「低用量ピルの飲み合わせ」の注意点はご存知ですか?医師が監修!
低用量ピルは、生理をずらしたり病気を治療したりするために服用される薬です。多くの女性が服用を考えたことがあるのではないでしょうか。
しかし、服用にあたって注意しなければならないのが低用量ピルと飲み合わせの薬です。飲み合わせが悪い薬は薬の効果を阻害してしまう可能性があります。
そこで本記事では、低用量ピルの飲み合わせの注意点についてご紹介します。飲み合わせに注意が必要な薬について詳しく解説するので、参考にしてください。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
目次 -INDEX-
低用量ピルの飲み合わせの注意点は?
低用量ピルの飲み合わせにはいくつかの注意点があります。
中でも注意すべきポイントは、いくつかの薬との飲み合わせによって、低用量ピルの作用が弱まったり強まったりする可能性があることです。正しい低用量ピルの効果を得るためには、作用が弱すぎるのも強すぎるのも良くありません。
併用によって低用量ピルの作用が弱まる可能性
飲み合わせの注意点として、併用によって低用量ピルの作用が弱まる可能性がある点を押さえておきましょう。低用量ピルの作用が弱まる可能性がある薬としては、次のような薬が挙げられます。
- モダフィニル
- ボセンタン
- HIV感染治療薬
- 抗結核薬
- 抗てんかん薬
モダフィニルとは、睡眠障害などに用いられる治療薬です。
ボセンタンは、肺高血圧の治療薬として用いられます。上記などの薬は、薬物代謝酵素と呼ばれる薬の成分が分解、排泄されるように働く酵素を誘導する可能性があります。そのため、低用量ピルの代謝を早めてしまったり、腸内の環境を変化させて吸収を悪くしたりすることがあるのです。
その結果、低用量ピルの作用を弱めてしまう可能性があります。低用量ピルの作用が弱まると、避妊効果が低下したり、不正出血を起こしたりする可能性があるため注意が必要です。
また、上記の薬の中でも抗てんかん薬・抗結核薬・HIV感染治療薬は、服用中だけでなく服用をやめた後も注意して低用量ピルを使用する必要があります。
これらの薬は、含まれる成分が体外へ排出されるまで時間がかかります。そのため、服用していない状態でも、しばらくは低用量ピルの効果を弱める可能性があるのです。
低用量ピルを飲むのであれば、一般的には服用をやめてから4週間程度間隔を空けてから服用するようにしましょう。
さらに、抗てんかん薬の場合は、抗てんかん薬自体の効果も弱めてしまうため注意が必要です。
併用によって低用量ピルの作用が弱まる可能性
低用量ピルの作用が弱まる可能性をご紹介しましたが、併用する薬によっては、作用が強まる可能性もあるため注意が必要です。
併用によって低用量ピルの作用が強まる薬としては、次のようなものが挙げられます。
- フルコナゾール・ボリコナゾール・イトラコナゾール
- アセトアミノフェン
フルコナゾール・ボリコナゾール・イトラコナゾールは抗真菌薬と呼ばれる薬に含まれる成分です。皮膚の病気である皮膚真菌症などの病気で使用されます。
アセトアミノフェンとは、解熱鎮痛剤に含まれる成分です。これらの薬は、低用量ピルの作用を増強させてしまう恐れがあります。作用の増強は、決して低用量ピルの効果を高めるというわけではありません。避妊効果などが高くなるわけではなく、副作用が強くなるなどの悪影響を及ぼす可能性があるのです。
特にアセトアミノフェンは、市販されている風邪薬などにも含まれていることもあるため、注意が必要です。
低用量ピルの飲み合わせに注意が必要な薬は?
低用量ピルの飲み合わせの注意点をご紹介しましたが、飲み合わせに注意が必要な薬は他にもいくつかあります。
先述したような低用量ピルの作用を弱めたり強めたりするだけでなく、飲み合わせた薬の効果が変化するケースもあるのです。大変危険な物もあるため、しっかりと押さえておきましょう。
病院で処方される薬
病院で処方される薬にはいくつか注意の必要な薬があります。
それは、低用量ピルとの併用で処方される薬の効果を弱めたり強めたりする可能性があるためです。効果が弱まってしまう薬としては、次のようなものが挙げられます。
- アセトアミノフェン
- Gn-RH誘導体・酢酸ブセレリン
- 血糖降下薬
- スルホンアミド系薬剤
- モルヒネ
- 抗てんかん薬
アセトアミノフェンは、先述した解熱鎮痛剤に含まれる成分です。低用量ピルの作用を強めてしまうだけでなく、アセトアミノフェンの効果を弱めてしまいます。
Gn-RH誘導体・酢酸ブセレリンは子宮内膜症の治療などで使用する薬です。血糖降下薬やスルホンアミド系薬剤は、糖尿病の治療などで使用する薬です。
モルヒネはがん治療などの際の痛み止めとして使用されます。抗てんかん薬は、てんかんの発作などに有効な薬です。
また、処方される薬によっては、併用によりその薬の効果を強めてしまうケースもあります。併用により効果が強まってしまう薬としては、次のようなものが代表的です。
- アステロイド内服薬
- オメプラゾール
- イミプラミン
- シクロスポリン
- セレギリン塩酸塩
- テオフィリン
ステロイド内服薬は、関節リウマチ・気管支喘息・肺炎・腎臓病などの治療に使用する薬です。オメプラゾールなどの胃酸を抑える薬は、胃潰瘍・十二指腸潰瘍・逆流性食道炎などの治療に使用します。
イミプラミンなどの三環系抗うつ剤は、うつ病の治療に使用する薬です。シクロスポリンは免疫抑制剤のひとつで、肝臓などの臓器移植後の拒絶反応を抑える薬として使用されます。
その他にも、ネフローゼ症候群・ベーチェット病・乾癬(かんせん)などの治療にも使用する薬です。
セレギリン塩酸塩は、パーキンソン病の治療薬です。テオフィリンは気管支喘息の治療に使用されます。
低用量ピルは、これらの薬の代謝を抑制し、血中の薬の濃度を高めてしまいます。そのため、本来よりも処方された薬の効果が強くなってしまうことがあり注意が必要なのです。上記で紹介した効果が変わる可能性がある薬を処方されるような場合には、低用量ピルを服用していることを必ず医師に伝えるようにしましょう。
ヴィキラックス配合錠
ヴィキラックス配合錠は、併用を禁止されている薬です。この薬は、C型肝炎の治療薬として使用されます。この薬と低用量ピルを併用した場合、肝機能が悪化する事例が高頻度で現れているのです。そのため決して併用してはいけません。
また、すでにヴィキラックス配合錠を服用している方で、低用量ピルを服用する必要がある場合は、服用のタイミングに注意しなければなりません。
低用量ピルを服用するには、ヴィキラックス配合錠の服用をやめてから2週間以上の間隔を空ける必要があります。併用が必要となる場合には、まず医師に服用中の薬のことを伝えて判断してもらう必要があるでしょう。
下剤
下剤は、ヴィキラックス配合錠のように併用禁止の薬ではありません。しかし、併用には注意が必要です。下剤と低用量ピルを併用した場合、稀に不正出血が起きる可能性があります。
ただし、不正出血が起きたとしても、基本的にはそのまま服用を続けて問題はありません。また、下剤と併用した場合に、すぐに下痢をしてしまうケースがあります。
その際には、低用量ピルの成分が十分に吸収される前に排出されてしまう可能性があるため、低用量ピルの効果が弱まってしまうことがあるのです。下痢になってしまった際や効果に不安を感じた場合には、下痢が収まってから低用量ピルを服用するようにしましょう。
低用量ピルの飲み合わせが可能な薬は?
低用量ピルの飲み合わせに注意が必要な薬をご紹介しましたが、注意が必要な薬ばかりではありません。飲み合わせが可能な薬もあるのです。
ある程度ご自身で薬を判別できるようになるためにも、ここでは低用量ピルと飲み合わせが可能な薬をご紹介します。
市販の飲み薬
低用量ピルと飲み合わせが可能な薬として、市販の飲み薬が挙げられます。例えば市販の風邪薬・頭痛・生理痛などの痛み止めに用いる薬は、基本的に併用可能です。
しかし、全ての市販薬が問題ないわけではありません。先述したような、アセトアミノフェンなどが含まれる市販薬もあるためです。市販薬の併用は基本的には問題ないと考えられますが、注意すべきものもあるため、成分を確認して服用するようにしましょう。
また、成分についてわからない場合や併用に不安がある場合には、専門の医療機関に相談して服用することも大切です。
市販の塗り薬
市販の塗り薬についても、基本的には低用量ピルと併用しても問題ないとされています。
先述したようなステロイド内服薬が併用注意の薬として挙げられるため、塗り薬にも注意をしなければならないと思われる方も多いかもしれません。しかし、塗り薬については問題はないとされています。
低用量ピルの飲み合わせは十分注意しながら服用しよう
併用に注意すべき薬や併用を禁止する薬があることをご紹介しました。低用量ピルの作用を弱めたり、併用する薬の効果を弱めたりすることもあるため、成分などには注意が必要です。
また、飲み合わせに注意すべきものとしては、他にも漢方やサプリメントなども挙げられます。全ての漢方やサプリメントが問題あるわけではありませんが、一部には低用量ピルの効果を弱める可能性があります。医療機関から処方される薬や漢方など関係なく、服用する薬に関しては十分注意しながら服用しましょう。
低用量ピルの飲み合わせについて気になったら
低用量ピルは、生理を計画的に移動させたり病気を治療したりするために服用する薬です。そのため、一度は服用を考えたことがある方はいるのではないでしょうか。
しかし、服用にあたっては飲み合わせに注意すべき薬が多数あります。知らずに併用してしまっては、低用量ピルの作用が想定通りに得られなかったり、併用した薬の効果が正しく発揮されなかったりすることがあるでしょう。
薬によっては併用禁止のものもあり、体に不調をきたす可能性もあります。そのようなトラブルを起こさないためにも、飲み合わせについては十分注意しましょう。また、飲み合わせのことで少しでも疑問を抱いたり不安を感じたりした場合には、専門の医療機関に相談して服用方法などを確認してから使用するようにしましょう。
編集部まとめ
低用量ピルは、避妊や病気の治療などに使用する薬であり、決して珍しい薬ではありません。
そのため、他の薬と併用する可能性は十分にあります。気づかないうちに、薬の効果が弱まっていたり思わぬ体調不良を起こしていたりすることが考えられます。
場合によっては、知らなかったでは済まないような体調悪化を招く可能性もあるため、服用には成分を気にするなどして十分に注意しなければなりません。
また、少しでも併用する薬で疑問を感じた場合には、専門の医療機関に低用量ピルとの飲み合わせの旨を相談して使用するようにしましょう。