「骨髄異形成症候群」の主な3つの症状とは?検査や治療法についても医師が解説!

骨髄異形成症候群は、血液をつくる骨髄の働きに異常が起こる病気です。どのような症状が出るのか、原因は何か、どのように検査と診断し治療するのかを詳しく解説します。

監修医師:
井林雄太(井林眼科・内科クリニック/福岡ハートネット病院)
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骨髄異形成症候群とは

骨髄異形成症候群は血液のもとになる造血幹細胞の異常によって正常な血液細胞が十分につくられなくなる病気です。一つの疾患ではなくいくつかの病型の集まりで、白血病に関連する造血器腫瘍の一種とされています。
骨髄で作られた未熟な血液細胞がうまく成熟できなかったり、成熟しても壊れてしまったりするため(無効造血)、赤血球や白血球、血小板といった血球が減少し正常に働けなくなります。その結果、身体に十分な酸素を運ぶ赤血球が不足したり、感染と戦う白血球や止血に必要な血小板が不足したりしてさまざまな症状が現れます。また骨髄異形成症候群の一部は時間の経過とともに急性骨髄性白血病に移行することがあります。明確な原因がわかる場合は少ないものの、過去にほかのがんで化学療法(抗がん剤)や放射線治療を受けていた場合や、ベンゼンなどの有機溶剤、農薬・重金属(水銀や鉛)といった化学物質への曝露が発症リスクとして知られています。
骨髄異形成症候群の症状

骨髄異形成症候群では、減少する血液細胞の種類によってさまざまな症状が現れます。赤血球が減少して貧血になると、息切れや動悸、疲れやすさ、皮膚の蒼白などの症状が起こります。白血球が減ると免疫力の低下により感染症にかかりやすく、発熱を生じることがあります。血小板が減少すると出血しやすくなり、皮膚に小さな点状の内出血ができたり、些細なことであざができたり、鼻血や歯茎からの出血が起こりやすくなります。
これらの症状に加え、全身の倦怠感(けんたいかん)や疲労感が続くこともあります。一方で、初期にははっきりした自覚症状がないことも多く、健康診断の血液検査で異常を指摘されて発覚する場合もあります。
骨髄異形成症候群の検査方法

骨髄異形成症候群が疑われる場合、血液検査と骨髄検査を中心に、必要に応じて染色体検査など詳しい検査を行い診断します。問診や視診、触診などの診察に加え、採血によって血液の状態を調べ、骨髄の細胞を採取して詳しく調べることで確定診断につなげます。
血液検査
まず血液検査を行い、血液中の赤血球や白血球、血小板の数値やヘモグロビン濃度などを調べます。骨髄異形成症候群では血球の数が減少しているのが特徴で、赤血球・白血球・血小板のいずれか一種類のみが減る場合もあれば、二種類以上またはすべてが減少する場合もあります。同時に末梢血塗抹検査を行い、血液細胞の形の異常や幼若な芽球の存在、赤血球中の鉄の過剰沈着の有無などを確認します。血液検査の結果は骨髄異形成症候群の診断だけでなく、重症度やリスク分類を判断する材料になります。
骨髄検査
骨髄異形成症候群など血液のがんが疑われる場合、骨髄穿刺や骨髄生検による骨髄検査がほぼ必須となります。一般的には局所麻酔を行ったうえで腰の骨(腸骨)に太い針を刺し、骨髄液や骨の一部を採取します。採取した骨髄液は顕微鏡で詳しく調べられ、血液細胞の中に形態異常をきたした細胞や芽球がどの程度存在するかを確認します。芽球の割合(骨髄中の幼若な細胞の占める割合)は、病気の分類や今後の治療方針を決めるうえで重要な指標となります。
染色体検査
骨髄や血液の細胞を用いて染色体検査を行うことも重要です。異常な造血幹細胞が持つ遺伝子異常を調べる検査で、骨髄異形成症候群では約半数以上の患者さんで何らかの染色体異常がみられます。代表的な異常に、第5番染色体の一部欠失(del(5q))がありますが、染色体検査により特定の異常が見つかれば診断の助けになるだけでなく、予後を評価する手がかりにもなります。
骨髄異形成症候群と急性白血病

骨髄異形成症候群は、しばしば急性骨髄性白血病に移行しうる疾患です。特に、骨髄中の芽球比率が高くなっているタイプでは白血病への進行リスクが高いことが知られています。骨髄異形成症候群のすべてが急性白血病になるわけではなく、実際に白血病に移行するのは患者さん全体の約10~20%と報告されています。
骨髄異形成症状の治療方法

骨髄異形成症候群の治療は、患者さんのリスク分類や全身状態に応じて異なります。大きく分けると、症状を和らげ生活の質を保つための支持療法、病気の進行を遅らせるための薬物療法、根本的な完治を目指す造血幹細胞移植(骨髄移植)があります。
支持療法
支持療法とは、病気そのものを治すよりも症状緩和や合併症予防を目的とした治療です。骨髄異形成症候群では血球減少による症状を軽くし、日常生活の質(QOL)を維持するために、輸血や増血因子製剤の投与、感染症対策などを行います。例えば、赤血球が極端に不足し息切れや強い倦怠感を生じている場合には赤血球輸血を行い、貧血症状を改善します。同様に、血小板減少により出血の危険が高い場合には血小板輸血を行います。
薬物療法
病状の進行抑制や血球減少の改善を目指して、さまざまな薬物療法(抗がん剤治療)が行われます。選択される治療薬は患者さんのリスクや病型によって異なりますが、代表的なものにシクロスポリンやレナリドミド、アザシチジンやデシタビンなどを用います。また、骨髄中の芽球割合が多く急性白血病に近い状態の患者さんや、若年で全身状態が良好な患者さんには、急性白血病の治療に準じた強力な化学療法を行うこともあります。
造血幹細胞移植
造血幹細胞移植(骨髄移植)は、骨髄異形成症候群を根治しうる唯一の治療法です。健康なドナーから造血幹細胞を提供してもらい、患者さん自身の異常な造血を置き換えることで病気を治すことを目指します。しかし、移植治療は合併症のリスクも高く、移植後に拒絶反応や移植片対宿主病(GVHD)など深刻な症状を引き起こす可能性があります。そのため、一般に65~70歳以下で臓器機能が保たれている体力のある患者さんが対象となります。
まとめ

骨髄異形成症候群は血液を作る骨髄の細胞に異常が生じることで、貧血や感染症、出血傾向などさまざまな症状を引き起こす疾患です。心当たりのない疲れや原因不明の熱などがある場合は内科を受診するようにしましょう。しかし、初期には自覚症状が乏しい場合もあります。早期発見や治療のためには定期的な健康診断や人間ドックを受けるのも肝要です。本記事がきっかけとなり、早期発見、治療の参考になれば幸いです。
関連する病気
骨髄異形成症候群と似た症状を示す、または同時に発生する可能性のある病気には以下のようなものがあります。
- 急性骨髄性白血病
- 再生不良性貧血
- 骨髄線維症
- 栄養不良性貧血(ビタミンB12欠乏、葉酸欠乏)
関連する症状
骨髄異形成症候群に関連する症状は以下のような症状が挙げられます。これらの変化を正しく把握することが鑑別に役立ちます。
- めまい
- 発熱
- 内出血
- 鼻血
- 全身倦怠感
- 体重減少

