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「中皮腫の原因」はご存じですか?アスベスト以外の可能性も医師が解説!

 公開日:2025/10/04
「中皮腫の原因」はご存じですか?アスベスト以外の可能性も医師が解説!
中皮腫は、発症がまれながんとされますが、日本では年間1,500人以上が亡くなっています。主な原因は、アスベスト(石綿)と呼ばれる天然の鉱物繊維の吸引ですが、近年の研究によって、アスベスト以外にもいくつかのリスク因子が中皮腫の発症に関与している可能性が示されています。この記事では、中皮腫とはどのような病気なのか、種類や特徴、原因についてわかりやすく解説します。
福田 滉仁

監修医師
福田 滉仁(医師)

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京都府立医科大学医学部医学科卒業。初期研修修了後、総合病院で呼吸器領域を中心に内科診療に従事し、呼吸器専門医および総合内科専門医を取得。さらに、胸部悪性腫瘍をはじめとする多様ながんの診療経験を積み、がん薬物療法専門医資格も取得している。日本内科学会総合内科専門医、日本呼吸器学会呼吸器専門医、臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医、日本呼吸器気管支鏡学会気管支鏡専門医。

中皮腫とは

中皮腫とは 中皮腫は、中皮細胞ががん化することで発症する希少ながんです。 ここでは、中皮腫の全体像をわかりやすく解説します。

中皮腫の概要

中皮腫は、中皮細胞と呼ばれる細胞ががん化して発生する悪性腫瘍です。中皮細胞は、肺や心臓、消化器などの臓器を包む膜(胸膜・腹膜・心膜など)に存在します。 中皮腫患者さんの大部分を占めるのが、肺を覆う胸膜から発生する悪性胸膜中皮腫です。その他、腹膜から発生する腹膜中皮腫、心膜中皮腫、精巣鞘膜中皮腫なども存在します。 中皮腫の初期は症状が乏しく、気が付かないまま時間が経過してしまうことが多くあります。そのため、診断時にはすでに病気が広がっており、手術や放射線、化学療法などの治療を組み合わせても、根治が難しいことが少なくありません。中皮腫特有の症状はありませんが、咳や胸痛、息切れ、発熱などの症状が続くときは注意が必要です。

中皮腫の種類と発生部位

中皮腫は発生する部位によって以下のように主に4つに分類されます。

悪性胸膜中皮腫

肺を覆う胸膜から発生する中皮腫で、全体の約80~85%を占める最も多いタイプです。咳や息切れ、胸痛、胸水の貯留などの症状が見られます。

悪性腹膜中皮腫

腹部の臓器を包む腹膜から発生するタイプで、全体の約10~15%を占めます。腹部のハリや痛みなどがみられます。

心膜中皮腫

心臓を包む心膜に発生する大変まれなタイプで、心不全症状を呈することがあります。下記の精巣鞘膜中皮腫と合わせても、全体の1%以下の発生頻度です。

精巣鞘膜中皮腫

精巣を覆う鞘膜から発生する希少なタイプです。陰嚢の腫れや違和感などが初期症状として現れます。

中皮腫の主な原因はアスベストへの曝露

中皮腫の主な原因はアスベストへの曝露 中皮腫の主な原因はアスベストと呼ばれる物質への曝露です。アスベストは、かつて多くの建物や製品に使用されてきましたが、健康被害が明らかとなり、現在では使用が禁止されています。ここでは、アスベストの性質や、曝露から発症に至るまでの流れ、リスクのある方について詳しく解説します。

アスベストとは?

アスベストは、かつて建材や断熱材などに広く使われていた天然の繊維状鉱物です。耐熱性に優れ、住宅やビル、工場などの建設に主に保温断熱の目的で用いられる素材でした。しかし、アスベストの繊維は細かく、空気中に浮遊して体内に入りやすいのが特徴です。

アスベストは一度吸い込まれると体内に長く留まり、肺や胸膜に慢性的な炎症を起こすことが知られています。長期間にわたる炎症は細胞のがん化につながるため、アスベストは中皮腫の主な原因とされています。

日本では2006年にアスベストの製造と使用が原則として禁止されましたが、それ以前に建てられた建物には現在もアスベストが使用されていることがあり、解体や改修工事の際には注意が必要です。

曝露から中皮腫発生までの期間

アスベストを吸い込んでから中皮腫を発症するまでの期間は、一般的に25〜50年と、とても長いことが特徴です。このため、過去の曝露に気付かない、あるいは忘れている方も少なくありません。

一方で、アスベストに曝露すると必ず中皮腫を発症するわけではありません。アスベストに長期にわたって曝露した方の約10%が中皮腫を発症するというデータが報告されています。

アスベストに曝露する可能性がある方

アスベストに曝露した可能性があるのは、以下のような仕事や生活環境に関わっていた方です。

  • 建設業や解体業、断熱材工事などアスベストの吹きつけ・張り付け作業に従事していた方
  • アスベストを含む建物や設備の解体・補修作業を行ったことがある方
  • 造船業に従事していた方
  • アスベストを使用した製品の製造に関わった方
詳しくは、厚生労働省のホームページ内の『石綿にばく露する業務に従事していた労働者の方へ』という案内ページが公開されています。

アスベスト以外の中皮腫リスク因子

アスベスト以外の中皮腫リスク因子 ここでは、アスベスト以外に中皮腫の発症に関わるとされる要因を解説します。

エリオナイト(天然鉱物繊維)などの鉱物

エリオナイトとは、アスベストとよく似た構造を持つ天然の繊維状鉱物で、特にトルコやアメリカの一部地域の火山性岩石の中に自然に存在しています。エリオナイトのほかに、ウォラスナイト、耐火セラミック繊維などもアスベストと同様に中皮腫のリスクになることが知られていますが、報告は少なく、かつ日本国内では、こうしたアスベスト以外の鉱物による影響は極めてまれであると考えられます。

放射線治療

がん治療の一環として受けた放射線治療が、後年になって中皮腫の発症に関与することがあります。特に、胸部への照射を受けた方で、数十年後に胸膜中皮腫を発症したという報告があります。

遺伝的要因

一部の中皮腫の発症では、遺伝的な要素が関与している可能性がわかっています。特に注目されているのが、BAP1(バップワン)遺伝子です。大変まれですが、生まれつきBAP1遺伝子の異常を持つ家系では、以下のような複数のがんの発症リスクが高くなることが海外で報告されています。

  • 悪性中皮腫
  • 腎がん
  • 悪性黒色腫 (皮膚や眼のブドウ膜)

日本ではこの遺伝子異常を持つ方は大変まれとされています。

アスベストを吸引した場合の対処法

アスベストを吸引した場合の対処法 アスベストを吸い込んでしまったかもしれない、あるいは過去にアスベストを取り扱っていたことがある方が出来る対処法について解説します。

医療機関を受診する

アスベストを扱った経験があり、息苦しさや胸の痛み、長引く咳などの症状がある場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。中皮腫などのアスベスト関連疾患は、数十年の潜伏期間を経て発症するため、症状が出てから気付くケースも少なくありません。 ただし、明らかな症状がない場合に必ずしも急いで医療機関に受診する必要はありません。定期的な健康診断で胸部単純写真(いわゆるレントゲン)を撮影し、異常を指摘された際に医療機関に受診することをおすすめします。ただし、過去の曝露が心配な方は、一度医師に相談してみるのも選択肢のひとつです。

アスベストに曝露した日時を記録しておく

中皮腫は発症までに長い潜伏期間があるため、将来の備えとして、曝露の記録を残しておくことが重要です。以下のような情報を記録しておくと、診断時や制度申請時に役立ちます。

曝露した時期(年代)、作業内容や取り扱った物質、作業した建物や場所の名称、防護具の使用状況など

また、これらの情報はご家族とも共有しておくことも大切です。症状が出た場合の受診の際にも、正確な情報が診断の手がかりになります。

中皮腫についてよくある質問

ここまで中皮腫を紹介しました。ここでは「中皮腫」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

アスベストを吸った覚えがないのに、中皮腫になることはありますか?

はい、あります。 中皮腫の多くはアスベスト曝露が原因ですが、自覚のない間接的な曝露(家族が持ち帰った作業服からの吸引など)や、建物周辺の環境からの曝露もあります。

中皮腫は他人にうつることはありますか?

中皮腫は感染症ではないため、人から人にうつることはありません。

アスベストに関する補償制度にはどのようなものがありますか?

労災補償(職業上の曝露)や、石綿健康被害救済制度(職業以外の曝露も対象)があり、治療費や療養手当などが受けられる可能性があります。

まとめ

まとめ 中皮腫はアスベストの吸入によって引き起こされることが多いがんです。発症までに20〜50年という長い潜伏期間があるため、過去にアスベストに接した可能性がある方は、将来のリスクを意識しておくことが大切です。 現在では、診断の精度や治療の選択肢が広がっています。正しい知識を持ち、適切な医療と支援制度を活用することで、よりよい治療と生活の質の維持が目指せます。

関連する病気

  • 石綿肺(アスベスト肺)
  • びまん性胸膜肥厚
  • 胸膜プラーク
  • 肺がん
  • 肺炎
  • 胸膜炎
  • 膿胸
  • 肺気腫

関連する症状

  • 息切れ(呼吸困難)
  • 胸の痛み
  • 持続する咳
  • 体重減少
  • 倦怠感(だるさ)
  • 背中の痛み

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