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「乳がんの術後」は身体にどんな変化が現れるかご存知ですか?注意点も医師が解説!

 公開日:2025/10/15
「乳がんの術後」は身体にどんな変化が現れるかご存知ですか?注意点も医師が解説!
乳がんの手術は早期治療が中心であり、多くの患者さんが術後に日常生活へ戻ります。本記事では、乳がん手術後の経過や身体の変化、その後に行われる追加治療、そして術後の生活上の注意点について解説します。術後の不安や疑問を解消し、安心して日常生活を送るための情報をまとめました。
武田 美貴

監修医師
武田 美貴(医師)

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平成6年札幌医科大学を卒業し、札幌医科大学放射線科に入局。画像診断専門医となり、読影業務に従事。その後、新たな進路を模索するため、老年医療や訪問医療、リハビリテーションなどを学ぶ。現在は、一周回って画像診断で母校に恩返しをする傍ら、医療事故の裁判では、患者に寄り添う代理人を、画像診断と医学知識の両面でサポートすることをライフワークとしている。

乳がん手術後の様子

乳がん手術後の様子 乳がんの手術後、入院中から退院後にかけて体調は徐々に回復していきます。以下では、手術直後から退院まで、そして退院後の一般的な経過について解説します。

手術後

手術直後は全身麻酔の影響から覚め、病室で安静に過ごします。痛み止めの投与や点滴が行われ、胸には手術創を保護する包帯やドレーンが挿入されていることがあります。術後当日は安静が基本ですが、医師や看護師の指示に従い、可能な範囲で身体を少し動かす練習を始める場合もあります。

手術の翌日

術後翌日になると、体調が安定していればベッドの上で座ったり立ち上がったりするリハビリを開始します。特に腋の下のリンパ節郭清を行った場合は、肩や腕のリハビリ運動を早期に始めることが重要です。ドレーンが入っている場合はその管理に注意しながら動きます。この時期は無理をせず、痛みがある動作は避けつつ少しずつ日常動作を再開していきます。

退院するまで

乳がん手術後の入院期間は、手術内容や体調によりますが、数日から1週間程度が一般的です。入院中は創部の経過観察やドレーンの排液量チェックが行われ、問題がなければドレーンは数日で抜去されます。傷口の痛みは次第に和らぎ、身の回りのことは退院前までに自分でできるようになるケースがほとんどです。

退院後

退院後は基本的に大きな生活制限はありません。普段の家事や仕事も、体調に合わせて少しずつ再開できます。ただし、術後間もないうちは傷の痛みや出血を避けるために激しい動作や運動は控えて、無理のない範囲で過ごしましょう。飲酒も傷の治癒に影響する可能性があるため、痛みや出血防止の観点から控えることが望ましいです。また、入浴はドレーンがない場合は退院当日から可能ですが、ドレーン留置があった場合は抜去後時間を開けてシャワーや入浴ができます。このように細かい制限はありますので、何か心配な症状があれば、自己判断せず速やかに主治医に相談しましょう。

乳がん手術後に生じる身体の変化

乳がん手術後に生じる身体の変化 手術後、乳房や腕にいくつかの変化や後遺症が現れることがあります。代表的なものがリンパ浮腫腕や肩の動かしにくさです。これらは特に腋窩リンパ節郭清を受けた場合に起こりやすいため、原因と対策を理解しておきましょう。

リンパ浮腫

リンパ浮腫とは、手術でリンパ節を切除したことなどによりリンパ液の流れが滞り、腕や手がむくんだりしびれたりする状態です。リンパ浮腫を予防・軽減するために、以下の点に気をつけましょう。

  • 術後のリハビリ運動
  • 術後翌日から入院中にリハビリテーションを開始し、退院後も肩や腕の運動を継続します。
  • 腕を過度に使わない
  • リンパ節郭清を受けた腕では重い荷物を持たない、激しい腕の運動を避けるなど、過剰な負担をかけないようにします。
  • 早期発見・対応
  • 万一、腕にむくみやだるさ、皮膚の張り感などリンパ浮腫の兆候があれば、早めに主治医に相談してください。

リンパ浮腫は完全に予防する方法はありませんが、以上のような日常生活での注意やリハビリにより発症リスクを下げることができます。

腕や肩の動かしにくさ

手術後、特に腋窩リンパ節郭清を行った場合には、肩関節の可動域制限が生じることがあります。これは術後に傷がつっぱる感じや痛みを怖れて腕を動かさずにいると筋肉や関節が硬くなるためです。拘縮(こうしゅく)と呼ばれるこの状態を防ぐため、術後早期からの肩・腕のリハビリが重要になります。具体的には以下の対応をします。

  • リハビリの開始
  • ドレーン抜去後または術後翌日から、腕をゆっくり上げ下げしたり、部屋の壁に這わせて手を上げたりしていく運動などを行います。
  • 日常で身体を動かす
  • 入院中だけでなく退院後も、日常生活にリハビリ動作を取り入れることが大切です。
  • 専門家への相談
  • もし肩のこわばりが強い場合は、リハビリ外来などで理学療法士による指導を受けることも検討してください。

乳がんの手術後に行われる治療

乳がんの手術後に行われる治療 乳がんの手術後、病理検査の結果に基づき追加の治療が検討されます。術後治療の内容は、腫瘍が非浸潤がんだった場合と浸潤がんだった場合で大きく異なります。それぞれの場合について、一般的な治療方針を解説します。

非浸潤がんだった場合

手術で取り出したがんが非浸潤がんであった場合、基本的に手術のみで治療完了となることが多いです。非浸潤がんは他臓器への転移リスクが極めて低いため、術後の抗がん剤や分子標的薬などの全身療法は通常不要です。ただし、再発予防の観点から術後放射線治療や術後ホルモン療法が追加されることがあります。

浸潤がんだった場合

浸潤がんでは、手術後に再発予防のための追加治療を行うのが一般的です。術後治療の内容は腫瘍のサブタイプ(ホルモン受容体やHER2の状態)やステージによって決定されます。主な術後治療は次のとおりです。

  • ホルモン療法
  • 化学療法(抗がん剤治療)
  • 抗HER2療法(分子標的療法)
  • 放射線治療

浸潤がんの場合の術後治療は上記のようにさまざまですが、医師ががんの進行度やタイプ、そして患者さん本人の体調や希望を考慮して適切な治療方法を提案します。

乳がん手術後に注意すること

乳がん手術後に注意すること 術後の生活を送るうえで、いくつか気を付けるべきポイントがあります。定期的なフォローアップから日常の習慣まで、以下の項目に留意して過ごしましょう。

定期的に受診する

乳がん手術後は、定期的な通院がとても大切です。術後の定期受診では、医師による診察や画像検査で再発の有無をチェックします。もし検査で異常所見が見つかったり、自覚症状で気になることがあったりすれば、必要に応じて追加の検査を行います。

激しい運動を避ける

退院後の生活で身体を適度に動かすことは回復のために重要ですが、激しい運動や重労働は避けるようにしましょう。術後しばらくは傷や周辺組織が完全には癒えておらず、無理な運動は痛みや出血、リンパ浮腫の悪化につながるおそれがあります。

術後1ヶ月〜2ヶ月は締め付けない下着を着用する

乳房手術後の肌や傷はまだデリケートな状態です。術後少なくとも1〜2ヶ月間は、乳房を締めつけないやわらかい下着を選ぶようにしましょう。ワイヤー入りで締め付けの強いブラジャーは、傷口への刺激となり痛みやむくみの原因になる可能性があります。下着やパッド選びも含め、不安な場合は外来で相談するとアドバイスをもらえるでしょう。

飲酒・喫煙を避ける

飲酒や喫煙は可能な限り控えましょう。お酒に関しては、適量であれば乳がん術後の再発リスクや生存率に大きな悪影響を及ぼす可能性は低いとされています。しかし、飲酒習慣がある方は新たな乳がんの発症リスクやほかの臓器のがんリスクが高まることがわかっています。また、喫煙によって乳がん死亡リスクが高まる可能性があり、治療後の健康維持の観点から禁煙が強く推奨されます

乳がん術後についてよくある質問

本章では、乳がん術後の患者さんやご家族から寄せられるよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

乳がんの手術後に再発する確率を教えてください。

再発は多くの場合、術後2〜3年以内に起こりやすいですが、ホルモン感受性が強いタイプの乳がんでは5年以降に再発するケースもあります。また、乳がん術後の再発率は何%とはいえず、その確率は病状によって大きく異なります。不安な場合は自分の病期やサブタイプにおける再発率の目安を遠慮なく尋ねるとよいでしょう。

術後の放射線治療や薬物療法中でも仕事を続けることができますか?

はい、状況によっては仕事を続けることは可能です。実際、近年は治療を受けながら仕事を続ける乳がん患者さんもいます。ただし、治療の種類や副作用の程度、職場の環境によって両立のしやすさは異なります。いずれにせよ、無理をせず体調優先で働くことが重要です。治療と仕事の両立については、医療ソーシャルワーカーやがん相談支援センターで相談に乗ってもらうこともできますので、必要に応じて活用しましょう。

乳がんの手術後に妊娠をしても問題はありませんか?

乳がん治療後の妊娠について心配される方も多いですが、結論からいえば適切な時期を選べば妊娠出産は可能であり、大きな問題はないとされています。ただし、自身の治療計画との兼ね合いがありますので、必ず担当医と相談し適切な時期を見極めてください。治療前に妊娠を希望していた方は、治療開始前からその旨を医療者に伝えることで、将来の妊娠の選択肢を残す支援を受けられる場合があります。

まとめ

乳がんの手術後、患者さんの身体と生活は大きく変化します。しかし、術後のリハビリや適切な追加治療、生活上の注意点を守ることで、普段の生活にスムーズに復帰することが期待できます。術後の不安は尽きないかもしれませんが、信頼できる医療チームの指導のもと、無理をせず自分のペースで生活を整えていきましょう。疑問や不安があれば一人で抱え込まず、医師や看護師、リハビリスタッフに相談してみてください。適切なケアと自己管理によって、術後も自分らしい生活を送ることができるはずです。

関連する病気

乳がんと似た症状を示す、または同時に発生する可能性のある病気には以下のようなものがあります。

  • 乳腺線維腺腫
  • 乳腺症
  • 乳腺炎
  • 乳腺嚢胞
  • 脂肪腫

関連する症状

乳がんに関連する症状は以下のような症状が挙げられます。これらの変化を正しく把握することが鑑別に役立ちます。

  • 乳房のしこり
  • 乳頭からの異常な分泌物
  • 乳房の形状や大きさの変化
  • 乳房の痛みや違和感
  • 腋窩や鎖骨上のリンパ節の腫脹

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