「膀胱がんのMRI検査」とは?受ける際の注意事項についても医師が解説!

膀胱がんは、尿を一時的にためておく膀胱に発生するがんです。中高年の男性に多く発生する病気で、主に血尿などの症状をきっかけに発見されます。診断には尿検査や膀胱鏡検査が必須ですが、腫瘍の広がりを調べるためにMRI検査が行われることもあります。本記事では、膀胱がんの概要や症状、原因、膀胱がんのMRI検査の内容や流れ、注意事項、およびMRI以外の検査方法を解説します。

監修医師:
井林雄太(井林眼科・内科クリニック/福岡ハートネット病院)
目次 -INDEX-
膀胱がんの概要

膀胱がんは膀胱内壁の粘膜から発生する悪性腫瘍です。進行度により表在性膀胱がん(筋層非浸潤性)と浸潤性膀胱がん(筋層浸潤性)に分類されます。また、粘膜内に留まる特殊型として上皮内がん(CIS)もあります。以下ではそれらについて概説します。
膀胱がんの症状
膀胱がんの主な症状は血尿で、尿が赤くなることがあります。また、頻尿や排尿時の痛み、残尿感、尿意切迫といった症状が現れることもあります。血尿は一度出てもその後しばらく出ないこともあるため注意が必要です。そして、がんが進行すると尿が出にくくなることがあります。
表在性膀胱がん
表在性膀胱がんは膀胱壁の筋層に達していない初期のがんです。膀胱内に乳頭状の腫瘍ができることが多く、主な症状は血尿です。早期であれば内視鏡による切除手術で治療可能ですが、再発しやすい傾向があるため注意が必要です。
浸潤性膀胱がん
浸潤性膀胱がんは膀胱の筋層までがんが達した状態です。筋層まで達すると膀胱壁の外に広がったり、リンパ節や肺・骨など遠隔の臓器に転移しやすくなります。下腹部の痛みなど症状が強く現れることもあり、膀胱全摘出術や化学療法など積極的な治療が必要になります。
上皮内がん
上皮内がん(CIS)は膀胱粘膜内に広がる平坦ながんです。膀胱内に突き出さないため発見しづらい場合がありますが、悪性度が高く放置すると筋層浸潤へ進展する恐れがあるため注意が必要です。
膀胱がんの原因
膀胱がんの危険因子として特に喫煙が挙げられます。喫煙者は非喫煙者より発症リスクが約4倍高く、なかでも男性では膀胱がん患者さんの約半数に喫煙歴があるとの報告があります。また、過去に染料やゴム製品の製造に使われた芳香族アミン類(ナフチルアミン、ベンジジンなど)への長期曝露もリスクを高めます。その他、飲料水中のヒ素への曝露や、抗がん剤シクロフォスファミドの使用、骨盤への放射線治療歴なども危険因子として知られています。
膀胱がんのMRI検査とは?

MRI検査とは、磁気共鳴画像法と呼ばれる検査で、強力な磁石と電波を使って体内の断面を画像化する方法です。膀胱がんの診断過程では、がんの存在が確認された後に、腫瘍が膀胱壁の筋層に達しているかや周囲への広がりを評価する目的でMRI検査が行われます。ここでは、膀胱がんにおけるMRI検査でわかることや検査の流れ、注意事項を説明します。
膀胱がんにおいてMRI検査でわかること
膀胱がんに対してMRI検査を行うと、膀胱壁の中でがんがどこまで深く達しているかを画像で評価することができます。MRIにより筋層非浸潤か筋層浸潤かを術前にある程度判別できるため、治療方針の決定に役立ちます。また、骨盤内のリンパ節転移の有無もMRIで確認できます。
MRI検査を受ける際の注意事項
検査台に仰向けに寝るとベッドが自動でMRI装置内に入り撮影が始まります。撮影中は装置から大きな騒音が出るためヘッドホンや耳栓を着用します。検査時間は通常15~45分程度で、その間は身体を動かさないよう指示されます。撮影が終われば装置から出て検査終了です。
MRI検査を受ける際の注意事項
MRI検査を受ける際の注意事項は大きく3つに分けられます。まずは検査前にアクセサリー類はすべて外します。ペースメーカーなど体内に金属がある場合も必ず申告してください。もう1つは閉所恐怖症の方は検査をつらく感じる場合があるため、事前に医師に相談しましょう。さいごに、検査内容によっては造影剤という薬剤を静脈注射して撮影することがあります。過去に造影剤でアレルギー症状を起こしたことがある方や、喘息持ちの方、腎臓に持病がある方などは副作用リスクが高いため必ず事前に医師に伝えてください。
MRI検査以外の膀胱がんの検査方法

膀胱がんの診断と評価にはMRI以外にもさまざまな検査が用いられます。ここでは代表的な検査方法について紹介します。
尿検査
尿検査は膀胱がんが疑われる場合の基本的な検査です。尿に血液が混じっていないかを調べる尿潜血検査や、尿中に剥がれ落ちたがん細胞を調べる尿細胞診を行います。尿潜血検査で血尿を確認し、尿細胞診で悪性細胞の有無を顕微鏡で確認することで、膀胱がんの手がかりを得ます。
膀胱鏡検査
膀胱鏡検査は、尿道から内視鏡を挿入して膀胱内を直接観察する検査です。膀胱内の粘膜に異常がないかを調べ、がんと思われる病変があればその場所、大きさ、数、形を詳細に確認します。必要に応じて疑わしい部分の組織を採取して生検を行い、がんの確定診断をします。膀胱鏡検査は外来で局所麻酔下に行える検査で、膀胱がん診断の決め手となる重要な検査です。
CT検査
CT検査は膀胱がんの病期診断に用いられ、短時間で腫瘍の広がりや転移の有無を確認できます。必要に応じて造影剤を使う場合もありますが、その際はアレルギーや腎機能に注意が必要です。
尿細胞診
尿細胞診は尿中の細胞を顕微鏡で調べてがん細胞の有無を確認する検査です。特に悪性度の高い膀胱がんの発見に役立ちますが、悪性度の低いがんでは陰性になることもあります。
超音波検査
超音波検査(エコー検査)は、体表から超音波を当てて膀胱や腎臓を観察する画像検査です。痛みもなく身体への負担が少ない方法で、腫瘍がある程度大きければ膀胱壁の隆起として描出されますが、小さな病変は検出できないこともあります。
膀胱がんのMRI検査を受けられる施設

膀胱がんのMRI検査は、多くの病院で受けることが可能です。一般的にMRI装置を備えた総合病院や大学病院、がん専門病院などで検査を行います。まずは泌尿器科を受診し、医師が必要と判断すれば適切な医療機関で検査を行ってもらえます。小規模な医療機関でMRI設備がない場合も、提携先の病院に紹介してもらえるので安心です。
まとめ

膀胱がんは血尿を主症状として発見されることが多く、診断には尿検査や膀胱鏡検査など複数の検査を組み合わせて行います。MRI検査は膀胱がんが筋肉に及んでいるかどうかを詳しく調べるのに役立ち、治療方針を決めるうえで重要な情報を提供してくれます。
なお、MRIだけですべてを判断することはできないため、CT検査や尿細胞診、膀胱鏡検査などほかの検査結果も総合して診断されます。少しでも気になる症状があれば早めに泌尿器科で検査を受けることが大切です。
早期に発見し適切な治療を行えば根治が期待できる場合もあります。気になる症状があれば早めに検査を受けましょう。
関連する病気
膀胱がんと似た症状を示す、または同時に発生する可能性のある病気には以下のようなものがあります。
- 膀胱炎
- 尿路結石
- 尿道がん
- 前立腺肥大症
関連する症状
膀胱がんに関連する症状は以下のような症状が挙げられます。これらの変化を正しく把握することが鑑別に役立ちます。
- 血尿
- 排尿時の痛み
- 頻尿
- 下腹部や腰部の痛み
- 尿の色の変化や濁り
- 全身の倦怠感
- 体重減少



