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「骨肉腫」を発症すると「手や足を切断」しないといけないの?【医師監修】

 公開日:2024/08/11
「骨肉腫」を発症すると「手や足を切断」しないといけないの?【医師監修】

骨肉腫は骨のがんであり、主に成長期の子どもの膝や腕に罹るとされています。

主な症状は痛みや腫れですが、進行が進んだ場合に手や足を切断しなければならなくなることもあります。

どのような場合に切断が必要になるのでしょうか。また、切断せずに済む方法があるのかについても深掘りしていきます。

骨肉腫でお悩みの方は、ぜひご覧になってください。

松繁 治

監修医師
松繁 治(医師)

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経歴
岡山大学医学部卒業 / 現在は新東京病院勤務 / 専門は整形外科、脊椎外科
主な研究内容・論文
ガイドワイヤーを用いない経皮的椎弓根スクリュー(PPS)刺入法とその長期成績
著書
保有免許・資格
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本整形外科学会認定 脊椎内視鏡下手術・技術認定医

骨肉腫とは

骨肉腫は骨に発生するがんのなかでも代表的ながんです。10代の頃に発生しやすく、罹患者数の約3割は40歳以上の方が発症しています。国内での罹患者は年間200人程度です。大腸がんが年間15万人・舌がんが年間5千人から6千人なので、ほかのがんと比べてかなり少ないといえます。
腫瘍の発生部位は以下のとおりです。

  • 膝の上下部分(罹患者のうちの約6割)
  • 上腕骨の肩に近い部分
  • 大腿骨の股関節に近い部分

骨肉腫は骨端線と呼ばれる、骨が早く成長する部位に発生します。そして骨肉腫は肺に転移することが知られていますが、肺以外にも同じ骨のなかや、別の骨への転移も見られます。骨肉腫の症状は以下のとおりです。

  • 初期症状は痛みと腫れを感じる(初期症状が出ないこともある)
  • 腫瘍が発生した骨の骨折

特定の箇所で痛みが長く続く場合、骨肉腫の疑いがあります。その際は放置せず、整形外科や小児科を受診しましょう。また病気が進むと骨が弱くなり、骨折を引き起こすこともあります。
なお、骨肉腫の発生要因は明確にされておらず、遺伝的背景も不明だそうです。ただし、骨の成長が早い10代の罹患者数が少なくないことから、骨成長の早さが関係していると提唱されています。

骨肉腫で切断は必要?

骨肉腫に罹患した場合、手や足を切断しなければならないのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

神経や血管を巻き込むならば切断は必要

神経や血管は四肢の機能を維持するために重要な部位です。そのため骨肉腫において、病巣が神経や血管を巻き込んでいる場合は足を切断する必要が生じることがあります。
術前・術後の抗がん剤治療が確立し、患部である手や足を残す手術が行われることが少なくありません。しかし骨肉腫罹患者のうちの1~2割程度の方は、初診時にすでに病気が広がっており、手足を切断せざるを得ないこともあります。
ただし、骨肉腫はその特徴から、骨の端にある骨端線と呼ばれる骨の成長に欠かせない部位をほとんど切除するものです。子どもはこれから成長期を迎えるため、骨の成長に欠かせない骨端線を切除することは手足の成長に少なからず影響を与えます。そして成長期が終わる頃には、骨肉腫を発症していない方の手足と比べて治療した手足が10cm以上も短くなることがあり、日常生活に支障をきたすことも注意点です。
このような場合、手足を切断し、義足(義手)を使用することで生活の質を向上させることがあります。

原則は広範切除を行う

腫瘍を完全に取り除くために、周囲の健康な組織で包むように一塊として切除することを広範切除といいます。骨肉腫の治療においては、基本的に広範切除が行われています。

患部の温存を図る治療法が取られる

腫瘍の切除後にヘリカルCTという技術を応用した新しい放射線治療装置を用いて、患部の温存を図る治療法もあります。この治療法が患者さんに適応するかどうかは一概にいえませんので、医師にご相談ください。

骨肉腫の治療法

骨肉腫の治療法には、患部の切除法のほか温存治療もあります。手足を切断するだけでなく、温存できる方法もあるため、参考にしてください。

腫瘍切除手術法

腫瘍のできた骨とその周りの組織を一塊として切除する広範切除を行います。切除後には人工関節を用いて再建する方法が取られます。

患肢温存手術法

手足に栄養を送る重要な血管や、手足を動かす神経を残す治療方法を患肢温存手術法と呼びます。この場合は骨を切断しなくてよいとされています。手術のために欠損した骨の部分には人工関節を入れたり、切除後にがんを殺す処理を施した骨を元の位置に移植したりして再建することが必要です。
近年では延長することが可能な腫瘍用人工関節や、骨を延長させる骨延長術が進歩しており、10歳以下の子どもに患肢温存を試みることがあります。

化学療法

1970年までは手術による治療法が行われており、治療後の90%程度が再発していました。現在では手術前後に薬物療法など化学療法を行うことで再発率を下げています。
具体的には、手術する2~3ヵ月前に薬物療法を行い、腫瘍の切除や再建手術を行ったのちに数ヵ月の薬物療法を行う治療法がとられています。これは世界的にほぼ標準的な治療法として確立されていることになるでしょう。ただし化学療法には以下のような副作用もあります。

  • 吐き気や嘔吐
  • 体のだるさ
  • 口内炎
  • 白血球の減少とそれに伴う感染症

治療に使われる薬のなかには、シスプラチンやイホスファミドがあります。これらは妊孕性に影響を与える可能性があります。

放射線療法

骨肉腫の場合、放射線療法が効きにくい腫瘍とされており、ほとんど行われることはありません。しかし、腫瘍の大きさや患部の場所から広範切除が難しい場合、手術のほかに補助的治療として放射線療法が行われることもあります。

支持療法

支持療法とは、がんなどの重篤な疾患や生命を脅かすような疾患を抱えている患者さんの生活の質を改善するために行われる治療のことです。がんになると体のことだけでなく、学校や将来についても不安が付きまといます。
がんに伴う心と体・社会的なつらさを和らげるために行われます。不安な気持ちを医師や看護師・薬剤師や理学療法士など医療者へ伝えることで、不安を解消していくことが目的です。

骨肉腫の検査法

血液検査とともに、X線やCT・MRIなどの画像診断が行われます。また、腫瘍細胞の種類を調べるために生検も行われます。

血液検査

骨肉腫に罹患している場合、アルカリホスファターゼという酵素の数値が高くなっていることがあるため、知識として知っておきましょう。この数値から骨肉腫に罹患している可能性を診断しますが、小児は骨の成長が早いためにもともとアルカリホスファターゼが高い傾向にあります。そのため、ほかの検査の診断結果も踏まえて骨肉腫と判断します。

画像検査

主にX線検査が行われます。腫瘍のある部位は黒っぽく映り、それ以外の正常な骨は白っぽく映ります。これは通常型と呼ばれる高悪性度のものであり、小児に発生する骨肉腫の大部分はこちらに該当します。
なお、骨肉腫では腫瘍が骨からしみだして骨の外側に塊を作る特徴があることも、知っておきましょう。これを検査するためにCT検査やMRI検査が行われます。

生検組織診断

病変の一部を採取し、顕微鏡で詳しく調べる検査です。手術や内視鏡検査のときに組織を採取したり、体の外から超音波検査やX線検査などを行いながら細い針を刺して組織を採取したりします。

骨肉腫の切断についてよくある質問

ここまで骨肉腫の検査法・治療法などを紹介しました。ここでは「骨肉腫の切断」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

骨肉腫の切断後どのような治療が行われますか?

松繁 治医師松繁 治(医師)

骨肉腫による手足の切断後、義手や義足を装着します。そのうえで、フィッティングや歩行訓練を行います。

骨肉腫の生存率について教えてください。

松繁 治医師松繁 治(医師)

かつては不治の病とされていましたが、現在は化学療法によって生命予後が改善しており、初診時に遠隔転移がない症例での5年生存率は70%となっています。

編集部まとめ

骨肉腫に罹患しても、必ずしも手や足を切断することはありません

症例によりますが、温存治療が行われている例もあるので、ご自身の状況がどの段階にあるのかについて医師とご相談のうえ、治療法を定めるとよいでしょう。

骨肉腫は子どもが罹患することが少なくありません。まだ成長期の真っただなかにある体に治療を行うことは、将来に向けた不安を抱える要因となりえます。

精神的なストレスに対するサポートなどもありますので、医療者や身近な大人の方にしっかり相談し、心の不安を少しでも減らして治療に当たれるとよいでしょう。

骨肉腫と関連する病気

「骨肉腫」と関連する病気は2個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

  • 良性骨腫瘍
  • 転移性脊椎腫瘍

良性骨腫瘍は骨に発生した腫瘍のうち、転移などを生じて生命に悪影響を及ぼすことがないものです。骨軟骨腫・内軟骨腫など20種類以上あります。転移性脊椎腫瘍は悪性腫瘍が脊椎に転移したものです。

骨肉腫と関連する症状

「骨肉腫」と関連している、似ている症状は4個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 運動や歩行時の痛み
  • 骨の隆起や骨折
  • 夜間痛
  • 脊椎の痛み・麻痺

良性骨腫瘍や転移性脊椎腫瘍では、運動や歩行時の痛み・骨の隆起や骨折など上記のような症状が見られます。こうした症状が見られる際は、医療機関を受診してください。

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