目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 三大疾病
  4. がん
  5. 「卵巣がんの予後」はご存知ですか?ステージ別の生存率や再発率を医師が解説!

「卵巣がんの予後」はご存知ですか?ステージ別の生存率や再発率を医師が解説!

 公開日:2025/10/20
「卵巣がんの予後」はご存知ですか?ステージ別の生存率や再発率を医師が解説!

卵巣がんは女性特有のがんで、早期発見が難しいといわれます。日本では毎年約13,000人の女性が卵巣がんと診断され、約5,000人が亡くなっています。卵巣がんは子宮頸がんや子宮体がんに比べ、発見時に進行していることが多く、予後が悪い傾向が指摘されています。しかし、病気の進行度(ステージ)や腫瘍の種類によって予後は大きく異なります。ここでは卵巣がんのステージ別5年生存率や治療法を解説します。

林 良典

監修医師
林 良典(医師)

プロフィールをもっと見る
名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、 NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本老年医学会老年科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、禁煙サポーター。
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
眼科
循環器内科
脳神経内科
眼科(角膜外来)

卵巣がんのステージ別の予後


卵巣がんのステージは、腫瘍の広がり具合によって分類されます。ステージⅠ期からⅣ期まであり、数字が大きいほど進行した状態です。一般に、早期(I期・II期)で発見された卵巣がんの予後は良好ですが、進行期(III期・IV期)で発見された場合は予後が厳しくなります。それを示す指標として5年生存率がよく用いられます。以下にステージごとの5年生存率の目安を示します。

卵巣がんⅠ期の予後

I期はがんが卵巣内にとどまっている早期の段階です。手術で病変を完全に取り切れることも多く、予後は良好です。国立がん研究センターの統計によれば、I期卵巣がんの5年相対生存率は約90%にも達します。つまり、早期発見・治療できれば、約9割の患者さんが5年以上生存できている計算になります。

卵巣がんⅡ期の予後

II期はがんが卵巣から骨盤内の子宮や卵管などほかの臓器に広がった段階です。I期に比べると進行していますが、まだ骨盤の中にとどまっています。II期卵巣がんの5年生存率はおよそ75%前後と報告されています。II期でも手術で可能な限り腫瘍を摘出し、続いて化学療法を行う標準治療により、多くの患者さんで長期生存が期待できます。

卵巣がんⅢ期の予後

III期はがんが骨盤を越えて腹腔内に播種したり、近くのリンパ節に転移した状態です。
III期卵巣がんの5年生存率は約45%と報告されています。生存率が半数を下回り、予後は早期に比べて厳しくなります。ただし、治療によっては長期生存や寛解も可能です。

卵巣がんⅣ期の予後

IV期は肝臓や肺など腹腔外の遠くの臓器に転移した状態で、最も進行した段階です。5年生存率は約27%と報告されており、ほかのステージに比べ低くなります。しかし、IV期でも決して希望がないわけではありません。手術や薬物療法でがんを縮小させ、症状を和らげつつ長期生存を目指すことが可能です。

卵巣がんの種類別の予後


一口に卵巣がんといっても、腫瘍の種類によって性質や予後が異なります。卵巣がんの約90%は卵巣の表面から発生する上皮性卵巣がんで、そのなかに以下のようなタイプがあります。

漿液性がん

最も頻度が高いタイプで、細胞の形態によって高異型度漿液性がん(悪性度の高いがん)と低異型度漿液性がん(悪性度の低いがん)に分けられます。

明細胞がん

明細胞がんの約半数はI期(早期)で見つかり、進行はゆっくりですが抗がん剤が効きにくいという特徴があります。そのため、どの進行期においてもほかの組織型より予後が不良であることが指摘されています。

類内膜がん

悪性度の低い腫瘍で進行が遅く、早期に発見される例が多いです。また、類内膜がんの予後は腫瘍の悪性度によって異なり、低異型度ならよい予後、高異型度なら漿液性がん同様に再発リスクがあります。

粘液性がん

進行した粘液性がんの予後は不良で、ほかのタイプに比べ治療が難しいことがあります。局所にとどまるうちに手術で切除できれば予後はよいですが、遠隔転移を伴う場合は治療選択肢が限られます。

このように卵巣がんの予後はステージだけでなく組織型によっても左右されます。一般に、早期発見できればどのタイプでも予後は良くなります。一方、進行した卵巣がんでは漿液性がんのように抗がん剤が効きやすいタイプと、明細胞がんのように効きにくいタイプで生存率に差が出ることがあります。

卵巣がんの再発率

卵巣がんは再発しやすいがんとしても知られます。初回の治療で画像上がんが消えたように見えても、残念ながら半数以上の症例で再発・転移が起こるとされています。特に進行期III期・IV期の患者さんでは注意が必要で、治療後2年以内に約55%が再発し、5年以内には70%以上が再発するとのデータもあります。

卵巣がんの主な治療法

卵巣がんの治療は手術を中心に、必要に応じて薬物療法を組み合わせるのが基本です。卵巣がんではまず手術で可能な限り腫瘍を取り除き、その後に再発リスクを減らすため術後化学療法を行うのが標準的な流れになります。場合によっては手術の前に抗がん剤で腫瘍を小さくする術前化学療法を行い、その後手術をすることも検討されます。放射線治療は卵巣がんでは初回治療としては通常用いませんが、再発時の症状緩和などに局所的に使われることがあります。以下に主要な治療法を解説します。

手術療法

手術療法は卵巣がん治療の柱となります。開腹手術により、卵巣や子宮などの病変部位を切除してがんを取り除きます。卵巣がんは画像検査だけでは病期を正確に判断しにくいため、開腹して病変を確認・切除することでステージを決めます。

放射線療法

放射線療法は高エネルギーの放射線をあててがん細胞を死滅させる治療ですが、卵巣がんの場合初回治療として行われることは通常ありません。これは、卵巣がんがお腹の中に広く散らばる性質があるため、放射線を当てる範囲が広くなってしまい、副作用が強く出てしまうからです。その代わり、卵巣がんでは全身に作用する抗がん剤治療が優先されます。ただし、再発時や症状緩和目的で放射線療法が用いられる場合はあります。

薬物療法

薬物療法とは抗がん剤など薬による治療のことで、主に化学療法と、近年では分子標的薬やホルモン療法なども含まれます。卵巣がんは進行して見つかることが多く、また早期であっても再発しやすい性質がありますが、一方で漿液性がんに代表されるように抗がん剤が効きやすいタイプのがんでもあります。そのため、卵巣がん治療では多くの場合に手術後に抗がん剤治療を行うことが標準となっています。

卵巣がんについてよくある質問

ここまで卵巣がんを紹介しました。ここでは「卵巣がん」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

卵巣がんの治療後に気をつけることを教えてください。

卵巣がんの治療が終わった後も、しばらくは定期的に通院して経過観察を受ける必要があります。まず治療後1~2年目は2~3ヶ月ごとに、再発がないか診察や検査を行います。その後、問題がなければ3~5年目は3~6ヶ月ごと、6年目以降は年1回程度の検査に移行します。

日常生活では、規則正しい生活を心がけましょう。具体的には、十分な睡眠とバランスのよい食事、適度な運動が大切です。免疫力を維持するためにも栄養をとりすぎず不足しすぎず、バランス良く摂取してください。体力づくりには散歩など無理のない運動もすすめられます。禁煙や節度ある飲酒も重要です。

卵巣がんは完治しますか?

卵巣がんが完治するかどうかは、病期や組織型によって異なります。早期の卵巣がんであれば、手術でがんを完全に取り切り、追加の化学療法を行うことで完治が期待できるケースがあります。実際、I期の卵巣がんなら約90%が5年以上生存しており、臨床的には治ったといえる方も少なくありません。

卵巣がんの治療後も検査や診察は続きますか?

はい、卵巣がん治療後は定期的な検査・診察が続きます。前述のとおり治療後1~2年は2~3ヶ月に1回、その後5年目までは3~6ヶ月に1回、5年以降も年1回程度の通院で経過観察を行うのが一般的です。主治医は問診で体調や自覚症状を確認し、内診や腟エコーで骨盤内の様子を調べます。併せて血液検査で腫瘍マーカー(CA125など)の値をチェックし、必要に応じてCT検査なども行います。


まとめ

卵巣がんの予後はステージによって大きく異なり、I期・II期であれば良好で完治も期待できますが、III期・IV期では再発も多く厳しい経過をたどることがあります。また、組織型によっても予後が異なり、さまざまな治療法が行われます。本記事が卵巣がんについての知識を深め、早期発見やよい治療選択につながれば幸いです。

関連する病気

  • 子宮体がん
  • 子宮頸がん
  • 子宮筋腫
  • 子宮内膜ポリープ
  • ストレスなどによるホルモンの乱れ

関連する症状

  • 腹部膨満感
  • 下腹部痛
  • 排尿障害
  • 食欲不振
  • 体重減少
  • 月経異常
  • 全身の倦怠感

この記事の監修医師