「声帯ポリープ」を疑う初期症状・放置するとどうなるかご存知ですか?医師が解説!
声帯ポリープとは?Medical DOC監修医が声帯ポリープの初期症状・原因・できやすい人の特徴・検査法・治療法・予防法・セルフチェック法や何科へ受診すべきかなどを解説します。
監修医師:
小島 敬史(国立病院機構 栃木医療センター)
日本耳鼻咽喉科学会専門医、指導医。日本耳科学会、日本聴覚医学会、日本耳鼻咽喉科臨床学会の各種会員。補聴器適合判定医、補聴器相談医。
目次 -INDEX-
「声帯ポリープ」とは?
声帯ポリープとは、喉の奥、声を出すときに振動する声帯の粘膜が傷つき、炎症を起こすことを原因として、ポリープを生じる疾患です。どちらかというと男性に多い疾患です。声帯ポリープでは症状として嗄声(声がれ)が出現します。放置すると手術が必要になる場合もあります。今回の記事では、声帯ポリープの概要とその原因、その治し方などについても解説します。
声帯ポリープの前兆となる初期症状
ここでは、声帯ポリープの初期症状について解説します。
嗄声
声帯ポリープにより声帯の振動が妨げられることにより、嗄声(させい;声がかすれること)を生じます。ポリープの部位によって声質の変化として気づくこともあります。例えば、「普段は問題ないが、高い声や大きな声を出したときだけいつもと違うような声になる」ということがあります。
痰が詰まったような感じ
声帯には異物が入ってくると咳で出す、咳嗽反射という機能があります。この声帯にポリープがある場合、ポリープを異物と感じ、何かを咳で出したい、という感覚が続くことがあります。
息苦しさ
声帯の間を塞ぐほどにポリープが大きくなると、息苦しさが出現します。また、ポリープによって声帯が閉じづらくなると、声を出すために大量の呼気が必要となり、普通に話していて息苦しく感じることがあります。嗄声に加えて息苦しさを感じるならば速やかに耳鼻咽喉科を受診し、診断を受けましょう。緊急入院の上、治療が必要になる場合があります。
声帯ポリープの原因
声帯ポリープの原因はいくつかあり、声の出し方や生活習慣に関係しています。
声帯への機械的ストレス
大声・過度の歌唱など声帯の酷使は、声帯表面が傷つくきっかけになります。この繰り返しで傷ついた部分が膨らみ、声帯ポリープになります。声帯に力を入れるような不適切な発声法や、頻繁な咳も負担を増やします。適切な休息と正しい発声法が予防に重要です。
声帯粘膜の炎症
喫煙、感冒、アレルギー、逆流性食道炎などで声帯表面に炎症が起こると、粘膜が腫れて厚くなります。長期化すると腫れがポリープに発展します。炎症で声帯の振動が妨げられ、粘液分泌にも影響し、さらなる刺激や損傷のリスクが高まります。
毛細血管の損傷
発声時、声帯は高速で衝突し、内部の毛細血管が傷つくことがあります。損傷した血管から漏れ出た液体が組織にたまり、ポリープとなります。高音や大声でリスクが増加し、声帯の乾燥や炎症も血管を傷つきやすくします。
声帯ポリープができやすい人の特徴
風邪の時に無理に声を出す
風邪をひいた状態で無理に大きな声を出すと、声帯粘膜の毛細血管が傷つき、声帯ポリープが発生する原因となります。働き盛りの年齢層で、教師や営業職など職業上声を使わざるを得ない人に多く見られます。風邪の症状がある際はできるだけ声を休め、十分な水分摂取と休養を心がけましょう。
喫煙習慣
喫煙習慣がある方は声帯ポリープ発症のリスクが高いと考えられています。これは、タバコの煙により声帯に慢性的な炎症が生じるためです。また、喫煙習慣がある場合ポリープだけでなくポリープ様声帯や喉頭癌といったその他の疾患を生じることもあります。喫煙習慣のある方で嗄声が続くと感じた場合、早期に禁煙し、耳鼻咽喉科を受診しましょう。
大声を出す職業・習慣
継続的に大声を出す必要のある職業や習慣は、声帯ポリープの主要な発症要因となります。教師、歌手、セールス職など、声を多用する職業の人々に多く見られます。また、スポーツ観戦や応援、カラオケなどで頻繁に大声を出す習慣がある人もリスクが高まります。
声帯ポリープを放置するとどうなる?
声帯ポリープは良性疾患ですので、癌化するというようなことはありません。ただし、放置すると症状が徐々に悪化する可能性があります。発症早期であれば自然治癒することもありますが、3ヶ月程度経過するとそこから自然治癒する可能性は低くなります。長期間放置すると、対側の声帯が硬く変性することがあり、手術を行っても音声の改善が困難になる場合があります。放置しておいても治ることは期待しづらいので、放置することは避けた方が良いでしょう。
声帯ポリープの検査法
声帯ポリープの検査方法についてご紹介します。
咽喉頭ファイバースコープ検査
耳鼻咽喉科で行われる一般的な検査です。細い内視鏡を鼻から挿入し、声帯の状態を直接観察します。短時間で終わり、入院の必要はありません。大学病院や総合病院だけでなく、ほとんどの耳鼻咽喉科クリニックでも実施可能な基本的な検査方法です。
喉頭ストロボスコピー検査
特殊な光(ストロボ光)を用いて、声帯粘膜の振動をスローモーションのように観察します。外来で実施され、通常15〜20分程度で終了し、入院の必要はありません。耳鼻咽喉科専門医の常駐する専門的な設備がある医療機関で実施される検査です。
直達喉頭鏡下摘出術
全身麻酔下で口から筒(直達鏡)を挿入し、顕微鏡を用いてポリープを精密に切除します。検査と治療を兼ねており、摘出後は声帯を安静に保つことで声の改善が期待できます。通常入院が必要で、3〜7日程度の入院期間が一般的です。大学病院や総合病院などで実施されます。手術後も1週間程度は声を控えめにする必要があります。
声帯ポリープの治療法
声帯ポリープの治療法について解説します。
声帯を安静に保つ
医師の指示に従い、声の安静を保ちます。大声を出さない、ささやき声を避ける等の指導があります。ポリープの発症を繰り返す場合などは、喉頭専門外来での音声治療を受けることもあります。
薬物療法
薬物療法により声帯ポリープが治ることを期待します。炎症を抑えるための吸入ステロイド薬や、去痰薬、鎮咳薬などが処方されます。また、耳鼻咽喉科外来でネブライザー治療を受けることもあります。治療期間は症状に応じて数週間〜数ヶ月ですが、症状に応じて治療期間は変わります。
直達喉頭鏡下声帯ポリープ切除術
耳鼻咽喉科の専門医がいる総合病院や大学病院で行われます。全身麻酔下で直達喉頭鏡を用いてポリープを切除することで、確実に治療します。通常3〜5日程度の入院が必要です。退院後、1週間は声を出さない安静期間があります。声帯粘膜が平坦に覆われれば完治となります。治癒までは1〜2ヶ月程度かかることが一般的です。
声帯ポリープの予防法
それでは、声帯ポリープの予防法について解説します。
適切な声の使用
過度の声の使用を避け、適切な発声法を身につけることで、声帯への負担を軽減します。大きな声を出す機会が多い職業の方は特に注意が必要です。水分を十分に摂取し、喉を潤すことも重要です。定期的に声を休ませ、ハミングなどの喉に優しい発声練習を行うことで、声帯の健康維持に効果があります。
健康的な生活習慣
全身の健康状態が声帯の健康にも影響します。禁煙は最も重要な予防策の一つです。また、カフェインやアルコールなど刺激物の過剰摂取を避けましょう。適度な湿度を保つことも大切で、乾燥する季節はマスクの着用や加湿器の使用が効果的です。
環境因子の管理とストレス軽減
声帯ポリープの発症には環境要因やストレスも関係します。乾燥した環境を避け、必要に応じてマスクを着用しましょう。職場や家庭でのストレス管理も重要です。また、就寝前の食事を控えめにするなど、生活リズムを整えることも効果的です。
声帯ポリープのセルフチェック法
声帯ポリープのセルフチェックについてご紹介します。
声の変化
毎日の会話や歌をうたった時に、自分の声質の変化に注意を払います。高音が出しづらくなったり、長時間話すと声が疲れやすくなったりしていないか注意します。これらの変化が2週間以上続く場合は、耳鼻咽喉科医の診察を受けることをお勧めします。
喉の違和感
のどに違和感がないか確認します。話す際や飲み込む時に、喉に何かが引っかかっている感じがしないかセルフチェックしてみましょう。また、咳払いの頻度が増えていないか、喉の乾燥感や痛みが持続していないかも確認します。
日常生活での評価
電話での会話で相手に聞き返されることが増えていないか、会議や授業で声が続かなくなっていないかなど注意します。また、大きな声を出した後の回復に時間がかかるようになっていないか注意します。歌を歌う機会がある人は、以前と比べて音程が取りづらくなっていないか、声量が弱くなっていないかをチェックしましょう。
「声帯ポリープ」についてよくある質問
ここまで声帯ポリープについて紹介しました。ここでは「声帯ポリープ」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
声帯ポリープは手術した方がいいのでしょうか?
小島 敬史 医師
投薬で改善せず、声帯ポリープによる嗄声が続き、日常生活へ何かしらの影響が出ていると考えた場合は、手術をしたほうが良いでしょう。手術によって診断もつきますし、対側の声帯への影響もなくなります。ただし、症状がほとんどなく、全身麻酔による手術を受けたくないという場合は定期的に経過観察する場合もあります。
声帯ポリープの手術後に喋ってしまったのですが、喉に悪影響でしょうか?
小島 敬史 医師
声帯ポリープ切除術後には、声帯をなるべく安静に保ったほうが良いとされ、1週間程度発声禁止の指示が出されることが一般的です。少し手術後に喋ってしまったくらいなら大丈夫だと考えますが、大声で話したり、歌ったりするのは声の改善に影響する可能性があります。手術による切除範囲にもよりますので、必ず主治医に確認してください。
編集部まとめ
今回の記事では、声帯ポリープの症状やセルフチェックの方法について解説しました。
声帯ポリープは良性疾患ですが、声を出す、という社会生活で必須の機能に関わる疾患です。早期の診断・治療によって手術をせずに治癒が期待できますが、逆に手術をしても再発してしまうこともありえます。無理に声を出すのはやめ、嗄声を感じたら早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
「声帯ポリープ」と関連する病気
「声帯ポリープ」と関連する病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
いずれも嗄声を主な症状とする疾患です。咽喉頭ファイバースコープ検査や直達鏡下手術によって診断しますので、気になったら耳鼻咽喉科を受診しましょう。
「声帯ポリープ」と関連する症状
「声帯ポリープ」と関連している、似ている症状は3個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 嗄声(声がかすれる)
- 喉の違和感
- 咳
ほぼすべての場合で嗄声は出現します。また、のどの違和感や咳など、風邪ににた症状が出ることもあります。