「子宮頸がん」を発症すると「おりものはどんな臭い」がするかご存知ですか?医師解説

子宮頸がんを発症するとおりものはどんな臭いがする?Medical DOC監修医が子宮頸がんの初期症状・検査・治療法などを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

監修医師:
阿部 一也(医師)
目次 -INDEX-
「子宮頸がん」とは?
子宮の入り口にあたる子宮頸部にできるがんを子宮頸がんと呼びます。
多くはヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因となり、予防のためにはワクチン接種が重要です。
早期発見も大切ですが、子宮頸がんは早期の段階では特に症状が出ない場合も多いです。しかし、進行すると、不正出血やおりもの(帯下:たいげ)に血が混じるようになったり、量がふえたり、においが変化したりといった症状が現れることもあります。
今回の記事では、子宮頸がんを発症すると、おりものがどんな臭いになるのか、色はどのように変化するのか、また、子宮頸がんの他の症状についても解説します。
子宮頸がんを発症するとおりものはどんな臭いがする?
子宮頸がんが進行すると、おりものが以下のような臭いになる場合があります。このような場合には、がんや感染症などの異常が生じている可能性があるため、早めに婦人科を受診しましょう。
鉄さびのような臭い
進行した子宮頸がんの病変からは、出血がみられることがあります。その際、おりものと血液が混ざると、血液のにおいとして鉄さびのような臭いがする可能性があります。
腐った肉のような臭い
がんは、成長のために正常な組織より多くの酸素を必要とします。そのため、酸素供給が追いつかず、がんが壊死してしまう場合もみられます。その際には、がん細胞の死滅や感染が起こり、悪臭のあるおりものが出ることがあります。人によっては、「腐った肉のような臭い」と感じる場合もあるでしょう。
尿や便のような臭い
子宮頸部と膀胱や直腸は解剖学的に近い場所にあります。子宮頸がんが進行すると、膀胱や直腸の間に瘻孔(ろうこう)という通り道ができてしまうことがあります。その際には、おりものに尿や便が混じり、これらの臭いを伴うことも想定されます。
子宮頸がんを発症するとおりものの色はどんな変化が現れる?
子宮頸がんを発症した場合のおりものの色にはどのような変化が現れるのか、解説していきます。がん組織はもろく崩れやすいので、おりものにがんの成分が混じるとおりものの色に変化が現れる可能性があります。
濃い茶色
子宮頸がんからの出血した成分が古くなると、血の色が濃い茶色になるケースがあります。あるいは、壊死したがん組織の一部がおりものに混じることもあります。すると、おりものも濃い茶色に見えることも考えられます。
薄い赤色
がんからの少量の出血がおりものに混じると、薄い赤色に見えることもあるでしょう。
透明
子宮頸がんを発症しても、特におりものの色に変化がなく、透明な大量のおりものが出る場合もあります。
子宮頸がん以外でおりものに変化が生じる原因
実は、おりものの見た目や臭い、量の変化の原因は感染症によるものが多いとされています。以下では、子宮頸がん以外でおりものに変化が生じる原因について述べていきます。
感染性腟炎
感染性腟炎は、おりものの異常の原因として多くみられます。細菌の感染によるものや、カンジダというカビの一種による外陰腟炎、トリコモナス腟炎などがあります。カンジダ外陰腟炎は20〜30代に多く、トリコモナス腟炎は30〜40代に多いという報告もあります。
細菌性腟炎やトリコモナス腟炎では、悪臭を伴うおりものが増加することが一般的です。
かゆみや灼熱感、おりものの異常がある場合には、産婦人科を受診しましょう。
子宮頸部の炎症
性感染症である淋菌やクラミジアによって子宮頸部に炎症が起こった状態(頸管炎)でも、おりものに変化が現れます。いずれも女性では無症状も多いですが、おりものの量が増え、淋菌の場合には膿のようなおりものが出たりすることもあります。これらの性感染症は、放置しておくと骨盤内炎症生疾患、不妊や早産などの原因となるので注意が必要です。
月経前や妊娠中
病気ではなくても、月経前や、妊娠中などではおりものが増加することがあります。
臭いや見た目の異常がないかどうか、チェックしておきましょう。
子宮頸がんの前兆となる初期症状
子宮頸がんは、初期の段階では無症状のことも多いです。しかし、以下の様な症状がある場合には念のため産婦人科などでチェックを受けるようにしましょう。
性行為時や月経でない期間の出血
子宮頸がんの病変は、少しの刺激でもろく崩れやすいことがあります。そのため、性行為の際や月経時以外の出血(不正出血)が見られるケースもあります。がんだけでなく、子宮内膜症や子宮筋腫などの他の婦人科疾患でも、同様の症状が出る可能性があります。
月経時の出血量の増加
月経時の出血量が増えることもあります。こちらもがんに特有の症状ではなく、子宮筋腫などの他の病気でも起こります。目安としては、月経時にナプキンを1〜2時間で交換する日が長く続く、あるいは2.5cm以上の血の塊が出るといったことがあります。このような場合には、産婦人科受診をおすすめします。
水っぽいおりものが多く出る
子宮頸がんの症状の一つに、おりものの量の増加もあります。特に、まれなタイプの子宮頸がんである、胃型粘液性がんはサラサラとした粘液を大量に分泌します。そのため、水っぽいおりものの症状を呈するといわれています。
下腹部の痛み
子宮頸がんが大きくなり、周囲の臓器にも浸潤することで下腹部に痛みを感じることがあります。
背中や腰、骨盤部の痛み
子宮頸がんが大きくなり、周囲に広がったような場合には、背中や腰、骨盤部に痛みが生じることもあります。
子宮頸がんの検査法
子宮頸がんの検査方法について解説していきます。
細胞診
子宮頸がんを調べるために、まず行う検査が細胞診です。
医師が子宮の頸部から、ブラシのような器具を使って少量の細胞をこすり取ります。そして、細胞を特殊な色素で染色し、顕微鏡で詳しく観察します。
婦人科医が行い、外来で可能な検査です。検査結果が出るまでには、1〜2週間ほどかかることが多いでしょう。
コルポスコピー・組織診
細胞診で異常があり、がんが疑われた際には、コルポスコープという拡大鏡を用いて子宮頸部を詳細に観察します。そして、細胞診よりも多くの組織を切り取る組織診で、前がん病変である異形成の程度やがんかどうかの診断をします。異形成は軽度・中等度・高度があります。高度異形成の場合や、がんでも病変が小さい(微小浸潤がん)場合には、検査と治療の両方の目的で、子宮頸部を小さく切り取る円錐切除が行われる場合もあります。
円錐切除術の場合、全身麻酔をかけた状態で産婦人科医が手術します。2〜3日程度から1週間弱の入院が必要となる場合が多いです 。
画像検査
子宮頸がんがどのくらいの深さまで及んでいるか、周囲の臓器に浸潤していないかなどを、画像検査でさらに詳しく評価します。
超音波(エコー)検査では、子宮頸部でのがんの広がりをチェックします。腟から、あるいは身体の外からプローブという端子を当てて、調べていきます。また、骨盤部のMRI検査では、がんの浸潤の度合いや周囲のリンパ節の腫れ、周りの臓器への浸潤なども詳細に調べることができます。肺や肝臓、骨といった他の臓器への転移を調べる目的で、CT検査も行われます。
これらの検査は、基本的には外来で行うことができます。
子宮頸がんの治療法
ここからは子宮頸がんの治療法について説明します。
手術(外科治療)
早期子宮頸がんでは、診断と治療を兼ねた子宮頸部円錐切除術が行われます。
がんの進行度合いによって、追加で子宮を摘出する場合もあります。一方、前がん病変であったことがわかった場合などには、治療は一旦終了し、経過観察の方針になることもあります。
進行子宮頸がんと判明している場合には、子宮や周囲の組織、卵巣なども切除する手術(広汎子宮全摘)が選択肢となります。腫瘍が子宮の外に広がり、骨盤壁に達している場合は、一般に初回治療としての手術療法の適応はないと考えられています。
子宮全摘の場合、開腹手術であれば10〜14日、腹腔鏡下手術であれば8〜10日程度の入院となります。
手術は総合病院、大学病院やがんセンターなど、設備の整った医療施設で行われます。
放射線治療
放射線治療には、がんを治すための根治的照射、術後再発を防ぐための術後照射、がんの転移による症状を和らげる緩和照射があります。
早期のがんから進行がんまで適応があり、進行期の場合には薬物療法と同時に放射線治療を行う化学放射線治療がすすめられています。
身体の外側から、子宮やその周囲のリンパ節領域などに照射する外部放射線治療と、放射線を腟から照射する小線源治療があります。根治的治療の場合には、これらを組み合わせた治療が行われます。
放射線治療自体は1回20分くらいで、平日毎日行われます。外来でも可能ですが、薬物療法のコースによっては入院で行われる場合もあります。
薬物療法
薬物療法は、局所進行子宮頸がんに対する放射線治療と組み合わせて行われ、シスプラチンを基本とした薬物が用いられます。
がんが、骨盤を超えて他の臓器にも転移したIVB期の場合には、パクリタキセル、シスプラチンやベバシズマブなどの抗がん剤から単剤あるいは併用療法がすすめられています。
薬物治療は産婦人科や、医療機関によっては腫瘍内科が担当します。使用する薬剤のスケジュールや、患者さんの状態によって、外来か入院での治療が選択されます。
「子宮頸がんのおりもの・どんな臭い」についてよくある質問
ここまで子宮頸がんのおりものと臭いの特徴などを紹介しました。ここでは「子宮頸がんのおりもの・どんな臭い」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
子宮頸がんのおりものの悪臭はどんな臭いがしますか?
阿部 一也 医師
進行した子宮頸がんから崩れた壊死した組織などがおりものにまざると、悪臭がすることもあります。腐った肉の臭いと表現されることもあります。
編集部まとめ
今回の記事では、子宮頸がんの症状について、おりものに着目して解説しました。
がん以外の原因でも、おりものの性状や量に異常が現れることがあります。
女性の方は、普段からおりものの状態などに気をつけるようにしましょう。いつもと違うと感じることが続いた場合には、早めに産婦人科を受診するようにしましょう。
「子宮頸がん」と関連する病気
「子宮頸がん」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)が原因となることが多く、尖圭コンジローマなどの病気の原因となります。また、子宮頸がんと同様に婦人科系の病気はさまざまですが、異変に気付いた場合には早めに産婦人科を受診しましょう。
「子宮頸がん」と関連する症状
「子宮頸がん」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください
関連する症状
- 不正出血
- 大量のおりもの
- 濃い茶色のおりもの
- 悪臭のあるおりもの
- 下腹部や腰の痛み
- 下半身のむくみ
子宮頸がんは早期の段階では症状がないことも多いです。これらのような症状があれば、早めに産婦人科を受診しましょう。




