低用量ピルの正しい飲み方・ピルを服用することのメリットや注意点について詳しく解説していきます。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
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低用量ピルを服用中に生理をずらせる?
低用量ピルを服用している間は規則正しい生理周期を繰り返していくため、ピルを服用中に生理をずらすことはできないと思われている方も多いかもしれません。しかし、ピルを服用していても生理をずらすことは可能です。
ピルはエストロゲンの含有量によって種類が異なり、そのうち生理をずらすために使用されるものは中容量ピルがメインとなります。中容量ピルだと副作用が出てしまう場合、低用量ピルに変更が可能です。
ピルは21日間服用した後に7日間の休薬期間があり、その休薬期間中に生理がくるようになっています。この休薬期間を意図的にコントロールすることで、生理を予定日から早めたり、後ろにずらしたりすることが可能となるのです。
生理を予定日より前にずらす場合と後ろにずらす場合では方法が異なるため、それぞれ解説していきます。なお、服用している低用量ピルの種類によっても方法が変わるので、ピルを服用中に生理予定日をずらす際は必ず医師に確認してからおこなうようにしてください。
生理予定日より前にずらす場合
低用量ピルを服用している状態で生理を予定日より前にずらす場合、生理がきてほしい日を計算して服用を通常の21日間より早めにやめる方法が一般的です。
低用量ピルを服用している場合、本来はピルを21日間服用した後に7日間の休薬期間があります。その休薬期間中に生理がくるようになっているので、休薬期間に早めに入ることで生理を予定日より前にずらすことが可能となるのです。
例えば、生理を1週間早めたい場合はピルを21日間ではなく14日間服用した時点でストップさせましょう。すると本来なら21日間の服用後に生理がくる予定を14日間の服用後にずらすことができ、生理予定日を早められます。内服薬の種類によっても異なりますが、ピルの服用をやめてから2〜3日で生理がみられることが多いため、前にずらしたい日数分を数えて計画的に服用をやめるようにしてください。
低用量ピルの服用を早めにやめた場合でも、休薬期間は本来と同様の7日間とるようにしましょう。
生理予定日より後にずらす場合
低用量ピルを服用している状態で生理を予定日より後にずらしたい場合、生理がきてほしい日に合わせてピルの服用期間を長くする方法が一般的です。
低用量ピルはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という女性ホルモンが配合された薬で、ピルの服用を続けている期間はホルモンバランスが一定になります。ピルの服用期間を本来の21日間以上にすることでホルモンバランスを保ち続けることができるため、生理予定日を後ろにずらすことが可能となるのです。
例えば、本来は21日間の服用後に7日間の休薬期間をもうけますが、低用量ピルの服用をやめると2〜3日で生理がみられるようになるため、休薬せずに次のサイクル分のピルを遅らせたい分だけ続けて内服します。
ピルの服用を続けている限り生理を遅らせることができますが、生理予定日を後ろにずらせる限度は10日程度です。出血がみられるようになったらピルの服用をストップさせて7日間の休薬期間に入りましょう。
低用量ピルの正しい飲み方
低用量ピルの正しい飲み方は、21日間の服用と、7日間の休薬です。服薬期間と休薬期間を合わせて28日間となり、28日間を1サイクルとして考えていきます。
低用量ピルの服用でポイントとなるのが服用を始めるタイミングと、毎日同じ時間に1錠服用することです。一般の薬は食前・食後など飲み方が指定されていますが、ピルの場合は服用時間は自分で決めた時間でよいので、日々の生活スタイルに合わせて確実に毎日飲める時間帯を決めてください。
低用量ピルを飲み始めた後は、ピルの服用時間がなるべくずれないように気をつけましょう。服用を始めるタイミングとしては以下の2つが主流になっているので、それぞれ解説していきます。
- Day1スタート
- Sundayスタート
低用量ピルを服用するタイミングの1つ目は、Day1スタートです。この方法は生理が始まってから24時間以内にピルを1錠内服することで、1日目とカウントする飲み方になります。生理が始まるタイミングは人それぞれですので、出血に気付いた段階から24時間以内と数えましょう。
1日目から21日目までは毎日同じ時間に1錠の服用を継続します。22日目から28日目の7日間は休薬期間に入りますので、服用を終えてから2~3日で生理がみられるようになるでしょう。生理がくるタイミングには個人差がありますので、低用量ピルの服用を終えた後に何日目で出血がみられたか毎回把握するようにしてください。
ピル服用の2つ目のタイミングは、Sundayスタートです。この方法は生理が始まってから最初の日曜日に低用量ピルを服用し始める飲み方になります。例えば、月〜土曜日に生理が始まった場合は始めに服用せず、日曜日になるのを待ってからピルの服用を開始してください。飲み始めを1日目とカウントし、その後はDay1スタートの場合と同様です。
Sundayスタートにすると週末に生理がくることを避ける周期にできるので、週末の予定が多い方にはおすすめの方法になります。低用量ピルはピルの種類によって21錠のタイプと28錠のタイプに分かれますが、21日間の服用と7日間の休薬期間を1サイクルとするのはどちらも同じです。
28錠のタイプの場合、22日目からの7日分はホルモン剤を配合していない薬(偽薬)になります。偽薬は薬の成分が入っていないので服用していないのと同じになりますが、これは毎日服用する習慣をつけることで飲み忘れるのを防ぐ目的のためです。21錠のタイプのものは7日間服用しない期間がありますので、7日後に再開するのを忘れないようにスケジュール管理を気を付けてください。
低用量ピルで生理をずらすことのメリット
低用量ピルを服用することで生理をずらすと聞くと、怖いイメージを持たれる方も多いのではないでしょうか。低用量ピルは女性ホルモンのバランスを整える作用があるため、服用することで生理周期をコントロールできるようになります。
生理をコントロールできる便利さや、安全性が高いことから海外ではメジャーな薬となっていますが、日本での使用率は少ないです。低用量ピルを服用することや、ピル服用によって生理をずらすことに抵抗を感じるかもしれませんが、そのメリットはたくさんあります。
数あるメリットの中でも大事な予定に対応できる・体への負担が少ない・安全性が高いことが大きなメリットです。この3つのメリットについて順番に解説していきます。
生理日をずらすことで大事な予定に対応できる
低用量ピルで生理をずらすことのメリット1つ目は、生理を本来の予定日からずらすことで大事な予定に対応できるようになることです。生理は女性にとって毎月くる自然なものとはいえ、大事な予定がある日に生理が重なってしまうことはなるべく避けたいものですよね。
低用量ピルは女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という2つの女性ホルモンが配合されている薬のため、ホルモンバランスを一定に保つことで生理周期をコントロールできるようになります。
ピルを服用すると21日間の服用後2〜3日で生理がくるようになっているため、生理予定日が把握しやすいです。カレンダーを見ながら生理周期を計算すれば外出の予定が立てやすいですし、長期旅行の場合でもスケジュールが組みやすくなります。
また、外出先で生理がきてしまったらどうしようという不安を抱える必要がなくなり、ナプキン等の生理用品も不要になるため旅行の荷物を減らせる面もメリットです。
体への負担が少な
低用量ピルで生理をずらすことのメリット2つ目は、生理に伴う体への負担が少なくなることです。毎月くる生理期間ですが、生理に伴う体の不調に悩まされている方も多いのではないでしょうか。
ピルを服用することで乱れたホルモンバランスを整え、生理に伴って現れる数々の不調を緩和・軽減させることが可能です。具体的には生理痛や腰痛が軽くなる・出血量が少なくなる・貧血の改善・めまいや立ちくらみの減少・月経不順の改善・ニキビの予防などがあります。
低用量ピルと聞くと避妊で使われるイメージが強いですが、ピルは避妊以外にも様々な目的で使用されており、治療薬としても使われる薬です。生理前や生理中に現れる心や体の不調を我慢してやり過ごしている方もいますが、低用量ピルを服用することで抱えている不調が改善する場合が多くみられます。
生理に伴う不調に悩まされている方は、ピルの服用により排卵を抑制したり女性ホルモンのバランスが整えられたり症状の緩和・軽減につなげていけるため、ピルの服用を選択肢の1つとして検討してみてはいかがでしょうか。
安全性が高い
低用量ピルで生理をずらすことのメリット3つ目は、ピルの安全性が高いということです。低用量ピルは継続して服用する薬のため、ずっと飲み続けていて大丈夫なのだろうかと心配や不安になることもあるかもしれません。しかし、低用量ピルはもともと病気の治療薬ではなく健康な女性が服用するために作られたものなので、安全性は高いです。
日本産婦人科学会ガイドラインの死亡リスクによると、低用量ピルを服用した場合と比べて妊娠や出産のほうが6倍もリスクが高くなるというデータが出ています。その他にも交通事故の死亡リスクはピル服用の8倍、喫煙にいたっては167倍にも死亡リスクが上がるというデータです。
また、低用量ピルは避妊以外の目的でも幅広く使用されており、月経困難症・過多月経・子宮内膜症の緩和など病気の治療薬の1つでもあります。これらのことからも低用量ピルの安全性は高く、安心してよいといえるでしょう。
低用量ピルで生理日をずらす際の注意点
生理をずらす際に使用されるピルは、中容量ピルが一般的です。しかし、中容量ピルが身体に合わない場合は低用量ピルに変更し、服用することが可能となります。低用量ピルの服用でも生理をずらせますが、生理をずらす際にはいくつかの注意点があります。
副作用が出る可能性と、周期を把握する必要がある点です。この2つはどちらも大事なことですので、順番に解説していきます。
副作用が出る可能性がある
低用量ピルで生理日をずらす際の注意点1つ目は、副作用が出る可能性があることです。ピルには女性ホルモンが含まれているのですが、ホルモンの量を効果のあるギリギリの値まで下げているため、副作用は他のピルに比べて現れにくいといわれています。
服用しているピルの種類によっても副作用の現れやすさは異なりますが、悪心・嘔吐が比較的多くみられる症状です。特に服用し始めてから1〜2ヵ月の頃に多いといわれており、めまい・ふらつき・食欲不振・不正出血・頭痛・浮腫(むくみ)・体重増加などが現れる場合もあります。
これらの副作用は低用量ピルの服用を継続することで徐々に薄れていき、3ヵ月程で落ち着くでしょう。心配な症状がある場合や何か気になることがある時は医師に相談してください。
周期を把握する
低用量ピルで生理日をずらす際の注意点2つ目は、生理周期を把握する必要性があることです。ピルを服用する場合、21日間の服用期間後に生理がくるようになり、生理周期が規則正しくなります。
本来の生理予定日をずらすということは、低用量ピルの服用期間や休薬期間を自分で数えて生理日を意図的にコントロールする必要があるため、生理周期の把握が必須項目です。服用している低用量ピルの種類によって生理日をずらす際の飲み方が異なりますので、ピルを処方している医師に確認してからおこなうようにしてください。
また、ストレス・過度なダイエット・睡眠不足などの生活習慣の乱れは生理がずれてしまう原因とされています。生理がきてほしい時期に計画通りにくるよう、規則正しい生活を心掛けましょう。
低用量ピルと生理をずらすことについて気になったら
低用量ピルと生理をずらすことについて気になったら、まずはピルを処方してもらっている病院やクリニックの医師に相談しましょう。聞きづらいこともあるかも知れませんが、正しい知識を持つことは自分の体を守るためにも大切なことです。
生理をずらす際には中容量ピルがメインで使用されるため、低用量ピルだと作用が弱く効果が出ない場合もあります。低用量ピルから中容量ピルに変更することも可能ですし、中容量ピルで副作用が出てしまう方には低用量ピルがおすすめです。
低用量ピルは生理周期を安定させたり、生理前や生理中の不快なトラブルを軽減してくれたりします。ピルを安心して使用するためにも定期的に通院し、普段からご自身の体調を気にかけるようにしてください。また、生理をずらす際は事前に必ず相談し、医師の説明を受けてからおこなうようにしましょう。
編集部まとめ
低用量ピルには女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンが配合されており、この2つのホルモンバランスを整えることで生理周期を規則正しくします。
ピルを服用するタイミングを変えることで生理をコントロールし、本来の予定日から生理をずらすことも可能ですが、ピルの種類によって異なるため自己判断は避けましょう。
低用量ピルを服用する上での注意点や副作用もあるので、まずは安全に使用するためにピルを処方してもらっている医師に相談するところから始めてみてください。