「皮膚がん」と「良性のいぼ」の見分け方はご存知ですか?【医師監修】
がんは日本人の男女ともに2人に1人が一生のうちに発症するといわれる程、とても身近で危険性のある病気です。
そのなかでもがんの発症によって死亡する確率は男性で4人に1人、女性で6人に1人といわれています。
がんといえば、内臓や血液に発生すると認識している方も少なくないでしょう。あまり馴染みのないがんですが、皮膚がんという肌の表面に発生するものもあります。
しかし、皮膚がんはほくろのがんといわれる程、ほくろやいぼに似ていて見分けがつきにくい病気です。
本記事では皮膚がんと良性のいぼの見分け方、発症する原因や治療方法を解説していきます。
急にほくろやいぼができたように感じる方は、ぜひ病院で受診する判断材料としてご活用ください。
監修医師:
高藤 円香(医師)
目次 -INDEX-
皮膚がんとは?
まず、皮膚は表皮・真皮・皮下組織・皮膚付属器の4つの組織に分類されます。この4つの組織いずれかから発生した悪性腫瘍を皮膚がんといいます。自分の細胞だったものが異常に増殖することで、正常な細胞まで破壊してしまうのががんという病気です。
女性特有の子宮がんや、男女ともに発生リスクのある大腸がん・胃がん・肺がんは知っている方も少なくないでしょう。しかし、皮膚がんは内臓系のがんと比べて罹患率が低く、症状や治療についての認識が低い傾向にあります。皮膚がんを発症してもほくろやいぼに似ているため、見逃されやすく、発見が遅れることも少なくありません。
皮膚がんはほかのがんと同様に、発見が遅れてしまえば血管やリンパを通じてほかの部位へ転移する可能性があります。早期に発見し治療すれば約90%の割合で完治が見込まれる病気です。しかしリンパ節に転移がみられた場合には5年生存率は約40%と大幅に低下してしまいます。
今までになかった場所にほくろやいぼが急に発現した場合には、早めに皮膚科で受診することが大切です。
皮膚がんの原因
がんは自分の細胞だったものが異常に増殖するものですが、皮膚がんではどのようなことが発症の原因となるのでしょうか。
皮膚がんを発症する原因は主に6つあると考えられています。
日光・紫外線
皮膚がんの発症リスクを高める主要な要因は、紫外線です。特に3大皮膚がんとよばれている悪性黒色腫(メラノーマ)・有棘(ゆうきょく)細胞がん・基底細胞がんは、紫外線がよく当たる部分に発現しやすいとされています。
3大皮膚がんのなかでも悪性黒色腫(メラノーマ)は、メラニン色素を作り出すメラノサイトががん化して発症する疾患です。白人の発症率が高いことも判明しており、黄色人種である日本人は10万人あたり約1〜2人の発症率となっています。人種によって発症率が異なる特有のがんです。
また紫外線が発がんを促す理由は、細胞の遺伝子に傷をつけやすいことが挙げられます。
摩擦
3大皮膚がんのうちのひとつである悪性黒色腫(メラノーマ)ですが、発症につながる原因の特定はいまだ解明されていません。
しかし、これまでの研究結果から紫外線だけでなく、皮膚への摩擦や圧迫などの外部から受ける刺激が関係していると考えられています。
傷跡
細胞の遺伝子に傷がつくと発がんリスクが高まります。ほくろのがんともよばれる悪性黒色腫(メラノーマ)は、ほくろに傷ができる傾向にあります。
- ほくろの形がいびつ
- 色の濃さにむらがある
- 急に大きくなった
- 急に黒くなる
ほくろが上記のように変化した場合には注意が必要です。
ウイルス感染
有棘(ゆうきょく)細胞がんは皮膚がんのなかでも日本人が発症しやすいがんです。皮膚の浅い部分の細胞のひとつである有棘(ゆうきょく)細胞から発生するがんになります。有棘(ゆうきょく)細胞は、平べったい形のため扁平上皮細胞ともよばれます。
このがんは、ウイルス感染が関係して発症すると考えられています。紫外線や傷跡も原因として考えられるため、ウイルス感染だけで発症するとは一概にはいえません。ですが、イボウイルスの1種に感染すると発症しやすくなると懸念されています。
化学物質
化学物質であるヒ素に慢性的に触れていると、慢性ヒ素中毒を発症する恐れがあります。ヒ素そのものに毒性はありません。
ヒ素は自然界に広く分布しており、天然由来のヒ素が土壌や水中には含まれています。食品や飲料水にもヒ素が含まれているため、日常的に天然由来のヒ素を私たち人間は体内に摂取しているのです。
何らかの形でヒ素化合物に変化したものが、経口・吸入・経皮や経粘膜の3経路いずれかから摂取すると急性中毒や慢性中毒につながります。
例えば、日本には海藻類や魚介類などの海産物を摂取する食習慣があります。海産物のなかにはヒ素糖やヒ素化合物が含まれているため、諸外国よりも膨大なヒ素を日本人は摂取しているのです。ほかにも人工的に合成されたヒ素化合物を含んでいるものは以下になります。
- 殺虫剤
- 除草剤
- 殺菌剤
- 飼料添加物
- 緑色の顔料(パリスグリーン)
- 医薬品(アルスフェナミン)
上記以外にも鉱山からの排水・排気による汚染や、地下水や生活燃料用石炭など自然界の高濃度汚染などが挙げられます。
放射線
放射線も皮膚がんの発症原因のひとつになります。有棘(ゆうきょく)細胞がんや基底細胞がんの発症リスクを高めるとされています。基底細胞がんは鼻・まぶた・頬・お口のまわりにできやすく、皮膚の浅い部分にある基底細胞から発生する皮膚がんの1種です。
基底細胞がんは皮膚がんのなかでは、転移しにくいがんになります。ですが、有棘(ゆうきょく)細胞がんの可能性もあるため、早期に発見し、治療に努めることが大切です。
皮膚がんと良性のいぼの見分け方
ほとんどの方が気になるのは、皮膚がんと良性のいぼの見分け方ではないでしょうか。皮膚がんを放置してしまうと、ほかの部位に転移する危険性は否定できません。皮膚がんである可能性が高い判断材料を4つ紹介します。
急激に大きくなる
いぼが急に大きくなったとしても問題はありません。しかしながら、いぼの急激な変化に不安を感じている場合には、皮膚科で受診しましょう。
悪臭がする
皮膚がんが進行してしまうと、悪臭を放つことがあります。悪臭がする場合には、次項でお伝えする表面がジクジクしている状態を伴う傾向にあります。通常のほくろやいぼには臭いがありません。何か悪臭がすると感じたら、病院で受診することをおすすめします。
表面がジクジクしている
表面がジクジクするのは、滲出液によるものです。滲出液は体内の細胞や組織から滲み出る液体のことで、免疫細胞や栄養素を含んだ傷の治癒に重要な役割を果たします。
誰しも1度は転んでケガをした後に出てくる少し黄味がかった透明の液体を目にしたことがあるでしょう。その液体が滲出液です。
表面がかさぶたのようになる
滲出液が出ると表面がかさぶたのようになることを痂皮(かひ)といいます。ケガをしたときも滲出液が出てかさぶたになるのと同じです。
このような状態がほくろやいぼが変形したところにみられた場合には皮膚がんが進行している場合もあるため、早急に病院で受診しましょう。
皮膚がんの治療方法
皮膚がんの治療は、まず病変を切除する外科治療が優先されます。しかし、皮膚がんの進行度に応じて治療法が異なる点に注意が必要です。
進行した皮膚がんで切除が難しい場合には、薬物療法(抗がん剤治療)や放射線治療を組み合わせた治療を行います。
皮膚がんといぼについてよくある質問
ここまで皮膚がんと良性のいぼの見分け方・発症する原因・治療方法などを紹介しました。ここでは「皮膚がんと良性のいぼの見分け方」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
皮膚がんはほかの臓器に転移する可能性がありますか?
高藤 円香医師
「皮膚がんとは?」でも述べたとおり、皮膚がんもほかのがんと同様に転移します。皮膚がんのなかには転移しない種類もありますが、ほとんどが転移するため、その認識を持つことが重要です。
良性のいぼががん化する可能性はありますか?
高藤 円香医師
結論からお伝えすると、良性のいぼががん化する可能性はあります。良性のいぼとされている脂漏性角化症は、全身のどこにでも発生します。また、老人性疣贅(ろうじんせいゆうぜい)ともよばれ、加齢とともに発生しやすくなるのが特徴です。脂漏性角化症は皮膚が盛り上がっていぼになったり、表面がざらざらした褐色のシミのようになったりします。基底細胞がんや悪性黒色腫(メラノーマ)との鑑別が必要です。
編集部まとめ
皮膚がんと良性のいぼの見分け方・発症する原因・治療方法を解説していきました。
皮膚がんといってもさまざまな種類があり、良性のいぼが悪性腫瘍へと進行してしまう恐れがあるため、注意が必要です。
特に急にほくろやいぼができたように感じたり、ほくろやいぼの形や色の変化がみられたりした方は、皮膚科で受診しましょう。
皮膚がんと関連する病気
「皮膚がん」と関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- メルケル細胞がん
- 皮膚のリンパ腫
- 皮膚付属器がん
皮膚がんにはさまざまな種類があります。通常のほくろやいぼは変化することがありません。ほくろやいぼに違和感を覚えたら、早期に発見し、治療しましょう。
皮膚がんと関連する症状
「皮膚がん」と関連している、似ている症状は3個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- ほくろからの出血
- ただれ
- 紅色
皮膚がんは体の表面に症状が現れるため、みつけやすいはずです。しかし、ほくろ・いぼ・シミ・湿疹と見分けがつかないため放置してしまうことも珍しくありません。急にほくろやいぼが発現したり、上記のような症状がみられた場合は医師に相談しましょう。