「喉頭がんの予後」は?5年生存率や初期症状についても解説!【医師監修】


監修医師:
小島 敬史(国立病院機構 栃木医療センター)
目次 -INDEX-
がんの予後とは?
予後とは、病気がこの先どのような経過をたどるか、治療後にどの程度生存できるかなどの見通しを指します。がんの予後を表す指標として一般に用いられるのが5年生存率です。5年生存率は、がんと診断された方が5年後に生存している割合を示したものです。例えば、5年生存率が80%であれば、治療から5年後に患者さんの80%が生存していることを意味します。この数値が高いほど治療で命を救える可能性が高いがんになります。喉頭がんは、すべてのがんのなかでも予後の良いがんです。実際、日本人の喉頭がん患者さんの5年相対生存率は約71%と報告されており、これは甲状腺がんに次いで頭頸部がんのなかでは高い値です。
喉頭がんの病期別予後を解説
喉頭がんの予後は病期(ステージ)によって大きく異なります。病期はがんの広がり具合を示す分類で、数字が大きいほど進行したがんであり、予後は厳しくなります。一般に早期発見、早期治療できれば生存率は高く、進行するほど生存率は低下します。
早期の喉頭がんの予後
喉頭がんが局所にとどまっている早期段階では、治療後の5年生存率は大変高いです。ステージIでは5年生存率がおよそ95〜100%と報告されており、ほとんどの患者さんが治療により長期生存を達成できます。ステージIIでも5年生存率は約90%前後で、早期がんの多くは高確率で克服できる状況にあります。中期の喉頭がんの予後
がんが喉頭内で大きくなったり、近くのリンパ節に転移している段階です。ステージIIIの5年生存率はおおよそ70〜80%とされています。早期に比べると数値は下がりますが、それでも約3人に2人以上は5年後も生存している計算です。適切な治療によって、多くの患者さんががんを克服できる段階といえます。進行期の喉頭がんの予後
がんが喉頭の外に広がったり遠くのリンパ節まで転移している段階で、予後はさらに厳しくなります。ステージIV全体の5年生存率はおおむね50〜60%程度と報告されています。特に声帯の上部(声門上部)や下部に及ぶ進行がんの場合、治療成績はやや低下し、5年生存率は約50%前後になるとのデータがあります。ただし、ステージIVのなかでも肺や肝臓などへの遠隔転移がある場合(ステージIVC)は根治が難しく、生存率はさらに低くなります。一方、遠隔転移のないIVA・IVB期の場合は集中的な治療で完治を目指すことも可能です。喉頭がんは治癒率が高い!早期発見が大切
喉頭がんの治療には主に手術療法と放射線療法、化学療法の三つがあり、病期やがんの場所に応じて組み合わせて行われます。それぞれの治療法によって予後や声の温存率、副作用の種類が異なります。ここでは治療法ごとの特徴と、それが予後にどう影響するかを解説します。
喉頭がんはほかのがんと比較すると治癒率が高い
喉頭がんは早期であれば大変高い確率で治癒が期待できるがんです。実際、喉頭がん全体の5年生存率は約71%と、甲状腺がんを除けば頭頸部がんのなかで最も良好な成績を示しています。これはほかの部位のがんと比べても治癒が期待できることを意味します。なぜ喉頭がんの治癒率はほかのがんと比較して高いのでしょうか。その大きな理由の一つが早期発見がしやすい点にあります。 喉頭がんの約60%は声帯(声門)に発生します。声帯にがんができると、初期症状として声がかすれる症状(嗄声)が現れる場合が少なくありません。風邪でもないのに嗄声が長引くことは、喉頭がんの重要な初期症状です。患者さん自身や周囲の方も声の変化に気付きやすいため、早い段階で耳鼻咽喉科を受診してがんが見つかるケースが多いです。早期に発見さえできれば、放射線治療だけで声帯を温存しつつ治癒が可能な場合もあり、結果として生存率が高くなります。 一方、喉頭がんが声帯以外(約40%)に発生した場合、初期には声に変化が出ません。このタイプの喉頭がんでは発見が遅れがちで、症状が出たときにはある程度進行していることもあります。そのため声門上部や下咽頭に近い部位の喉頭がんは、声門がんに比べて予後が悪い傾向があります。それでも、喉頭がん全体として見れば声がれというわかりやすい症状が出ることが多いため、ほかの自覚症状が乏しいがんより早期に見つけやすいのです。喉頭がんに早く気付くために知っておくべき初期症状
喉頭がんになってもその生存率を上げるためには早期発見が重要です。そこで、早期発見のために知っておくべき症状やポイントを以下にまとめます。声のかすれ(嗄声)が続く
かぜや声の使い過ぎでも一時的に声が枯れることはありますが、2週間以上嗄声が改善しない場合は要注意です。喉の違和感
喉に何か引っかかる感じ(異物感)やイガイガする感じは、声門上部にできる喉頭がんの初期症状として現れることがあります。飲み込むときの痛み(嚥下時痛)
飲み込むときに喉が痛む症状も、声門上部にできる喉頭がんの初期症状として現れることがあります。 以上のような症状に気付いたら、早めに耳鼻咽喉科を受診して喉頭の内視鏡検査を受けることが大切です。喉頭がんの治療法と副作用
喉頭がんの治療は、がんの進行度や発生部位、患者さんの全身状態や生活の質(QOL)を考慮して決定します。早期の喉頭がんでは、声帯を温存することを目的に、放射線治療や内視鏡下での手術が選択されることが多いです。これらは、局所的に腫瘍を消失させる効果があり、副作用は皮膚の乾燥、口腔内の粘膜障害、嗄声の一時的な変化などが挙げられます。 中~進行期の場合は、化学放射線療法(放射線治療と抗がん剤治療の併用)が行われ、場合によっては部分切除や、腫瘍の広がりが大きい場合には喉頭全摘出術が検討されます。喉頭全摘出では術後に声を失うリスクが高く、食道発声や人工喉頭を用いたリハビリが必要となります。また、化学療法の副作用として、脱毛、吐き気、食欲不振、骨髄抑制などの全身症状が現れる可能性もあります。喉頭がんについてよくある質問
ここまで喉頭がんを紹介しました。ここでは「喉頭がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
喉頭がんで声を失うことはある?
小島 敬史 医師
喉頭がんの治療過程で声を失う可能性はあります。特に、喉頭全摘出術といって、がんが進行して喉頭をすべて取り除く手術を行った場合、手術直後から声帯がなくなるため一切声が出せなくなります。これは患者さんにとって大きな不安材料ですが、声を失ったまま一生過ごすわけではありません。手術後には発声のリハビリテーションを行ったり、電気喉頭を用いたりするなど、代わりの方法で声を出せるよう訓練します。
喉頭がんになりやすい生活習慣は?
小島 敬史 医師
喉頭がんの主な原因は、喫煙と飲酒です。喉頭はタバコの有害物質の影響を大変受けやすく、実際、多くの喉頭がんの患者さんは長年にわたる喫煙歴があります。特に、喫煙と併せて行う場合はリスクがさらに高まります。また、食生活も喉頭がんに影響を及ぼす恐れがあります。大量のアルコール摂取は食事が偏り、野菜不足に陥る傾向があるため、飲酒習慣のある方は、緑黄色野菜や果物を意識して摂取し、栄養バランスを整えることが大切です。
喉頭がんでも仕事は続けられる?
小島 敬史 医師
多くの場合、喉頭がんになっても治療後に仕事を続けることは可能です。 実際、喉頭がんを克服して元の職場に復帰している患者さんは数多くいます。早期発見、治療で声を失わずに済んだケースでは、治療が終わって体力が回復すれば、ほぼ治療前と同じように会話しながら仕事ができるでしょう。
一方、喉頭全摘出術を受けて声帯を失った場合でも、仕事を続けられるケースは少なくありません。前述のとおり代用音声の習得によって会話自体は可能になります。電話の声が少し聞き取りにくいなどのハンディはありますが、工夫次第で乗り越えられることがあります。実際、喉頭を摘出された患者会である日本喉頭摘出者協会では、発声訓練を通じて社会復帰や会員同士の交流を図る活動が各地で行われています。そうしたサポートも活用しながら、多くの方が元の職場や新しい仕事で活躍しています。
編集部まとめ
喉頭がんは、早期発見と適切な治療により高い治癒率が期待できるがんです。本記事で紹介した病期別の予後、治療法、副作用、そしてリスク管理のポイントを参考に、喉頭がんの予防や早期診断に努めていただければ幸いです。
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