「急性骨髄性白血病は脳にも転移」するの?急性骨髄性白血病の症状も解説!
急性骨髄性白血病の脳への影響をご存知ですか?
白血病は脳に転移すると思っている患者さんもいますが、白血病自体に転移という概念はありません。
しかし、急性骨髄性白血病は脳に重大な影響を与えることもあるため、適切な治療が重要です。
この記事では、急性骨髄性白血病の脳への影響・症状・治療法などを解説します。
監修医師:
山本 佳奈(ナビタスクリニック)
目次 -INDEX-
急性骨髄性白血病とは?
急性骨髄性白血病(AML)は、血液を作る造血幹細胞に異常が生じ、がん化した白血病細胞が急速に増殖する血液のがんです。白血球・赤血球・血小板などの血球細胞が正常に作られなくなり、血球の減少によるさまざまな症状が急速に進行します。
赤血球の減少による貧血・白血球の減少による感染症・血小板の減少による出血などが主な症状です。白血病は白血病細胞の由来によってリンパ性と骨髄性に分けられ、さらに症状の進行速度によって慢性と急性に分類されています。
急性骨髄性白血病は、骨髄性の白血病細胞が急速に増加する病気で、速やかに治療しないと数ヵ月で命を落とすこともあります。
急性骨髄性白血病は脳にも転移する?
身体の一部で発生したがんが、血管やリンパ管によってほかの部位に運ばれて増殖することを、がんの転移といいます。白血病はもともと血管によって全身を巡っている血球ががん化するため、大腸がんや肺がんとは異なり、転移の概念はありません。
白血病細胞が血管の外に溢れ出して局所に溜まることを、白血病細胞の浸潤といいます。脳は髄液という液体のなかに浮かんでおり、この髄液にも白血病細胞は浸潤することがあります。
白血病細胞が脳髄にまで浸潤する中枢神経系白血病は、リンパ性白血病でよくみられる症状です。急性骨髄性白血病でも脳髄液に浸潤する可能性はあり、頭痛などの髄膜刺激症状を呈することもあります。
急性骨髄性白血病の症状
急性骨髄性白血病は、異常な白血病細胞が増殖して骨髄を占拠してしまうことで、正常な血球細胞が減少します。血球細胞は赤血球・白血球・血小板からなり、血球細胞の減少や白血病細胞の浸潤によって、以下のような症状が起こります。
- 息切れ・動悸
- 発熱
- 鼻血
- 歯茎からの出血
- 頭痛
- 関節痛
- 感染が起こりやすくなる
それぞれの内容を解説します。
息切れ・動悸
急性骨髄性白血病の代表的な症状は、酸素を運ぶ赤血球の減少による貧血です。全身で酸素が不足するために息が切れやすくなり、身体は酸素不足を補うために心臓からの拍出量を増やそうとします。
このため強い動悸が起こり、長期に渡って心臓に負荷がかかるため、心不全のリスクも高まります。
発熱
白血球が減少して免疫力が低下するため、感染症にかかりやすくなり、発熱が起こりやすくなります。発熱の原因は感染症だけでなく、がん細胞から発熱性炎症物質が放出されておこる場合もあります。
がん細胞そのものが原因の発熱を腫瘍熱といい、感染症との鑑別が必要です。
鼻血
血小板の減少により血が止まりにくくなり、鼻の粘膜が薄い部位から出血しやすくなります。
小さな傷でも血が止まりにくくなり、感染症のリスクも高まるため、出血には十分注意が必要です。
歯茎からの出血
血小板の減少により、歯茎から出血しやすくなります。歯茎が赤く腫れて、歯みがきのたびに出血することも少なくありません。
歯茎からの出血は歯周病の可能性もありますが、免疫力の低下により歯周病にもなりやすくなるため、十分な口腔ケアが重要になります。
頭痛
白血病細胞が脳髄膜に浸潤し、中枢神経を刺激すると頭痛が生じます。
白血病細胞が脳髄膜の間に溜まっていき、脳を圧迫するのが頭痛の原因です。中枢神経の障害がさらに進行すると、神経麻痺となる場合もあります。
関節痛
急性骨髄性白血病では、骨髄のなかで白血病細胞が増殖するため、骨を圧迫して骨痛が生じることがあります。
関節に白血病細胞が浸潤すると関節痛となり、運動機能が障害されます。
感染が起こりやすくなる
白血病の合併症で特に注意すべきなのが、感染症です。白血球の減少により免疫機能が低下するため、普段はかからないような感染症にかかりやすくなり、重症化のリスクが高まります。
白血病の治療中は感染症対策を徹底し、ほとんどの期間を入院して過ごすことになるでしょう。
急性骨髄性白血病の治療法
急性骨髄性白血病は血液のがんであるため、大腸がんや肺がんのような、いわゆる固形がんとは治療法が異なります。
固形の腫瘍を手術で摘出することができないため、抗がん剤などの薬剤を用いた治療が基本です。急性骨髄性白血病の主な治療は、以下の3つです。
- 寛解導入療法
- 寛解後療法
- 支持療法
それぞれの内容を解説します。
寛解導入療法
寛解導入療法は、急性骨髄性白血病と診断されてからはじめに行う強力な抗がん剤による化学療法です。白血病細胞が検出されなくなり、症状が消える寛解状態を目指して治療が行われます。
白血病細胞の種類に応じて異なる抗がん剤を投与し、寛解状態となる確率は80%以上です。しかし、寛解しても体内には白血病細胞が残っているため、ここで治療を辞めてしまうと高確率で白血病は再発することが知られています。
寛解後療法
はじめの化学療法によって寛解状態となった後に、再発を防ぐために継続する化学療法が寛解後療法です。地固め療法とも呼ばれ、抗がん剤によって体内の白血病細胞の完全な除去を目指します。
症状の重さや全身の状態などにもよりますが、治療にかかる期間は一般的に7~9ヵ月間です。
この間は基本的に入院が必要ですが、医師の許可があれば短期間の外出や外泊も可能です。寛解後に4年以上再発がなければ、その後に再発する可能性は1%以下とされています。
支持療法
支持療法とは、抗がん剤による副作用を軽減するための治療法です。強力な抗がん剤は、白血病細胞と一緒に正常な細胞も殺してしまうため、白血病の症状と同じような副作用があります。
白血病治療の主な副作用は、脱毛・血球減少・消化器の機能低下や吐き気などです。白血球が減少して感染症にかかりやすくなるため、衛生管理が徹底された病棟に入院して、白血球を増やす薬を投与します。
吐き気を抑える薬や赤血球の輸血なども行って、できるだけ副作用を軽減しながら治療を進めていきます。抗がん剤の副作用は、抗がん剤投与をやめれば消失して回復することがほとんどです。
急性骨髄性白血病の脳転移についてよくある質問
ここまで急性骨髄性白血病の症状や治療方法などを紹介しました。ここでは「急性骨髄性白血病の脳転移」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
急性骨髄性白血病が転移しやすい臓器を教えてください。
山本 佳奈(医師)
先述したように、白血病は転移ではなく浸潤といいます。白血病細胞の浸潤がよくみられる臓器は、肝臓・脾臓です。脳や脊髄にも浸潤することがあります。
急性骨髄性白血病の転移や再発を予防する方法はありますか?
山本 佳奈(医師)
急性骨髄性白血病の治癒率に影響が大きいのは、白血病細胞の性質です。検査のうえで適切な治療を行い、寛解後もしっかりと寛解後療法を継続しましょう。
編集部まとめ
急性骨髄性白血病の症状や、脳への影響を解説しました。
白血病は血液のがんであり、転移ではなく浸潤という概念になります。
白血病細胞が脳に浸潤すると、頭痛や神経麻痺を起こすことがあり、命の危機となることもあります。
適切な治療を継続すれば、急性骨髄性白血病の長期生存率は60~70%あるため、希望を持って治療に臨みましょう。
急性骨髄性白血病と関連する病気
「急性骨髄性白血病」と関連する病気は1個程あります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- 急性リンパ性白血病
急性リンパ性白血病は、リンパ由来の白血病細胞が急速に増殖する血液のがんです。主な症状は急性骨髄性白血病とほとんど変わらず、検査しなければ鑑別はできません。急性リンパ性白血病の方が、脳髄への浸潤はよくみられます。
急性骨髄性白血病と関連する症状
「急性骨髄性白血病」と関連している、似ている症状は3個程あります。
各症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 貧血
- 発熱
- 血が止まらない
急性骨髄性白血病では、正常な血球細胞の減少による症状がはじめに自覚されます。普段より息が切れやすくなったり、突然鼻血が出たりなどの症状によって受診される患者さんがほとんどです。これらの症状はほとんどの場合白血病ではありませんが、不調を放置しないことは重大な病気の早期発見につながります。2週間以上改善しない場合は、医療機関で受診しましょう。
参考文献