「喉頭がん」の初期症状で咳は出る?何科に受診すれば良いかも解説!【医師監修】


監修医師:
小島 敬史(国立病院機構 栃木医療センター)
目次 -INDEX-
喉頭がんとは?できる部位と概要
喉頭は呼吸、飲み込み、発声の3つの機能を担う重要な器官です。本章では、喉頭がんの基本と、声門がん、声門上部がん、声門下部がんの各発生部位を解説します。
喉頭の位置と役割
喉頭がんについて理解するために、まず喉頭の場所と役割を確認しましょう。喉頭は首の前部、のどぼとけの辺りに位置し、咽頭(のどの奥)と気管(肺へ通じる気道)をつないでいる器官です。 喉頭は空気の通り道として呼吸に関与するだけでなく、飲食物を飲み込む際には喉頭蓋と呼ばれるふたが閉じて気管に食べ物や飲み物が入るのを防ぐ働きがあります。さらに、喉頭には左右一対の声帯があり、この声帯が振動することで声を出す役割も担っています。喉頭がんの概要
喉頭がんは、その喉頭に発生する悪性腫瘍のことです。頭頸部がん(頭や首にできるがん)の一種で、発生する部位により、声帯にできる声門がん、声帯より上にできる声門上部がん、声帯より下にできる声門下部がんの3つに分類されます。 日本では喉頭がんと診断される人は年間約5,500人とされ、患者さんの多くは長年の喫煙習慣のある60歳以上の男性です。喉頭がんはたばことの関係が深く、非喫煙者の発症はまれです。男女比では男性が約10:1と圧倒的に多く、喫煙本数が多く長期にわたる方(例:20本/日を40年以上など)に発症が集中しています。また過度の飲酒も喉頭がんのリスク要因であり、喫煙と飲酒を両方行う方は特に注意が必要です。 喉頭がんの特徴として、早期に発見されれば治療によって完治が期待でき、声を保ったまま治療できる可能性が高いことが挙げられます。特に、声門がんは、がんが声に異常をもたらすため早い段階で気付かれやすく、早期発見と治療につながりやすい傾向があります。一方、声門上部、声門下部がんでは初期症状が風邪に似ていたり症状が出にくかったりするため、発見が遅れることもあります。咳と喉頭がんの関係とは?初期症状を解説
喉頭がんの初期には、喉頭という場所の特徴からいくつかの症状が現れることがあります。特に注意すべき初期症状として、かすれ声(嗄声、させい)、物を飲み込むときの痛みが挙げられます。以下にそれぞれの症状を詳しく解説します。
かすれ声
声のかすれ(嗄声)も、喉頭がんの典型的な初期症状の一つです。声門がんでは、がんが小さいうちから声帯の動きに影響を与えるため、低くしわがれた声やガラガラ声になるなど、声質の変化が顕著に現れます。普段はっきり出ていた声が出しにくくなったり、声を出すと疲れるようになることもあります。さらに進行した場合、呼吸困難が出現する場合もあります。嚥下時痛(えんげじつう)
声門上部がんの場合、喉の違和感やヒリヒリ、イガイガした感じなど、まるで風邪を引いたような症状が現れることがあります。特に、食べ物や飲み物を飲み込むときに喉に痛みを感じる症状(嚥下時痛)が生じることがあります。これらは腫瘍が喉頭の上部で大きくなり、飲み込む動作に影響を及ぼしているサインです。咳
咳は喉頭がんの初期症状としてはあまり一般的ではありません。声帯の腫瘍によって、声がれ、喉の違和感、進行すると息苦しさが出現します。また、咳をしたときに腫瘍から出血し、痰に血がまじる場合があります。喉頭がんを疑うときは耳鼻喉喉科を受診
咳や嗄声、嚥下時痛などの症状があり、それらの症状が2週間以上続く場合は耳鼻咽喉科を受診するようにしましょう。耳鼻咽喉科では喉頭がんなどの確認のため、さまざまな検査をし、喉頭がんであれば治療を行います。本章ではその検査や治療を解説します。
喉頭がんの検査法
耳鼻咽喉科では喉頭の観察が行われます。お口や鼻からカメラを入れて喉頭内部を直接見る内視鏡検査(喉頭ファイバースコープ検査)によって、声帯や喉頭の様子を詳しく調べます。内視鏡で腫瘍が疑われる部分が見つかった場合は、そこから組織の一部を採取して顕微鏡で調べる生検(病理組織検査)を行い、がん細胞の有無を確認します。 喉頭は咳嗽反射といって、咳がでる反射が大変強い部位のため、生研がなかなか難しい場合があります。また、病変の広がりをしっかり調べるため、全身麻酔による組織生検が必要となる場合もあります。 生検によって喉頭がんと確定診断された場合は、さらに病変の広がりを調べるための検査に進みます。具体的には、CT検査やMRI検査で腫瘍の大きさや喉頭周囲への広がりを評価します。加えて、首のリンパ節やほかの臓器への転移の有無を確認するために超音波検査やPET-CT検査が行われることもあります。これらの検査結果を総合して病期(ステージ)を判断し、その後の治療方針を決定します。喉頭がんの治療法
喉頭がんの治療は、がんのステージや腫瘍の場所、患者さんの体力や希望する生活の質(QOL)などを考慮して決定されます。主な治療法には手術(外科的治療)、放射線治療、化学療法(抗がん剤治療)の3つがありますが、これらを単独または組み合わせて行います。 早期喉頭がん(ステージI)は、放射線治療や内視鏡下の手術で腫瘍を消失させ、声帯を温存する治療が選択されます。局所進行(ステージII~III)では、化学放射線療法や部分切除により喉頭温存と発声機能の維持を図りますが、進行(ステージIV)では腫瘍の広がりにより全摘出が必要となります。喉頭全摘を行った場合、声帯を失うため、通常の方法で声が出せなくなります。術後は食道発声や人工喉頭を用いたリハビリでQOL改善を試みます。喉頭がんについてよくある質問
ここまで喉頭がんを紹介しました。ここでは「喉頭がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
咳が出る場合、喉頭がん以外にどのような病気が疑われる?
小島 敬史 医師
長引く咳は喉頭がんの一症状ですが、実際には咳の原因の多くはほかの病気によるものです。喉頭がんと紛らわしい咳の原因や、関連する症状をいくつか押さえておきましょう。
風邪、気管支炎、肺炎
咳の一般的な原因はウイルスや細菌による感染症です。風邪や気管支炎、肺炎になると咳込むことが多く、発熱や鼻水、痰のからみなど喉頭がんとは異なる症状も伴うことが多いです。こうした感染症による咳は、多くは1~2週間程度で徐々に治まっていきます。
喘息
気管支が過敏になり炎症を起こす気管支喘息でも、慢性的な咳がみられます。喘息の場合、特に夜間から明け方にかけて咳込んだりゼーゼーと喘鳴音が出たりするのが特徴です。季節の変わり目や運動後などに症状が悪化しやすい傾向があります。喘息の咳は気道の炎症によるもので、喉頭がんの直接的な症状ではありません。
アレルギー、後鼻漏
ハウスダストや花粉などによるアレルギー反応で喉がイガイガし、咳が出ることもあります。また、副鼻腔(鼻の奥の空洞)の炎症などで鼻水が喉に垂れ込む後鼻漏(こうびろう)があると、常に喉に違和感が生じて咳払いを繰り返す原因になります。これらの場合は喉そのものに異常はなく、アレルゲンの除去や薬物療法によって症状は改善します。
喉頭がんはどのような人がかかりやすい?
小島 敬史 医師
喉頭がんになりやすい要因は、喫煙と飲酒が挙げられます。長年タバコを吸っている方や、アルコールを常習的に飲む方は喉頭がんの発症リスクが高まります。実際、喉頭がんの患者さんの多くはヘビースモーカーであり、タバコを吸わない方に喉頭がんが生じることはまれです。また喉頭がんは中高年の男性に多い疾患であり、年齢が上がるほどリスクが高まります。
喉頭がんの治癒率は?
小島 敬史 医師
喉頭がんは早期に発見し適切に治療すれば治癒できる可能性が高いがんです。治療成績を表す5年生存率でみると、ステージIが約95%、ステージIIでも約90%と高い水準です。中程度に進行したステージIIIでも72%程度が5年生存し、進行が進んだステージIVでも約48%と報告されています。これらは相対生存率といって一般人口との比較で算出された値ですが、少なくとも早期がんであればほとんどの患者さんが治癒可能であることを示しています。
まとめ
本記事では、喉頭がんの基本的な概要や各部位ごとの特徴、初期症状、検査、治療法について解説しました。早期発見により、治療で機能の温存が期待できる場合もあります。症状が続く際はできるだけ早く耳鼻咽喉科を受診するようにしましょう。本記事が皆さんの病気の早期発見と治療につながれば幸いです。
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- 声帯ポリープ
- 声帯結節
- 慢性喉頭炎
- 逆流性食道炎
- 下咽頭がん
関連する症状
- 嗄声(かすれ声)
- 嚥下時の痛み
- 喉の違和感や痛み
- 呼吸困難
- 喘鳴
- 痰に血が混じる

