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「悪性リンパ腫が脳転移した場合の生存率」はご存知ですか?転移後の症状も解説!

 公開日:2024/10/07
「悪性リンパ腫が脳転移した場合の生存率」はご存知ですか?転移後の症状も解説!

悪性リンパ腫という病名を聞いたことはあっても、脳転移の可能性についてご存知ない方も多いのではないでしょうか。

悪性リンパ腫は血液がんの1つですが、脳に発生することもあります。また、悪性脳腫瘍として発現した場合、予後があまりよくありません。

本記事では、悪性リンパ腫が脳転移した際の余命や症状について解説します。悪性リンパ腫による脳腫瘍の進行度や治癒の可能性についても紹介するので、参考にしてください。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

悪性リンパ腫とは?

悪性リンパ腫は、白血球内のリンパ球ががん化する、日本の成人が罹患しやすい血液がんの一種です。リンパ球は血液によって全身に行き渡るため、リンパ球が存在するリンパ系組織だけでなく、ほかの臓器や皮膚・骨髄・脳でも発症する可能性があります。
悪性リンパ腫には約100種類の病型がありますが、組織学的に分けた場合は、ホジキンリンパ腫(HL)と非ホジキンリンパ腫(NHL)の2種類です。悪性リンパ腫の大半は非ホジキンリンパ腫に分類されます。
経過観察から対応する低悪性度の病型もあれば、早急な治療が必要とされる高悪性度の病型もあり、悪性度や病状の進行度はさまざまです。悪性リンパ腫全体の5年生存率は、2009年から2011年のデータで67.5%となっています。

悪性リンパ腫が脳転移した際の余命

悪性リンパ腫の脳転移のみを対象とした余命は明確ではありませんが、悪性リンパ腫を含む悪性脳腫瘍発症後の平均余命は約80ヵ月、5年生存率は約53%です。悪性リンパ腫による脳腫瘍に限定すると、5年生存率は約48%です。
悪性リンパ腫などほかのがんが脳に転移した転移性脳腫瘍の場合は、5年生存率は24%とさらに低下します。悪性リンパ腫による脳腫瘍は、WHO(世界保健機関)が定めた悪性度のグレードによると、4段階中のグレードⅣに分類されます。
グレードⅣは、高度悪性腫瘍の分類です。したがって、悪性リンパ腫が脳転移した場合、脳腫瘍の予後はあまりよくありません。

悪性リンパ腫による脳腫瘍の種類

悪性リンパ腫による脳腫瘍も、ホジキンリンパ腫(HL)と非ホジキンリンパ腫(NHL)の2種類に分類されます。ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫には、どのような違いがあるのでしょうか。

ホジキンリンパ腫

ホジキンリンパ腫(HL)は、リンパ節から発生する悪性リンパ腫です。日本で発症する悪性リンパ腫のうち、ホジキンリンパ腫は全体の5〜10%を占めています。発症により、増加する腫瘍細胞が2種類あるのが特徴です。
HRS細胞(Hodgkin/Reed-Sternberg細胞)が増加するものは古典的ホジキンリンパ腫、LP細胞(Lymphocyte Predominant細胞)が増加するものは結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫と呼ばれます。
ホジキンリンパ腫はリンパ節で発生し、リンパ節間で転移が見られる悪性リンパ腫であり、中枢神経系に分類される脳への発生・転移は多くありません。

非ホジキンリンパ腫

非ホジキンリンパ腫(NHL)は、リンパ節以外から発生する悪性リンパ腫です。悪性リンパ腫の約90%が非ホジキンリンパ腫に分類され、中枢神経系である脳に発生・転移する悪性リンパ腫もほとんどが非ホジキンリンパ腫になります。
非ホジキンリンパ腫は、がん化したリンパ球の種類によってB細胞リンパ腫・T細胞リンパ腫・NK細胞リンパ腫の3つに分類されますが、中枢神経系ではほとんどがB細胞リンパ腫です。
中枢神経系に発生・転移する非ホジキンリンパ腫のうち、中枢神経系原発のものを中枢神経原発悪性リンパ腫(Primary Central Nervous System Lymphoma、PCNSL)と呼びます。また、中枢神経原発悪性リンパ腫の約90%は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫です。

悪性リンパ腫による転移性脳腫瘍の症状

悪性リンパ腫による転移性脳腫瘍の症状は、腫瘍の発生場所によって異なります。悪性リンパ腫と診断された方に以下のような症状が見られた場合、脳転移の可能性を考慮し、早めに検査を受けましょう。

手足のまひ

手足のまひは、悪性リンパ腫による脳腫瘍が、身体の運動機能を司る部位に発生した際に見られる症状です。脳腫瘍が運動機能に関連する脳の働きを阻害し、歩行が困難になる、手に物を持てなくなるなどのまひ症状を引き起こします。

失語症

失語症は、悪性リンパ腫による脳腫瘍が、発語機能を司る部位に発生した際に見られる症状です。大脳半球の言語中枢や言語関係の連絡領域に脳腫瘍ができることで、言語機能が阻害され、失語症やコミュニケーション障害が発生します。

視野障害

視野障害は、悪性リンパ腫による脳腫瘍が、視覚を司る部位に発生した際に見られる症状です。目のかすみや物にぶつかる頻度の増加が、視野障害で引き起こされる症状の一例になります。中枢神経系原発悪性リンパ腫で視野障害が現れた場合、眼球内リンパ腫が併発している可能性があるため、注意が必要です。

認知症様症状

認知症様症状は、悪性リンパ腫による脳腫瘍が、認知機能に関連する部位に発生した際に見られる症状です。物忘れの増加や注意力の低下など、さまざまな症状が認知症様症状に分類され、患者さん自身が症状の発生を自覚していないケースもあります。

精神症状

精神症状は、患者さんの普段の性格とは異なる怒りっぽさや無気力さなどが現れる症状です。中枢神経系原発悪性リンパ腫の場合、主な症状として約40%の患者さんに精神症状が見られます。

痙攣発作

痙攣発作は、悪性リンパ腫などが原因とされる悪性脳腫瘍の初発症状としても見られる症状で、てんかん発作の一部です。悪性脳腫瘍の初発症状の約18%、中枢神経系原発悪性リンパ腫の主な症状の約14%を、痙攣発作が占めています。

頭蓋内圧亢進症状

頭蓋内圧亢進症状は、悪性リンパ腫による脳腫瘍が頭蓋骨内側を圧迫することで発生する症状です。頭痛・嘔吐・悪心・視力障害などが現れ、悪性脳腫瘍の初発症状の約11%、中枢神経系原発悪性リンパ腫の主な症状の約33%が頭蓋内圧亢進症状になります。

眼症状

眼症状は、眼そのものに現れる症状です。目や瞳孔の通常と異なる不自然な動き・眼球の痙攣などが発生し、中枢神経系原発悪性リンパ腫の主な症状の約4%になります。

悪性リンパ腫の脳転移の余命についてよくある質問

ここまで悪性リンパ腫が脳転移した際の余命・脳腫瘍の種類・症状などを紹介しました。ここでは「悪性リンパ腫の脳転移」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

悪性リンパ腫の脳転移の進行速度を教えてください。

中路 幸之助医師中路 幸之助(医師)

悪性リンパ腫による脳腫瘍は、病状の進行が早い病気です。発生した脳腫瘍が悪化するだけでなく、腫瘍が脳全体に広がっていくため、多発性の悪性脳腫瘍へと変化していきます。進行を早期に食い止めるためにも、早めの診療が重要です。

悪性リンパ腫の脳転移が治る確率はどのくらいですか?

中路 幸之助医師中路 幸之助(医師)

悪性リンパ腫による脳腫瘍は、5年生存率が約48%と予後があまりよくない病気です。また、悪性リンパ腫などほかのがんが転移したことによる転移性脳腫瘍の5年生存率は約24%となっており、予後の悪さが窺えます。したがって、悪性リンパ腫が脳転移した際の治る確率も、高くないといえるでしょう。

編集部まとめ

今回は悪性リンパ腫が脳転移した際の余命や症状について解説してきました。悪性リンパ腫は、脳転移すると進行が早く、悪化しやすい病気です。

予後があまりよくない病気ではありますが、早期の診断と適切な治療によって、生存期間を延ばすことはできます。不安な症状がある場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。

悪性リンパ腫脳転移と関連する病気

「悪性リンパ腫脳転移」と関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

悪性リンパ腫の脳転移は、転移性脳腫瘍の一部です。また、悪性リンパ腫自体がはじめから脳などの中枢神経系に発生するケースもあります。リンパ系組織だけでなく、ほかの臓器や中枢神経系で悪性リンパ腫が発生する可能性もあることを、あらかじめ理解しておきましょう。

悪性リンパ腫脳転移と関連する症状

「悪性リンパ腫脳転移」と関連している、似ている症状は8個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 手足のまひ
  • 失語症
  • 視野障害
  • 認知症様症状
  • 精神症状
  • 痙攣発作
  • 頭蓋内圧亢進症状
  • 眼症状

悪性リンパ腫による脳腫瘍では、腫瘍が発生した箇所によってさまざまな症状が現れます。いずれも脳の機能が阻害されることで生じる症状になるため、早めに医師の診断を受けるようにしましょう。

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