「慢性リンパ性白血病の初期症状」は?進行した時の症状も医師が解説!
公開日:2025/09/22


監修医師:
林 良典(医師)
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名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、 NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本老年医学会老年科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、禁煙サポーター。
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眼科(角膜外来)
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目次 -INDEX-
慢性リンパ性白血病とは?概要と原因
慢性リンパ性白血病とはどのような病気なのでしょうか。本章では慢性リンパ性白血病の概要と原因について解説します。
慢性リンパ性白血病の概要
慢性リンパ性白血病(CLL)は、白血球の一種であるBリンパ球ががん化して増殖することで発症する病気です。進行の速度が遅く、インドレント(低悪性度)リンパ腫に分類されるタイプの白血病です。がん化した異常なBリンパ球は主に血液や骨髄に増えますが、リンパ節や肝臓、脾臓といったリンパ器官にも蓄積することがあります。慢性リンパ性白血病の原因
慢性リンパ性白血病の明確な原因はいまだに解明されていません。ただし、疫学的な特徴として欧米人に多くアジア人ではまれであることがわかっています。アジア人が欧米に移住してもCLLの発症率はさほど上昇しないことから、環境要因よりも遺伝的要因の関与が示唆されています。慢性リンパ性白血病の初期症状
慢性リンパ性白血病は進行がゆっくりであるため、初期の段階ではほとんど症状がありません。自覚症状がないまま健康診断などで行った血液検査で白血球の増加を指摘され、偶然に発見されるケースも多い病気です。初期に症状が現れる場合でも、ごく軽い倦怠感や微熱、痛みのないリンパ節の腫れを触れる程度で、日常生活に支障が出るほどの症状はまれです。これら初期症状ははっきりしないため見逃されやすく、症状がない場合には患者さん自身も病気に気付かないことがほとんどです。
進行した慢性リンパ性白血病の症状
病気が進行すると、徐々にさまざまな症状が現れ始めます。主な症状としては次のようなものがあります。
- 貧血症状(疲れやすさ、息切れ、めまいなど)
- リンパ節の腫れ
- お腹の上部や左脇腹が張る感じや圧迫感
- 食欲はあるのに体重が減る
- 発熱
- 夜間に大量の汗をかく
- 感染症にかかりやすい
慢性リンパ性白血病の検査と診断基準
慢性リンパ性白血病のような症状が出てきた場合、さまざまな検査を行い診断を確定します。本章では慢性リンパ性白血病で行われる検査と診断される基準について解説します。
慢性リンパ性白血病の検査方法
血液検査によって白血球数の増加やリンパ球の割合の上昇が認められた場合、さらに詳しい検査を行います。まず、採血した血液で末梢血塗抹標本を作製し、顕微鏡でリンパ球の形態を観察します。慢性リンパ性白血病では小型で成熟したリンパ球が多数みられます。 次に、リンパ球の表面マーカーを調べる免疫学的検査を行います。一般的にはフローサイトメトリー検査という方法で、血液中のリンパ球に特殊な試薬を反応させて細胞表面の抗原を分析します。慢性リンパ性白血病のリンパ球はCD5やCD23といった特徴的な表面抗原を持つため、これらが検出されれば診断に大きな手がかりとなります。 確定診断や病気の広がりを評価するために骨髄検査を行うこともあります。骨髄検査では局所麻酔下で骨髄穿刺・骨髄生検を実施します。骨髄中のリンパ球の増殖の程度や、ほかの血球の減少具合を把握することで、病気の進行度を評価できます。 さらに、慢性リンパ性白血病では治療方針を決めるために染色体検査が行われます。これは白血病細胞の染色体や遺伝子に特定の異常がないかを調べる検査です。慢性リンパ性白血病でよくみられる染色体欠失や特定の遺伝子変異が検出されれば、予後の見通しや適切な治療薬の選択に関する情報が得られます。例えば17番染色体のp53遺伝子の欠失がある場合は一部の薬剤が効きにくいため別の治療法を検討するといった判断に役立ちます。 その他、画像検査としてCTやPET-CTなどが行われることもあります。これはリンパ節の腫れ具合や肝臓・脾臓の大きさなど、病変の分布を全身的に評価するためです。慢性リンパ性白血病の診断基準
慢性リンパ性白血病かどうかを判断する際には、国際的に確立された診断基準があります。特に、末梢血中に5,000/μL以上のBリンパ球が持続的に認められることが診断の重要な基準となります。この状態が3ヶ月以上続く場合、臨床的に慢性リンパ性白血病と診断されます。また、リンパ球数が5,000/μL未満でも、骨髄に腫瘍性のリンパ球浸潤があり、それによって赤血球や血小板の減少が生じている場合には慢性リンパ性白血病と診断されます。 診断にあたっては、ほかの類似疾患を除外することも重要です。例えば、マントル細胞リンパ腫や濾胞性リンパ腫といった類似したリンパ系腫瘍が存在しますが、これらは治療法や経過が異なるため鑑別が必要です。骨髄検査や免疫学的検査でそれらの特徴がみられないことを確認し、初めて慢性リンパ性白血病と確定診断されます。慢性リンパ性白血病の治療法
慢性リンパ性白血病の治療方針は、検査結果と症状の有無によって決定されます。特徴的なのは、症状がない初期の段階ではすぐに治療を開始せず経過観察とする場合があることです。定期的に血液検査や診察を行い、病状が安定していれば治療による副作用を避け、患者さんの生活の質を維持することを重視します。
治療を開始するタイミングは、患者さんに症状が現れたり病状が進行してきたときです。治療が必要と判断された場合、中心となるのは化学療法や免疫療法などの薬物療法です。近年、慢性リンパ性白血病の治療は分子標的薬という抗がん剤が登場し、高い効果が得られるようになってきました。これらの治療は、患者さんの年齢や体力、合併症の有無によって適切な薬物の組み合わせが選択されます。また、症状緩和の目的で放射線療法が行われることもあります。さらに、一部の進行した慢性リンパ性白血病や若年の患者さんでは、同種造血幹細胞移植を検討する場合もあります。
慢性リンパ性白血病についてよくある質問
ここまで慢性リンパ性白血病を紹介しました。ここでは「慢性リンパ性白血病」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
慢性リンパ性白血病で治療をしない期間があるのはなぜですか?
慢性リンパ性白血病と診断されたのに、すぐ治療を開始しないで経過観察になる場合があります。理由は、慢性リンパ性白血病がゆっくりと進行する場合が多いため、症状がない段階で副作用のある治療を始めるメリットが少ないからです。
慢性リンパ性白血病の症状は治療をすることで緩和しますか?
はい。慢性リンパ性白血病による症状は、適切な治療によって緩和が期待できます。実際、CLLの治療目標の一つは病気に伴う症状を和らげて患者さんの生活の質(QOL)を維持・向上させることです。
慢性リンパ性白血病の症状が辛いのですが和らげる方法はありますか?
慢性リンパ性白血病の症状がつらい場合、まず主治医に相談することが重要です。症状が強くなってきたということは、先述の治療開始基準を満たしつつある可能性があり、治療を開始することで症状が根本的に改善するかもしれません。また、治療を行っている間も含めて症状を和らげるための支持療法を活用できます。支持療法とは、病気そのものを治す治療ではありませんが、症状緩和や体調管理のために行うケア全般を指します。例えば、貧血が強く疲労感がひどい場合には赤血球の輸血を行って全身状態を改善します。
まとめ
慢性リンパ性白血病は、中高年の方に発症することが多い進行の遅い白血病です。初期には症状に乏しく経過し、健康診断の血液検査などで偶然に見つかる場合もあります。しかし、病気が進行するとリンパ節の腫れや貧血、発熱・寝汗などさまざまな症状が現れてきます。完全に病気を治すことは難しいものの、治療の進歩により長期生存が可能な病気となってきています。慢性リンパ性白血病とは上手に付き合っていくことで、日常生活を大きく損なうことなく過ごすことが十分可能です。
関連する病気
- 小細胞性リンパ腫
- 急性リンパ性白血病
- 非ホジキンリンパ腫
- 慢性骨髄性白血病
関連する症状
- リンパ節の腫脹
- 全身の疲労感
- 体重減少
- 発熱
- 動悸
- 息切れ
- めまいなど
- あざができやすい

