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「低用量ピルのオンライン」は安全なの?注意点や費用についても解説!

 更新日:2023/03/27
「低用量ピルのオンライン」は安全なの?注意点や費用についても解説!

避妊だけではなく、生理周期の調整や生理痛の緩和・子宮内膜症の改善等を目的に使われる『低用量ピル』。

以前は処方を受けるには産婦人科等での対面受診が必須でしたが、近年は受診から購入までを一括してオンラインで済ませることができるようになっています。

ただ、オンラインで購入するとなると、「どういった流れで購入するのか」・「対面受診なしで安全面での問題はないのか」といった疑問や不安を感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで今回は、低用量ピルのオンライン処方の安全性や、メリット・注意点について詳しく解説します。ピルのオンライン処方を検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

プロフィールをもっと見る
徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

低用量ピルのオンライン処方は安全?

錠剤とお薬手帳
低用量ピルは、避妊だけではなく、生理周期の調整生理痛の緩和子宮内膜症の改善等を目的に使われる医薬品です。ピルを用いることによって、生理にまつわる体の不調をコントロールすることができ、さらには女性自らが主体的に避妊・妊娠を選択することが可能となります。
こうして低用量ピルが女性にもたらすさまざまなメリットが認識されている一方で、日本におけるピルの普及率は一般女性においておよそ3%と、西欧諸国(ドイツ58.6%、フランス35.6%、アメリカ合衆国15.6%)と比較して極めて低い状況にあります。
日本でピルの使用が浸透していない理由は下記のとおりです。

  • 欧米諸国とは違い、薬局で気軽に購入できない
  • 保険適用外のため高額になる
  • 当初は処方に多くの検査が必要とされた
  • 日本の性教育が遅れている(避妊を含めたピルのメリットを学ぶ機会が少ない)
  • 男性依存型の避妊が主流である

そんな中日本では、2020年に『新型コロナウイルス感染症緊急経済対策』の一環として、医師による初診を含めたオンライン診察が可能となりました。それを機に、ピルのオンライン処方も少しずつではありますが、注目されるようになってきています。オンライン診療ではパソコンやスマホを使って、リアルタイムでお互いの顔を見ながら通話しつつ診察を行い、そのうえで薬が処方されることが原則となっています。
また、厚生労働省は『オンライン診療は、文字・写真および録画動画のみのやりとりで完結してはならない』とし、チャット型の診察は認めていません。文字だけのやりとりは時間を合わせる必要もなくとても便利ではありますが、チャット型のやりとりでは本当に医師が返信をしているのか明確ではありません。きちんとオンライン診療を行っている医療機関であるかどうかは、サービスを選択する際の重要なチェック事項と考えましょう。
また、オンラインでピルを購入する方法として個人輸入等の通販も選択肢の1つとされることがありますが、医薬品の通販については以下の点で危険といわざるを得ないので絶対に避けましょう。

  • 日本国内で正規に流通している医薬品・化粧品・医療機器等は、医薬品医療機器等法に基づいて品質・有効性・安全性の確認がなされているが、個人輸入される外国製品にそのような保証はない
  • 品質等の確認が行われていない医薬品等は、期待する効果が得られない場合や、人体に有害な物質が含まれている場合がある
  • 不衛生な場所や方法で製造された可能性がある
  • 正規のメーカー品を偽った、偽造製品の可能性がある
  • 個人輸入された医薬品による健康被害については救済対象にならない(日本国内で医薬品医療機器等法を遵守して販売されている医薬品については、適正に使用したにもかかわらず重大な健康被害が生じた場合に、その救済を図る公的制度がある)

また、低用量ピルの副作用のひとつに血栓症があり、対応が遅れると重症化する恐れもあります。万が一、頭痛・胸の痛み・足のむくみや痛み・しゃべりづらい等の症状を認めた場合には血栓症が発生している可能性を考え、すぐに服用を中止し医師に診てもらう必要があります。
きちんと医療機関で処方を受けていると、処方施設・処方医師の診察をスムーズに受けることができるので、その点においても個人輸入等の通販とは異なり安心です。

低用量ピルのオンライン処方のメリット

オンライン診療と医師
新型コロナウイルス感染拡大により可能となったオンライン処方ですが、メリットも多いです。特にスマホなどの通信機器にて診察が受け、薬の処方までできる点は魅力的です。

自宅やスマホで完結する

好きな場所好きな時間にスマホやパソコン等を使って受診し処方を受けるというのが、オンライン処方です。
医療機関ではなく自宅や出先であっても、スマホ等のネット環境と落ち着いて話せる環境さえ確保できれば、医師の診察からピルの処方まで一括してオンラインで済ませることができます。週末を含め24時間受け付けている医療機関もあり、忙しくてまとまった時間がとれない人でも気軽に受けることができます。

対面より相談しやすい

ピルの服用について相談してみたいなと思いながらも、病院に行くとなると億劫になり、なかなか重い腰があがらないという方もいらっしゃるかもしれません。そんな場合にも、オンラインであれば「とりあえず」という感じで気軽に医師に相談することができます。ピルの購入まで至らなくとも、相談だけでも問題ありません。

診察から購入まで一括でできる

予約しておいた時間に、パソコンやスマホを使ってビデオ通話、もしくは音声通話を介してオンラインで診察を受けます。診察で問題なければ低用量ピルが処方されるのですが、支払いもネット決済が可能です。処方されたピルは郵送で自宅等指定した場所へ届けられます。
指定した間隔でピルが届けられる『定期便』を選択できる医療機関もあり、受診を忘れて服用するピルがなくなってしまったといったトラブルを防ぐことができ、とても便利です。毎日忙しく病院に行くのは難しいという方は積極的に利用してみてください。

通院時間・待機時間がかからない

多忙というだけではなく、地理的な理由から医療機関を受診するのが困難という場合においても、オンライン診療はとても便利です。例えば、お昼休みの空き時間を活用する等して、受診することが可能です。
予約不要で問診提出後30分以内にオンライン診察が可能という医療機関もあります。通院時間や待機時間をかけることなく、短時間で効率よく、診察・処方を一括して受けることができます。

低用量ピルのオンライン処方の注意点

錠剤と手のひら
時間的・地理的・心理的なハードルを緩和してくれる便利なピルのオンライン処方ですが、一方で忘れてはならないことは、低用量ピルは血栓症等の副作用のリスクを伴う医薬品だということです。オンライン処方を受ける上では、以下の点についてもしっかり認識しておくことが重要です。

超音波や触診などの検査ができない

対面の診察であれば、同時に感染症等の他の診察を受けることもできますが、オンライン診察ではできません。超音波や触診等の検査を受けることもできないので、自分の状態を医師に言葉で的確に伝えることがとても重要になります。オンライン診療は医師が副作用の兆候に気づきにくいというリスクをはらんでいるのです。
大幅な体重増加や頭痛・胸痛等今までなかった体調の変化があった場合はもちろんですが、関係ないかも?と思うような些細なことであっても、もれなくしっかりと医師に伝え相談しましょう。
また、場合によっては検査が必要となり、オンラインだけでは完結せずに来院を勧められる場合があることも心得ておきましょう。定期的に対面での検査を求められる場合もあります。

自身の状況を把握しておく必要がある

オンライン処方では検査・触診ができないため、自分から医師に症状を言葉で適切に伝えることが非常に重要となります。診療を受ける前に、生理の状況等をきちんと伝えることができるよう準備しておきましょう。
安全にピルを服用するためには、体調に関することは些細なことであっても、自分から医師にしっかりと伝えることが非常に重要です。

ピルが合わない可能性もある

他の医薬品と同様、低用量ピルにも副作用発生のリスクがあります。他の種類のピル(中用量ピル・アフターピル等)に比べると、ホルモンの含有量が少ないため、副作用は現れにくいとされています。それでも、服用を開始してからしばらくの間は、不正出血・吐き気・頭痛・めまい・胸のはり・体重増加等が発生することがあります。これらの症状は、多くの場合一時的であり、服用を継続しているうちに徐々におさまっていくのでマイナートラブルとも呼ばれています。
一方、低用量ピルで特に注意を要する重篤な副作用として血栓症があります。血栓症とは、血液中に血の塊ができ、その塊が血管を塞いでしまうことで種々の症状を引き起こす疾患です。肺や脳の血管に塊が詰まってしまった場合には、命に関わるような重篤な状態につながる可能性があります。そういった理由から、元々血栓症の素因があるケースでは、低用量ピルの処方を受けることができない場合があります。
以下の項目に1つでもあてはまる場合には、オンラインではなく直接医療機関を受診しましょう。

  • 35歳以上
  • 1日15本以上のたばこを吸う
  • 子宮・卵巣の病気がある
  • 肥満体質
  • 高血圧がある
  • 糖尿病がある
  • 心疾患・腎疾患がある
  • 肝臓の障害がある
  • 大きな手術・出産後4週以内である

心当たりのある方は、医師に相談してみてください。

低用量ピルのオンライン処方の値段相場

医療費
子宮内膜症・月経困難症等の治療として処方されるピルは保険適用ですが、避妊・生理周期の調整・ニキビの改善等を目的に処方されるピルは自由診療・保険適用外となります。つまり、医療機関によって金額は異なり、診療代・ピル代はいずれも全額負担となります。
オンライン診療でピルを購入する際に必要な費用は下記のとおりです。

  • ピル代:3,000円前後
  • 診察料(初診・再診):1,500円前後
  • 送料:500~1,500円前後
  • 手数料

オンライン診療での低用量ピルの値段相場は3,000円前後です。これとは別に1,500円前後の診療代、さらに500~1,500円程度の送料や手数料がかかります。医療機関によっては、以下のような付加サービスもあります。

  • 診察料あるいは送料が無料
  • ピルの最短当日発送・翌日到着
  • 定期処方で割引になる
  • 開封しないと中身が分からないようプライバシーに配慮した郵送

初回の費用が高めであっても、定期処方等で割安になるケースが非常に増えてきています。低用量ピルは、長期にわたって服用するケースが多く、長い目でみると総額は大きく異なってきます。1回のみの費用ではなく、継続した際にトータルでかかる費用も考慮して、自分に適した医療機関を選択しましょう。

低用量ピルのオンライン処方について気になったら

薬の疑問や不安
低用量ピルの効果は、避妊だけではありません。生理痛の緩和・生理周期の調整・ニキビの改善等、女性にさまざまなメリットをもたらしてくれます。例えば、「生理痛がひどくて毎月つらい」・「仕事や試験等、大事な日に生理がかさならないか心配」・「妊娠したかもとヒヤヒヤしたくない」等の女性特有の悩みや不安はピルによって軽減可能です。
また、男性に依存する避妊ではなく、女性自らが避妊・妊娠を選択する女性主体の避妊がピルによって可能となります。これだけのメリットが認識されているにも関わらず、上述のとおり、日本におけるピルの普及率は約3%と依然極めて低い状況にあります。
オンライン診療では、低用量ピルについて気になる点・不安に思う点等の相談のみも可能です。ピルの購入に至らなくても、些細な事でも気軽に相談できるのがオンライン診療のよいところです。低用量ピルの事・オンライン処方の事等、少しでも気になることがあれば、まずはオンライン診療から利用してみる、というものよいですね。

編集部まとめ

生理イメージ
低用量ピルのオンライン処方は、診察から購入まで一括してできるとても便利なサービスです。

とはいえ、低用量のピルであっても、他の医薬品と同様に副作用のリスクを伴います。対面での診察とは違い、全身状態を判断するためのデータは医師にはなく、自分から伝える情報のみが医師の判断材料となります。

不安や疑問がある場合は、初診は対面で受診する等、対面とオンラインをうまく使い分けながら、自分にあった形で継続できるとよいですね。

悩みがある場合は、まずは医療機関に相談してみてください。

この記事の監修医師