「白血病の完治率(生存率)」はご存知ですか?白血病の種類や治療法も解説!
白血病と聞くと、完治率や生存率が低いのではと思っている方がいるかもしれません。実際白血病で亡くなる方もいて、完治できるのかと心配になっている方も少なくないでしょう。
かつては生存率の低い病気でしたが、近年は医学の進歩で生存率や完治率は上がってきています。では実際、完治率や生存率はどれくらいなのでしょうか。
この記事では白血病の完治率を、白血病の分類や治療法と併せて解説します。白血病と関連した病気に関しても解説しているので、ぜひ参考にしてください。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
目次 -INDEX-
白血病とは?
白血病は血液のがんのことで、体内で白血球細胞が無限に増殖してしまう病気です。貧血のような症状からはじまり、やがて目まいや息切れ、発熱や出血などの症状が起こります。
白血球が作られる過程で発症する病気といわれていますが、現在でもはっきりとしたメカニズムはわかっていません。
白血病の完治率・生存率は?
白血病に対しては、完治率や生存率が低い病気というイメージを持っている方は少なくないです。では実際に、白血病の生存率はどのくらいなのでしょうか?本項では白血病の完治率と生存率に関して解説します。
5年相対生存率
65歳以下の白血病患者さんの5年相対生存率は、急性骨髄性白血病で40%、急性リンパ性白血病で30%となっています。
早期にきちんとした治療を受ければ、寛解導入でおよそ8割の患者さんが寛解状態になるため、以前よりは回復しやすい病気になりました。
かつては生存率の低い病気だった白血病ですが、現在はレチイノン酸と抗がん剤を使用することで、徐々に生存率が上がってきています。
小児の5年相対生存率
大人とは異なり、小児の白血病の5年相対生存率は約88%で、早期に治療を受ければ高い確率で寛解を迎えることができます。しかし大人と比べても、小児の白血病は早期の発見が難しい一面があり、場合によっては発見が遅れる場合も少なくありません。
しかし小児の場合、白血病の治療をはじめれば大人と比べて抗がん剤が効きやすいので、その分生存率も高くなります。
白血病の分類
白血病自体はよく知られていますが、実はさまざまな種類に分類されています。症状は主に4つに分類されており、それぞれ特徴が異なります。
ここからは白血病の症状の種類を解説しましょう。
急性白血病
急性白血病とは、骨髄のなかにある血液が作られる過程の未熟な血液細胞が、何らかの原因でがん細胞になって骨髄のなかで急速に増殖して広がる病気です。急性白血病になると、正常な赤血球や白血球、血小板が急速に減少していきます。
急性白血病の主な症状は、倦怠感や動悸に息切れ、発熱です。初期症状では何も起こりませんが、急激に症状が現れ進行も早いのが特徴になります。
白血病細胞がリンパ系組織に浸潤した場合、リンパ性白血病とされて貧血症状や鼻血など、出血症状も起こる病気です。
慢性白血病
慢性白血病とは、造血幹細胞に何らかの異常が起こることによって、白血球や赤血球、血小板が異常に増えていく病気のことです。ほかにも、血管を流れる血液の中の白血球が急激に増えていくのも、慢性白血病の特徴の1つとなります。
急性白血病が早く進行していくのに対して、慢性白血病はじっくりと進行して身体をむしばんでいく病気です。自覚症状は、貧血や動悸息切れ、歯茎からの出血などです。
骨髄異形成症候群
骨髄異形成症候群は、血液細胞を作る造血幹細胞に何らかの異常が起こり、血液細胞が正常に機能しなくなってしまう病気です。原因は遺伝子が関係しているといわれていますが、詳しいことはまだはっきりとわかっていません。
症状に関しては、白血病と同じく息切れや動悸、鼻血をはじめとする出血や発熱などがあります。
白血病(小児)
小児の白血病は小児がんとも呼ばれ、子どもが発症するがんのなかでも多くの症例がある病気です。こうした白血病も大人の患者さんと同じく、白血球細胞が何らかの理由で異常に増殖して起こります。
小児白血病の大半は急性リンパ性白血病で、特に3歳から5歳の小児に多く発生する病気です。リンパ性以外にも、急性骨髄性白血病や悪性リンパ種の症状もあります。
白血病の治療法
治療法が確立されたことで、白血病は寛解が見込まれる病気になりました。そこで、白血病の治療法にはどのようなものがあるのかを解説していきます。
症状ごとに解説しているので、ご自身が発症した場合にどのような治療が行われるのかをご確認ください。
急性白血病の治療
急性白血病の治療は、全身の状態や患者さんの体質によって決まりますが、そのなかで中心となる治療法は抗がん剤による化学療法です。
化学療法は2段階に分けられていて、初期は寛解を目指す寛解導入治療を行い、その後は完全寛解を目指す寛解後治療を行って回復を目指します。
抗がん剤の使用は強い副作用を伴い、目まいや吐き気や脱毛、発熱などの症状がでます。
ほかには骨髄移植も有効な治療です。しかし、染色体異常や病型によって可能な場合とそうでない場合があります。もしどうしても副作用を抑えたいと思ったら、抗生物質や抗ウイルスの薬を使用して治療の苦しみを抑える支持療法もあります。
慢性白血病の治療
慢性白血病の治療は、分子標的薬を使用して治療を行います。その後はほかの白血病と同じく、抗がん剤や造血幹細胞移植などの治療法を使って回復を目指すのが一般的です。
またリンパ節などが腫れる恐れもあるので、場合によっては放射線治療も行われます。
慢性白血病の治療も痛みや副作用を伴う苦しいものとなるので、そうした場合は患者さんの負担を軽くする支持療法をすることもあるでしょう。
骨髄異形成症候群の治療
骨髄異形成症候群の治療は、検査によって高リスクか低リスクかを診断して治療方針を決めるのが一般的です。
高リスクと診断された場合は、造血幹細胞治療か細胞障害性の抗がん剤を使用する治療の2種類から治療方針を決めます。
低リスクの場合は、症状がない場合はそのまま受診しながら治療を進めますが、症状がある場合は貧血を抑える薬の処方が必要です。
ほかにも、低リスクでありながら少し症状が重い場合は、輸血を行うこともあります。
小児の白血病の治療
小児の白血病の治療方法は、抗がん剤を使用した化学療法です。小児白血病の場合は3段階に分けて治療をしていき、白血病細胞を減少させる寛解導入療法からはじまり、そこからさらに白血病細胞を減らす強化療法へ移行します。
再発を防ぐためには2年近く治療がかかるので、じっくり時間をかけて回復を目指すのが大事です。
白血病の完治率についてよくある質問
ここまで、白血病の種類や治療法を解説してきました。ここでは「白血病の完治率」に関してよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
白血病のタイプによって生存率は違いますか?
中路 幸之助(医師)
白血病の生存率は、病気のタイプによって異なってきます。生存率は急性骨髄性白血病では、65歳以下なら5年以内の生存率は40%になりますが、急性リンパ性白血病の場合は少し下がって30%です。治療を早期に行えば、10年生存率で60%と確率をあげることができます。近年は、白血病に有効な薬も多く開発されているので、薬によっては生存率を80%近くにあげることも可能です。もし白血病の症状を疑った場合は早めに医師の診察を受けるようにしましょう。
寛解後に再発する可能性はありますか?
中路 幸之助(医師)
白血病は、患者さんの体内にわずかに残っている微小残存病変が知らぬ間に増殖するので、完全に寛解した場合でも再発する恐れのある病気です。なので、体内にある微小残存病変が完全になくならない限りは、再発の可能性があります。寛解後には、再発を防ぐための地固め療法や、維持強化療法などの治療法が行われ、長くても1年から2年程必要です。こうして完全に寛解した状態を3年維持できれば再発の可能性はほぼなくなり、そこから5年経過すれば治癒したことになります。白血病を再発させずに寛解させるには、時間がかかるのを頭に入れておきましょう。
編集部まとめ
今回の記事では、白血病の完治率や生存率、治療法を解説しました。白血病は以前は完治率の低い病気でしたが、現在は治療法の進歩により完治率や生存率は飛躍的に高くなっています。
白血病にはさまざまな種類がありますが、早期発見して治療をしていけば完治できる病気です。白血病の原因はまだはっきりわかっていませんが、日頃の健康管理をしっかりしていけば防げます。
ご自身またはご家族で気になる症状や異変がある場合は、1人で悩まずなるべく早めに医療機関に相談しましょう。
白血病と関連する病気
「白血病」と関連する病気は1個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- 骨髄異形性症候群
骨髄異形性症候群とは、骨髄中に異常を生じた幹細胞が増殖して、貧血や出血、感染症などの症状を起こす病気です。正常な血液細胞が作られない面や、症状や治療方法も白血病と似ています。患者さんによって進行スピードが異なるので、定期的な検診を行って早期発見と治療を目指しましょう。
白血病と関連する症状
「白血病」と関連している、似ている症状は8個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 貧血
- 目まい
- 頭痛
- 発熱
- 肺炎
- 敗血症
- 歯肉出血
- 皮下出血
白血病の初期症状は、風邪に似た症状もあるので見過ごすこともあります。頭痛や皮下出血に関しても、経験している人はついつい放置してしまう傾向がある病気です。いつもと症状が違う、もしくは症状が長引くようであれば早めに医療機関で受診するようにしてください。