「どんな血尿が出たら膀胱がん」を疑った方が良い?検査法についても医師が徹底解説!
公開日:2025/09/16


監修医師:
井林雄太(井林眼科・内科クリニック/福岡ハートネット病院)
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大分大学医学部卒業後、救急含む総合病院を中心に初期研修を終了。内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。大手医学出版社の医師向け専門書執筆の傍ら、医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。ホルモンや血糖関連だけでなく予防医学の一環として、ワクチンの最新情報、東洋医学(漢方)、健康食品、美容領域に関しても企業と連携し情報発信を行い、正しい医療知識の普及・啓蒙に努めている。また、後進の育成事業として、専門医の知見が、医療を変えるヒントになると信じており、総合内科専門医(内科専門医含む)としては1200名、日本最大の専門医コミュニティを運営。各サブスぺ専門医、マイナー科専門医育成のコミュニティも仲間と運営しており、総勢2000名以上在籍。診療科目は総合内科、内分泌代謝内科、糖尿病内科、皮膚科、耳鼻咽喉科、精神科、整形外科、形成外科。日本内科学会認定医、日本内分泌学会専門医、日本糖尿病学会専門医。
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血尿と膀胱がんの関係
血尿には、大きく分けて肉眼的血尿と顕微鏡的血尿の2種類があります。
肉眼的血尿は、尿が赤や茶色に変色し、目で見て血が混じっているとわかる状態です。一方、顕微鏡的血尿は、尿検査で初めて赤血球の増加が確認される状態で、日常生活では変化に気付きにくいのが特徴です。
膀胱がんで最も多い症状が、この血尿です。特に肉眼的血尿は膀胱がんの代表的な初期症状でもあります。ただし、膀胱がん以外にも腎臓や尿管、尿道などの疾患でも血尿は起こりえます。そのため血尿があれば膀胱がんであるという単純な図式ではなく、泌尿器科などの医師による検査が必要です。
膀胱がんの症状とは
膀胱がんは、膀胱内の粘膜から発生する悪性腫瘍です。日本では高齢の方に多くみられる病気で、喫煙歴や化学物質への曝露などが主なリスク要因として知られています。以下では、膀胱がんの初期症状と進行時の症状をそれぞれ紹介します。
膀胱がんの初期症状
膀胱がんの初期症状で最も多いのが血尿です。痛みなどを伴わない無症候性の肉眼的血尿は膀胱がんを疑う重要なサインです。血尿以外では、膀胱刺激症状と総称されるいくつかの尿の異常が現れることがあります。具体的には尿の回数が増える(頻尿)、 トイレが我慢できない強い尿意(尿意切迫感)、 排尿時の違和感や痛み(排尿痛)、 尿が出きらず残っている感じ(残尿感)などです。また、初期の膀胱がんはまったく無症状であることも珍しくありません。この場合、健康診断の尿検査で顕微鏡的血尿を指摘されたり、ほかの検査でたまたま膀胱に腫瘍が見つかったりして発覚する場合もあります。進行した膀胱がんの症状
膀胱がんが進行し腫瘍が大きくなったり筋肉層へ深く及んだりすると、症状もより顕著になります。腫瘍が膀胱の出口や尿道を圧迫すると尿が出にくい、尿線が細いなど排尿障害が生じたり、排尿時に強い痛みを感じることがあります。 腫瘍が膀胱粘膜の防御機能を低下させるため膀胱炎を繰り返しやすくなり、尿が濁る、悪臭がする、膿が混じるといった症状を伴うこともあります。さらに、がんが周囲組織や他臓器に広がった場合、その場所に応じた症状が現れます。がんがさらに進行すると、食欲低下や体重減少、全身の倦怠感など全身症状が出ることもあります。膀胱がんの検査方法
膀胱がんが疑われる場合、いくつかの検査を組み合わせて診断を行います。以下に各検査法の概要を説明します。
尿検査
尿検査では尿中に血液やがん細胞が含まれていないかを調べます。さらに、膀胱がんに関連したNMP22やBTAといった腫瘍マーカーの検査が行われることもあります。例えばNMP22やBTAといった膀胱がんマーカーが陽性かを確認します。ただし、尿検査だけで膀胱がんと確定診断することはできません。尿検査で血尿やがん細胞が見つかった場合は、より詳しい検査へ進む必要があります。膀胱鏡検査
膀胱鏡検査は、尿道から細長い内視鏡を膀胱内に挿入して直接中を見る検査です。これにより腫瘍の有無や場所、大きさ、数、形状などを詳細に観察できます。膀胱粘膜に異常が見られれば、その場で一部を鉗子でつまんで採取する生検(組織検査)を行い、顕微鏡で組織を調べます。膀胱鏡検査は膀胱がんの診断・治療方針の決定に不可欠で、多くの場合この検査で膀胱がんかどうかがわかります。膀胱鏡では腫瘍の切除(TURBT)も同時に行えるため、異常が見つかればそのまま治療に進むこともあります。CT検査
CT検査とMRI検査は、膀胱がんの広がり具合(進行度)を調べるための画像診断です。膀胱がんではCT尿路造影(CT-UCG)といって尿路全体(腎臓・尿管・膀胱)の3次元的な画像を得る検査が行われることがあります。これにより膀胱だけでなく上部尿路(腎盂や尿管)に腫瘍がないかまで同時に確認できます。MRI検査
MRI検査は、CT検査と同様、膀胱がんの広がり具合(進行度)を調べるための画像診断ですMRI検査は、膀胱がんではがんの深さの評価に有用です。特に、筋層浸潤が疑われるケースではMRIでより詳しく調べることがあります。尿細胞診
尿細胞診は、尿中に剥がれ落ちて排出されたがん細胞の有無を調べる検査です。採取した尿を特殊なフィルターなどで処理し顕微鏡で観察して、異常な細胞がないか病理医が判定します。尿を使うだけで身体への負担が少なく、繰り返し実施できる利点があります。超音波検査
超音波検査(腹部エコー)では、膀胱がんの疑いで下腹部にプローブを当て、膀胱内に腫瘍が映らないか確認します。超音波は臓器の形や腫瘍の有無や大きさを把握するのに有用で、痛みや侵襲のない簡便な検査方法です。膀胱がんの治療法
膀胱がんの治療は、がんの進行度や悪性度、患者さんの全身状態によって大きく異なります。大きく分けると、腫瘍を切り取る手術療法、放射線を照射する放射線療法、薬剤を使う薬物療法(化学療法)の3つを行います。以下に代表的な治療法について解説します。
手術
膀胱がんに対する手術には大きく内視鏡手術と開腹手術(膀胱摘出術)があります。早期の膀胱がんには、開腹せずに尿道から内視鏡器具を挿入して腫瘍だけを切除する経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)が第一選択となります。一方、筋層に達した浸潤性膀胱がんや上記の治療で制御困難ながんに対しては、膀胱全摘出術が標準治療となります。放射線療法
膀胱がんに対して放射線治療が行われる場面は大きく2つあります。1つは、膀胱を温存したい場合の根治治療の一環として行う場合、もう1つは、進行がん・転移がんに対する緩和目的で行う場合です。例えば、膀胱に腫瘍が充満して出血がひどい場合に止血目的で膀胱に放射線を当てたり、骨転移による痛みを和らげる目的で転移部位の骨に放射線を当てたりします。化学療法
化学療法(抗がん剤治療)は、抗がん薬を点滴や経口で投与してがん細胞の増殖を抑える治療です。膀胱がんの場合、進行度に応じて局所療法と全身療法の両方で化学療法が選択されることがあります。まず筋層非浸潤性膀胱がんに対しては、膀胱内に抗がん剤やBCGを注入する局所化学療法が行われることがあります。この膀胱内注入療法により再発リスクを下げ、特に再発を繰り返すがんに有効です。一方、筋層浸潤がんや転移を有する膀胱がんに対しては、全身化学療法が検討されます。血尿が出たときの対処法
血尿に気付いた際の基本的な対処として、まず肉眼的血尿を確認したら早めに医療機関を受診することが重要です。特に、痛みのない血尿は重大な病気のサインの可能性があるため、たとえ1回で止まっても放置せず泌尿器科で検査を受けましょう。受診までの間、できるだけ尿をためないよう水分を普段より多めに補給して頻繁に排尿するよう心がけます。こうすることで血液が膀胱内で固まって血の塊となり、尿の通路をふさぐのを防ぐ効果があります。また、激しい運動は控え、安静にして様子を見ましょう。
まとめ
膀胱がんは血尿ではじまることが多い病気ですが、痛みがなく一時的に治まるため見逃されがちです。血尿を確認したら自己判断せず、医療機関で精密検査を受けることが早期発見につながります。また、日頃から尿の色や排尿状態に注意し、少しでも異常を感じたら専門医に相談するようにしましょう。
関連する病気
膀胱がんと似た症状を示す、または同時に発生する可能性のある病気には以下のようなものがあります。- 膀胱炎
- 尿路結石
- 尿道がん
- 前立腺肥大症
関連する症状
膀胱がんに関連する症状は以下のような症状が挙げられます。これらの変化を正しく把握することが鑑別に役立ちます。- 血尿
- 排尿時の痛み
- 頻尿
- 下腹部や腰部の痛み
- 尿の色の変化や濁り
- 全身の倦怠感
- 体重減少
参考文献




